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学園

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この1週間、色々なことがあったが……ようやく実習の日になった。
俺はこの1週間でアイギスを大分使えるようになっていた。
それもこれも、リヴィアの鬼畜な特訓とリュークやティードとの朝練の成果だ。


「全員、ギルドカードは持っているな?
パーティー登録も済んでいるみたいだな。
パーティーリーダーはギルドカードを見せに前に来い」


仕方なく、俺はパーティーリーダーとして前に出るとギルドカードを見せる。


「……これは、予想外だな」


先生は俺の見せたギルドカードに思わず顔をしかめた。
その視線の先にはランクが書かれている。
個人とパーティーの両方だ。
パーティーランクの一番下はFなので精々上でもE、Dあたりだと思っていたのだろう。


「カイのパーティー以外は角兎、ゴブリンそれぞれ3体の討伐。
カイのパーティーは昼飯の材料調達と出来れば作ってあると有難い」


なんか面倒な事を任された。
Aランクってロクな事ねぇ……。


「先生」


レクトールが手を上げる。


「ん?
なんだ、レクトール」

「……何故、カイのパーティーだけ違うのですか?」


それは俺達以外、共通の疑問であった。
その質問に先生は溜息を吐いてから答える。


「カイのパーティーだけランクが違うからだ」

「ランクが違うと言っても……」


それでも納得が行かないらしいレクトールは先生にくってかかる。
そんなレクトールを諭すような口調で先生は語り出す。


「この常時依頼はFランクの依頼だ。
Fランク依頼を受けられなくなるランクは知っているか?」

「…えぇ、確かBランク、ですよね」

「あぁ、そうだ。
カイのパーティーはその規定ランクを超えている。
よって、この依頼は受けられない。
そのためカイのパーティーは別の内容となっている。
……いいな?」

「カイのパーティーがBランク以上!?
カリンは1週間前までギルド登録すらしていなかったのにですか!?」


カリンはそのレクトールの言葉に苦虫を噛み潰したような表情になる。
それはリナも同じだ。


「カイのギルドカードにはそうなっているのだから認めろ」

「っ……カイ!
カードを……」

「いいぞ」


俺はレクトールにカードを渡す。
するとピクリと眉を動かしてから悪かった、と口にして俺にカードを返す。


「…月の旅人ならば聞いたことがあるからな」

「そうか」


俺は短く返事を返すとレクトールは自分のパーティーへ戻っていく。


「先生、俺からも1ついいですか?」

「……なんだ、カイ」

「狩りの対象と場所に指定はありますか?」


ならば余分なことを気にせずに済むな。
指定がなくてよかった。
これだけでかなり楽になったな。
        

「……指定はない」

「分かりました。
では、適当に狩っておきます」


どうせならばレアなヤツを狩って調理してみたいな。
あぁ、楽しみだ。
美味いもんを探すか。
山菜や果実もほしいな。
川魚も釣り上げるか。
……いや、それは余裕があればだな。


「……あぁ」


何故か先生は複雑そうな表情をしたが……気にしないでおこう。
気にしたら負けのような気がした。

他のパーティーと先生が出発したのを確認してから俺達は動き出した。
俺達にはいろいろと便利なものがあるからな。


「リューク、頼む」

「おう!
任せとけ!」


俺がリュークに頼んだのは風の魔法の1つだ。
これはかなり役に立つからな。


「この辺りを探れ」


リュークがトリガーにしている言葉を聞けば分かるだろうが……風を伝い、周囲の反応を探る魔法だ。
俺にも出来ない事はないのだが苦手な魔法で何より無駄が多いのだ。
その点、リュークはこの魔法が得意ようでリヴィアにも合格点を貰っている。
まぁ、適材適所ってもんがあるからな。


「レッドウルフ3体、オーク2体だな」

「案内を頼むぜ」

「おう!」


俺とリュークはいつも通りに進んで行くのだが……。
そんな俺たちに待ったをかける人物がいた。


「ちょ、ちょっと待つっすよ!
オークって確かDランクじゃないっすか!!」

「違うぞ?」

「……は?」

「ジェネラルだからC、B辺りだ」


リュークは淡々と口にする。
だが、ティードやカリン、リナにとっては重くのしかかっているようだ。
あまり考えすぎない方がいいと思うが。

まぁ、その程度であれば楽だが。


「ジェネラルって……無理ですよ……」

「私達はFランクよ…?」

「お、おかしいっすよ……」


何故か急に怯え出す3人に俺とリュークは疑惑の目を向けた。
何故、ジェネラルごときに怯える必要があるのか、という視線に3人は余計縮こまる。
ワイバーンよりは全然弱いからな。
リヴィアとの特訓よりもよほど楽だろうしな。


「それに、Bランクだとしても問題無いからな?
俺もカイもBランクだし、パーティーとしてはAランクだしな。
それに、何かあってもカイが守るからな」

「おう。
だから、あんま気にすんなよ。
俺は守護神の加護持ちの守護者だぜ?」


俺とリュークがそれぞれ安心させるように言うと3人は適度に緊張がほぐれたのか少しだけ笑みを見せた。


「カイ、ちゃんと守りなさいよ」

「お、お願いします…」

「自分も頼むっす!」

「任せとけ」


こうして、俺達パーティーはオークとウルフ狩りに森へと入っていくのだった。
いつもよりも警戒心を深めながら、俺はいつでもアイギスを発動させられるようにしておく。



「カイ!
止まれ!」

「っ…危ねっ!」


リュークの声に従い、止まると勢い余って転びそうになるところを、寸前のところでカリンが咄嗟に手を掴んでくれたおかげで転ばずに済む。


「サンキュー、カリン」

「っ…いいわよ、お礼なんて」


カリンは照れたようにフンと、顔を逸らす。
そんなカリンに俺は嫌われたか?と心配になりつつも前の状況を確認する。


「っ…おいおい…嘘だろ…。
ジェネラルだけじゃねぇのかよ…。
メイジもいるじゃねぇか……」

「カイ…多分、子供だと思うが…反応が3つ、あの洞窟の奥にある。
しかも、あの中にキングらしい反応もあるんだが……」

「…嘘だろ、おい…。
って事はオークの群…オークだけのミニスタンピード、みてぇなもんってか…」


俺とリュークはまずい、と判断し、一旦離れることにした。
だが、俺もリュークも子供の反応、というのが頭から離れない。
クソっと小さく呟きながらパーティーメンバーに説明を始める。


「…ティード、お前ここからギルドにどれくらいで行ける?」

「ここからっすか?
そうっすね…5分あれば大丈夫っす」

「5分、か…。
カリンとリナは……」

「私なら20分以上はかかると思うわ」

「私はそれ以上かかると思います……」


俺は小さく舌打ちをする。
それは、俺の実力不足を恨んでの事だ。


「…分かった。
ティード、お前はギルドへ行って俺とリュークからの伝言だとリヴィア、ギルドマスターに伝えろ。

F~Cランク依頼のうち、森に関する依頼は全て停止しろ。
オークの群、キングらしい反応あり。
子供3人もいる。
俺とリュークは討伐を開始する。
…出来るだけ早く来てくれ。

頼んだぞ、ティード」

「…了解したっす。
それと、訂正するっすよ。
自分、魔法使えばもっと早く着くっす。

風人再来っすよ!」


ティードはトリガーを口にすると物凄い速さで森を下り、ギルドへと向かっていく。


「リナとカリンは先生や他のパーティーに伝えてくれ」

「…嫌よ。
私も2人と行くわ」

「わ、私も…」

「他の奴らが危ないから駄目だ」


俺が言う前にリュークが口にする。
それでもカリンは動かない。


「…けど!」

「カリン、リナ。
俺とリュークを信じてくれ。
大丈夫だ。
俺とリュークは負けねぇから」


俺はそう言って笑うとカリンは少しだけ声を震わせた。


「……ずるいじゃない。
…でも、これだけは引くつもりはないわ。
兎に角、伝えられればいいんでしょう?
なら、魔法を使えば問題は無いわ。

………風の伝え」


カリンはトリガーを口にすると俺に話せというようにつついてくる。
俺はそれに頷くと一気に話し出す。


「カイだ。
俺達の近くにオークの群がいる。
キングの反応もあるし、確実だ。
その奥に子供も3人いる。
って事で、俺達のグループは討伐に入る。
だが、ジェネラル、メイジが徘徊している場合がある。
…すぐに森を下りろ。
もうすぐギルドから応援が来るはずだからな。

以上だ」


俺はカリンに向かって頷くとカリンは魔法を解除する。
そして問題はないわね、とオークの討伐に着いてくる気らしい。

それから作戦を立てているとティードが帰ってきた。
……随分早く感じるが……。


「つ、伝えてきたっすよ……」

「おう、サンキュ。
リヴィアからは?」

「すぐに向かう、って言われたっす」


リヴィアが直接来るようだ…。
まぁ、それはそれで置いとくとして、だ。


「ティードも連れてくか。
じゃあ、俺とリュークが前衛、リナは中衛、カリン、ティードは後衛だ。
ティードを後衛にするのは背後の敵を警戒しての事だ」

「了解っす」

「分かったわ」

「分かりました」


全員が返事をしてからリュークが号令をかける。


「じゃあ、行くぞ!」


そして、俺達パーティー、月の旅人はオークの群の討伐、そして子供達の救出に向かうために動き出した。
まさか、こんなことになるとはな……。
まぁ、絶対に負けるつもりはないが。


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