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第百六十四話 結果発表ぉぉぉぉぉぉぉぉ!

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 泥棒が逃げ帰った後、わしはリビングに買ってきた物を置く。


「そう言えば、ノエルちゃんはどこにいるんですか?」


 紙袋から洗剤を取り出しながらロワが聞いてくる。


「ノエルちゃんは『特訓!』って言って庭に行ったわよ?」
「そろそろ試験の結果も来る頃じゃ。呼んでくるかのう」
「ただいまー!」


 庭に向かおうとした所、玄関からノエルの声が聞こえて来た。
 泥だらけの姿でノエルがリビングに入って来た。ノエルはわしらを見ると驚いたような表情になった。


「フランお姉ちゃんとロワお兄ちゃんも帰ってたんだ」
「まあのう。それよりも相当汚れておるぞ。早く風呂に入って来るんじゃ」
「はーい」


 ノエルがバタバタとせわしなくリビングを出ていった。


「あれだけ泥だらけになっちゃって。どんな特訓をしたの?」
「ホウリさんに戦えるように仕込まれてるんですよ」
「あんな小さな子まで戦ってるの?」
「自分の身を守れる位には力を付ける。それがホウリの教育方針じゃ」


 ノエルは神の使いという事は話さんでも良いじゃろうな。
 わしの説明にフレズが関心したように頷く。


「ノエルちゃんは凄いね。私なんて危ないからって授業以外で武器を持った事ないよ」
「冒険者は戦闘してこそですしね」
「わしらについてくるには、ある程度の戦闘は出来んとな」


 最低でも魔国の弓部隊の隊長に勝てるくらいには強くなくてはのう。
 わしらは買ってきた日用品を棚に戻しながら話す。


「じゃが、ロットが兄におるのにフレズは戦闘せんのか?」
「お兄ちゃんは神級スキルを持っているから戦うって言ってた。けど、私には無理して戦わなくても良いって言ってたの」
「本人の資質もあるでしょうし、しょうがないですね」


 フレズと楽しく話していると、玄関からポストの中に何がが入れられた音がした。微かな音じゃったが、ロワも気付いたようで目を見開いて窓の外に目めやる。


「?、二人ともどうしたの?」


 フレズには何も聞こえなかったみたいじゃな。音が小さすぎたし仕方ないか。


「郵便が来たみたいじゃ。ちょっと待っておれ」


 わしの言葉にロワが緊張した表情で頷く。
 外に出てポストの中を見ると、騎士団の紋章が入った封筒と、白竜学園の名前が入った封筒が入っていた。これが合否の通知書じゃな。
 封筒を取り出してリビングに戻る。すると、ノエルが髪をバスタオルで拭きながら脱衣所から出て来た。


「フランお姉ちゃん。どうしたの?」


 わしは封筒をノエルに見せる。


「合否判定が届いたぞ」
「ほんと!?」
「本当じゃよ。分かったら早く髪を乾かしてくるんじゃ。風邪をひくぞ?」
「うん!」


 ノエルが満面の笑みで脱衣所に戻っていく。
 先にリビングに戻ると、ロワが神妙な顔で座っていた。ロワはわしに気が付くと勢いよく席を立った。


「フランさん!」
「落ち着け、話はノエルが来てからじゃ」
「……分かりました」


 わしに諭されたロワはまた座り直す。


「……何かあるんですか?」
「ロワとノエルが試験を受けたんじゃが、その結果が今届いたのじゃ」
「なるほど、それは緊張しますね」


 どちらも封筒の中身で今後の人生が大きく変わる。緊張するのも無理はないじゃろう。
 そうこうしている内に、髪を乾かしたノエルがリビングに入って来た。


「おまたせー」
「全員揃った所で、ドキドキの開封の儀を行うかのう」
「わーい!」
「わーい……」


 わしは2人に封筒を渡す。ノエルは満面の笑みで受け取り、ロワはぎこちない動きで受け取る。同じような立場じゃが、それぞれの反応が違うのが面白い。
 ロワが緊張した面持ちで封筒の封を開ける。封筒の中には畳まれた紙を取り出すと大きく息を吐く。ロワの紙を持つ手が震えておる。
 ロワが紙を開けようとした瞬間、ノエルがロワの服の裾を引っ張った。ロワが驚いたようにノエルを見る。


「なんだいノエルちゃん?」
「ロワお兄ちゃん、せーので一緒に見よ?」


 ノエルの提案に驚いた様子のロワだったが、すぐにいつもの優しい表情に戻った。


「うん、良いよ」
「じゃあ行くよ?せーの!」


 2人がタイミングを合わせて紙を開く。2人は紙を見たまま声も出さずに固まる。


「……どうした?」


 心配になって聞くと、2人は無言で広げた紙をこちらに向けて笑顔になった。


「「合格!!」」


 紙にはどちらにも合格の文字が書いてあった。
 それを見たわしは思わず息を深く吐いてしまう。自分でも分からなかったが、わしも緊張しておったみたいじゃ。
 肩の荷が下りたわしは2人に笑いかける。


「おめでとうじ。2人とも頑張ったのう」
「おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「えへへ、ありがと」


 わしとフレズの賛辞に2人も照れくさそうに笑う。これで心配事が片付いたのう。


「そうと決まればお祝いじゃな。とはいえ、本格的なお祝いはホウリとミエルが帰って来てからになるから軽くになるが」
「だったら、制服を見に行きたいです!」
「それいいね!ノエルも見たい!」


 ノエルも乗り気のようじゃ。ロワもノエルも制服は必要になってくるし、今の内に採寸とかは済ませておいてよいじゃろう。


「ならば今から仕立て屋に行くとするか」
「やったー!」
「わーい!」


 2人はよっぽど嬉しいのかハイタッチをする。よっぽど嬉しいのじゃろう。
 その様子を見ていたフレズは微笑ましそうに耳打ちしてくる。


「ロワさんとノエルちゃんって仲良しだね?」
「わしとノエル程ではないがのう」


 じゃが、言われてみればロワとノエルは結構仲がいい。この前も一緒に遊んでいたし、大道芸をしていた時は一緒に芸をしておった。性格が合うのかもしれぬのう。
 後でホウリに効いた事じゃがロワは正確が単純な分、子供と仲良くなりやすいらしい。そう言われると納得の理由じゃ。
 まあ!一番相性が良いのはわしとノエルじゃがな!


「はしゃぎたくなる気持ちも分かるが、行くなら早く行くぞ」
「「はーい」」


☆   ☆   ☆   ☆



 わしらは身支度を整え、仕立て屋に向かった。向かう途中も2人は上機嫌ではしゃいでいた。気持ちは分かるから好きにさせたかったが、ひど過ぎたので何度か注意してしまった。
 どの位ひどかったかと言うと、ふざけ過ぎてロワの布が取れそうになるくらいじゃった。
 そんなこんなで、仕立て屋までたどり着いた。


「ここが仕立て屋さんですか」
「言っておくが、中では大人しくしておくんじゃぞ?」
「はーい」


 疲れを感じながらわしは仕立て屋に入る。普段のホウリはこんなに大変な事をしておるのか。少し尊敬するのう。
 仕立て屋の中はミシンや服のサンプルが置かれておった。パッと見ただけでもかなり丁寧な仕上がりで、腕が良いように見える。


「いらしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「この2人の制服を仕立てて欲しい」
「かしこまりました。採寸しますのでこちらにどうぞ」


 店員に店の奥に通される。


「僕はこちらみたいなので、また後で合流しましょう」
「私はロワさんに付いて行こうかな?」
「うむ、わかった」


 ロワ達を分かれて奥に行くと子連れの者達が数組ほど採寸をしていた。こやつらも合格したんじゃろう。
 周りの様子を見ていると、見たことがある子が父親と採寸をしているのを見つけた。
 わしが声を掛けようとするよりも先にノエルがその者の元へと走っていく。


「コアコちゃん!」
「ノエルちゃん!?」


 採寸していたコアコはノエルが向かってくるのを見て目を丸くする。そんな事はお構いなしに、ノエルはコアコへと抱き着く。


「久しぶり!」
「く、苦しいよノエルちゃん」
「あ、ゴメンゴメン」


 ノエルは慌ててコアコから離れる。コアコはズレた丸メガネを直した。


「ノエルや、いきなり走り出してはいかんぞ?」
「ごめんなさい」


 わしは隣にいたコアコの父親と店員に頭をさげる。


「採寸の邪魔をしてすまぬ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。この子がノエルちゃんですか?」
「そうじゃ。ほれ、挨拶せい」
「ノエル・カタラーナです!よろしくお願いします!」


 ノエルが元気よく頭を下げる。


「娘からお話は聞いていますよ。娘の友達になってくれたとか」
「そうだよ!ノエルとコアコちゃんはお友達なんだ!」
「あれ?ノエルちゃんがここにいるって事は?」
「うん!ノエルも合格したんだ!」
「そうなの!?やったー!」


 2人で両手を繋いでぴょんぴょんと跳ねる。


「一緒のクラスになれると良いね!」
「そうだね!」
「こらこら、まだ採寸の途中だろう?ノエルちゃんとは後で話そうな?」
「あ、そうだった」


 2人ともテンションが高すぎて父親に注意される。じゃが、こういうのを見るとほっこりするのう。
 その後は、ノエルを大人しくさせて採寸を進めたのじゃった。
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