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前章・九州大名決戦編

急な開戦!

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 「謹んで願い奉るは、うんたらかんたらあんたらかんたら」

  うん、何言ってるか全然わからん!

 だから朝廷なんて関わり合いたく無いんだよな、本当に辞めて下さい。

 戦国時代において朝廷には力が無かった、これは誰もが知ることだがどの位力が無くなったかについて説明しておこう。

 

 現代ならとんでも無い事件だろう、この時代でも当然大事件だ。帝の葬儀は恙無く行わなければならない。

 しかし無理だったのだ、それほど朝廷は困窮していた。悲劇は続く、次代の後柏原天皇ごかしわばらてんのうは即位をする際に執り行われる即位式すらできなかった。

 結局帝は即位22年目でようやく即位式を執り行なうことになった。

 『皇室式微』

 そう揶揄される程朝廷は困窮し、力を失っていたのだ。

 史実で朝廷の権威を回復させたのは戦国時代のスーパースター織田信長、永禄11年に上洛を果たした信長は皇室御料地の回復、御所の修理、資金援助などを行い、朝廷の権威を回復させたとされている。

 その裏には足利将軍家の牽制と言う意味合いもあったものの、信長が朝廷の権威を回復させたのは言うまでもあるまい。

 さて、今川が天下を取った世界である。

 当然と言えば当然だが・・裕福である。

 故に彼らが貧乏を経験したのはほんの少しだ、だからだろうか公家ってのはどこか傲慢なところが見え隠れしている様にも私は思う。

 近衛家は別なんだけどな、近衛家は京都を三好が支配していた際に朝廷と三好をなんとか繋げようと悪戦苦闘していた。

 かつて京都を支配していた三好だが、はっきり言って超がついてしまう程のケチだった。少々語弊があるかも知れない、朝廷に回す余裕が無かったと言うべきだったのだろう。

 まぁともかく公家という生き物は私にとって好まざる者たちであるということだけは伝わったように思う。

 まぁ大事なのはこの後なのだがな、馬揃いは恙無く終了した。

 朝廷の使者が目の前で帝からの言葉、と言っても変わりに変な公家が読んでいるだけだがそれを賜る。

 そして甥の氏真とこの軍の総大将である義以だけが御所に上がる、そこで帝から御言葉を賜わり式は終了だ。

 「~願わくば天下に太平を齎さん」

  あ、終わった?終わったな。

 「皆、聞いたな。天下万民のため、日本ひのもとの為命を賭して戦おう!」

 おおおお!と言う威勢の良い声が聞こえる、私はその裏で義以の背中を軽く叩き氏真に着いて行くように指示する。

 ヨタヨタと便りなさげな背中を見せながら義以は歩いて御所の内部へと消えて行った。

 「義以様・・・・」

 「なんぞ、心配か直房?」

 解散した後、各々が九州への旅路の準備を始める中、私は直房が漏らした主人を心配するかのような一言を私はたまたま聞いてしまった。

 「クク・・・・こればかりは私の一存では如何にもなりませぬからなぁ」

 「まぁ、それはそうだな」

 義以、頼りなさの集合体みたいな男だ。光秀や左近に鍛えられた直房と差があるのは仕方ないんだけどなぁ・・・・

 「はっきり言いましょう、現状あの方に軍事の才能はありません。ほぼ皆無と言って良いでしょう」

 「お前、義以から疎まれて無いか?」

 「義以様は某を無ニの男と言って下さいます、殿からも義以を頼むと強く言われておりまする」

 マジかよ・・・・猫被りすぎじゃねぇ!?

 一体どこの世界にこんな悪魔みたいな男に対して息子を頼むとか言えるんだろうな?

 不思議でたまらないね、まぁ優秀なのは確かだ。一眼見れば腹黒だと気付くだろうけど。

 「まぁ、良い。その信頼裏切るなよ」

 「爺様と大殿の如き関係性を目指します、父上と殿のようにも」

  それできんのかな。

 我々の関係は私がボンクラ、兄上天才の関係から始まっている。

 私の息子が普通、氏真もまぁ普通かな?

 そして我が孫の直房が天才で、義以がポンコツである。

 あら、3代かかって力量が変化したな。

 まぁこんなこともあるだろう、同じ血なんだから後は産まれた後の努力の差だろうな。

 箱入り息子だなぁ、氏真は子育ての才能が無かったらしい。

 「まぁ、義以様は将や兵では無い。王だ、王に才能なぞ必要無い」

 「王は誰でも良いと?全く爺様らしい言葉ですな」

  皮肉かおめぇ?

 「誰でも良いと言う訳では無いが、

 そう、王は誰でも良いのだ。誰が王でもその王がそれなりに真面目で阿呆では無く、周りもそれなりに優秀なら規模にもよるが日本は回るのだ。 

 「ならば我らでも良くは無いですか?」

 「なんだと?」

 急に何良い出すんだお前?あと言葉に気を付けろよここ外だからな!?

 「いつまでも二番手に拘る必要はありますまい、本家をーー」

 「私の眼が黒い内にその続きを言うことは許さん」

 「はっ」

 馬鹿野郎、私の老後の平穏を邪魔する気かおめぇ!

 しかも問題なのが直房、やろうと思えばそれができてしまう点である。下手すれば天下を巻き込む大騒動になるだろう。

 肝心の目の前にいる直房は「今はその時期では無いと、かしこまりました」とか言ってるし何なんだ一体・・・・

 まぁいいや、釘は刺したし私の死後何が起こるか何て知らんわ。











 「ご隠居様・・・・」

 「お藤、どうかしたか?」

 お藤が、出てきた。

 お藤には最近、九州大名たちの様子を見に行かせたばかりだ。彼女の顔色は悪い、なんだ?やな報告かオイ。

 「急を要する質問です、このような姿でのご報告をお許し下さい!」

 「構わん、なんだ?」

  良く見れば、お藤の姿はボロボロであった。

 どんな時でも身綺麗にしてから来たお藤が、ボロボロ?どういう事だ?

 そんな思考の中、私はお藤の報告を黙って聞いていた。

 聴き終わった後の感想?『こうしちゃいられない』である。

 背後にいた直房が青ざめるのが見える、私は珍しく無い頭をフル回転させてここからの最善手を考えていた。

 「!!速すぎる!」

 「爺様の情報源、最早疑う余地も無く」

 直房も驚いたように瞳孔を大きく広げる。私はお藤に感謝を伝えた後に身体を労うよう指示を出して前を向いた。

 「直ぐに諸侯に伝えよ!大将の号令待ついとま無し、各々方最速で九州勢の援護に向かえと!」

 矢継ぎ早に、辺りにいた奴らに指示を出して行く。

 「爺様!大殿と義以様には!」

 「殿と義以様は御所に入られたばかりだ、恐らく戻るまい」

 「軍の大事に関わること、我らが勝手に決めて良いものでしょうか」

 「責は全て私が取る!其方の軍は任せたぞ!」

 そう言うと、私は馬に乗り駆け始めた。





 その数刻後、氏真、義以双方共に儀式終了後に報告を受ける。

 その頃には輝宗からの連絡を受け大部分の将が京を発した後だった、輝宗の指示はこうだ。

『いすぱにあの船、九州近くに陣取り』と。

 輝宗たちは見誤っていたのだ、スペイン軍が九州に到着するのは早くとも1月後であると。

 いるのだ、相手には彼らの常軌をを逸するような船の達人が・・・・

 恐らく開戦までに輝宗たちは間に合わないだろう、九州にある軍は九州の者たちだけでスペイン軍を止めねばならなかった。

 開戦まで、後僅か。

 

 



 
 

 

 
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