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黒羽凛
しおりを挟む私は、転生者だ。
だからこそ、何故この世界に来てしまったのか、何故こんな事になっているのか……。
それが理解出来ずに苦しんでいた。
そのせいで我儘になってしまったからこそ、私は今の家族から疎まれてきたのだとも分かっていた。
だが、一度そうなってしまえばどうすればいいのか分からず、結局そのままズルズルて引きずってここまで来てしまった。
そんな私でも、中等部に入ってから少し変わったのだ。
それは、あの天使とも呼ばれる咲夜様にあってからのこと。
私もすぐにあの人の素晴らしさに気づき、私との違いに苦しんだ。
だが、それでも、あの人を見ていると少しだけ忘れられた。
そんな咲夜様が婚約した。
私達の天使が……。
その相手がまだ朝霧先輩とかならばまだ許せた。
だが、それがあの天也様ではそうもいかない。
あの方と一緒になれば咲夜様は……私達の天使は天野財閥に縛られることになるのだ。
そんな事、許せるわけがない。
まだ、朝霧先輩とであれば……。
いや、それも許せないのだけど。
それでも、天也様よりはまだ……まだ、マシだった。
だからこそ、私は、私達咲夜様のファンクラブの会員は、皆で計画を進め始めたのだ。
2人の婚約破棄のための計画を。
そして、それを行動にうつしたのが私だったのだ。
咲夜様が好きすぎて何も思われないよりは嫌われた方が……という想いによって。
嫌われるのは辛かったが、あの天使が穢されるよりは良かった。
だからこそ、私は天也様に近付いた。
あの方が私に靡き、咲夜様と婚約破棄をするように願って。
前世のゲームや小説の中で見たバカっぽい女を演じた。
内外とわず、我儘で馬鹿な女と知れ渡っていた私にピッタリと当てはまったその役は、咲夜様に話しかけることも出来るという役得だった。
あの私達の天使に暴言を吐くというのは嫌だったけれど、婚約破棄の為ならばなんだって出来た。
でも、やはりすぐに頭を地にこすりつけて謝りたいとも思ったけど。
だが、認めるしかなかった。
咲夜様のあんな幸せそうな表情をみたならば、認めないわけにはいかなかった。
しかも、天也様も全然靡く様子もないのだ。
私には、これ以上出来そうになかった。
そして、そのケジメを付けるための行動があの、デートの日の事だったのだ。
まぁ、咲夜様が私と同じ転生者だったのには驚いたけど。
しかも、今更ながらにゲームの世界だと気付くのだから本当、自分の馬鹿さには笑えてくる。
「あっ……咲夜様とのこと、会長に報告しないと!」
私はPCを開き、咲夜様の私服の写真と共に会長へむけて今回の報告をした。
写真は勿論、天也様(邪魔者)は映さずに我らが天使のみを撮るという、咲夜様のファンクラブ会員にとっては必須ともいえるスキルを使い撮ったものなので邪魔者は映っていない。
「あぁ、でも……憧れの天使……咲夜様の友人なんて……」
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