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第五話 『ゴーストライダー』

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 訓練場所のど真ん中に、でかい石碑を置いたまま。
 カウントダウンを待つパーティメンバー達。
 
 ローリエは、日傘を杖代わりに、ベンチに座り。
 ユナはその右隣に、マナは左隣に、ローリエを挟み合う。

 そしてフェルマータは、お店に飲み物を取りに行っている。

 そんな折。 
 おもむろに、マナが気付く。
 ユナが、大剣を携えていないことに。

「ユナ。そういえば武器は? フェルにもらってない?」

「あ、あれは……」

 ユナはバツが悪そうだ。
 なので、ローリエが代弁する。

「……遺跡での大決戦で、折れてしまったみたい、です」

「もう? 早いわね」
 
「ごめんなさい、せっかくフェルさんに頂いたのに」

 マナは、ううん、大丈夫、と首を振る。
「たぶん気にしないわよ、フェルは。どうせ、お古の武器だったんでしょ? またフェルに言えば、新しい武器くれると思うわ」

「いえ、武器ならローリエ先輩に新しいのは頂いたんですけど。ちょっと携帯するには長いので、街中では仕舞ってあるんです」

 そう言って、ユナはベンチから立ち上がり。
 インベントリから、ハルバードを装備する。

 2メートル近いそのポールウェポンは、三日月状のアックス部と、大鎌状のピック部、そして鋭くとがったスピア部で構成されたヘッドを持ち、黄金色の宝石が埋め込まれた、業物だ。

 マナは、レア物であることを一目で見抜き。 

「良い武器ね。それ、もしかしたら、何か条件付きのスキルかオプションを閃くかもしれないわ」

「スキルですか?」

「ええ。武器は、使い込んでいくと、使い手に合わせたスキルを幾つか『武器自体が』覚えることがあるのよ」

 ちなみに。
 これはNPCや低ランク鍛冶師プレイヤーが販売している量産ノーマル武器でも、閃く。
 それが魔物産レアボス産レジェンドの方が、閃くスキル数が多かったり、強かったりするという話だ。ただし、ローリエの作り出す魔法武器ではこの機能はない。代わりに、使い込んだ魔法には個別にオプションを付けることはできる。
 

マナは続けて、言う。
「つまり、キャラクター個人のステータスなんかを条件にして、使えるスキルね。たとえば、私の魔導書だと、信仰力FAITH80、精神力MENTALITY20、器用度Dexterity20、【魔石研究】レベル5――、これらをクリアしないと、使用できないし効果もない。代わりに、【無属性魔法/消費MP50%】【魔法攻撃力アップⅡ】のオプションがついているわ」

「完全に個人の専用武器みたいになるんですね」

「そういうことね。ユナ――そのハルバード、耐久値は?」

「えっと、120/120です」

「とても頑丈ね。申し分なしだわ。耐久値が減ってきたら、出来れば修理スキルを持ってるドワーフ種族に、手入れをお願いすると良いわ」

「フェルマータさんとかですか?」

 マナはぷっ、と噴きだした。 
 半笑い声で答える。 
「ううん。フェルはダメよ。あの子は、戦闘バカだから」 

「誰が戦闘バカですって?」
 
 裏手の扉を、お行儀悪く鉄靴ソールレットで、押さえつけながら通過し。
 飲み物を手にしたフェルマータが戻ってきた。

「って、私が座る場所ないじゃないの」

 ベンチは、ユナ、ローリエ、マナで一杯だ。余地はない。
 
「立ち飲みでよろしく」
「駅の居酒屋かァ!? ――まぁいいけど……」
 
 結局、フェルマータはローリエの後ろで立ってコーヒーを飲むことになった。
 
「今の、そのハルバードの話? カッコいいわね。レア物?」 
  
「はい、ローリエ先輩が拾ったそうです」

「へぇ、珍しい。レア武器の完成品ドロップなんて……。レベル高いアンデッドか、武器系の魔物が落とした感じ?」

 するどい。

「その通りです。さすがフェルマータさん」とローリエ。
 
「すいません、フェルさん、せっかくフランベルジュ頂いたのに」

「気にしないで。アレは私が今のビルドに行きつくまでに、迷走してた時の名残だからもう要らないものだし。それより、その武器は大事に使った方が良いわ。きっと、良いオプションかスキル持ってるわよ」

「はい。大事にします」


 フェルマータは、飲み終えたカップを、その辺の石段に置いて。

「さて、残り時間いくつ? もうそろそろじゃない?」

「はい、あと、5分くらいです」

「そっか、じゃ、そろそろ準備しないとね」

 フェルマータは、石碑の前に立ち。
 武器と盾を構え、戦闘準備を始めるのだった。
  
 
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