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第二話 『初めてのパーティ』
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しおりを挟む予定も違えば、覚悟していたこととも違う。
全然知らない人が、もう一人参加するなんて聞いてない。
「あッ、おッ、アッ……えっ、とォ……」
挨拶?
抗議?
帰る?
ログアウト?
ど、どしよう?
挨拶 ⇒ 無理!
抗議 ⇒ 絶対無理!!
帰る ⇒ 人生オワル
ログアウト ⇒ 現実逃避しに現実に帰ってどうする!
どどどど、どうしたら!
ローリエが、どうしたらいいのか、解らないでいると。
フェルマータが言う。
「こっちは、私のパーティメンバーの自称魔法使いの『マナ』よ」
ぱーてぃめんばー!?
『じゃあ私は、二人目ではなく三人目?』とローリエは思う。
確かに、他にメンバーが居ないとは聞いていなかった。居るとも聞いていないけど。
「こ、こんに、ちわ」
ローリエが挨拶を絞り出す。
――けど。
「……」
自称魔法使いの少女は、挨拶をするでもなく、席から立ち上がるでもなく。
ただ、ジットリとした視線で、ローリエのことを見つめた。
まるで、品定めするような凝視に。
うっ。
と、ローリエは、小さい声を漏らす。
見られることにはなれていない。
しかも知らない人だ。
ローリエは、そっと、視線を外した。
そのまま流し目で、自称魔法使いを見る。
魔法使いというだけあって、その姿はいかにもそれっぽい。
ケープが付いた真っ黒なローブの隙間からは、下に着こんでいるゴシックでフリルが多めの服が見えているし。
サイハイソックスも、編み上げブーツも、裾の広がるドレスの袖も、全てが黒い。
しかしながら、頭にかぶった帽子は良くある魔法使いの帽子では無くて、先端に★のアクセサリーのついた、二股のピエロのような帽子だ。ジェスターキャップとでも言おうか。二股のヤツだ。
勿論それも真っ黒で、帽子の額の所に宝石が埋まっている。
そんな『黒』の中に、浮かび上がるのは雪のように『白』い肌と、流水のように滑らかに輝くゆるふわくるくるロングの『銀』髪だ。
それほど高くない背丈や、華奢な見た目からの推察では、ホムンクルス系の種族だろうか。
マナ、という魔法の源たる元素、魔素と同じ名前を付けていることから、魔法に特化したビルドかもしれない。
ローリエが、視線を戻すと再びマナと目が合う。
宵闇から黄金の太陽が覗くような、特徴的な黄昏色の瞳が、今なお、ローリエを捉え続けている。
そうしてようやく、その口が開く。
「こんにちは。私はマナ」
簡潔な挨拶。
と思いきや、マナは「さっきぶりね」と付け加えた。
さっき……?
ローリエは、お店に来るまで誰とも会っていない。
知り合いと呼べるのはフェルマータだけだし、他の誰とも話をした覚えは……――。
はっ!
間違い電話のヒト!?
ローリエの、はっとした表情は、気づいたと判断するには十分だったろう。
マナは、薄く微笑むと、「よろしく」と言った。
「あっ、は、ッ、はい!」
「じゃあ、ロリちゃんもこっちに座って。私たちが、あなたをメンバーに加えて『やりたいこと』をお話するわね」
「は、はいッ」
そうして、ローリエのフレンドリストに、新しいフレ登録要請が飛んできたのだった。
一人かと思ったら、二人もパーティメンバーというフレンドが増えた。
相変わらず他人は苦手だけれど、なんだか、少しづつ、『前進』を感じるローリエだった。
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