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ケイアポリス王国編

転生者はエピローグを見ない

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sideレミーア『王城内』

 「・・以上の者が、レミーア様の側で働く者達の資料です。」
「ありがとう、私が直接彼らに会います。」
「はっ、失礼します。」

 はぁ

 誰もいなくなった執務室で、私は1人息を吐いた。いやまぁ隣にエルザがいるけど、まぁ別にいいだろう。

 疲れた~~~~~~

 全ての後始末は、私が引き継ぐ形になった。ていうか本当に全ての後始末を押し付けられたという形になってしまった。

 王族がまさか本当に、私以外全滅してるとはね、、、、、

 反乱軍はヘンドリクセンの死亡により自壊した、降伏と言った方が正しいのかもしれない。気味が悪いほどに全ての騎士団があっさりと降伏した。

 騎士団はヘンドリクセンのワンマンチームか、嫌になる。護衛の第3騎士団はシルフィールドがボコボコにして再編成は当分先のことになりそうだし、オカマに全部押し付けておいた。

 オカマ、実は貴族だし、このぐらい押し付けて大丈夫よね。なんちゃってらしいけど。

 アシュレイにも当分は手伝って貰わないと、英雄の凱旋と思った矢先に騎士団相手に大暴れ、あの人は本当に伝説に事欠かない。まぁそのうちアリアと一緒に消えるだろうけど、それまで礼は欠かさないようにしないと。

 アシュレイの脱落ルートは私が前から手回しをしていたので発生すらしなかった。

 流石私ね、今回一番活躍したのってもしかしたら私じゃない?

 王都中を散々駆け回って兵士を沈静化させたし、王都の民衆を説得させたのも私。

 そのおかげでかなり疲れたけど...

 そのおかげか、王都はある程度落ち着いて来た、人は慣れるものだね。まぁ戦うのは市民じゃなかったし、どちらの勢力も一般市民にはそこまで迷惑のかかる戦いじゃあ無かったから、まぁ関心が無いのも頷ける話だ。

「さて、仕事をしますか。」

 謁見の間へと向かう、後ろについて来るのはエルザだ。そう言われてみれば最後のヘンドリクセンとの戦いではエルザの姿は無かった。

 気になったので聞いてみた。

「そう言われればエルザってあの時何をしていたの?」
「お嬢様の護衛、そして邪魔者の掃除を」
「邪魔者の掃除?何よそれ。」
「貴方様が知る必要が無いものです、いずれお話し致します。」

 あら、そう。じゃあ良いけど。

 謁見の間に着いた、同じような格好をした男達が、同じような顔をして礼の姿勢をとっている。

 ここにいる面々は少なくともヘンドリクセンが反乱を起こした際にそれに抵抗した面々だ。どうやら王都にあるスラムとかに潜伏していたらしい。数が10にも満たないのは調べるのに時間がかかったから、次に確かな情報以外信用できないからだ。

 面々の調査についてはエルフにやってもらった。

 エルフは諜報活動に向いている、そうアルゴスというアル様を産み出した偉大なお方が勧めて下さった通り、かなり細かい調査報告書を出してもらった。

 彼らは非常に優秀らしい、年齢20代前半から30代後半まで。貴族家でも次男か三男坊で、王都の学園でもかなりの好成績を収めておきながら、身分の低さから実力を抑えていたと。

 要するに彼らは、このケイアポリス王国における身分社会の犠牲者なのだ。

 おっと、何か言わないとね。

「貴方達のことは良く知っています。」

 びくりと大の大人達が体を震わせた気がした、え、私何か変なこと言った?オカマにどんなこと言えばいいのか聞いた通りのことしか言うつもり無いんだけど。

 てか駄目だ、後何言うか忘れた。アドリブで行こう。

「王国は優秀な人材を求めています、詳しいことは後ほどオカマから聞いて下さい。好きにやりなさい、責任は全て私が取ります。」

 そうそう、こういう感じよ。

「責任は全て俺が取る!」っていい言葉よね、実際に責任を取るのは私の仕事じゃないし。この世界で私を罰せる人間なんていない。

 「し、しかし姫様」
「姫様ではありません、これからは陛下と。」
「失礼致しました!!」

 そ、そこまで畏まらなくても良いのだけど?

 まぁ、元々身分の低い家出身だから、必要以上に畏まってしまうのは仕方がない。だけどこれから私の側近として手腕を振るう候補達だ、慣れて貰わないと困る。てかなんで泣いてるの?

「我々、これより家臣一丸となって陛下をお支え致します!」
「ええ、よろしく頼みます。皆さま」

 私は、これ以外言う言葉が見つからなかった。






 sideエスターマイン子爵『王の間』

 王の間、別名謁見の間とも言われるそんな場所で私達は礼の姿勢でレミーア様を待っていた。

 王の間には、まだ反逆者であるヘンドリクセンが残した傷が痛々しく残っている。

 王の間に呼ばれたのは全員で7名、彼らはいわば同士だった。ヘンドリクセンが反乱を起こした際、王族優先で騎士団が貴族を殺していたのをいいことに王都に詰めていた我々はその凶刃から逃れ、あるものは自分の父が治る領地へ、あるものは王都のスラムに潜伏して時を待っていた。

 その際に殆どの貴族達は保身に走り、ヘンドリクセンに忠誠を誓った。まぁそんな奴らがミレーア様の世になってそのままの地位を保てる訳もない。王国を守らなくてはならない貴族がこぞって命惜しさに降伏したのだ。その未来が明るくないことなど自明の理だろう。

 だからこそ、新しい人材を必要としているのは確実だ。

 だからと言って、我々が呼ばれることは完全に想定外だった。我々はそのいずれもが伯爵家以下の存在だ。ケイアポリス王国では、通例として身分の高いものから宰相、王に仕える側近が選ばれる。そのいずれもが辺境伯、侯爵家、最低でも伯爵家の連中だ。

  我々はその最低限の身分すら保有していないどころか、その身分を継承できる者でも無い。我々は低い身分の中でも次男や三男坊というどう見てもその身分を継承でき無い者達であり、その多くの者が将来、商人や冒険者をして生活することになる。

 私もそう思っていた。

 まさか、ここに呼ばれることになろうとは、、、、

 扉が開くような音がした。

 「レミーア様が来られます。」

 その声を聞いた瞬間、急に王の間の雰囲気が変わった。今言ったのはオカマか?レミーア様のお抱え冒険者として活躍していると聞いた。王都騒乱の際にも活躍したと。

 レミーア様が入ってきた。

 王国式の礼の形は、頭を下げた状態だ。レミーア様のお顔を拝謁することはでき無い。

 複数の足音、護衛の足音と、恐らくレミーア様の足音が聞こえる。非常に足早だ、せっかちな方なのだろうか。

 レミーア様の噂は宮廷にいれば良く耳にする話だ、社交界デビューしても良い年齢にも関わらず表舞台に全く出ようとしない姫。美に関心が無く、もっぱら王と政治の話をするのに定評がある変わり者の姫。

 一体、どのような事を話すのか、、、、

 頭を上げよ、そう指示が下り頭をあげる。

 そこにいたのは、仏頂面の護衛、影の薄い侍女、そして光だった。

 白で統一されたドレスに、美しく長い金髪が、王の間に差し込む光に反射して輝いている。光によって輝いているのでは無く、自ら輝いているかのようだ。

 いかん、呆けている場合では無いな。レミーア様からのお言葉がある。

「貴方達のことは良く知っています。」

 びくり、と全身が震えたような気がした。知っている、それだけなら当然だろう。だがどこまで知っているのか?わからない、読めないお方だ。

 最も、次の瞬間更に 驚かされるのだが。

「王国は優秀な人材を求めています、詳しいことは後ほどオカマから聞いて下さい。好きにやりなさい、責任は全て私が取ります。」

 ぶるり、と全身が震えた気がした。

 好きにやらせてくれると、そう言うのか。ここにいる面々は、身内のひいき目を差し引いても王国で最も優れた頭脳を持っている。高度な教育を受け、平均水準の遥か上の学力を持つものの身分差社会という厚い壁に阻まれ浮びあがらなかった者達。それが我々だ。

 そんな我々に政治を任せる、レミーア様にとっても賭けに違いない。

「し、しかし姫様」

 そう言った男がいた、馬鹿め、何故我々にお任せ下さいと言えん!我々にお任せ下されば、王国を世界一の大国にしてみせますと胸を張って何故言えん!

 叱責が飛ぶと思っていた、だが返って来たのは違う言葉だ。

「姫様ではありません、これからは陛下と。」
「失礼致しました!!」

 怒っていない?

 同僚になる男が地に這い蹲りそうな勢いで謝罪をしている。

 我々の不甲斐ない態度は注意しない?期待されていない?違うな。

 それならもっと違うアプローチがあるはずだ。

 行動で示せと言うことか。王都に人がいないのは事実だろう、辺境伯家、侯爵家、全てに必要なのは人だ、人、人、人。

 気づけば前に出ていた。

 「我々、これより家臣一丸となって陛下をお支え致します!」

 気づけば口から出ていた、結果は出す。この命に代えてもだ、失敗すればレミーア様の支持は地に落ちる。ただえさえ身分の低いものを登用するなどという暴挙に出ているのだ、侯爵家や辺境伯家からの反発は避けられまい。いやだからこそ王の間の修繕も終わらぬうちに体制を作り上げようとしているのか。

 成功すればどうなるだろう、新しい政策、聞けば新しくエルフも側近や文官にレミーア様は加えるつもりらしい。間違いなくこの国は多人種国家への第一歩を踏み出すのだ。

 その一翼に、自分がなれるだと?

 なんと名誉なことか!

「ええ、よろしく頼みます。皆さま」

  笑顔のレミーア様がそう言い残され、去って行く。手紙を書こう、世界には、位の低い貴族家の生まれで他国に仕官した者、冒険者となった者、世を儚んで隠遁生活を送る天才、鬼才がまだまだいる。彼らに陽の目を見せてやるのだ、レミーア様という太陽を。

 ケイアポリス王国の輝かしい歴史は、我らが作るのだ。
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