『リビング・ドール』(仮題)

日傘差すバイト

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第一章  月と人形

休息

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 三日三晩歩き続け。

 フェリティータはやっと、ルナエの本拠地だという遺跡群、
 ――というか、もはや古城とよぶべき砦の廃墟へやってきた。

 
 そこは森を抜けた奥地にあり。

 そばに湖が広がる景観の良い場所だった。 

 
 ボロボロの城壁を抜け。
 荒れ果てた中庭に差し掛かったところで。


「では、はじめましょうか」

 とルナエは言った。


「始める、って何をですか?」

「何って、魔法の勉強だけど」

「もう、ですか!?」

 三日三晩歩いてきて、休息も無しに、すぐにだ。
 さすがにハードワークすぎると、フェリティータは思う、けど。

「……え、疲れてるの?」

 精霊の感覚では、3日飲まず食わずの不眠不休ごときで疲れたりしないらしい。
 しかし、フェリティータは少し違う。

「せめて水を……」

「……飲むの?」

 飲まない。飲めない。

 フェリティータのヘッドは、まぶたと両目アイ以外稼働しない。
 
 だから、どうするのだろうかとルナエは不思議に思う。
 なので興味に駆られたルナエは。

「では、近くの湖で少し休憩してからにしようか」

「助かります」

 そうして、フェリティータは湖へ向かい。
 その後をルナエが追いかける。

 フェリティータは少しうっとうしそうに聞く。

「先生も来るんですか?」

「当然でしょ」





 ルナエは、フェリティータのことを純粋な精霊とは思っていない。
 それに近いものだろうと考えてはいるが、その詳細、正体までは把握できていない。

 ただ、フェリティータが精神の中に抱えている負の力を放置していると、
 いつか手に負えない代物になりそうだったから。
 弟子にするという手段に出た。

 だからルナエは知りたいのだ。

 弟子の少女の事を。


 ―――

 
 フェリティータは、湖のほとりに付くと。
 そのままザバザバと水の中に入っていく。


 そうして全身の力を抜いて、水の流れに、身をゆだねた。
 
 ルナエは呟く。

「なるほど、沐浴……?」

 フェリティータは、フリルをあしらったレース状のワンピースに。
 関節が引っかからないようにと、要らない気を遣われた、面積の少ないきわどいレース状のショーツを纏い。

 水分で肌に張り付くことも構わない様子だ。

 ルナエは嘆息する。


「……服、脱がないんだ」

  


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