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プロローグ

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俺は、自分から流れる血を見てただ、呆然とし、既に回らなくなってきている頭で考える。


あぁ……俺、死んじまうのかな……。


と。
この時、あまりにも呆気なく、彼の人生は終わりを告げようとしていた。

だが、そんな彼の表情はどこか満足そうであり、誇らしげであった。







彼、都木涼は孤児院で育てられた。
物心ついた時には既に孤児院にいて、それが当たり前であった。
両親が誰かも分からないままそこで育っいった涼にとって、孤児院にいるガキ共は大切な存在になっていった。

そして、大人になるとガキ共の面倒を見ながら、仕事をして得た収入の中で自分の生活費を削り渡していた。
何より、ガキ共が飢えずにすむように願って。

そんな事をしていた俺はいつしか自分の生活さえ危うくなり、バイトを増やし始めた。
本当は正社員になりたかったのだが孤児院育ちということと中卒という2つの理由から全て落ちてきた。

そして、今日も昨日と同じようにバイト先へと向かっていた。
だが、昨日までと違うことは1つ。

中学生らしき少女に向かって、勢いよく車が突っ込んでいくのだ。
それを気付いた様子は無いし、周りのヤツ等も誰も助けようともしない。
その周りの様子が俺にガキ共を思い出させた。

ガキ共も、俺も、孤児だからなんていう理由で誰も助けてはくれなかった。
何をされても黙るしかなかった。
そんな、そんな光景と今の光景が重なって見えた。

だからなのかもしれない。
気付いた時には俺の身体は動いていた。
動こうとしない奴らをかき分け、真っ直ぐに少女に向かって走る。

そして、中学生を突き飛ばしたと同時にドンッと衝撃がきた。

俺は、自分の突き飛ばした中学生を見る。
その子はガクガクと震えながら怯えた目で俺を見ていた。
どうやら俺はそんなにも怖い思いをさせてしまったらしい。


ゴメン、怖がらなくて大丈夫だ。
怖がらせて済まない。


そう言おうとしたのにも関わらず、俺の声は出ず、だんだんと意識が薄れていく。


「あ、あ……」


中学生の子は、俺に近付いてくる。


「あり、ありがとう……ござ、います……。
でも、でもこんなっ!
ごめ、なさっ……私のせいで……!」


怖かっただろうに律儀にお礼を口にし、自分を責める。
そんな彼女を見て、ガキ共を思い出した。


「……う、あ………。
気に、すんな……。
が、ガキ、共……を、頼、む……」


その言葉を最後に俺の意識は途絶え、天に昇った。



















































そう、そのはずだった。





































『やっほーい!
わし、転生神!
お主を転生させてやるぞい!
ほれほれ!
嬉しいじゃろ?
ほれ、もっと敬ってくれても良いのだぞ?
ほれほれ、ほれほれほれ』


1つ、言っていいだろうか?
……いや、駄目と言われても言うのだが。


「ウッゼェェェェェ!!
何だよ!?
このクソうぜぇジジイはっ!!」

『う、うう、うざいじゃと!?
このわしがか!?
………グスッ……わしは落ち込んでいるじゃろうと善意で明るくしてやったのに……。
グスッ……』


下手な泣き真似を堂々とやり始めるジジイに俺は再び思った。
しかも、チラッチラッとこちらを伺っている。


「クソうぜぇぇぇぇぇ!!」


この時、手か足が出なかったのを褒めて欲しい。


『と、まぁ遊ぶのはこの辺にしておくとし……。
お主を転生させることになってるんじゃ。
と、いうことで……。
えい!』

「……は?」


ジジイがえい!
とか言った次の瞬間、俺の足元にはポッカリと穴が空いていた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
こんの……クソジジイィィィィィィ!!」


俺はただ、その穴から落ちていくのであった。
せめてもの、ジジイへの恨み言葉を吐き出しながら。


そして、彼は……涼は知らない。
彼があとにした穴を見て転生神がボソッと呟いた一言を。


『お……?
間違えてしもうた!
………ふむ、まぁ、加護でも与えておけば大丈夫じゃろう。
面白そうな人間でもあったしな……。
えい!』


と、余計なことしてくれたことを。
平穏に生活したいと願う彼にとって最大の『邪魔』でしかないことを。

そしてこれが原因で色々なことに巻き込まれることになろうとはこの時、誰も知る由も無かった。
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