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第四十三話 焼肉の網に肉を乗せすぎてはいけない
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────クラーケン────
クラーケンとは大型の魔物である。普段はビーチなどの浅瀬に近づくことはないが、稀に浅瀬に出没することがある。海での機敏な行動と、10本の触手から繰り出される攻撃はとても強力。討伐方法としてはスキルで動きを止めて弱点である雷魔法でダメージを与え続ける方法が一般的である。しかしながら、討伐に必要な人数が多いため、2年後に討伐隊が来ることもある。─────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
日が水平線に沈み、もうすぐ夜が来ることを告げている。
二回戦まで終えた俺たちは浜辺でバーベキューを楽しんでいた。
「んー、おいしー!」
焼きたての肉を頬張りながらノエルが微笑む。そんなノエルの皿に横から野菜が追加される。
「これ、野菜も食べんか」
「……はーい」
フランに注意されノエルは嫌さそうにしながらも野菜を口の中に入れる。
「うえぇ、美味しくない……」
「よしよし、ちゃんと野菜も食べられて偉いな」
渋い顔のノエルの頭をなでるフラン。この様子を見るに無事に仲直り出来たみたいだな。
ロワは網の上でこんがり焼けたおにぎりを取り齧りつく。
「うーん、この焼きおにぎりも美味しいです」
「だろ?俺の特製タレと高級味噌を使った焼きおにぎりだからな。沢山あるからもっと食ってくれ」
「うめ……うめ……」
両手に焼きおにぎりを持って頬張っているロワを見て思わず笑みがこぼれる。それと対照的にミエルの顔はあまり優れていない。食べてはいるみたいだから食欲はあるとは思うんだが……。
「どうしたミエル。口に合わなかったか?」
「いや、そんなことは無い。とてもおいしくいただいているが……」
ミエルは夕日が沈んでいく海を見ながら寂しそうな表情をする。
「海の幸が食べられなかったのが少し残念でな」
「確かに。わしもケエワイビーチに行くと聞いて楽しみにしておったのじゃがな。残念じゃ」
とうもろこしを齧りながらフランが頷く。
「そういえば、怪物が出るんでしたよね。何が出るんですか?」
「クラーケンだ。でかいイカの化け物だな」
「強いの?」
ノエルの興味津々な表情に俺は頷く。
「戦闘の場所が海だからな。それだけでもかなり厳しい」
「そっか、陸の戦いとは勝手が違うもんね」
ノエルの言葉にロワは頷く。
「それに物理攻撃にも強いですから矢もあまり効果的じゃないです。それに、もしも10本ある触手に捕まると……」
「捕まると?」
「……食べられちゃいますよー!」
「キャー!」
ロワが爪を立てるポーズでノエルを追い掛け回す。
「待て待てー!」
「アハハハハ!」
ロワとノエルは笑いながら俺たちの周りの走り回る。そんな二人にフランの雷が落ちる。
「これ!食事中に走り回るでない!」
「ご、ごめんなさい……」
「すみません、つい……」
一喝された二人はシュンとした様子で戻ってくる。自業自得だしこのまま話を続けるか。
「クラーケンの倒し方はいくつかあるが、一番スタンダードな方法は遠距離拘束法だ」
「なにそれ?」
「チェーンロックとかで拘束した後に弱点である雷魔法を浴びせ続ける方法だ。比較的安全だがA級冒険者並の実力者が最低でも50人は必要だからハードルも高い」
「つまり、安全だけど人を集めるのが難しいってこと?」
「その通りだ。本来であれば王都の騎士団に要請をするところだが、今は人員が足りないから最低でも半年は掛かるんだと」
「それは災難じゃな。これから書き入れ時じゃというのに」
そう言うとフランは後ろにある4階建ての大きな建物へ視線を移す。入り口には『HOTEL LANTUNA』と書いてあるその建物には本来であれば夜でも活気のある高級ホテルのはずだ。だが、今のホテルには明かりが灯っておらず人気もない。聞いたところによると、客が来ないから臨時休業しているらしい。
「本来であればあのホテルに泊まれた筈なんじゃがな。少し惜しい気がするのう」
「そういえば、ホウリはクラーケンがいることを知らなかったのか?情報に敏感な貴様なら知っていてもおかしくはないだろう?」
「勿論知ってた」
「……また騙したのか?」
口調は穏やかだが言葉の端々に怒りがにじんでいる。
「あー、弁解するとデマの可能性もあったから心配させないために言わなかった。それに海に入れなかった時のために色々と準備してただろ?楽しくなかったか?」
「……楽しくはあった」
「ならいいじゃねぇか」
釈然としない表情で網から肉を取るミエル。確かに話をしなかったのは悪かったな。
「まあ、言わなかった俺も悪かったよ。罪滅ぼしと言ってなんだが、明日までに海に入れる方法を探っておこう」
「何か策でもあるのか?」
「いくつかある。伝説の戦士がいなくても大丈夫だ」
「伝説の戦士?誰ですか?」
俺の言葉にロワが首を傾げる。そんなロワに俺は説明を始める。
「伝説の戦士とは数百年前のとある人物の話だ」
数百年前、とある海にクラーケンが数体現れた。1体であれば騎士団で討伐できるが数体となるとそうもいかない。騎士団もお手上げの状態だった。海産物も取れない中、海岸沿いに住んでいた住民は仕事もできずに困り果てていた。
そんな中、一人の人物が海岸に現れた。その人物は海産物が欲しいと住民に言った。住民がクラーケンがいるから漁が出来ない事を告げると、その人物は海に足を進めた。住人は必死になって止めたが、その人物は一言「心配ない」と告げるとそのまま海に潜っていった。
数十分後、その人物はクラーケンの残骸とともに陸へと上がってきた。人々は深く感謝し金品を差し出したが、その人物は「いらない」と言い受け取らずにそのまま立ち去った。
それからその人物は謙虚で強い『伝説の戦士』として人々の間、主に海岸沿いに住んでいる人たちによって語り継がれる事となった。
「これが伝説の戦士の逸話だ」
「騎士団の間でもその後の行方を追ったが、見つけることが出来なかったらしい。騎士団の中では一種のオカルトになっている」
「なるほど」
ロワが興味深そうに頷く。
「一人で数匹のクラーケンを倒すほどの強さですか。なんだかフランさんみたいですね」
「もしかして、フランお姉ちゃん本人だったりして」
「まさかー。はっはっは!」
みんなで笑いながら食事を楽しむ。そんな中、フランの様子を横目で見てみる。
「…………」
額から大粒の汗を流し、箸を持つ手が細かく震えている。まさか……。
「フラン、お前……」
「ち、違うんじゃ!趣味で身分を隠しての旅をしていたら海があって海産物を食べたさに向かった訳ではない!」
「フランさん……」
「違うのじゃ!クラーケンがいると聞いた時も久しぶりに本気が出せると喜んだ訳でも、思ったより弱かったからがっかりした訳でもない!」
「フランお姉ちゃん……」
「ち、違う!金品を渡された時も金なんて腐るほどあるから本音が出てしまった訳でも、海で獲った魚を早く食べたかったから早々に立ち去った訳でもない!」
「フラン……」
「違うんじゃ……、違うんじゃ……」
フランが顔を隠しながら弁解という名の墓穴を掘っていく。
なんだろう、知らない方が良かったと激しく後悔している。
「うう、まさかこんなに大事になるとは思わなかったんじゃ……」
「別に攻めてる訳じゃない。理由はどうであれフランのやったことは人を救ったんだ。それは誇る事だと思うぞ」
「そうですよ。フランさんがやった事は素晴らしいことですよ。むしろ、今回もフランさんに頼むのはどうでしょうか?」
「それは最終手段だな。もしもの時は頼めるかフラン?」
「しょうがないのう、やってやるわい」
フランは網に残った最後の肉を口に放り込んで笑う。そして、手元にあった紙の皿を袋に入れる。
「さて、そろそろバーベキューも終わりじゃな。生ごみはこの袋に、焼いた炭は──」
「なに勘違いしているんだ?」
「ひょ?」
「まだ俺たちのバーベキューはまだ終了してないぜ」
「なぁ~に言ってるんじゃ、もう食料は全部平らげたでないか」
「速攻魔法発動!竹筒!」
「たけづつ?」
「バーベキューコンロから網を取り除き効果発動!」
バーベキューコンロから網を取り除き、代わりに竹筒を乗せる。そして、ドロリとした生地が入ったボウルを取り出す。
「何をする気だ?」
「ヒント、この竹筒に生地を塗って焼くという事を繰り返すと?」
「はい!バームクーヘンが出来る!」
「正解!」
竹筒に生地を塗り竹筒を回しながら焼く。生地が焼けたら更に生地を塗り焼く。これを繰り返していくことで美味しいバームクーヘンが出来る。
「それじゃ、竹を回す役をやりたい人!」
「「はい!」」
「回す役はロワとノエルだな。私は生地を塗る役をやろう」
「付け過ぎるでないぞ?」
「分かっている……あ」
「ミエルさん、付け過ぎです」
「大丈夫だ、少しこそぎ落とせば……」
「よし、今です」
「ノエル、少し回す速度が速いんじゃないか?」
「こうかな?」
「よし、ここでもう一度生地を……申し訳ない」
「また付け過ぎやがった!」
こうして俺たちのバーベキューは夜中まで続いた。
☆ ☆ ☆ ☆
「……誰だ?」
「わしじゃよ」
「フランか。どうした?」
「それはこっちのセリフじゃ。夜中に1人で出て行ったら心配にもなろう」
「いつものことじゃねぇか」
「街と人気のない海辺を一緒にするでない。それで、双眼鏡で海を見て何をしておるんじゃ?」
「クラーケンの観察をな。明日海に入るために色々と情報が必要だからな」
「こんな夜中にか?月明かりがあるとはいえ見え辛くないか?」
「慣れているから問題ない。それよりも他の3人はどうした?」
「全員ぐっすり寝ておる。勝負やバーベキューで疲れたらしい」
「フランは眠くないのか?」
「わしは仕事柄、徹夜には慣れておるからな」
「朝には弱いけどな」
「余計なことを言うでない」
「…………」
「…………」
(ザザー、ザザー)
「夜の海も綺麗じゃな」
「そうだな、幻想的な雰囲気が良い」
「…………」
「…………」
(ザザー、ザザー)
「で、なにか言いたいがあるんだろ?」
「何のことじゃ?」
「顔を見たらわかる。大抵の事なら答えてやるから言ってみろ」
「……いやな、お主は前の世界の事を言いたがらないじゃろ?じゃから人気がない今聞いてみたいと思ってな」
「親父との旅の後の話でいいなら話すぞ」
「それでよい」
「旅の後、俺は高校に入った」
「む?小学校と中学校はどうした?旅に出ておったんじゃろ?」
「親父がなんやかんやしたから大丈夫だった」
「いつも思うんだがお主の父親は何者なんじゃ?」
「こっちが聞きたい」
「それにしても高校に通っておるのか。クラスメイトはそんな奴がおるんじゃ?」
「天才発明家に超能力者、宇宙人や他国のスパイもいる。そいつらをまとめるのが俺の役目だ」
「お、思った以上にキャラが濃いのう」
「この中に魔王がいたとしても違和感ない位には濃いな」
「それにしても、お主は旅が終わった後でも苦労しているんじゃな」
「旅している時よりはマシだけどな」
「今回の旅はどうじゃ?」
「そこそこだな。状況的にはキツイがなんとかなりそうだしな」
「そんなものか。ちなみに、あの3人の事はどう思っておる?」
「ロワはポテンシャルは高いが精神面がな。逆境だと強いんだが優位に立つと調子に乗る癖を直せば良いと思う」
「そこは成長しておらんからな」
「今まで矢が中らない逆境の中で頑張ってきたからな」
「そう考えたら無理もないか」
「割と致命的だけどな。勝負でも油断で負けたし」
「今後の課題じゃな」
「ミエルは戦闘能力も頭も良い。俺がいない時にはミエルに指示を出して貰うだろうな」
「流石、元騎士団じゃな。強くて頭もよい、弱点があるとすれば……」
「料理だな」
「料理じゃな」
「家事に関しては少しずつ覚えていけば良い」
「いつになればマシになるじゃろうな」
「ノエルは能力が強いがステータスが低い。それに純粋すぎて人を疑うことを知らない」
「確かに危険じゃな。ノエルの能力は悪用しようと思えばいくらでも悪用できるからのう」
「あの、純粋さは長所でもあるが短所でもある。思いやりがあっていい子なんだがな」
「わしらがいつまでも守る訳にもいかんしな」
「だからこそノエルには色んな意味で強くなって貰わないとな」
「そうじゃな。で、わしはどうなんじゃ?」
「最強脳筋魔王」
「なんでじゃ!?もう少し何かあるじゃろ!?」
「一番はそれなんだよ。お前はもう少し頭を使え。なんでも力で解決しようとするな」
「なんかのう、面倒なんじゃよ。何事も暴力で解決するのが一番じゃろ?」
「時と場合による」
「具体的には?」
「試し切りで施設を破壊するのはダメだ」
「その節はすまんかった」
「使い方さえ弁えてくれればいい。その力で助けられているところもあるしな」
「……善処しよう」
「まあ、全員に助けられてるし、こう見えても感謝してるんだぜ?」
「そういうことは口にせい」
「ノエルの事が終わった後にな。ところで、お前はどうなんだ?」
「わし?」
「ああ、お前の話もあまり聞けなかっただろ?お前は他のメンバーをどう思ってるんだ?」
「大まかな内容はお主と同じじゃ。ロワはもう少ししっかりして欲しいと思っとるし、ミエルは女子同士として色々と話やすいし、ノエルは……」
「ノエルは?」
「……可愛すぎる」
「気持ちはわかるが少し押さえろ。またノエルに嫌われるぞ?」
「それは嫌じゃな」
「なら押さえろ」
「…………」
「今の間はなんだ」
「後ろ向きに善処しよう」
「振り返るな前を向け」
「…………」
「…………」
(ザザー、ザザー)
「……もう一つよいか?」
「なんだ?」
「わしを倒す準備は出来ているのか?」
「進行度は15%位だな。ノエルの事が厄介で準備が進んでいない」
「済まぬ、わしのわがままのせいじゃな」
「ノエルを助けるのは俺の意志でもある。気にするな」
「……今わしを殺せるとしてお主はわしを殺す気があるか?」
「今はない」
「なんじゃと?」
「そう怖い顔するなよ、別に情が湧いた訳じゃねぇよ」
「ではなぜじゃ?」
「単純にあのゴミ虫が信用出来ないだけだ。あいつが黒幕だった場合は、お前を殺した瞬間に世界が終わる可能性がある。あいつが味方だと確信が持てるまでは準備だけ進めておく」
「みっちゃんか、いい加減信用してもよいのではないか?」
「あいつが隠していることを全部こっちに伝えたら考えてやる」
「……では、元の世界に戻るにはわしを殺すしかないとしたら?」
「そのときは殺す。情が湧いて殺せない事は無いから安心しろ」
「ならば良い」
「…………」
「…………」
(ザザー、ザザー、ザザー、ザザー)
「わしはそろそろ行く。お主はどうする?」
「俺はここでクラーケンを見張っておく」
「わしもいたほうが良いか?」
「お前はクラーケン討伐の鍵だ。少しでも寝てろ」
「そういう事なら失礼する。……ホウリ」
「なんだ?」
「これからもよろしくな」
「ああ、よろしく頼む」
クラーケンとは大型の魔物である。普段はビーチなどの浅瀬に近づくことはないが、稀に浅瀬に出没することがある。海での機敏な行動と、10本の触手から繰り出される攻撃はとても強力。討伐方法としてはスキルで動きを止めて弱点である雷魔法でダメージを与え続ける方法が一般的である。しかしながら、討伐に必要な人数が多いため、2年後に討伐隊が来ることもある。─────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
日が水平線に沈み、もうすぐ夜が来ることを告げている。
二回戦まで終えた俺たちは浜辺でバーベキューを楽しんでいた。
「んー、おいしー!」
焼きたての肉を頬張りながらノエルが微笑む。そんなノエルの皿に横から野菜が追加される。
「これ、野菜も食べんか」
「……はーい」
フランに注意されノエルは嫌さそうにしながらも野菜を口の中に入れる。
「うえぇ、美味しくない……」
「よしよし、ちゃんと野菜も食べられて偉いな」
渋い顔のノエルの頭をなでるフラン。この様子を見るに無事に仲直り出来たみたいだな。
ロワは網の上でこんがり焼けたおにぎりを取り齧りつく。
「うーん、この焼きおにぎりも美味しいです」
「だろ?俺の特製タレと高級味噌を使った焼きおにぎりだからな。沢山あるからもっと食ってくれ」
「うめ……うめ……」
両手に焼きおにぎりを持って頬張っているロワを見て思わず笑みがこぼれる。それと対照的にミエルの顔はあまり優れていない。食べてはいるみたいだから食欲はあるとは思うんだが……。
「どうしたミエル。口に合わなかったか?」
「いや、そんなことは無い。とてもおいしくいただいているが……」
ミエルは夕日が沈んでいく海を見ながら寂しそうな表情をする。
「海の幸が食べられなかったのが少し残念でな」
「確かに。わしもケエワイビーチに行くと聞いて楽しみにしておったのじゃがな。残念じゃ」
とうもろこしを齧りながらフランが頷く。
「そういえば、怪物が出るんでしたよね。何が出るんですか?」
「クラーケンだ。でかいイカの化け物だな」
「強いの?」
ノエルの興味津々な表情に俺は頷く。
「戦闘の場所が海だからな。それだけでもかなり厳しい」
「そっか、陸の戦いとは勝手が違うもんね」
ノエルの言葉にロワは頷く。
「それに物理攻撃にも強いですから矢もあまり効果的じゃないです。それに、もしも10本ある触手に捕まると……」
「捕まると?」
「……食べられちゃいますよー!」
「キャー!」
ロワが爪を立てるポーズでノエルを追い掛け回す。
「待て待てー!」
「アハハハハ!」
ロワとノエルは笑いながら俺たちの周りの走り回る。そんな二人にフランの雷が落ちる。
「これ!食事中に走り回るでない!」
「ご、ごめんなさい……」
「すみません、つい……」
一喝された二人はシュンとした様子で戻ってくる。自業自得だしこのまま話を続けるか。
「クラーケンの倒し方はいくつかあるが、一番スタンダードな方法は遠距離拘束法だ」
「なにそれ?」
「チェーンロックとかで拘束した後に弱点である雷魔法を浴びせ続ける方法だ。比較的安全だがA級冒険者並の実力者が最低でも50人は必要だからハードルも高い」
「つまり、安全だけど人を集めるのが難しいってこと?」
「その通りだ。本来であれば王都の騎士団に要請をするところだが、今は人員が足りないから最低でも半年は掛かるんだと」
「それは災難じゃな。これから書き入れ時じゃというのに」
そう言うとフランは後ろにある4階建ての大きな建物へ視線を移す。入り口には『HOTEL LANTUNA』と書いてあるその建物には本来であれば夜でも活気のある高級ホテルのはずだ。だが、今のホテルには明かりが灯っておらず人気もない。聞いたところによると、客が来ないから臨時休業しているらしい。
「本来であればあのホテルに泊まれた筈なんじゃがな。少し惜しい気がするのう」
「そういえば、ホウリはクラーケンがいることを知らなかったのか?情報に敏感な貴様なら知っていてもおかしくはないだろう?」
「勿論知ってた」
「……また騙したのか?」
口調は穏やかだが言葉の端々に怒りがにじんでいる。
「あー、弁解するとデマの可能性もあったから心配させないために言わなかった。それに海に入れなかった時のために色々と準備してただろ?楽しくなかったか?」
「……楽しくはあった」
「ならいいじゃねぇか」
釈然としない表情で網から肉を取るミエル。確かに話をしなかったのは悪かったな。
「まあ、言わなかった俺も悪かったよ。罪滅ぼしと言ってなんだが、明日までに海に入れる方法を探っておこう」
「何か策でもあるのか?」
「いくつかある。伝説の戦士がいなくても大丈夫だ」
「伝説の戦士?誰ですか?」
俺の言葉にロワが首を傾げる。そんなロワに俺は説明を始める。
「伝説の戦士とは数百年前のとある人物の話だ」
数百年前、とある海にクラーケンが数体現れた。1体であれば騎士団で討伐できるが数体となるとそうもいかない。騎士団もお手上げの状態だった。海産物も取れない中、海岸沿いに住んでいた住民は仕事もできずに困り果てていた。
そんな中、一人の人物が海岸に現れた。その人物は海産物が欲しいと住民に言った。住民がクラーケンがいるから漁が出来ない事を告げると、その人物は海に足を進めた。住人は必死になって止めたが、その人物は一言「心配ない」と告げるとそのまま海に潜っていった。
数十分後、その人物はクラーケンの残骸とともに陸へと上がってきた。人々は深く感謝し金品を差し出したが、その人物は「いらない」と言い受け取らずにそのまま立ち去った。
それからその人物は謙虚で強い『伝説の戦士』として人々の間、主に海岸沿いに住んでいる人たちによって語り継がれる事となった。
「これが伝説の戦士の逸話だ」
「騎士団の間でもその後の行方を追ったが、見つけることが出来なかったらしい。騎士団の中では一種のオカルトになっている」
「なるほど」
ロワが興味深そうに頷く。
「一人で数匹のクラーケンを倒すほどの強さですか。なんだかフランさんみたいですね」
「もしかして、フランお姉ちゃん本人だったりして」
「まさかー。はっはっは!」
みんなで笑いながら食事を楽しむ。そんな中、フランの様子を横目で見てみる。
「…………」
額から大粒の汗を流し、箸を持つ手が細かく震えている。まさか……。
「フラン、お前……」
「ち、違うんじゃ!趣味で身分を隠しての旅をしていたら海があって海産物を食べたさに向かった訳ではない!」
「フランさん……」
「違うのじゃ!クラーケンがいると聞いた時も久しぶりに本気が出せると喜んだ訳でも、思ったより弱かったからがっかりした訳でもない!」
「フランお姉ちゃん……」
「ち、違う!金品を渡された時も金なんて腐るほどあるから本音が出てしまった訳でも、海で獲った魚を早く食べたかったから早々に立ち去った訳でもない!」
「フラン……」
「違うんじゃ……、違うんじゃ……」
フランが顔を隠しながら弁解という名の墓穴を掘っていく。
なんだろう、知らない方が良かったと激しく後悔している。
「うう、まさかこんなに大事になるとは思わなかったんじゃ……」
「別に攻めてる訳じゃない。理由はどうであれフランのやったことは人を救ったんだ。それは誇る事だと思うぞ」
「そうですよ。フランさんがやった事は素晴らしいことですよ。むしろ、今回もフランさんに頼むのはどうでしょうか?」
「それは最終手段だな。もしもの時は頼めるかフラン?」
「しょうがないのう、やってやるわい」
フランは網に残った最後の肉を口に放り込んで笑う。そして、手元にあった紙の皿を袋に入れる。
「さて、そろそろバーベキューも終わりじゃな。生ごみはこの袋に、焼いた炭は──」
「なに勘違いしているんだ?」
「ひょ?」
「まだ俺たちのバーベキューはまだ終了してないぜ」
「なぁ~に言ってるんじゃ、もう食料は全部平らげたでないか」
「速攻魔法発動!竹筒!」
「たけづつ?」
「バーベキューコンロから網を取り除き効果発動!」
バーベキューコンロから網を取り除き、代わりに竹筒を乗せる。そして、ドロリとした生地が入ったボウルを取り出す。
「何をする気だ?」
「ヒント、この竹筒に生地を塗って焼くという事を繰り返すと?」
「はい!バームクーヘンが出来る!」
「正解!」
竹筒に生地を塗り竹筒を回しながら焼く。生地が焼けたら更に生地を塗り焼く。これを繰り返していくことで美味しいバームクーヘンが出来る。
「それじゃ、竹を回す役をやりたい人!」
「「はい!」」
「回す役はロワとノエルだな。私は生地を塗る役をやろう」
「付け過ぎるでないぞ?」
「分かっている……あ」
「ミエルさん、付け過ぎです」
「大丈夫だ、少しこそぎ落とせば……」
「よし、今です」
「ノエル、少し回す速度が速いんじゃないか?」
「こうかな?」
「よし、ここでもう一度生地を……申し訳ない」
「また付け過ぎやがった!」
こうして俺たちのバーベキューは夜中まで続いた。
☆ ☆ ☆ ☆
「……誰だ?」
「わしじゃよ」
「フランか。どうした?」
「それはこっちのセリフじゃ。夜中に1人で出て行ったら心配にもなろう」
「いつものことじゃねぇか」
「街と人気のない海辺を一緒にするでない。それで、双眼鏡で海を見て何をしておるんじゃ?」
「クラーケンの観察をな。明日海に入るために色々と情報が必要だからな」
「こんな夜中にか?月明かりがあるとはいえ見え辛くないか?」
「慣れているから問題ない。それよりも他の3人はどうした?」
「全員ぐっすり寝ておる。勝負やバーベキューで疲れたらしい」
「フランは眠くないのか?」
「わしは仕事柄、徹夜には慣れておるからな」
「朝には弱いけどな」
「余計なことを言うでない」
「…………」
「…………」
(ザザー、ザザー)
「夜の海も綺麗じゃな」
「そうだな、幻想的な雰囲気が良い」
「…………」
「…………」
(ザザー、ザザー)
「で、なにか言いたいがあるんだろ?」
「何のことじゃ?」
「顔を見たらわかる。大抵の事なら答えてやるから言ってみろ」
「……いやな、お主は前の世界の事を言いたがらないじゃろ?じゃから人気がない今聞いてみたいと思ってな」
「親父との旅の後の話でいいなら話すぞ」
「それでよい」
「旅の後、俺は高校に入った」
「む?小学校と中学校はどうした?旅に出ておったんじゃろ?」
「親父がなんやかんやしたから大丈夫だった」
「いつも思うんだがお主の父親は何者なんじゃ?」
「こっちが聞きたい」
「それにしても高校に通っておるのか。クラスメイトはそんな奴がおるんじゃ?」
「天才発明家に超能力者、宇宙人や他国のスパイもいる。そいつらをまとめるのが俺の役目だ」
「お、思った以上にキャラが濃いのう」
「この中に魔王がいたとしても違和感ない位には濃いな」
「それにしても、お主は旅が終わった後でも苦労しているんじゃな」
「旅している時よりはマシだけどな」
「今回の旅はどうじゃ?」
「そこそこだな。状況的にはキツイがなんとかなりそうだしな」
「そんなものか。ちなみに、あの3人の事はどう思っておる?」
「ロワはポテンシャルは高いが精神面がな。逆境だと強いんだが優位に立つと調子に乗る癖を直せば良いと思う」
「そこは成長しておらんからな」
「今まで矢が中らない逆境の中で頑張ってきたからな」
「そう考えたら無理もないか」
「割と致命的だけどな。勝負でも油断で負けたし」
「今後の課題じゃな」
「ミエルは戦闘能力も頭も良い。俺がいない時にはミエルに指示を出して貰うだろうな」
「流石、元騎士団じゃな。強くて頭もよい、弱点があるとすれば……」
「料理だな」
「料理じゃな」
「家事に関しては少しずつ覚えていけば良い」
「いつになればマシになるじゃろうな」
「ノエルは能力が強いがステータスが低い。それに純粋すぎて人を疑うことを知らない」
「確かに危険じゃな。ノエルの能力は悪用しようと思えばいくらでも悪用できるからのう」
「あの、純粋さは長所でもあるが短所でもある。思いやりがあっていい子なんだがな」
「わしらがいつまでも守る訳にもいかんしな」
「だからこそノエルには色んな意味で強くなって貰わないとな」
「そうじゃな。で、わしはどうなんじゃ?」
「最強脳筋魔王」
「なんでじゃ!?もう少し何かあるじゃろ!?」
「一番はそれなんだよ。お前はもう少し頭を使え。なんでも力で解決しようとするな」
「なんかのう、面倒なんじゃよ。何事も暴力で解決するのが一番じゃろ?」
「時と場合による」
「具体的には?」
「試し切りで施設を破壊するのはダメだ」
「その節はすまんかった」
「使い方さえ弁えてくれればいい。その力で助けられているところもあるしな」
「……善処しよう」
「まあ、全員に助けられてるし、こう見えても感謝してるんだぜ?」
「そういうことは口にせい」
「ノエルの事が終わった後にな。ところで、お前はどうなんだ?」
「わし?」
「ああ、お前の話もあまり聞けなかっただろ?お前は他のメンバーをどう思ってるんだ?」
「大まかな内容はお主と同じじゃ。ロワはもう少ししっかりして欲しいと思っとるし、ミエルは女子同士として色々と話やすいし、ノエルは……」
「ノエルは?」
「……可愛すぎる」
「気持ちはわかるが少し押さえろ。またノエルに嫌われるぞ?」
「それは嫌じゃな」
「なら押さえろ」
「…………」
「今の間はなんだ」
「後ろ向きに善処しよう」
「振り返るな前を向け」
「…………」
「…………」
(ザザー、ザザー)
「……もう一つよいか?」
「なんだ?」
「わしを倒す準備は出来ているのか?」
「進行度は15%位だな。ノエルの事が厄介で準備が進んでいない」
「済まぬ、わしのわがままのせいじゃな」
「ノエルを助けるのは俺の意志でもある。気にするな」
「……今わしを殺せるとしてお主はわしを殺す気があるか?」
「今はない」
「なんじゃと?」
「そう怖い顔するなよ、別に情が湧いた訳じゃねぇよ」
「ではなぜじゃ?」
「単純にあのゴミ虫が信用出来ないだけだ。あいつが黒幕だった場合は、お前を殺した瞬間に世界が終わる可能性がある。あいつが味方だと確信が持てるまでは準備だけ進めておく」
「みっちゃんか、いい加減信用してもよいのではないか?」
「あいつが隠していることを全部こっちに伝えたら考えてやる」
「……では、元の世界に戻るにはわしを殺すしかないとしたら?」
「そのときは殺す。情が湧いて殺せない事は無いから安心しろ」
「ならば良い」
「…………」
「…………」
(ザザー、ザザー、ザザー、ザザー)
「わしはそろそろ行く。お主はどうする?」
「俺はここでクラーケンを見張っておく」
「わしもいたほうが良いか?」
「お前はクラーケン討伐の鍵だ。少しでも寝てろ」
「そういう事なら失礼する。……ホウリ」
「なんだ?」
「これからもよろしくな」
「ああ、よろしく頼む」
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異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
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