19 / 20
十九
しおりを挟む
駅を出てすぐそこに見える電話ボックスの前で退屈そうに突っ立っていた新島に声をかけると、彼女は無表情から一転して笑顔を浮かべて手を上げたが、直後に意味はないと思い直したのか彫刻のような冷たい顔に戻った。
平日正午の平和ボケした雑踏の隙間を縫って、どんどんと奥まった路地へと進んでいく。迷いなく先を歩く新島に大人しく着いていくと、彼女はひとけのない雑居ビル街の一画に入り、安っぽいチェーンで封鎖されたビルの階段を登って行った。後に続くと、埃の積もった地面には虫の死骸や空き瓶、空き缶などのゴミがそこかしこに見受けられ、歩くたびに何かを踏み潰したが、気にしていられなかった。
「世川くん、この状況でよく私の言うこと信じるね」
三階の踊り場に到達した時に、新島が振り向いて言った。
「嘘なの?」
「嘘じゃないけど、嘘だったらどうするの」
「そんなこと、考えてもみなかった」
世川が息を切らしながらそう返すと、新島の笑い声が反響した。
五階に到達すると、新島が「こっち」と言って細い廊下を進み、錆で赤茶けた鉄製のドアを開いた。カビ臭さと埃臭さと、それから鉄の匂いが鼻についた。内壁のコンクリートが剥き出しで、デスクや書類などのオフィス用品が乱雑に散らかっている部屋の隅っこに、黒髪の男が転がっていた。
ぐったりと、まるで重力に逆らう術がひとつもなくなったように地面に張り付いているから、世川は最初、それを死体か人形か何かかと思った。しかし、新島が「一ノ瀬くん」と声をかけると微かに首を動かし、目を開けたので、それが生きた人間だということがわかった。胸を上下させて呼吸をしていることがわかった。
そこで世川はやっと、身体が震えてきた。
「一ノ瀬」
「何でお前、いるの」
駆け寄ると、一ノ瀬は掠れた小さな声でそう言った。怪訝そうに瀬川を見上げる青白い顔に触れると、気味が悪いほどに冷たかった。地面についた膝が、生暖かいもので濡れた。触ると、指が赤く染まった。それは一ノ瀬の腹から流れ出した血の色だった。
「少し離れた所でその状態で見つけて、とりあえずここまで連れてきたの」
ドアの前に立ったままの新島が言う。
一見黒い服に紛れて分からなかったが、一ノ瀬は腹部を負傷している。刺されたのだ、と世川はすぐに理解した。愛美の話が脳裏をよぎる。
さっきまでは歩けたんだけどね、自力で。と新島が冷ややかな顔で一ノ瀬を一瞥し、世川に目を向ける。
「このまま死なれても困るし、病院に連れて行こうにも、色々面倒だし。面倒じゃない病院なんて、私知らないしさ」
「このくらいで、死んだりしねえよ」
真っ青な顔をした一ノ瀬が片方の口角を持ち上げて、弱々しく笑った。笑ったというよりはただ頬が引き攣っただけにも見えたが、笑おうとしたのだろうことはわかった。
「って言ってるけど、どうする? 世川くん。ここもあまり安全じゃないよ。彼を刺した奴が来ないとも限らない。迂闊に外を歩いたら、見つかるかもしれない」
「僕の家に連れていく」
「どうやって?」
「タクシーでも呼んで……」
「そんな血まみれの男乗せてくれないでしょう」
新島に否定され、世川は閉口する。考え無しに、ただ一ノ瀬に会いたいがために無策でやってきたのだ。その先のことなど考えもしていなかった。
「別に、大丈夫だよ、世川。少し休めば動けるようになる。お前はあのやかましい女を連れて、早く帰れよ」
「今、私と世川くんが現実的な話をしているから、死に損ないは黙ってて」
一ノ瀬の虚勢を、新島が無感情に撥ね退ける。それから彼女は一点を見つめて暫く黙り込み、
「しょうがない。なんとかして車を調達してくるから、少し待ってて」と言った。
「いいの?」
「それしかないでしょう、現状。そんなに時間もないし」
世川は頷いた。一ノ瀬は不満げな顔をしていたが、もはや反論する気力もないようで、黙って床に伏していた。
ものの三十分程で新島が年季の入った軽自動車に乗って戻ってきたため、一ノ瀬に肩を貸して二人で後部座席に乗り込む。座席にはブルーシートが引かれてあって、「あんまり汚さないでね」と運転席から新島の声が飛んできた。
それから、世川の家に着くまで、誰も声を発さなかった。
だが、車内は唸り声のようなエンジン音と一ノ瀬の苦しそうな呼吸音で満ちていて、今すぐにでも破裂しそうだった。
「どうしてここまでしてくれるの」
世川の家に着いて車を降りる直前、彼女に聞くと、
「こんな形で死んだら、世川くんは一生彼のことを好きでい続けちゃうでしょ」と無表情に答えた。
「これは貸しだよ、世川くん。ちゃんと返しにきてね」
「わかった」
世川は再び一ノ瀬に肩を貸し、ほとんど引っ張り出すようにしながら車を降りた。
鍵の開けっ放しだった家に上がり、自分の力だけではまともに立てもしない一ノ瀬の身体を、慎重にソファーに寝かせる。
「こんなの、あったっけか。新しく買ったのか」
彼は自分が寝かせられた中古のソファーを薄目に見ながら、そんなことを言った。この状況でもどうでもいいことに気がつく男は、さらに「お前、髪が少し伸びたね」と世川の髪を触る。
「良かった、生きてて」
世川が一ノ瀬の手を握ると、彼は薄く開いていた目を閉じて、腕をだらりと落とした。
「どうして、お前とその女が俺を探しにきたんだ。どうなってるんだ」
「一ノ瀬は、ずっと前に、新島さんに会っていたんだね」
「ああ、なんだ。もう聞いてたのか。だから言ったろ、女は怖いって」
一ノ瀬は言って笑ったが、その声は喉から空気が漏れているだけのように聞こえた。ソファーに赤い血が染み込み、それが少しずつ広がっているように見える。世川の中の不安も、その染みと同じように、じわりじわりと広がっていく。
「一ノ瀬、本当に病院に行かなくて大丈夫なの」
「大丈夫だって言ったろ」
「死んだりしないよね」
はっきりと否定してほしくて言うと、一ノ瀬は鼻で笑って、かったるそうに声を絞り出す。
「死んだとして、何だよ。無縁仏がこの世界に一つ増えるだけで、誰も困らない」
「僕が困る。言ったじゃないか、好きだって。死なれたら嫌だ。でも、生きているのに会えないのは、もっと嫌だった。だから探してたんじゃないか」
「お前……まだそんなことを言っていたのか」
一ノ瀬は弱々しく息を吐き、眉を寄せる。
「暫く会わなければ正気に戻ってそんな戯言も言わなくなると思ったが、お前は俺が思っているよりもずっと馬鹿なのかな」
「……何が? どういう意味だよ」
世川が思わず怒気を含んだ声で突っかかると、一ノ瀬は小馬鹿にしたように笑った。呆れたような嘲笑を向けられたことは何度もあるが、こんなに敵意を持った笑い方は、初めて見た。
「お前が俺のことを好きなんていうのはな、全て思い違いだよ。お前は自分を否定しない人間が珍しいから懐いただけなのに、それを好きだと錯覚したんだ。寂しさを紛らわせる奴なら、俺じゃなくとも誰でもいいはずなんだ。まだ自覚していないのか」
「何を根拠にそんなことを言ってるんだよ」
「お前の方こそ、何を根拠にそんなことを言ってるんだ?」
「僕は、本当に一ノ瀬が好きだよ。誰でも良かったなんてことは絶対にない」
「あるんだよ、お前みたいな奴ってな、沢山いる。寂しいから、その穴を埋めてくれさえずれば、誰だっていい。否定なんて一切せずに優しくしてやれば、簡単に好意だと勘違いをする。俺にとっては都合がいいけどな。それでも、大抵の奴は少ししたら正気に戻るよ。俺以外に、構ってくれるまともな奴が見つかるからだ。お前みたいにな」
一ノ瀬がこんなにも自分の考えを喋る人間だなんて、知らなかった。世川は、彼の色の悪い唇が動くのを、ただ眺める。その光景は、現実味が薄くて、まるで夢の中の映像のようだ。
「お前もあの女を見つけて、正気に戻ったんじゃなかったのか」
「違う、僕は、そうじゃない。彼女は、新島さんとは、違ったんだ」
どうすれば一ノ瀬に、自分の心を丸々見せてやれるだろうか。お前のことを考えなかった日はないと、証明してやれるだろうか。世川は考えたが、そんな方法は当然見つからない。
世川が言葉を探して沈黙していると、一ノ瀬は
「お前、もうヤった? あの女と」と言い出した。世川は答えたくはなかったが、一ノ瀬が真っ直ぐにこちらを見ていたため、渋々認めた。
「だったら、満足しただろ。そっち側をやって、もう寂しくなくなったんじゃないか? お前は、だって、ずっとそれを求めていたものな」
「求めていたって、何を。何の話をしているんだ」
一ノ瀬の言葉の真意が掴めずに聞き返すと、彼は脂汗の滲んだ頬を緩めて、歪な微笑を浮かべた。
「当ててやろうか? お前が、血を溜めて花に撒くなんてことを繰り返していた理由。あれは、生殖行為の真似事だったんだろう」
一ノ瀬の声が、さっきよりも大きく聞こえる。こめかみから汗が流れ落ちるのがわかった。自分が唾液を飲み込む音が大袈裟に部屋に響いた気がした。
「お前、誰にも相手にされなくて、寂しくて、頭がおかしくなったんだ。だから、自分の体液で綺麗なもんを汚して、喜んでたんだろう。それがお前の自慰行為だったんだろ。違うか?」
一ノ瀬は荒い呼吸をしつつ、喘ぐように笑った。頬にも額にも、汗で濡れた髪が張り付いている。
「でも、もうそんなことする必要がないもんな。ちゃんとセックスの相手が見つかったんだから。もう、あんな擬似的な射精行為をしなくたって、満たされるはずだ。男に犯されて、自傷的に寂しさを埋める必要ももう、ないはずだ」
だからもう、馬鹿なこと言ってないで、大人しくあの女とよろしくやってろよ。
一ノ瀬はそう言って、ぜえぜえと苦しそうに息をする。世川は、その顔を見下ろしながら、急速に脳が、視覚が、聴覚が、鮮明になっていくのを感じていた。
そうだったのだろうか。一ノ瀬が言うように、あれは、あの悪癖自体が、性行為の代用だったのだろうか。そうだとしたら、
「満たされていない。僕は少しも満たされてないよ。どうしてかわかる?」
世川の声が震えた。それは憤慨したからでも恐ろしいからでもなかった。
「その相手が一ノ瀬じゃなかったからだ」
一ノ瀬が、不思議そうな顔で世川を見上げる。世川は身体が喜びで震えるのを必死に抑えて、一ノ瀬の肩を掴んだ。
「ありがとう、教えてくれて。ずっと疑問だったんだ。僕はどうしてあんな気味の悪いことをするのか。やめられないのか」
言って、世川は一ノ瀬の身体とソファの隙間に膝をつき、脱力していた彼を組み敷いた。弛緩しきっていた彼の身体が、緊張で強張るのが伝わる。
「何してるんだよ、お前。どけ」
「一ノ瀬は、どうして僕が寂しいってわかったの。初めて会った時から、僕が他人を求めていることが、どうしてわかったんだ」
「何が言いたい」
「一ノ瀬も同じだったからなんじゃないの。一ノ瀬も、寂しかったから、同じだと思ったんじゃないか」
「都合の良い解釈はやめろよ。そんなこと、思ったことあるわけないだろ」
「一ノ瀬もさ、怖かったんだろ。不安だったんだ、一人になることが」
一ノ瀬の目が見開かれる。その黒い瞳には高揚した世川の顔が映っていて、
「君こそ、一人っきりじゃ生きていけないものな」と、嬉しそうに言う。
■
寂しがっている人間につけ入るのは、笑えるほどに簡単だ。一ノ瀬は、ずっとそうやって弱っている人間を見つけては餌をやり、対価を得て生きてきた。
優しくするのは、きっと厳しくするのよりもずっと楽で、責任も後腐れもない。厳しくしたことなんて一度もないから比較のしようがなかったが、なんとなく、想像はついた。そしてそんな面倒で手間のかかることは、一生したくないと思っていた。
一ノ瀬には、意見も自我も必要がなかった。ただ全てを受け入れて、肯定して、欲しがっているだろう言葉を返す。その場限りの優しさを欲し、都合の良い人間もどきを側に置きたがる輩は、次から次へと湧いてきた。
一ノ瀬はちゃんと、その全員を人間として好いていたから、大切に扱った。優しく、丁寧にもてなした。そうすると、大抵の相手は、同じように一ノ瀬のことも大切にしようと努めた。中には例外もいて、酷い目にも遭わされたが、それはそれで構わないと思っていた。
だが、一ノ瀬がそうして手なずけた者たちも、やがて優しいだけでは満たされないと気づき始める。人間としての摩擦が生まれない関係は、ただのごっこ遊びでしかない。一ノ瀬とは人間関係を築けないと悟り、殆どの者は相手となる真っ当な人間を探し出して、一ノ瀬の元から離れていくのだ。
そうなった者たちを、一ノ瀬は沢山見送ってきた。一ノ瀬はそうやってごっこ遊びから抜け出していく彼らを、祝福した。自分という通過点を超え、正規の相手を見つけ出した彼らを、正しいと思っていたからだ。
時々、満たされない理由を一ノ瀬のせいにして溺れていき、一ノ瀬共々沈もうとする者もいたが、そういう奴に引き摺り下ろされるのなら、それでもいいと思っていた。しかし、やはり、誰も一ノ瀬を終わらせてはくれなかった。始まってもいない命を、自分の手を汚してまで完璧に終わらせようとする者はいない。そこまでの価値もないのだと、誰もが気づいてしまう。
だから、一ノ瀬は、世川もその中の一人だと思っていた。寂しいと泣いていて、普通を渇望し、必死に世間に溶け込もうとする気弱な青年。一ノ瀬は彼を、ぼんやりと応援していた。彼の欲しいものがいつか手に入るといいと、他人事にだが思っていたのだ。いつしか、バイトが順調だの、学校生活が楽しいだのと言い出した彼に対して、一ノ瀬は本心から安心していた。彼女ができたと聞いた時は、やっとあの悪癖もやめられるのだろうなと思い、喜ばしくもあった。
きっと世川も、今まで見送ってきた中の一人となり、やがて彼に関する記憶も薄れていくのだろうと思っていた。
なのに、だ。その見送ったはずの男が、今、自分を組み敷いている。獰猛な肉食獣のように目を光らせて、一ノ瀬を食い散らかそうと、機を伺っているのだ。
「大丈夫だよ、一ノ瀬。一人にしないから」
優しい声で言いながら、世川は手負いの一ノ瀬の肩を強い力で掴み、抵抗を封じた。それは今まで一ノ瀬の中に存在した世川のイメージを破壊するに足る行為だった。
一ノ瀬は、自身に覆い被さる男を押し返そうと、感覚の鈍い腕を伸ばす。
「おい、やめろって言ってるだろ。離せよ」
「最初に手を出したのはそっちだ」
「冗談はよせ」
「冗談なんかじゃない」
世川が静かに言って、そうだろうなと一ノ瀬は思った。本気なのだ、こいつは。
一ノ瀬は必死になって、華奢な世川の身体を突き飛ばすか殴りつけでもしようとしたが、伸ばした手は簡単に彼に抑え込まれた。抵抗のしようがないのだと自覚し、一ノ瀬は「嫌だ」と呟いた。
「やめてくれ」
「どうして、他の奴には許してるくせに」
「嫌だ、お前には、嫌だ」
「それは、僕を見下していたから?」
世川は躊躇いもなくそう言った。
「ちげえよ」
一ノ瀬は、苛立ちを覚えた。だが、世川はきっと、卑下しているわけでもないのだ。痛みと混乱とでぼうっとする頭で思うことを、一ノ瀬は隠すことをやめて垂れ流す。
「見下してなんかいない。俺が見下せる奴なんて、この世に一人だっていない。わかるか、お前はいつも普通になりたいって言ってたけど、俺からしたら、お前だって最初から、じゅうぶん普通だったよ」
俺とは違う。お前はちゃんと、人間だよ。
言いながら、耳鳴りが聞こえてきた。頭が重たくなってくる。
■
「大丈夫だよ」
世川は、まるで自分は人間ではないと言わんばかりの一ノ瀬に、そう声をかけた。
可哀想だと思った。早く安心させてやりたいと思い、血のついたジーンズ生地に触れる。ウエストがゆるくて、指が簡単に差し込めた。ボタンを外し、ジーンズも下着も一緒くたに、無我夢中でずり下ろす。一ノ瀬はその間、大人しくソファに沈んでいた。
新島の時とは、全く逆だな、と思った。
汗で湿った、冷え切った肌に触れる。一ノ瀬の喉から悲鳴のような息が漏れた。
鼓動がうるさい。今までまともに使ったこともなかった自身の性の象徴が、酷い痛みを覚えるほどに屹立していた。それを、抵抗する力を失いつつも強張ったままの一ノ瀬の身体に、無理矢理に捩じ込んだ。
一ノ瀬は呻き声を上げた。肉体的な快楽などほとんど感じられなかった。きつくて、苦しくて、痛みすら覚えた。しかし、世川は脳が焼き切れるのではないかと恐れるほどの享楽を感じていた。
歯を食いしばり肩で息をする一ノ瀬の顔に触れる。汗と埃に塗れた肌を撫でて、「大丈夫だよ」と言うと、彼は怒りと怯えと屈辱とを混ぜ合わせたような視線で世川を睨んだ。世川は喜びに胸を震わせつつ、彼に笑いかけて言う。
「一ノ瀬の中身、ちゃんと、新島さんみたいな普通の人と、同じだよ。一ノ瀬も、だから、ちゃんと人間だね」
一ノ瀬は、目を見開いた。それから急に全身の力を抜き、微々たる反抗すらも諦めたように手足を投げ出して、「お前、最低な奴だな」と呟く。
「お前みたいな奴に、出会いたくなかった」
「一ノ瀬がそう思うのは、僕だけ?」
一ノ瀬が頷くと、世川は満足そうに笑った。
続
平日正午の平和ボケした雑踏の隙間を縫って、どんどんと奥まった路地へと進んでいく。迷いなく先を歩く新島に大人しく着いていくと、彼女はひとけのない雑居ビル街の一画に入り、安っぽいチェーンで封鎖されたビルの階段を登って行った。後に続くと、埃の積もった地面には虫の死骸や空き瓶、空き缶などのゴミがそこかしこに見受けられ、歩くたびに何かを踏み潰したが、気にしていられなかった。
「世川くん、この状況でよく私の言うこと信じるね」
三階の踊り場に到達した時に、新島が振り向いて言った。
「嘘なの?」
「嘘じゃないけど、嘘だったらどうするの」
「そんなこと、考えてもみなかった」
世川が息を切らしながらそう返すと、新島の笑い声が反響した。
五階に到達すると、新島が「こっち」と言って細い廊下を進み、錆で赤茶けた鉄製のドアを開いた。カビ臭さと埃臭さと、それから鉄の匂いが鼻についた。内壁のコンクリートが剥き出しで、デスクや書類などのオフィス用品が乱雑に散らかっている部屋の隅っこに、黒髪の男が転がっていた。
ぐったりと、まるで重力に逆らう術がひとつもなくなったように地面に張り付いているから、世川は最初、それを死体か人形か何かかと思った。しかし、新島が「一ノ瀬くん」と声をかけると微かに首を動かし、目を開けたので、それが生きた人間だということがわかった。胸を上下させて呼吸をしていることがわかった。
そこで世川はやっと、身体が震えてきた。
「一ノ瀬」
「何でお前、いるの」
駆け寄ると、一ノ瀬は掠れた小さな声でそう言った。怪訝そうに瀬川を見上げる青白い顔に触れると、気味が悪いほどに冷たかった。地面についた膝が、生暖かいもので濡れた。触ると、指が赤く染まった。それは一ノ瀬の腹から流れ出した血の色だった。
「少し離れた所でその状態で見つけて、とりあえずここまで連れてきたの」
ドアの前に立ったままの新島が言う。
一見黒い服に紛れて分からなかったが、一ノ瀬は腹部を負傷している。刺されたのだ、と世川はすぐに理解した。愛美の話が脳裏をよぎる。
さっきまでは歩けたんだけどね、自力で。と新島が冷ややかな顔で一ノ瀬を一瞥し、世川に目を向ける。
「このまま死なれても困るし、病院に連れて行こうにも、色々面倒だし。面倒じゃない病院なんて、私知らないしさ」
「このくらいで、死んだりしねえよ」
真っ青な顔をした一ノ瀬が片方の口角を持ち上げて、弱々しく笑った。笑ったというよりはただ頬が引き攣っただけにも見えたが、笑おうとしたのだろうことはわかった。
「って言ってるけど、どうする? 世川くん。ここもあまり安全じゃないよ。彼を刺した奴が来ないとも限らない。迂闊に外を歩いたら、見つかるかもしれない」
「僕の家に連れていく」
「どうやって?」
「タクシーでも呼んで……」
「そんな血まみれの男乗せてくれないでしょう」
新島に否定され、世川は閉口する。考え無しに、ただ一ノ瀬に会いたいがために無策でやってきたのだ。その先のことなど考えもしていなかった。
「別に、大丈夫だよ、世川。少し休めば動けるようになる。お前はあのやかましい女を連れて、早く帰れよ」
「今、私と世川くんが現実的な話をしているから、死に損ないは黙ってて」
一ノ瀬の虚勢を、新島が無感情に撥ね退ける。それから彼女は一点を見つめて暫く黙り込み、
「しょうがない。なんとかして車を調達してくるから、少し待ってて」と言った。
「いいの?」
「それしかないでしょう、現状。そんなに時間もないし」
世川は頷いた。一ノ瀬は不満げな顔をしていたが、もはや反論する気力もないようで、黙って床に伏していた。
ものの三十分程で新島が年季の入った軽自動車に乗って戻ってきたため、一ノ瀬に肩を貸して二人で後部座席に乗り込む。座席にはブルーシートが引かれてあって、「あんまり汚さないでね」と運転席から新島の声が飛んできた。
それから、世川の家に着くまで、誰も声を発さなかった。
だが、車内は唸り声のようなエンジン音と一ノ瀬の苦しそうな呼吸音で満ちていて、今すぐにでも破裂しそうだった。
「どうしてここまでしてくれるの」
世川の家に着いて車を降りる直前、彼女に聞くと、
「こんな形で死んだら、世川くんは一生彼のことを好きでい続けちゃうでしょ」と無表情に答えた。
「これは貸しだよ、世川くん。ちゃんと返しにきてね」
「わかった」
世川は再び一ノ瀬に肩を貸し、ほとんど引っ張り出すようにしながら車を降りた。
鍵の開けっ放しだった家に上がり、自分の力だけではまともに立てもしない一ノ瀬の身体を、慎重にソファーに寝かせる。
「こんなの、あったっけか。新しく買ったのか」
彼は自分が寝かせられた中古のソファーを薄目に見ながら、そんなことを言った。この状況でもどうでもいいことに気がつく男は、さらに「お前、髪が少し伸びたね」と世川の髪を触る。
「良かった、生きてて」
世川が一ノ瀬の手を握ると、彼は薄く開いていた目を閉じて、腕をだらりと落とした。
「どうして、お前とその女が俺を探しにきたんだ。どうなってるんだ」
「一ノ瀬は、ずっと前に、新島さんに会っていたんだね」
「ああ、なんだ。もう聞いてたのか。だから言ったろ、女は怖いって」
一ノ瀬は言って笑ったが、その声は喉から空気が漏れているだけのように聞こえた。ソファーに赤い血が染み込み、それが少しずつ広がっているように見える。世川の中の不安も、その染みと同じように、じわりじわりと広がっていく。
「一ノ瀬、本当に病院に行かなくて大丈夫なの」
「大丈夫だって言ったろ」
「死んだりしないよね」
はっきりと否定してほしくて言うと、一ノ瀬は鼻で笑って、かったるそうに声を絞り出す。
「死んだとして、何だよ。無縁仏がこの世界に一つ増えるだけで、誰も困らない」
「僕が困る。言ったじゃないか、好きだって。死なれたら嫌だ。でも、生きているのに会えないのは、もっと嫌だった。だから探してたんじゃないか」
「お前……まだそんなことを言っていたのか」
一ノ瀬は弱々しく息を吐き、眉を寄せる。
「暫く会わなければ正気に戻ってそんな戯言も言わなくなると思ったが、お前は俺が思っているよりもずっと馬鹿なのかな」
「……何が? どういう意味だよ」
世川が思わず怒気を含んだ声で突っかかると、一ノ瀬は小馬鹿にしたように笑った。呆れたような嘲笑を向けられたことは何度もあるが、こんなに敵意を持った笑い方は、初めて見た。
「お前が俺のことを好きなんていうのはな、全て思い違いだよ。お前は自分を否定しない人間が珍しいから懐いただけなのに、それを好きだと錯覚したんだ。寂しさを紛らわせる奴なら、俺じゃなくとも誰でもいいはずなんだ。まだ自覚していないのか」
「何を根拠にそんなことを言ってるんだよ」
「お前の方こそ、何を根拠にそんなことを言ってるんだ?」
「僕は、本当に一ノ瀬が好きだよ。誰でも良かったなんてことは絶対にない」
「あるんだよ、お前みたいな奴ってな、沢山いる。寂しいから、その穴を埋めてくれさえずれば、誰だっていい。否定なんて一切せずに優しくしてやれば、簡単に好意だと勘違いをする。俺にとっては都合がいいけどな。それでも、大抵の奴は少ししたら正気に戻るよ。俺以外に、構ってくれるまともな奴が見つかるからだ。お前みたいにな」
一ノ瀬がこんなにも自分の考えを喋る人間だなんて、知らなかった。世川は、彼の色の悪い唇が動くのを、ただ眺める。その光景は、現実味が薄くて、まるで夢の中の映像のようだ。
「お前もあの女を見つけて、正気に戻ったんじゃなかったのか」
「違う、僕は、そうじゃない。彼女は、新島さんとは、違ったんだ」
どうすれば一ノ瀬に、自分の心を丸々見せてやれるだろうか。お前のことを考えなかった日はないと、証明してやれるだろうか。世川は考えたが、そんな方法は当然見つからない。
世川が言葉を探して沈黙していると、一ノ瀬は
「お前、もうヤった? あの女と」と言い出した。世川は答えたくはなかったが、一ノ瀬が真っ直ぐにこちらを見ていたため、渋々認めた。
「だったら、満足しただろ。そっち側をやって、もう寂しくなくなったんじゃないか? お前は、だって、ずっとそれを求めていたものな」
「求めていたって、何を。何の話をしているんだ」
一ノ瀬の言葉の真意が掴めずに聞き返すと、彼は脂汗の滲んだ頬を緩めて、歪な微笑を浮かべた。
「当ててやろうか? お前が、血を溜めて花に撒くなんてことを繰り返していた理由。あれは、生殖行為の真似事だったんだろう」
一ノ瀬の声が、さっきよりも大きく聞こえる。こめかみから汗が流れ落ちるのがわかった。自分が唾液を飲み込む音が大袈裟に部屋に響いた気がした。
「お前、誰にも相手にされなくて、寂しくて、頭がおかしくなったんだ。だから、自分の体液で綺麗なもんを汚して、喜んでたんだろう。それがお前の自慰行為だったんだろ。違うか?」
一ノ瀬は荒い呼吸をしつつ、喘ぐように笑った。頬にも額にも、汗で濡れた髪が張り付いている。
「でも、もうそんなことする必要がないもんな。ちゃんとセックスの相手が見つかったんだから。もう、あんな擬似的な射精行為をしなくたって、満たされるはずだ。男に犯されて、自傷的に寂しさを埋める必要ももう、ないはずだ」
だからもう、馬鹿なこと言ってないで、大人しくあの女とよろしくやってろよ。
一ノ瀬はそう言って、ぜえぜえと苦しそうに息をする。世川は、その顔を見下ろしながら、急速に脳が、視覚が、聴覚が、鮮明になっていくのを感じていた。
そうだったのだろうか。一ノ瀬が言うように、あれは、あの悪癖自体が、性行為の代用だったのだろうか。そうだとしたら、
「満たされていない。僕は少しも満たされてないよ。どうしてかわかる?」
世川の声が震えた。それは憤慨したからでも恐ろしいからでもなかった。
「その相手が一ノ瀬じゃなかったからだ」
一ノ瀬が、不思議そうな顔で世川を見上げる。世川は身体が喜びで震えるのを必死に抑えて、一ノ瀬の肩を掴んだ。
「ありがとう、教えてくれて。ずっと疑問だったんだ。僕はどうしてあんな気味の悪いことをするのか。やめられないのか」
言って、世川は一ノ瀬の身体とソファの隙間に膝をつき、脱力していた彼を組み敷いた。弛緩しきっていた彼の身体が、緊張で強張るのが伝わる。
「何してるんだよ、お前。どけ」
「一ノ瀬は、どうして僕が寂しいってわかったの。初めて会った時から、僕が他人を求めていることが、どうしてわかったんだ」
「何が言いたい」
「一ノ瀬も同じだったからなんじゃないの。一ノ瀬も、寂しかったから、同じだと思ったんじゃないか」
「都合の良い解釈はやめろよ。そんなこと、思ったことあるわけないだろ」
「一ノ瀬もさ、怖かったんだろ。不安だったんだ、一人になることが」
一ノ瀬の目が見開かれる。その黒い瞳には高揚した世川の顔が映っていて、
「君こそ、一人っきりじゃ生きていけないものな」と、嬉しそうに言う。
■
寂しがっている人間につけ入るのは、笑えるほどに簡単だ。一ノ瀬は、ずっとそうやって弱っている人間を見つけては餌をやり、対価を得て生きてきた。
優しくするのは、きっと厳しくするのよりもずっと楽で、責任も後腐れもない。厳しくしたことなんて一度もないから比較のしようがなかったが、なんとなく、想像はついた。そしてそんな面倒で手間のかかることは、一生したくないと思っていた。
一ノ瀬には、意見も自我も必要がなかった。ただ全てを受け入れて、肯定して、欲しがっているだろう言葉を返す。その場限りの優しさを欲し、都合の良い人間もどきを側に置きたがる輩は、次から次へと湧いてきた。
一ノ瀬はちゃんと、その全員を人間として好いていたから、大切に扱った。優しく、丁寧にもてなした。そうすると、大抵の相手は、同じように一ノ瀬のことも大切にしようと努めた。中には例外もいて、酷い目にも遭わされたが、それはそれで構わないと思っていた。
だが、一ノ瀬がそうして手なずけた者たちも、やがて優しいだけでは満たされないと気づき始める。人間としての摩擦が生まれない関係は、ただのごっこ遊びでしかない。一ノ瀬とは人間関係を築けないと悟り、殆どの者は相手となる真っ当な人間を探し出して、一ノ瀬の元から離れていくのだ。
そうなった者たちを、一ノ瀬は沢山見送ってきた。一ノ瀬はそうやってごっこ遊びから抜け出していく彼らを、祝福した。自分という通過点を超え、正規の相手を見つけ出した彼らを、正しいと思っていたからだ。
時々、満たされない理由を一ノ瀬のせいにして溺れていき、一ノ瀬共々沈もうとする者もいたが、そういう奴に引き摺り下ろされるのなら、それでもいいと思っていた。しかし、やはり、誰も一ノ瀬を終わらせてはくれなかった。始まってもいない命を、自分の手を汚してまで完璧に終わらせようとする者はいない。そこまでの価値もないのだと、誰もが気づいてしまう。
だから、一ノ瀬は、世川もその中の一人だと思っていた。寂しいと泣いていて、普通を渇望し、必死に世間に溶け込もうとする気弱な青年。一ノ瀬は彼を、ぼんやりと応援していた。彼の欲しいものがいつか手に入るといいと、他人事にだが思っていたのだ。いつしか、バイトが順調だの、学校生活が楽しいだのと言い出した彼に対して、一ノ瀬は本心から安心していた。彼女ができたと聞いた時は、やっとあの悪癖もやめられるのだろうなと思い、喜ばしくもあった。
きっと世川も、今まで見送ってきた中の一人となり、やがて彼に関する記憶も薄れていくのだろうと思っていた。
なのに、だ。その見送ったはずの男が、今、自分を組み敷いている。獰猛な肉食獣のように目を光らせて、一ノ瀬を食い散らかそうと、機を伺っているのだ。
「大丈夫だよ、一ノ瀬。一人にしないから」
優しい声で言いながら、世川は手負いの一ノ瀬の肩を強い力で掴み、抵抗を封じた。それは今まで一ノ瀬の中に存在した世川のイメージを破壊するに足る行為だった。
一ノ瀬は、自身に覆い被さる男を押し返そうと、感覚の鈍い腕を伸ばす。
「おい、やめろって言ってるだろ。離せよ」
「最初に手を出したのはそっちだ」
「冗談はよせ」
「冗談なんかじゃない」
世川が静かに言って、そうだろうなと一ノ瀬は思った。本気なのだ、こいつは。
一ノ瀬は必死になって、華奢な世川の身体を突き飛ばすか殴りつけでもしようとしたが、伸ばした手は簡単に彼に抑え込まれた。抵抗のしようがないのだと自覚し、一ノ瀬は「嫌だ」と呟いた。
「やめてくれ」
「どうして、他の奴には許してるくせに」
「嫌だ、お前には、嫌だ」
「それは、僕を見下していたから?」
世川は躊躇いもなくそう言った。
「ちげえよ」
一ノ瀬は、苛立ちを覚えた。だが、世川はきっと、卑下しているわけでもないのだ。痛みと混乱とでぼうっとする頭で思うことを、一ノ瀬は隠すことをやめて垂れ流す。
「見下してなんかいない。俺が見下せる奴なんて、この世に一人だっていない。わかるか、お前はいつも普通になりたいって言ってたけど、俺からしたら、お前だって最初から、じゅうぶん普通だったよ」
俺とは違う。お前はちゃんと、人間だよ。
言いながら、耳鳴りが聞こえてきた。頭が重たくなってくる。
■
「大丈夫だよ」
世川は、まるで自分は人間ではないと言わんばかりの一ノ瀬に、そう声をかけた。
可哀想だと思った。早く安心させてやりたいと思い、血のついたジーンズ生地に触れる。ウエストがゆるくて、指が簡単に差し込めた。ボタンを外し、ジーンズも下着も一緒くたに、無我夢中でずり下ろす。一ノ瀬はその間、大人しくソファに沈んでいた。
新島の時とは、全く逆だな、と思った。
汗で湿った、冷え切った肌に触れる。一ノ瀬の喉から悲鳴のような息が漏れた。
鼓動がうるさい。今までまともに使ったこともなかった自身の性の象徴が、酷い痛みを覚えるほどに屹立していた。それを、抵抗する力を失いつつも強張ったままの一ノ瀬の身体に、無理矢理に捩じ込んだ。
一ノ瀬は呻き声を上げた。肉体的な快楽などほとんど感じられなかった。きつくて、苦しくて、痛みすら覚えた。しかし、世川は脳が焼き切れるのではないかと恐れるほどの享楽を感じていた。
歯を食いしばり肩で息をする一ノ瀬の顔に触れる。汗と埃に塗れた肌を撫でて、「大丈夫だよ」と言うと、彼は怒りと怯えと屈辱とを混ぜ合わせたような視線で世川を睨んだ。世川は喜びに胸を震わせつつ、彼に笑いかけて言う。
「一ノ瀬の中身、ちゃんと、新島さんみたいな普通の人と、同じだよ。一ノ瀬も、だから、ちゃんと人間だね」
一ノ瀬は、目を見開いた。それから急に全身の力を抜き、微々たる反抗すらも諦めたように手足を投げ出して、「お前、最低な奴だな」と呟く。
「お前みたいな奴に、出会いたくなかった」
「一ノ瀬がそう思うのは、僕だけ?」
一ノ瀬が頷くと、世川は満足そうに笑った。
続
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる