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10章 多重人格者の未来は

それぞれの道(一部最終回)

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「ということで、第1回人格会議~!」

 今回の議題は大きく分けて2つ、1つ目は元の世界に戻るか否か。正直言って僕は僕として元の世界に帰ることが可能だ。あの自動車事故はうちどころが良くて一日の昏睡をへて、後遺症もなく目を覚ます。というのがあの事故の結末だ。

 しかし僕たちは5人、魔王は絶対に帰るだろうけど、5人が元の世界に帰りたいのか、この場所に残ることにするのかはわからない。

 「いや、私は残るぞ!こっちの方が肌に合ってるしな」
 「ま、儂もこちらに残るのが妥当かと思われますがいかがですかな?」

 そう言って真っ先に手を挙げたのは、クロとイエローだった。

 確かに、元の世界のギチギチのルールには、2人の自由奔放な性格は合わないのかもしれない。

「儂は夜の可憐なお嬢様がたに夢を与える男にならないといけませんからな! なに、肉体年齢は16歳なのです! これから遊び放題ですぞ」

「結局今回は神器の力に頼りっきりだっただろ?私はそれが気にくわない。私は私の力のみで強くなりたい。だから、旅にでも出ようかと思う。武者修行って奴だな。」

イエローもクロも、なんだかんだで色々考えてるんだな。

「あ、ちなみにアタシもここに残るわよ。アタシはもっともっと綺麗な場所に行きたいの。こんなところじゃ止まらないわ! 可愛いもの、美しいものを集める旅はこれからよ」

「わたしも~!コレットおねぇちゃんとあそびたい!」

 えっ?ピンクとホワイトもこの世界に残るの?

ノートに書いてある事柄や周りから聞いた性格や様子などで、他の人格の特徴は大まか捉えていたつもりだ。具体的に言えば、クロは喧嘩っ早い、イエローは女性トラブルが多い。などである。

 そんなことを理解できていたレッドだからこそ、この2人の決断は意外なものであった。

「・・・・悪いな、オレも残る。元の世界には、オレならいつでも帰れるようになるだろうしな。」

え! グリーンも残るの?

 正直一番意外であったと言ってもいい、グリーンは元の世界に少しでも早く戻って本を読みふけりたいと思っていると考えていたからだ。この申し出は正直言って意外だった。予想外と言ってもいい。

「というよりは仕方がないのですな、ご主人は恐らく元の世界にお帰りになりたい筈、元の世界で松岡輝赤として活動できる人間は1人のみ。戸籍などの厳しい日本では流石に1人増えただけでも如何とも誤魔化せないところがあります。グリーンもそのことを考慮したのでしょう。」

 そうか、グリーンは僕のために諦めてくれたのか。

「グリーン」

「おいおい、いいって言ってるだろ、心配すんなよ、絶対に自力で元の世界に行く方法を見つけてやるからさ」

「まぁというよりもグリーンはコレットにご執心の様子なので、貴族になることがほぼ確定の現在の状況は彼にとって都合がいいのでしょう。」

「バッ・・・ジジイ!いきなりなに言い出しやがる」

「おや、顔が真っ赤になっておりますな、図星ですかな」

あぁ、そういうことね

「いいじゃないの~~これから、この世界のグリーンはグリーンちゃん本人にやってもらう、政治的な雑務はイエローちゃん、有事になったら入れ替わりもできちゃうしね! ピンクちゃんはグリーンちゃんの妹ってことにでもしておきましょう。これで解決!アタシも安心して旅に行けるわ~」

「まほうもここならつかえるし、ここでずっといたい!」

 ということは

「俺と2人で帰るってことか、クロとかいう奴が俺を倒したんだっけか?リベンジマッチはしてやれねぇが。縁があったらまた会おうぜ」

「あぁ、またな」

短い返事だったが、寂しそうにクロはそう答えた。恐らく魔王がこの世界に戻ってくることは、もう2度とないのだろうな、ということをわかっていたからだ。

 自分達と違って、魔王にはこの世界での嫌な思い出が多すぎる。

「ま、魔族も、アスカモーもいるし、息子もいるから大丈夫だろ」

「え!?息子居たんですか?」

「いや、なし崩し的にできちゃったな、その頃はもう帰れないと諦めてたしなぁ。女神からの連絡ないんだもん、仕方ないな」

 うん、フレイヤさん、責任あるんじゃないんですか

「流石に婚約までしてしまうとは思ってなかったので、魔王との接触はそれなりの力を得るまでしていなかったので。それはともかく、準備はできましたか?」

「誤魔化したな」

「誤魔化しましたなぁ」

「まぁ、それはともかく時間だ。我々もそれほど暇ではないからな」

「なら帰れば良いのでは?正直貴方必要ないぞ」

「黙れウルフィアス、多少なりやることはやったではないか!」

「時間なのは正しいですね、話し合いは終わりましたか?」

「はい...」

そっか、これからは、みんなだけの人生があるんだ。

そう輝赤は悲しくも、そう感じる他なかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 2人、フレイヤの前に僕は立った。
 
結局、元の世界に帰る人間は僕と魔王さんだけか

「まぁ、なんとかやってみせます、これからは常時仮面をつけないといけませんが...サポートはお任せ下さい。なんとかやってみせます」

「...この世界に革命を起こす、これからは科学だ。見てろ!都合のいいことに素材だけは豊富だしなこの世界。なんとかやってやるさ」

「強くなろう、この世界の誰よりも!自分の力だけで、今この世界の人間で最強なのはご主人なのだろう!?なら余計グリーンに頑張って貰わないとな、挑戦させてもらうぞ」

「輝赤ちゃん、じゃ~ね!あら、私達って名前どうすればいいのかししら...ま、グリーンって言っておけばいいか」

「じゃあね!せっかくいっしょにあそべるようになったのだもの!こんどはいっしょにあぞひましょ!」

「では、元の世界に戻ります。よろしいですか?」

「・・・・はい」

 僕は最後に、もう一度だけ後ろを振り返った。

 この面々は、僕の「ありえたかもしれない未来」そうアイテールは評した。

 僕の素晴らしい才能達。ありがとう

 この世界で、どうか、幸せに。

その声を発したのと、彼、松岡輝赤の意識が手放されたのは、ほとんど同じタイミングだった。














その後、僕は元の世界の日常に戻った。

 叔父との2人暮らし、普通に学校で勉強し、遊び、何故かヤンキーから逃げ惑う日々

うん、普通だ。時間の隔絶した間がないってのは、少々時間が長く感じるけど、これが普通なのだ。慣れていくしかない。























 あの世界にいる「僕達」は元気にやっているのだろうか。


















 学校から家へと帰宅する。

 あれ?

 家の電気がついてる。

おかしいな、家の電気は消したはず...

叔父さんは仕事で帰宅が遅い。と言うことは...

 笑いが抑えられない、そうだ、僕の人生にずっとつきまとってきた奴らが、僕のところに帰ってきた。

 今度は一体、どんなトラブルを持ち込んでくるんだろう。そう考えると怖いところもあるが、それと同時にワクワクが止まらなかった。

必死で走り、駆け込むように家に入った、息も絶え絶え、汗をかいてしまったな

「ただいま!」

 そう言うと、今や自分の身体を手に入れた

 紛れもない

「僕達」が、その帰宅を迎えた


「「「「「おかえり!!!!」」」」」




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