13 / 119
第二話 『初めてのパーティ』
13
しおりを挟む
インターフェースのどこにもマップなんて表示されないし、目的地までのガイドマーカーも無い。
そもそも非戦闘時のインターフェースは全画面がただの背景で、単なるリアルバーチャル散歩。
ゲームをリアルに近づけすぎると、どんどん不親切になる、という良い例かもしれない。
リアルがどれだけ不親切かってことを良く解らせてくれるゲームシステムになっている。
ただ、ローリエのスキルで進むべき方角や、建物の配置だけは解るため、迷うということは無いけれど。
ローリエは、フェルマータから聞いた目印を頼りに、首都の街を往く。
目的の『ミミズクと猫』という冒険者の宿は、首都のど真ん中にあるらしい。
なんてリアルマネー的な家賃の高い場所にお店を作ったんだ、店主は。
ど真ん中という事は、大通りが一堂に交差する場所だ。
おかげで、ローリエはどんどんと流れてくる人々をかき分けて進まなければならない。
しかし、ど真ん中を進むような勇気も忍耐力も無いので。
大通りの両脇に並ぶお店や建物の壁をなぞる様に、へばりついて進むローリエは、不審者まがいの怪しさを醸し出している。
身体を正面に構えては人に押し流されるから。
少しでも日陰に、少しでも他人から遠くに。
身体を横にして縫うように歩く、そんな苦肉の策は、他人の河を泳ぐ魚のようだろう。
そして時刻は20時ちょうど。
精神的なストレスが限界を迎えそうなころ。
ローリエはようやく、目的地らしきお店の前にたどり着いた。
はぁ、はぁ。
死ぬかと思った。
真っ青な顔で、荒い呼吸を繰り返すローリエは、既に疲れていた。
学校の授業中ほとんど寝ていたとはいえ、まだ残る寝不足の影響と、人混みに酔ったことも重なっている。
正直、愛海は、ローリエがしんどいのか、中の人がしんどいのか判別がついていない。
しかし、これから今まで待ちに待ったパーティプレイの第一歩が始まる。
ここでギプアップするわけにはいかない。
懐から取り出した、エリクシルを、栄養ドリンクか何かのように一気に飲み干して気合を入れる。
「よし!」
背筋を伸ばす。
雑踏や、雑音、他者の話声が渦巻く中。
大きく新しい二階建ての建物。
ローリエの姿が、そんな店の前に立つ。
目の前には、建物の扉。
その上には、かわいらしいロゴとともに描かれた『ミミズクと猫・亭』 という看板。
よし。
いざ。
ローリエが、扉の取っ手に手をかけようか。
と思ったところに、客が出てきて、一度、びくぅ、と驚き。
もういちど覚悟を決め終わるまでさらに5分。
約束の時間はとうに過ぎている。
――遅刻したので、死刑。即追放。
そう言われないとも限らない。
今度こそ絶対に行かねば。
ローリエは、再度、意を決して扉を開く。
そーっと。
できた扉と壁の隙間からお店を除く。
中は、広かった。
入ってすぐ目の前に階段が見え、そこを境に右半分はイスやテーブル等が設置されたカフェスペース、左半分は依頼書を貼った掲示板等があり、仕事を斡旋するスペースになっているようだ。
視界内に店主やスタッフの姿が見えない瞬間を狙い。
するり、とローリエは店内に身体を滑り込ませた。
店内は、淡い証明が設置されていてそれなりに明るく。
新築の木材の匂いも漂っていて、ゲームの細かな演出に感服する。
しかし、ひとがあまりいない。
勿論、ゼロではない。
疎らだという話。
首都のお店なのだから、もっとわらわら居ても良い筈なのに。
もしかして、ローリエは他人が苦手だと気づいて、フェルマータが気を利かせて、人払いしてくれたのだろうか。
まさかね?
そんな感想を覚えていると。
バサバサバサッ。
びくっ!?
店内の奥から、フクロウ……いや、ミミズクがばさばさと飛んできて、照明のぶらさがっているインテリアに止まった。
こわぁ!
そして、よく見たら、静かに気配を殺している黒猫が店の入り口の近くに座っていた。
なるほど、ミミズクと猫、という名前の由来はこれか、とローリエは思う。
それにしても驚かせないでほしい。
ドキドキしていると、奥から声がかかる。
「あ、ロリちゃん、こっちです」
ろ゛!?
呼び名に猛抗議したい気持ちになりながら。
前を見ると、フェルマータの姿があり、手招きをしていた。
どうやら衝立に隠れた席に陣取っているようだ。
ローリエは呼ばれるままに、フェルマータが居る方へ向かいつつ――。
「フェルマータさん。すいません、お待たせし……」
!?
呼ばれた席に着くと、フェルマータの隣に、見知らぬ銀髪の誰かが座っていた。
どちら様!?
そもそも非戦闘時のインターフェースは全画面がただの背景で、単なるリアルバーチャル散歩。
ゲームをリアルに近づけすぎると、どんどん不親切になる、という良い例かもしれない。
リアルがどれだけ不親切かってことを良く解らせてくれるゲームシステムになっている。
ただ、ローリエのスキルで進むべき方角や、建物の配置だけは解るため、迷うということは無いけれど。
ローリエは、フェルマータから聞いた目印を頼りに、首都の街を往く。
目的の『ミミズクと猫』という冒険者の宿は、首都のど真ん中にあるらしい。
なんてリアルマネー的な家賃の高い場所にお店を作ったんだ、店主は。
ど真ん中という事は、大通りが一堂に交差する場所だ。
おかげで、ローリエはどんどんと流れてくる人々をかき分けて進まなければならない。
しかし、ど真ん中を進むような勇気も忍耐力も無いので。
大通りの両脇に並ぶお店や建物の壁をなぞる様に、へばりついて進むローリエは、不審者まがいの怪しさを醸し出している。
身体を正面に構えては人に押し流されるから。
少しでも日陰に、少しでも他人から遠くに。
身体を横にして縫うように歩く、そんな苦肉の策は、他人の河を泳ぐ魚のようだろう。
そして時刻は20時ちょうど。
精神的なストレスが限界を迎えそうなころ。
ローリエはようやく、目的地らしきお店の前にたどり着いた。
はぁ、はぁ。
死ぬかと思った。
真っ青な顔で、荒い呼吸を繰り返すローリエは、既に疲れていた。
学校の授業中ほとんど寝ていたとはいえ、まだ残る寝不足の影響と、人混みに酔ったことも重なっている。
正直、愛海は、ローリエがしんどいのか、中の人がしんどいのか判別がついていない。
しかし、これから今まで待ちに待ったパーティプレイの第一歩が始まる。
ここでギプアップするわけにはいかない。
懐から取り出した、エリクシルを、栄養ドリンクか何かのように一気に飲み干して気合を入れる。
「よし!」
背筋を伸ばす。
雑踏や、雑音、他者の話声が渦巻く中。
大きく新しい二階建ての建物。
ローリエの姿が、そんな店の前に立つ。
目の前には、建物の扉。
その上には、かわいらしいロゴとともに描かれた『ミミズクと猫・亭』 という看板。
よし。
いざ。
ローリエが、扉の取っ手に手をかけようか。
と思ったところに、客が出てきて、一度、びくぅ、と驚き。
もういちど覚悟を決め終わるまでさらに5分。
約束の時間はとうに過ぎている。
――遅刻したので、死刑。即追放。
そう言われないとも限らない。
今度こそ絶対に行かねば。
ローリエは、再度、意を決して扉を開く。
そーっと。
できた扉と壁の隙間からお店を除く。
中は、広かった。
入ってすぐ目の前に階段が見え、そこを境に右半分はイスやテーブル等が設置されたカフェスペース、左半分は依頼書を貼った掲示板等があり、仕事を斡旋するスペースになっているようだ。
視界内に店主やスタッフの姿が見えない瞬間を狙い。
するり、とローリエは店内に身体を滑り込ませた。
店内は、淡い証明が設置されていてそれなりに明るく。
新築の木材の匂いも漂っていて、ゲームの細かな演出に感服する。
しかし、ひとがあまりいない。
勿論、ゼロではない。
疎らだという話。
首都のお店なのだから、もっとわらわら居ても良い筈なのに。
もしかして、ローリエは他人が苦手だと気づいて、フェルマータが気を利かせて、人払いしてくれたのだろうか。
まさかね?
そんな感想を覚えていると。
バサバサバサッ。
びくっ!?
店内の奥から、フクロウ……いや、ミミズクがばさばさと飛んできて、照明のぶらさがっているインテリアに止まった。
こわぁ!
そして、よく見たら、静かに気配を殺している黒猫が店の入り口の近くに座っていた。
なるほど、ミミズクと猫、という名前の由来はこれか、とローリエは思う。
それにしても驚かせないでほしい。
ドキドキしていると、奥から声がかかる。
「あ、ロリちゃん、こっちです」
ろ゛!?
呼び名に猛抗議したい気持ちになりながら。
前を見ると、フェルマータの姿があり、手招きをしていた。
どうやら衝立に隠れた席に陣取っているようだ。
ローリエは呼ばれるままに、フェルマータが居る方へ向かいつつ――。
「フェルマータさん。すいません、お待たせし……」
!?
呼ばれた席に着くと、フェルマータの隣に、見知らぬ銀髪の誰かが座っていた。
どちら様!?
1
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる