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嫁探し編
いつか、また
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誰もいない道を1人の男が歩いている。
金髪の獅子、裏でそう呼ばれる男の身体は思いの外細い。
傍目から見れば一般的な男性と見た目的には殆ど変わらないだろう、だがその身体に鋼鉄が宿っていることを母国では多くの人が知っている。
鋼鉄以上であることを知っているのはほんの一握りだが。
キョウ、輝宗からはカトーと呼ばれる男の元の世界の名前は加藤×〇
今の彼の職業はーー
「船長、少々お痛がすぎませぬか?」
船長、そう呼ばれたキョウはそれを言った本人に目を向ける。
そこにいたのは、黒い軍服を着こなした老人だった。皺だらけのその顔から刺す目線がカトーを貫く。
白髪と、その顔だちから60代ぐらいを連想する。実際は72だが、まだまだ後進に道を譲るつもりは艶ほども無いらしい。
彼の名はディエゴ・アラトリステ、軍を率いる将の1人でありキョウの右腕だ。
今回の侵攻のNO.2でもある。
どうやら一部始終を見ていたようだ、ディエゴはキョウのあまりの狼藉ぶりに苦言を呈する。
「敵陣に独断で乗り込み、戦闘になりかけるなど常識がどうとかの話ではありませんぞ!」
「なんだ、心配だったのか爺?」
そんなことは無い、そう言うかのようにディエゴは首を横に振る。
「私の分も残して下さらねば勿体無いでは無いですか?」
ディエゴにとって、キョウは力の象徴であり強さという一点のみならば崇拝にも値する男だ。
単身敵陣に乗り込み、和睦を纏めてくる司令官。
絵空事だと多くの人々が鼻で笑うそれを地で行う男などそうそういる筈も無い。
「うん、やはりお前はそっちの顔の方が良く似合っているぞ。」
「おお、これは失敬。」
獣のような笑み、親しい相手をもぞっとさせるようなその笑みをディエゴは瞬時に元へと戻す。
次の瞬間には彼はいつもの優しげな笑みに顔を戻していた、まるで始めから何も無かったかのように。
「友人との再会は為ったようで?」
「あぁ、桃ちゃん、ハンゾー、ツッキー。皆いるみたいだ、再会が待ち遠しいね。」
そう言いながらキョウは、ディエゴから手渡された軍服に着替えて行く。
瞬時に、紅い外套を羽織る王が君臨した。
深淵の如き黒と、鮮血を連想させるような紅が絡みあったようなその服は彼オリジナルのものだ。
胸元に光る金のバッチ、それは母国の軍においても彼が絶対的な権力者であることを示していた。
「軍は後どのくらいでここに到着する?」
キョウは聴く、この国にとっての滅びの歌を。
「まもなくで、1ヶ月も経たずにこの国は滅びましょう。」
「フフフ」
笑いをぐっと手で抑える、だが世には止められないものも存在するのだ。
「それにしても、あの男は殺さなくても良かったのですか?」
あの男、瞬時に輝宗だと判断したキョウはディエゴに向き直る。
「見つかったのか?」
「完璧に、船長と話をしている際も何度も目を泳がせるフリをしてこちらに視線を向けて来ました。」
「ふーん、相変わらず流石だな」
正直、キョウの目でも大桃蓮という男の正体は謎という一言に尽きる。
だがその戦闘スタイルは知っている、全ての戦士の道の果ての先にある頂。そこにあるのは間違い無いだろう。
とは言え、かつての輝宗にあった血の匂いというものが無いというのにキョウは注目する。
加えてあの痩せ細った肉体にも、年齢的には50代程度の肉体のどこにも強さを感じとることができなかったのだ。
「まさか、新しい強さを開拓したとかそんなんじゃ無いだろうな。それだったら相当やりごたえあるぞ?」
「流石は、船長が気にかける程の男ということですかな?」
「全くだ、爺あの男は」
「手出し無用、理解しておりますとも」
恭しくディエゴが頭を下げる、よろしいとばかりにキョウは前を向くと笑い始めた。
「さぁ、始めよう!世界中から集めた英雄たちがこの日本に来る大戦争を!!!!」
牙を剥く世界、対するは日本最高峰の英雄たち。
勝利は、結末の天秤は、どちらに傾く。
◇◇◇◇
きまずぃぃぃ!
馬で歩く際も汗が止まらない、誰も何も言わない、そんな時間がず~~~~っと続いている。
比較的朗らかな雰囲気だった旅路において明らかな異常事態だ、だが誰もその雰囲気を打破しようとする者はいない。
その理由は、先頭で肩を落としながら歩く幸村の存在である。
全身から負のオーラ、具体的に言えば女性にフラれた男性の怨念の如きオーラが全身から出ている。
慶次もお藤も、そんな幸村に何も言わない。
「で、桃ちゃん。新しい爆薬なんだけどね...」
「うんうん、そうだね...」
元気なのは千代だけなのである、てかそもそも千代に結婚とか無理だろ!
なんでこんな危険人物に恋とかしちゃったの幸村!?
自分以外の誰かを毎度自爆させるような女に何故恋したのか、初陣で守ったことによる吊り橋効果でも発動しちゃったのかな?
なんかその説が濃厚に為ってきた、よしこのことは忘れよう。
千代だが、2時間強制ゲンコツお叱りコースを涙目で乗り越えて直ぐに元気になっていた。
今後はあまり自爆させないよう注意してくれるらしい。
カトーのことを話したら「自爆要員2号!?」とか言ってたのでこの女全く反省していないのが手に取れる。
私とカトーは前世ではどちらも千代の実験体だったコンビだ、あの地獄の日々を思い出すだけで身が震える。
毎回思うんだが、なんで千代と友達だったんだろう。
さて、カトーのことである。
カトー、この世界でもゴツいな本当。
なんであんな汚い服を着ていたのかは謎だが、まぁそれはそれで良いだろう。
べつになんでも良いしな。
それよりもあれだ、火事の秘密ってなんだ?
火事って、花火の引火じゃあ無かったの?
正直私の中で前世の記憶というものはもう殆ど残っていないと言っても良い、たまに朧げに思い出せるだけだ。
夢のような記憶の中に一際残っているのが、私たちの最期、あの火事の記憶というだけのものなのだ。
次に会ったら教えてくれるらしいが、なんかロクなものになる気がしないな。
嫌だわぁ、皆で酒飲んで寝たいだけなんだよなぁ。
「ご隠居様、もう少しで京都に着きますな。」
「あ、あぁそうだな。」
そうだった、どうしよう幸村の嫁・・・・
昌幸殿はなんか城に置いてきちゃったし、せっかくだから京まで来てくれるように伝えておいた方が良いかな?
うん、そうしよう。後でお藤にお願いしておこう。
あぁ、もう直ぐ京都だ...
結局、昌幸殿と相談して公家の子を紹介することでことなきを得た。
幸村は、心ここに有らずといった感じで承認する。
いや、ごめん...マジでごめん...
どうしてこうなった?
金髪の獅子、裏でそう呼ばれる男の身体は思いの外細い。
傍目から見れば一般的な男性と見た目的には殆ど変わらないだろう、だがその身体に鋼鉄が宿っていることを母国では多くの人が知っている。
鋼鉄以上であることを知っているのはほんの一握りだが。
キョウ、輝宗からはカトーと呼ばれる男の元の世界の名前は加藤×〇
今の彼の職業はーー
「船長、少々お痛がすぎませぬか?」
船長、そう呼ばれたキョウはそれを言った本人に目を向ける。
そこにいたのは、黒い軍服を着こなした老人だった。皺だらけのその顔から刺す目線がカトーを貫く。
白髪と、その顔だちから60代ぐらいを連想する。実際は72だが、まだまだ後進に道を譲るつもりは艶ほども無いらしい。
彼の名はディエゴ・アラトリステ、軍を率いる将の1人でありキョウの右腕だ。
今回の侵攻のNO.2でもある。
どうやら一部始終を見ていたようだ、ディエゴはキョウのあまりの狼藉ぶりに苦言を呈する。
「敵陣に独断で乗り込み、戦闘になりかけるなど常識がどうとかの話ではありませんぞ!」
「なんだ、心配だったのか爺?」
そんなことは無い、そう言うかのようにディエゴは首を横に振る。
「私の分も残して下さらねば勿体無いでは無いですか?」
ディエゴにとって、キョウは力の象徴であり強さという一点のみならば崇拝にも値する男だ。
単身敵陣に乗り込み、和睦を纏めてくる司令官。
絵空事だと多くの人々が鼻で笑うそれを地で行う男などそうそういる筈も無い。
「うん、やはりお前はそっちの顔の方が良く似合っているぞ。」
「おお、これは失敬。」
獣のような笑み、親しい相手をもぞっとさせるようなその笑みをディエゴは瞬時に元へと戻す。
次の瞬間には彼はいつもの優しげな笑みに顔を戻していた、まるで始めから何も無かったかのように。
「友人との再会は為ったようで?」
「あぁ、桃ちゃん、ハンゾー、ツッキー。皆いるみたいだ、再会が待ち遠しいね。」
そう言いながらキョウは、ディエゴから手渡された軍服に着替えて行く。
瞬時に、紅い外套を羽織る王が君臨した。
深淵の如き黒と、鮮血を連想させるような紅が絡みあったようなその服は彼オリジナルのものだ。
胸元に光る金のバッチ、それは母国の軍においても彼が絶対的な権力者であることを示していた。
「軍は後どのくらいでここに到着する?」
キョウは聴く、この国にとっての滅びの歌を。
「まもなくで、1ヶ月も経たずにこの国は滅びましょう。」
「フフフ」
笑いをぐっと手で抑える、だが世には止められないものも存在するのだ。
「それにしても、あの男は殺さなくても良かったのですか?」
あの男、瞬時に輝宗だと判断したキョウはディエゴに向き直る。
「見つかったのか?」
「完璧に、船長と話をしている際も何度も目を泳がせるフリをしてこちらに視線を向けて来ました。」
「ふーん、相変わらず流石だな」
正直、キョウの目でも大桃蓮という男の正体は謎という一言に尽きる。
だがその戦闘スタイルは知っている、全ての戦士の道の果ての先にある頂。そこにあるのは間違い無いだろう。
とは言え、かつての輝宗にあった血の匂いというものが無いというのにキョウは注目する。
加えてあの痩せ細った肉体にも、年齢的には50代程度の肉体のどこにも強さを感じとることができなかったのだ。
「まさか、新しい強さを開拓したとかそんなんじゃ無いだろうな。それだったら相当やりごたえあるぞ?」
「流石は、船長が気にかける程の男ということですかな?」
「全くだ、爺あの男は」
「手出し無用、理解しておりますとも」
恭しくディエゴが頭を下げる、よろしいとばかりにキョウは前を向くと笑い始めた。
「さぁ、始めよう!世界中から集めた英雄たちがこの日本に来る大戦争を!!!!」
牙を剥く世界、対するは日本最高峰の英雄たち。
勝利は、結末の天秤は、どちらに傾く。
◇◇◇◇
きまずぃぃぃ!
馬で歩く際も汗が止まらない、誰も何も言わない、そんな時間がず~~~~っと続いている。
比較的朗らかな雰囲気だった旅路において明らかな異常事態だ、だが誰もその雰囲気を打破しようとする者はいない。
その理由は、先頭で肩を落としながら歩く幸村の存在である。
全身から負のオーラ、具体的に言えば女性にフラれた男性の怨念の如きオーラが全身から出ている。
慶次もお藤も、そんな幸村に何も言わない。
「で、桃ちゃん。新しい爆薬なんだけどね...」
「うんうん、そうだね...」
元気なのは千代だけなのである、てかそもそも千代に結婚とか無理だろ!
なんでこんな危険人物に恋とかしちゃったの幸村!?
自分以外の誰かを毎度自爆させるような女に何故恋したのか、初陣で守ったことによる吊り橋効果でも発動しちゃったのかな?
なんかその説が濃厚に為ってきた、よしこのことは忘れよう。
千代だが、2時間強制ゲンコツお叱りコースを涙目で乗り越えて直ぐに元気になっていた。
今後はあまり自爆させないよう注意してくれるらしい。
カトーのことを話したら「自爆要員2号!?」とか言ってたのでこの女全く反省していないのが手に取れる。
私とカトーは前世ではどちらも千代の実験体だったコンビだ、あの地獄の日々を思い出すだけで身が震える。
毎回思うんだが、なんで千代と友達だったんだろう。
さて、カトーのことである。
カトー、この世界でもゴツいな本当。
なんであんな汚い服を着ていたのかは謎だが、まぁそれはそれで良いだろう。
べつになんでも良いしな。
それよりもあれだ、火事の秘密ってなんだ?
火事って、花火の引火じゃあ無かったの?
正直私の中で前世の記憶というものはもう殆ど残っていないと言っても良い、たまに朧げに思い出せるだけだ。
夢のような記憶の中に一際残っているのが、私たちの最期、あの火事の記憶というだけのものなのだ。
次に会ったら教えてくれるらしいが、なんかロクなものになる気がしないな。
嫌だわぁ、皆で酒飲んで寝たいだけなんだよなぁ。
「ご隠居様、もう少しで京都に着きますな。」
「あ、あぁそうだな。」
そうだった、どうしよう幸村の嫁・・・・
昌幸殿はなんか城に置いてきちゃったし、せっかくだから京まで来てくれるように伝えておいた方が良いかな?
うん、そうしよう。後でお藤にお願いしておこう。
あぁ、もう直ぐ京都だ...
結局、昌幸殿と相談して公家の子を紹介することでことなきを得た。
幸村は、心ここに有らずといった感じで承認する。
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