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スターチスは突として

7-b.直感は?

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「アクアルータ様、一体どうされたのでしょうか。」
 私は手を離してくださいという気持ちでアクアルータ様にお願いをした。
 しかし、私のお願いはあっさりと却下された。
「ちょっと待ってください、アイラスさん。少し聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか。」
 聞きたいことですか? そういうことでしたら全然よろしいですが。
「アイラスさんはダンスがお上手だと聞きましたが、よければの練習相手になっていただけませんか。」
 アクアルータ様のダンスの練習相手!? そんな大役を私がしてもいいのでしょうか。そもそも、アクアルータ様だったらもっと素敵な練習相手がいらっしゃるのではないでしょうか。
 私が返事に困っているとそこに救世主が現れた。
「ごめんね。少し屋敷の中で迷子になってしまってね。何かいいことあったかな?」
 救世主様~! この空気を変えてくださりありがとうございます。
「えっと、エリック様。その何というかそろそろお時間ですので失礼してもよろしいでしょうか。」
 あらら、もうアクアルータ様変えられてしまうのですか。まだ先ほどのお返事できていないのですが。
 アクアルータ様は慌ててたように帰宅の準備を始めてしまった。まだお話ししたかったのだけれど。そういえばエーデル様はまだ帰ってこないのかしら。
 アクアルータ様は「それではエーデル様によろしくとお伝えください」と言ってアクアルータ様は席を離れてしまった。私の横を通り過ぎるとき「ま後日会いませんか。」とささやかれた。
 後日会いませんかって。そんなに素敵な声で言われてしまったら溶けてしまいそうですよ。
 また今度会えるんだ。
 そのあと、エーデル様がお戻りになり声を掛けてくださるまでぼーっとしてしまったのは秘密のお話。

 あー、やってしまった。アイラスさんの前ではかっこつけていたかったのだが。どうしても冷静さを失ってあんなことをやってしまった。
 あんなに恥ずかしいことをしておいて後日会いませんかだなんて。もう、やだ。
「シートル様やらかしたんですね。かわいそうに。」
 おい、かわいそうってなんだ。俺の一番の側近だからってそんなことを言うとは。
「とりあえずシートル様、嫌われたと思ったのならまだ間に合います。思ったのならですがね。」
 思ったら。それってどういうことだ。何度も何度もその言葉を繰り返すというには意味があるのだろう。
 きっとこの時の顔はとても険しいものだっただろう。すぐそこでまじまじと見つめてくる従者の顔が引きつっていたからな。
「せ、正解発表をしましょうか。目の前で嫌いと言われたのなら、もう立ち直れなくなるかもしれませんが、こちらが思っているだけなのでしたらまだ可能性はありますよ。」
 そういうことか。つまり思うということはネガティブにもポジティブにも変わるということか。
「もう、そういうことか。なかなかやるな。」
「何年貴方のお側にお仕えしていると思っているのですか。」
 そういえばそうだな。って、なんでお前が俺と一緒に馬車乗ってるんだよ。

 屋敷につくと、父様がエントランスをうろうろとしていたので声を掛けさせてもらった。
「父様、婚約者のことなんですが。」
「あぁ、お前もそんな時期だったな。いや、早いような気もするが。で、誰かいたのか。」
「はい、います。そのなんていうか、父様に助言をいただきたいのですが。」
 婚約は当事者の二人だけの問題ではない。当事者の親族、従事者、その他大勢の方が関わってくる大事な話だ。こういうことは詳しそうな方に聞くのが一番手っ取り早い。そこで、ちょうど目の前にいた父様に話を聞くことにした。
「参考になるかはわからないが。まぁ、結婚するまでは嫌われるな。それだけだ。」
 ちょっと、というか結構自信ないですが頑張ります! すべてアイラスさんとの結婚生活のためだ!

 残されたエーデル、エリック、アイラス達は...。
「えっと、どうしますかエリック様、アイラス。」
「そうですね、とりあえず私たちも解散にしますか。」
 この後のアイラスの言葉にわたしとエリック様はおもわず顔を見合わせてしまった。
「お二人は婚約されていらっしゃるのですか?」
 あ、あれ。婚約を公表していないのをたまに忘れそうになるな。最近婚約のことで色々ありすぎてエリック様との距離感おかしくなっていたかもしれない。
「その何というか。そうですね。」
「エーデル、私がお話しします。」
 すっとわたしの前に手を伸ばしてわたしの発言を止めながらエリック様は代わりに説明をしてくれた。
「あまり深くは言えませんが、私とエーデルは協力関係にありまして。だから婚約をしているかと言われると、そうでは。」
 エリック様の説明はとてもお上手だった。こちらの事情を深く話さず、否定をするというなんと素晴らしい技術。立ち上がって拍手をしたいくらいだった。
「そういうことなのですね。深くは聞きません。いつか本当のことをお話ししてくださいね。」
 アイラスは勘が鋭いのかどうなのか。

 馬車のところでお見送りをしようとしていたところアイラスに少し不思議なことを言われた。
「エーデル様、お早めに中に戻ったほうがよろしいと思います。雨が降りますので。」
 そうなのかな? 今のところ晴天という感じだけど。まぁそうだとしたら教えてもらえて助かった。
「あと、エーデル様! 私、婚約者のこと、今からしっかり考えていきますね。」
「えぇ。頑張って。何かあったら助けたいから言ってね。」
 アイラスはすこしだけ口角を上げて微笑んでくれた。うん。アイラスはかわいい!
 続いて、エリック様のところへ向かう。
 こうやってみると身長たっか。エーデルも身長高いけれどエリックは本当に高い。
「エリック様。わたし、絶対あの勝負負けませんからね。」
「エーデル、こちらこそ負けませんよ。」
 二人で軽くにらみ合う。なんだか最近距離が近くなったよなぁ。まぁいっか。
「それじゃ、また今度の勝負で。」
「はい、わたし楽しみにしてますから。」
 わたしたちはそのまま離れた。心のどこかにワクワクしたドキドキした気持ちを抱えて。
 二台の馬車がリバランス公爵邸から離れていく。ちょっとだけ切ない。
 さっきまでみんなと会えてとても楽しかったのに、もうみんな帰ってしまった。
 前世でもこんな気持ちあったような、なかったような。こんな気持ちを感じるのはどんな時代でも変わらないのね。不思議な感じ!
 そうだ、アイラスが言っていったとおりに早く家の中に入るとしましょうか。

 屋敷の壁に大粒の雨が打ち付けられ、強風によって先ほどから揺れが続いている。こんな天気がすごいことになっているのはめったにないことだよ。アイラスってすごい。やっぱり勘が鋭いのかな。
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