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閑話 黒羽凛
しおりを挟む私は黒羽凛、転生者だ。
この世界がゲームだという事は私の名前と学校ですぐに分かった。
私が悪役に転生したのだってきっと神様があのヒロインから攻略対象者達を守れっていうメッセージなのよ!!
そんな私はついこの前の事を思い出して憤慨していた。
攻略対象者の1人である、天野 天也様はなんと、婚約者ができるのだ。
しかも、ヒロインの友人なんていうモブキャラの海野咲夜だった。
しかも、ありえない事を口にしたのだ。
この私に向かって!
あんなモブ以外に興味はないとまで言われてしまった。
絶対にあいつが天也様の弱味を握って従えさせているんだわ!
「……凛、悠人の妹に手ぇ出すんじゃねぇ。
あいつを敵に回すとどうなるか分かってんのか?」
「お兄様!
私を心配してくださるのですね!
お兄様が守ってくれますもの、大丈夫ですわ!」
私の兄、黒羽亜龍はいつも突き放すようなことを言うけれど本当は私の事が大好きなのよ!
お兄様はちょっとツンデレなだけだわ!
当たり前よね!
こんな可愛い妹なんですもの!
「兄上、母上がお呼びだ」
「仕事か?」
「多分な」
お姉様は本当に私の邪魔ばかりしてくる。
お姉様のせいで私とお兄様の時間が……。
最初は勿論、カッコイイお姉様が出来て嬉しかったわよ。
でも、流石に何度も私に命令してくるし、あれはダメこれはダメってダメ出しばっか!
ふん、きっと私のあまりの可愛さに嫉妬しているんだわ!
だからあんな、私からお兄様を奪ってくるんだわ。
でも、お兄様は優しいから断れないのね!
なら、私が助けてあげなきゃ!!
「お姉様!」
「……何だ?」
「おい、柊……」
「兄上は先に母上のところへ行ってくれ。
私は……」
お姉様が私を見るとお兄様は疲れたように頷いた。
こんな疲れた顔をさせるお姉様は本当に酷い人だと思う。
そんなお姉様からお兄様を解放してあげなきゃ!!
だって私の役目はヒロインから攻略対象者達を助けることだもの!
「お兄さ……」
「頼むぞ、柊」
「あぁ」
そしてお兄様が行ってしまった。
それから私はお姉様を睨みつけると機嫌悪そうに睨まれた。
こんな可愛い妹を睨むなんて……!
やっぱり私に嫉妬しているのね!
可哀想なお姉様。
「お姉様、お兄様を解放してください」
「……は?
兄上を解放?
……意味が分からない」
「とぼける気ですか!」
本当に酷い姉だ。
お兄様に命令した上、私から引き離したくせにまだとぼけるだなんて…!!
「とぼけるも何も……。
まぁ、凛に言っても分からないか…。
済まないが……私は母上に呼ばれているから行かせてもらうぞ。
あぁ、それと……海野家の者に手を出すのはやめろ。
特に、咲夜にはな。
咲夜に手を出せばどうなるか……。
お前のせいで頭が重い。
そんなことをする暇があるのならばもっと他のことをしろ」
そんなことを言うとお姉様は私に背を向けて行ってしまった。
本当に何だって言うのよ!
あんなモブに何があるっていうの!?
あんな奴、どうせ死ぬんだからいいじゃない!
本当なんなの。
皆して私を邪魔して……。
しかも、シナリオも少しずつ変わってきてるし……。
きっと、私以外にも転生者がいるのね。
そいつが皆を洗脳して私の邪魔をしているんだわ!
だから皆こんなに冷たいのよ。
「私が助けてあげなきゃ!」
そんな彼女を見ていた者達はいつも通りの馬鹿さに呆れながら矯正は無理なようであると溜息をつくのだった。
そして、自分が巻き込まれないうちにさっさと退散して行く。
……これが、いつも通りの黒羽家である。
そして、この家と関わりのある者は口々にこう言う。
「あの兄妹も一番下の妹には苦労してるだろう……」
と。
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