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第八話 『コロッセウム――開幕――』

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 歓声の中。

 3つの組み合わせの中から。
 カードを引く代表が一人づつ出る。

 1組目は、ジルシス
  それに、最初の試合なので、ユナも同伴していて。  

 2組目は、フェルマータ


 そして、3組目は……

「おっと、3組目の代表者はまだベンチです。何か作戦でも練っているのでしょうか?」
 
 実況が木霊し。

「ほら、待たせてるから」

 行きなさいよ。
 と、キツネ耳メイドウィスタリアに背中を押される。

「あうっ」

 目隠ししたままのロリエルフは、それにつんのめりながら。
 ブルペン的な所から戦闘領域に足を踏み入れた。

 そのまま、後ろを振り返り。

「わ、わたしですか……?」

「当然! ウィスタリアよりお姉ちゃんだし、99Kのベテランなんだから……」

「代表者出ましたね。あれは……ローリエ選手だと思われます。今大会の中、運営の特別裁定で11万というイレギュラーを叩き出した、数値上の実力はトップクラスと言っていい、キャラクターです」

「ひぃぃ!?」

 出遅れたことで余計に目立ってしまい。
 実況のアナウンサーが、ローリエの情報を口にしてしまう。

 おかげで、会場は余計に盛り上がり、ローリエはますます注目された。

 それにローリエは、びびりまくる。
 目隠しをしていても、人々の圧というか、怒号のようなモノが押し寄せてくるように感じて。
 しり込みしてしまう。

 その間に、なんか鬼畜なオプションがついてるんですっけ?

 と、ザマァも興味を持って、実況と、ローリエの話を続けてしまう。

「ほら、はやく」

 たまりかねたウィスタリアがベンチの外に出てきて。
 ブルドーザーのようにローリエを会場中央まで押し込んでいく。

 そしてダッシュでベンチに帰っていった。

「さて、可愛らしいエスコートで主賓が到着です」

 解説のザマァの、ジョークの後。
 パーティの紹介が行われる。

「パーティ名は『ミミズクと猫』、スポンサーは首都グランタリス中央区の『ミミズクと猫・亭』という宿泊施設件カフェのようです。もうすぐ、回復アイテム等の販売を始めるという事で、今回はそれを使用するようです。あと、スポンサーからの追加コメントで、『依頼の斡旋も行っておりますが、依頼の受注が少ないのでよろしくお願いします』ということです。皆さん、困ったことがあったら『ミミズクと猫』さんの方に、依頼書出してあげてください」

「じゃあ今度、ザマァで行ってみようっと。撮影許可下りるかな?」

 そして。

「さて、そして戦闘領域中央では代表者3名にモンスターカードが差しだされます」 


 おどおどしてしまうローリエも、促され、カードを引き終わる。

 それで、全員、モンスタ―の選定が終わった。


「私たちは戻るわよ」 
 そうして、フェルマータとローリエはジルシスとユナを残し、戻っていく。
 
 魔物が召喚されるまでの少しの間。

 武器を取り出して構えたり、カバンの入れ替えを行ったり。
 バフ以外の戦闘準備を行う時間が与えられる。
 
 コロッセウムは今、屋根を開放していて。
 お昼過ぎの日差しが差し込んでいる。
 きぐるみでなかったら、ジルシスはもう死んでいる。
 
 ジルシスは、良かった、準備しておいて。
 と思いつつ。

「ほな、よろしゅうな、ユナ。アンデッド同士、なかようしよね」

 真っ黒なクマの着ぐるみは、その手に銀色の魔工長杖マシジックスタッフを持ち。
 がしゃこん、とスライドアクションで、ショットシェルを薬室に送り込む。

 
 そして。

「私はアンデッドじゃありませんけどね」

 本当はローリエと組みたかったユナだったが。
 ユナはヒューベリオンと一緒の方が良い、と皆に説得されて、ジルシスと組むことに決まった。
 だからそういう意味でもちょっと不満気にそう言って。

 ユナは、ハルバードを手にし。
 さらにヴィエクルスフィアからヒューベリオンを開放する。

 
 黒い騎獣甲冑を纏った、子竜が、戦闘領域に姿を見せる。
 しかし、その身体は、既に死んでいて。

 インファントドラゴンゾンビとなっている。

 そんな猟奇的でダークな見た目に、会場は波打つように湧き躍った。

 その『馬』に跨る、漆黒の甲冑姿であるユナを、ザマァは、殆ど素の口調で称賛する。

「凄い、まるで竜騎士というか暗黒騎士というか、すげえかっこいい。オレも欲しいわ、アレ……。武器もハルバードってのがまた……良いねえ!」

「私は、着ぐるみの方が気になりますが、手に持ってるのは何でしょうか? ライフル……?」

「いや、そっちも気になりますねぇ。このゲームに銃なんてあったんですね」


 
 そうして、ジルシスとユナの対戦相手が召喚される。

 それは――。

 白い巨大な影。

 と、黒い小さな影。
 
 ジルシスが

 【能力看破エンサイクロペディア】で、魔物の情報を取得する。

 しかしその前に、白い方をユナは見たことがあった。

「あれは、あのときのウサギさん!?」


 なぜなら、草原にいた大きなウサギだったからだ。

 そしてもう一匹も、同じダシュプ系。
 
 白い方と同じく、真っ黒なウサギのような魔物で。
 草原によくいる、最弱の魔物、ダシュプと同じ見た目をしている。
 ただ色を黒くしただけ。
 そのカラバリと言った感じだが――。


 ジルシスが魔物の名前を言う

「キングダシュプ、とブラックダシュプ……! 見かけに騙されたらあかん、ブラックのほうがつよいで、きぃつけな!」
 
 
 そんな感じで。
 第一組目、戦闘開始だ。
 
 

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