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ありがとうとさよならと(1)
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待機命令って、高校でいう停学みたいなものなのかな。
小学生の私にはまだよくわからないけれど、ひたすら家にいなくちゃいけないってことは知っている。
仕事が来なくなってもう一週間。
毎朝起きてから寝るまでだらだらだらだら。いい加減キノコが生えちゃいます。
リビングのソファーに座って今日はどうやって時間を潰そうかと悩んでいると、ポンッと肩を叩かれた。
なあに、クロノさんてば。変な呼び方をしないでよね。
「久しぶり、ヨミちゃん」
って、ええ! クロノさんじゃないじゃん!
「レイくんっ? 私の名前はこよみだよぅ……」
「そうだったの? ごめんね、てっきり」
クロノさんが三文字を覚えられないだけです。
振り向いた私の近くにいたのは、眩しいくらいの美少年だった。
でも、どうして、なんでここに。
私が言葉を失っていると、リビングに入ってきたクロノさんが呆れたみたいに何黙ってんだ、と呟いた。
そりゃあ黙っちゃうでしょ。あのあとレイくんがどうしていたのかも知らなかったのに。
「アカツキのこと、片付いたみたいだな」
「え、片付いたって」
「データを確認して、アカツキが不正でレイに案内させた魂を戻したらしい。閻魔大王様はやることのスケールがちげえよな」
ということは、みんな元通りになったってこと?
「そういうこと」
「え、すごい! でも、その、アカツキさんは……?」
私が聞くと、クロノさんはニッと笑った。
「処分として、しばらくは罰を受けるみたいだなあ、そんで、見習いからやり直しだ」
「見習いからやり直し……」
レイくんは知っていたようで、笑顔をたたえたまま口を開く。
「僕はそれまでフリーのタマジョとして色々なところで頑張るんだ」
「それって……」
「うん、アカツキ様を待つよ」
迷いがなくて、まっすぐな瞳。少し会わないうちに、ずいぶん表情が柔らかくなったように思う。
私たちの間に一枚の紙が差し出された。
クロノさんがそれをひらひらとさせる。
「これがその報告だ。読んでみろ」
読んで見ろって、これ、なんかすごくびっしり文字が書いてありません?
「む、難しそう」
「いいから、読んでみろって」
まったく、俺様なんだから。
クロノさんは私に紙を渡して、レイくんと視線を合わせる。二人はもう読んだ後っていうことだね。
小学生の私にはまだよくわからないけれど、ひたすら家にいなくちゃいけないってことは知っている。
仕事が来なくなってもう一週間。
毎朝起きてから寝るまでだらだらだらだら。いい加減キノコが生えちゃいます。
リビングのソファーに座って今日はどうやって時間を潰そうかと悩んでいると、ポンッと肩を叩かれた。
なあに、クロノさんてば。変な呼び方をしないでよね。
「久しぶり、ヨミちゃん」
って、ええ! クロノさんじゃないじゃん!
「レイくんっ? 私の名前はこよみだよぅ……」
「そうだったの? ごめんね、てっきり」
クロノさんが三文字を覚えられないだけです。
振り向いた私の近くにいたのは、眩しいくらいの美少年だった。
でも、どうして、なんでここに。
私が言葉を失っていると、リビングに入ってきたクロノさんが呆れたみたいに何黙ってんだ、と呟いた。
そりゃあ黙っちゃうでしょ。あのあとレイくんがどうしていたのかも知らなかったのに。
「アカツキのこと、片付いたみたいだな」
「え、片付いたって」
「データを確認して、アカツキが不正でレイに案内させた魂を戻したらしい。閻魔大王様はやることのスケールがちげえよな」
ということは、みんな元通りになったってこと?
「そういうこと」
「え、すごい! でも、その、アカツキさんは……?」
私が聞くと、クロノさんはニッと笑った。
「処分として、しばらくは罰を受けるみたいだなあ、そんで、見習いからやり直しだ」
「見習いからやり直し……」
レイくんは知っていたようで、笑顔をたたえたまま口を開く。
「僕はそれまでフリーのタマジョとして色々なところで頑張るんだ」
「それって……」
「うん、アカツキ様を待つよ」
迷いがなくて、まっすぐな瞳。少し会わないうちに、ずいぶん表情が柔らかくなったように思う。
私たちの間に一枚の紙が差し出された。
クロノさんがそれをひらひらとさせる。
「これがその報告だ。読んでみろ」
読んで見ろって、これ、なんかすごくびっしり文字が書いてありません?
「む、難しそう」
「いいから、読んでみろって」
まったく、俺様なんだから。
クロノさんは私に紙を渡して、レイくんと視線を合わせる。二人はもう読んだ後っていうことだね。
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