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地球最後の日

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 ニュース速報です。

 テレビを見ているみなさん、落ち着いて聞いてください。ただいま地球に隕石と思われる物体が接近しており、世界中の科学者や数学者が出した結果……明日の十二時には謎の物体が衝突し、地球は粉々になってしまうとのことです。以上ニュース速報でした。


 おいおい、どうなってんだよ。

 明日の十二時って、、あと十時間しか残ってないじゃないか!SNSも隕石の話題でもちきりだよ。

 あーあ。オレの人生もう終わりかよ。
 

 いや! 待てよ! 
 
 オレの人生がこんなんで良い訳ないじゃないか!

 残された時間の中で、何ができるのか考えてみたが、真っ先にオレが思いついたのは、童貞のまま死にたくない。男としての小さなプライドであった。

 初めては本当に好きな人とやりたかったが、こんな状況じゃ仕方ない。オレはすかさずスマホを取り出し、風俗サイトを細かく見て回った。

 サイトを見始め三十分が経った頃、小柄で黒髪ロングなオレ好みの女の子を発見した。「オレの初めてをお前にくれてやろう!」頭の中で妄想しながら、お店へ電話をかけた。


「あの、、すいません。○○ちゃん指名したいんですが……」
 
「お前バカか? こんな一大事に出勤してる子なんているわけないだろ! お前みたいなバカは一生童貞でいろ!」

「ガチャ……ツー……ツー」


 盲点だった……


 普通に考えたら分かるはずなのに、なぜ営業してると思ってしまったのか……

 残された時間が短い焦りから、オレの思考が狭まってしまったと後悔し、指名する予定だった女の子をおかずに、一人でことを済ませた。

 スッキリしたオレは、少し小腹が空いてきたので、SNSを使い近くのご飯屋さんを調べてみた。

 人生最後の食事くらい豪華なものを食べたいもんな。などと思っていたが、、

 あ! 待てよ!
 
 オレは先ほど学習したではないか。
 
 営業をしていない可能性があることを……

 オレは急になりふり構っていられなくなり、SNSで気になったご飯やさんに、片っ端から電話をかけ続けた。

 諦めかけながらも電話をかけ続けた甲斐あって、本日営業をしている個人経営のお寿司屋さんに繋がった。

「あの、、今日って、、営業してますか?」
 
「おう! やってるよ!」 

 オレはとてつもなく嬉しかった。むしろ神様のお導きかと思ったくらいだ。

 店主に今すぐお店に行くことを伝え、オレは部屋中のお金をかき集めお寿司屋さんに向かう事にした。

 そして家を出ようとドアノブに手をかけたとき、オレはまたしても気づいてしまった。

 電車が動いていない可能性を……

 危ない危ない……先ほど同じ失敗をしたではないか。

 こんな状況でも冷静な判断ができた自分に、賞賛を送ってやりたい気持ちはあったが、時間は刻一刻と迫っていたので、一年前に買った、タイヤがパンクしている自転車でお寿司屋さんへ向かった。

 電車で向かえば二十分ほどで着くはずなのだが、オレが乗っているのはパンクをしている自転車だ。五十分ほど時間をかけお寿司屋さんに到着した。

 お寿司屋さんに着くと、オレは衝撃的な光景を目にしてしまった。


 そうだ、、お寿司屋さんに繋がっている長蛇の列だ。

 オレはまたしても自分を恥じてしまった。

 な、、なぜ気づかなかったのかと、、

 誰だって人生最後の食事は、豪勢なものを食べたいはずだ、なのにオレは……オレは……

 気づいたら目には悔し涙が溢れていた。

 一応、店主に何時間待ちか聞いてみたところ、三時間待ちだそうだ。

 ここでオレは究極の二択に迫られた。

 このまま帰るか三時間待つか……

 でも残された時間はあと僅か、そんな貴重な時間を使っていいものなのか。そう自問自答していると、オレはまたしても気づいてしまった。


 お寿司のネタが無くなる可能性を……


 フッフッフ……先ほど二度も失敗したからこそ気づいてしまうオレの頭脳、自分の成長に少し驚きながらも自転車をこいで家に帰った。

 オレは家に着きお湯を沸かした。

 そうだ、カップラーメンを食べる準備をしているのだ。

 カップラーメンにお湯を注いだ後、またしてもニュース速報が流れた。

 隕石らしき物体が凄い勢いで地球に向かって来ています。科学者の測定結果では、あと五分もしないうちに地球にぶつかってしまいます。

 そのニュースを聞いた途端、オレは急いでカップラーメンを口にした。

 時間いっぱい待てていないせいか、麺が少し堅い、が気になんてしてはいられない。

 ガリガリとカップラーメンを食べている最中、上空から隕石が落ちてきた。

 隕石が落ちたとたん、凄い衝撃で、ビルや建物が崩壊していき、地球が崩壊してしまった。


 そしてオレは気づいてしまった。
 地球最後の日でも、結局いつもと変わらない日常を送っていたことを。
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