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10章 多重人格者の未来は

あれ、お前魔王じゃね?

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「押せ!ここを突破されれば王都すら危ない!」
「そうで...あ............仕方ありんせんね。事故です事故」

「いや、イロハの姐さんの後ろ蹴りで門前にある端っこの壁半壊してるんですけど?!あれどーするんですか姐さん」

「知りませんえ!貴方が治しておいておくんなまし!」

「逆ギレかよ!わかりました治しておきますよ」
「あんさんこそ、ちゃんと仕事はしているんでありんしょうね!」

「そらかけてるよ!味方にはありったけの バフ(身体能力向上)、アイテールには デバフ(状態異常)かけててこの力量差だ!全く呆れたもんだ。」

「そこ!しっかり押せ!またイロハの後ろ足が王都の壁をぶち壊す前に!」

「......今破壊音が聞こえた、絶対に壊れたな」

「ちゃんと押してくんなましー!!!!」

王都前、アイテールに相対するのは王都を救わんと集った戦士達。その先頭にいるのは...ただの人間。

翼を生やした、1人の異世界転移者であった。

今はイヴァンの背に乗っていない、現在イヴァンは四聖達が押すのに集中できるよう、ガンダルヴァとともに触手を破壊する作業をしている。

レッドは、自らの持つ翼を大きく広げ、アイテールに相対していた。

その姿を...アイテールは見逃さなかった

「その姿は一体...それはエルザの翼だろう、一体どうして?!」

「あぁ...そうだ、これはエルザからもらった翼だ!お前と戦う為に、彼女から譲り受けたものだ」

そう言うと、レッドの翼から砲身が伸びだす

その砲身から炸裂音がし、アイテールの目を潰し始める

「何故だ?あの翼はどんなことをしても外れない筈だ!」

「何言ってるんだ、1度だけ外せるようにしてたらしいじゃないか!」

そんな筈はない

アイテールは自らが創り出した者は全て記憶している、エルザに翼を取り外せる機能などつけた覚えはない。

というか...何故だ?

何故私にはエルザを創った記憶がない?

パーツの記憶も、細部の作りまで覚えているにも関わらず、彼女を「創った」記憶がないのだ。

おかしい...

戦闘の最中に思考の海に潜る。この行動はあまりに相手を舐めた行動となり、そして致命的となった。既に視力も半分以上が欠如し、思考が半分そちらに飛んでいる状態。そんな状態で押し合いを続行することは不可能だった。そんな力の緩みを見逃すほど、四聖達は甘くない


「考えごととは余裕だなアイテールぅぅぅぅ!」

バハムートの声に正気に返った時には、もう勢いは止められないところまで来ていた。

城にもうすぐ着きそうだった各々の体は持ち直し、アイテールの体が徐々に王都門から離れて行く。

そしてアイテールの体はとうとう、王都近くの山に勢いよくぶつけられ、停止した。

「......よし、これで王都の被害は、イロハの足の被害だけにとどまった......いやすまん」

何かを察したバハムートの声が小さく響き

「はっはっは!これで王都の被害も忘れて盛大に暴れられるというもの」

なんの遠慮もないバハムートが豪快にそう呟いた

「そうそう!これで王都の被害はイロハの姐さんの後ろ足の被害だけですし...あ姐さん!?」

「ガンダルヴァ、殺す」

「じょ、女性がそんな言葉使っていいのかな~とかお兄さん思っちゃうな~」







ドスン、アイテールの触手が再度、四方に伸び始める

「前回も思ったが、アイツ一体何本触手を体内に内蔵してるんですかねぇ...」

「モウいい...研究対象となる予定だったオマエも、もう必要ない。」

そう言ってアイテールは残った眼でレッドを見る

「全員、殺し尽くしてやる!!」

そう言ったアイテールの目は、全て復活していた。そしてその目は赤く充血し、血が垂れ出ている

「気をつけろ...!あの姿になってからが本番だ...!クソ、神器が全て揃ってないのは痛いな...」

バハムートがゆっくりと、レッドを庇うように前に出てそう話す

「シ...魔王が来るまでは、我々だけで持ちこたえなければならん。それまでに神器使い、神々に対しての絶対の切り札であるお前を失うわけにはいかないのだよ。許せ」

そう言うとアルフィィオスもレッドの前に立つ。

かもしかして2人とも...庇って死ぬ気とかじゃないよな?

レッドは2人の前に出ようとする。

冗談じゃない、犠牲なんか真っ平御免だ、だが通ろうとした箇所を、2人がさりげなく塞いだ。

アイテールは待たない、先ほどよりも動きが早くなっている。殺すと決めたからだろうか?その触手は的確に四聖の急所を狙っている。

危ないーーレッドが鎧ごしにそう言いかけた時




それは現れた。

その音は、アイテールの四聖の間から鳴り響く、地面に着地する轟音だった。

その男は一言で言うなら、海のような男だった。

戦場にも関わらず鎧のような類は一切持たず、服は青、黒の2種で構成されている。

半袖の上着に真っ黒な動きやすそうな靴が特徴の男だ、馬に乗っている。

顔は彫りの浅い顔で中々のマヌケ面...

ってん?

......

ん?

......

気づけば、イヴァンが鼻水垂らしながらこっちと、馬に乗った男を交互に見ている。

アルフィィオスは、何故か涙を流している。

バハムートは口をあんぐり開けて、涎のようなマグマを出していた。

イロハとガンダルヴァも、各々驚いている。

幹部天使の3人は腰を抜かしていた、あれ、ブルーノっていう戦士だけちょっとニヤついてるのは、なんでなんだろう?

「......よう!グリーン!、我(オレ)はアオっていうものだ!最後の神器を持って来たぞ!!!」

いや、あれ、僕だよね?

服装、雰囲気は違うけど、完全に顔のパーツは一緒であった。

そして、もう一つわかったことがあった。それは、恐らくアルフィィオス以外、この場にいた全員が思っていたことだった。



















あれ、お前...魔王じゃね?






























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