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第一部
Act.9 首輪とブーツ
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キリエ。
希少種エリニュスであり、ムータロを担当する管理局の処刑官である。
2メートルを超えているであろう細身の長身。
その3分の2を占めるに迫る長く形の良い美脚。
くびれた腰つき。キュッとしたお尻。
骨格自体が細いため痩せているように見える胴体。控えめな胸。
しなやかで柔らかそうな腕。長い指。
小ぶりな頭部。12頭身ほどあるだろうか。
白皙の小顔。涼やかな目元、グレーの瞳。細く筋の通った鼻。尖った耳。小さく整った赤い唇、艶黒子。
ポニーテールにまとめられた、美しい黒髪。
そしてその身に纏う異装。
フロント編み上げタイプの、黒いタイトフィットの魔獣皮製サイハイブーツ。踵はシルバーのピンヒール。
黒のガーターストッキング。太もも部分に赤い十字があしらわれている。
黒いタイトフィットの魔獣革製コルセットと、それに付属した黒のプリーツマイクロミニスカート。
白い上品なブラウス。その両肩に赤い十字の刺繍。
首元を飾る、細身のフェミニンな赤いリボンタイ。
黒いタイトフィットの魔獣革製ロンググローブ。
ナースキャップのようなデザインの小さめの魔獣皮製帽子。前面には赤い十字マーク。
そんなこの世のものとは思えぬ外見の彼女だが、ベッド下でうずくまるムータロを見るなり、意外なほど普通の女子な口調でこう言った。
「ちょ、ムータロくん、大丈夫? どうしたの?」
「よ、よっと(ちょっと)へやをはんぽ(さんぽ)ひようと⋯⋯」
事前に準備していた言い訳を言うムータロ。
歯が全て抜かれているためフガフガの口調である。
言い訳の内容に嘘はない。
そしてムータロは、キリエという処刑官は刑の時間とそれ以外をきっちり分けるタイプだと踏んでいた。
だからこそ部屋の中を探索しようという気になったのである。
それでもやはり、どんなリアクションが返ってくるか少し不安ではあった。
だが、言い訳を聞いたキリエは、心配するムータロをよそに、なぜか感心したようにこう言った。
「そうなんだ⋯⋯。偉い子だよ、ムータロくん。私に言われないうちから四足歩行の訓練を自ら始めるなんて⋯⋯」
(ん、四足歩行? それは一体⋯⋯)
キリエが発したそのワードに何やら不穏な響きを感じ取るムータロ。
そんなムータロの内心の動揺を知ってか知らずか、さらにキリエは感極まったように手で鼻と口を覆う。その姿はあたかも、不出来な生徒の更生に感動する若い熱血女教師のようであった。
「ムータロくん、キミの気持ち、受け取ったわ! 今日は四足歩行訓練から始めましょう! 道具を持ってくるから、ここで待っててね!」
「あっ、待っ……!」
ま、まずい。何だか知らんがキリエをすごくやる気にさせてしまったようだ。
出入り口のドアが閉まるのを見届けつつ、ムータロは冷や汗を流して後悔した。
再び部屋に一人。
どうする? 部屋の探索をするか?
いや、やめておこう。
キリエは先ほど”ここで待っててね”と言って出ていったのだ。
戻ってきたときにここで待っていなかったら彼女の機嫌を損ねてしまう恐れがある。
そして先ほどの張り切った様子からすると、すぐに戻ってきそうな気配もある。
やはりここはおとなしく待つのがベターだろう⋯⋯
†
「お待たせー❤︎」
果たしてムータロの予期どおり、ものの数分とかからずキリエは戻ってきた。
その手には、黒い魔獣皮革とシルバーのチェーンでできた何かが携えられている。
「ほ⋯ほれは⋯⋯⋯?」
不安げに見上げて問うムータロ。
「これ? ”四足歩行訓練用”の首輪だよ。さ、つけてあげるね❤︎」
そう言うとキリエは、ムータロに手際よく首輪を装着!
首輪はかなりタイトで、つけているだけで顔面に軽いうっ血を感じるほどだ。
思わず声を漏らすムータロ。
「くっ、くうぅ⋯⋯!」
キリエはそんなムータロの様子を見下ろして微笑む。
「うん、サイズぴったりだね。あと、”四足歩行”しやすいように、オムツは取っておくね」
そう言ってキリエはムータロのオムツに手をかける。
オムツには排泄物が付着しているが、さして気にした様子もない。
キリエは淡々と手に取ってそれを丸めると、部屋の隅のダストボックスに廃棄した。
「それじゃ最後に⋯⋯っと」
キリエは、ムータロの首輪から伸びるシルバーのリードを、自身の魔獣皮製サイハイブーツの左膝のあたりに接続!
「よし、準備完了! ふふ、それじゃ行こっか❤︎」
部屋の出口へ歩き出すキリエ。
ムータロは四足歩行で遅れないようについていく。
少しでもキリエの脚への追従が遅れると、リードが張って、首輪で頚動脈が締まってしまうのだ。
長身美女の足元でせわしなく四足を動かすムータロ。
その姿は、さながら小型犬のようであった。
希少種エリニュスであり、ムータロを担当する管理局の処刑官である。
2メートルを超えているであろう細身の長身。
その3分の2を占めるに迫る長く形の良い美脚。
くびれた腰つき。キュッとしたお尻。
骨格自体が細いため痩せているように見える胴体。控えめな胸。
しなやかで柔らかそうな腕。長い指。
小ぶりな頭部。12頭身ほどあるだろうか。
白皙の小顔。涼やかな目元、グレーの瞳。細く筋の通った鼻。尖った耳。小さく整った赤い唇、艶黒子。
ポニーテールにまとめられた、美しい黒髪。
そしてその身に纏う異装。
フロント編み上げタイプの、黒いタイトフィットの魔獣皮製サイハイブーツ。踵はシルバーのピンヒール。
黒のガーターストッキング。太もも部分に赤い十字があしらわれている。
黒いタイトフィットの魔獣革製コルセットと、それに付属した黒のプリーツマイクロミニスカート。
白い上品なブラウス。その両肩に赤い十字の刺繍。
首元を飾る、細身のフェミニンな赤いリボンタイ。
黒いタイトフィットの魔獣革製ロンググローブ。
ナースキャップのようなデザインの小さめの魔獣皮製帽子。前面には赤い十字マーク。
そんなこの世のものとは思えぬ外見の彼女だが、ベッド下でうずくまるムータロを見るなり、意外なほど普通の女子な口調でこう言った。
「ちょ、ムータロくん、大丈夫? どうしたの?」
「よ、よっと(ちょっと)へやをはんぽ(さんぽ)ひようと⋯⋯」
事前に準備していた言い訳を言うムータロ。
歯が全て抜かれているためフガフガの口調である。
言い訳の内容に嘘はない。
そしてムータロは、キリエという処刑官は刑の時間とそれ以外をきっちり分けるタイプだと踏んでいた。
だからこそ部屋の中を探索しようという気になったのである。
それでもやはり、どんなリアクションが返ってくるか少し不安ではあった。
だが、言い訳を聞いたキリエは、心配するムータロをよそに、なぜか感心したようにこう言った。
「そうなんだ⋯⋯。偉い子だよ、ムータロくん。私に言われないうちから四足歩行の訓練を自ら始めるなんて⋯⋯」
(ん、四足歩行? それは一体⋯⋯)
キリエが発したそのワードに何やら不穏な響きを感じ取るムータロ。
そんなムータロの内心の動揺を知ってか知らずか、さらにキリエは感極まったように手で鼻と口を覆う。その姿はあたかも、不出来な生徒の更生に感動する若い熱血女教師のようであった。
「ムータロくん、キミの気持ち、受け取ったわ! 今日は四足歩行訓練から始めましょう! 道具を持ってくるから、ここで待っててね!」
「あっ、待っ……!」
ま、まずい。何だか知らんがキリエをすごくやる気にさせてしまったようだ。
出入り口のドアが閉まるのを見届けつつ、ムータロは冷や汗を流して後悔した。
再び部屋に一人。
どうする? 部屋の探索をするか?
いや、やめておこう。
キリエは先ほど”ここで待っててね”と言って出ていったのだ。
戻ってきたときにここで待っていなかったら彼女の機嫌を損ねてしまう恐れがある。
そして先ほどの張り切った様子からすると、すぐに戻ってきそうな気配もある。
やはりここはおとなしく待つのがベターだろう⋯⋯
†
「お待たせー❤︎」
果たしてムータロの予期どおり、ものの数分とかからずキリエは戻ってきた。
その手には、黒い魔獣皮革とシルバーのチェーンでできた何かが携えられている。
「ほ⋯ほれは⋯⋯⋯?」
不安げに見上げて問うムータロ。
「これ? ”四足歩行訓練用”の首輪だよ。さ、つけてあげるね❤︎」
そう言うとキリエは、ムータロに手際よく首輪を装着!
首輪はかなりタイトで、つけているだけで顔面に軽いうっ血を感じるほどだ。
思わず声を漏らすムータロ。
「くっ、くうぅ⋯⋯!」
キリエはそんなムータロの様子を見下ろして微笑む。
「うん、サイズぴったりだね。あと、”四足歩行”しやすいように、オムツは取っておくね」
そう言ってキリエはムータロのオムツに手をかける。
オムツには排泄物が付着しているが、さして気にした様子もない。
キリエは淡々と手に取ってそれを丸めると、部屋の隅のダストボックスに廃棄した。
「それじゃ最後に⋯⋯っと」
キリエは、ムータロの首輪から伸びるシルバーのリードを、自身の魔獣皮製サイハイブーツの左膝のあたりに接続!
「よし、準備完了! ふふ、それじゃ行こっか❤︎」
部屋の出口へ歩き出すキリエ。
ムータロは四足歩行で遅れないようについていく。
少しでもキリエの脚への追従が遅れると、リードが張って、首輪で頚動脈が締まってしまうのだ。
長身美女の足元でせわしなく四足を動かすムータロ。
その姿は、さながら小型犬のようであった。
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