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しおりを挟む会場を出ようとした時、私身体がグラリと倒れかけた。
「ルーディア!」
私の名を呼ぶ声が聞こえ、突然、身体を支えられた。
「カー、フィス?」
それは、先程まで上で観戦していたはずのカーフィスだった。
そのまま裏の控えまで運ばれると、怒ったような、呆れたような表情で私を見ている。
「……はぁ。
ま、何言っても無駄だろうし、俺から言うことは一つだけだ。
お疲れ、ルーディア」
「……ん、ありがと」
勝てたことよりも、カーフィスに言われた一言の方が断然嬉しかった。
「しばらく、休んどけ」
カーフィスが私の頭を優しく撫でる。
その感覚に、私は目を閉じた。
*
静かに眠りについたルーディアに、俺は笑みを浮かべた。
反面、ルーディアにこれだけ頼っている王子や宰相の息子にイラつきを感じる。
ここまで頼っていなければ、こんなにもルーディアが消耗することなどなかったはずだ。
普通よりも多い魔力を持つルーディアが立て続けに倒れる、などということは。
「……お前は、無茶しすぎなんだよ。
周りをもっと頼ることを覚えろ」
その無茶は今に始まったことではないが。
俺がルーディアの騎士になってから……。
いや、村にいた頃から変わっていない。
あらゆる危険から守りたいのに、守られているだけではいてくれない困った幼馴染で、大切な……。
「はぁ……。
なーんで、俺はこんな奴を好きになんかなっちまったかなぁ」
俺は、ルーディアの身だけじゃなく、心も守ると誓った。
だからこそ、やらなければいけないことがある。
ルーディアがここまでやった以上、俺だって同様に、それ以上に目立つ必要がある。
何よりルーディアを周囲の目から隠すために。
「ま、その前にあの三人……。
いや、四人への説教からだな」
どうせ、今も部屋の外に居るだろう。
そう思い、外に出ると、やはりいた。
それも、丁度四人揃っている。
真っ先に中に入ろうとする王子の首を掴み、放り投げる。
「何をする!」
「はぁ……。
そりゃ、こっちのセリフなんだが」
何もわかってないコイツらに苛立ちをおぼえる。
何故、こんな奴らがよりによってルーディアの婚約者候補なんだ。
まともな奴になら、まだ、任せられたかもしれないのに。
ま、こんな奴らだからこそ、俺は……。
「テメェら、いい加減にしやがれ。
ルーディア一人にどんだけ負担を強いているか、理解しているのか?
あいつの無茶はいつもの事だ。
にしても、あいつの消耗具合はまともじゃねぇ。
テメェらがあいつに頼りすぎてるせいでな」
四人それぞれが心当たりがあるのか、顔を背ける。
だから、嫌だったんだ。
ルーディアをこの大会に出場させるのは。
「それで、ルーディアの婚約者候補だと?
巫山戯んな!
あいつが自分を殺してまで守らなきゃいけねぇ奴らに婚約者候補なんてなる資格すらねぇよ」
こんな奴らにルーディアを取られるわけにはいかない。
認められるはずがねぇ。
コイツらと婚約でもしてみろ。
あいつはきっと、今以上に無茶をして、怪我をする。
肉体の傷だけじゃなく、心にも傷を負う。
それが分かっていて、認められるわけがねぇ。
「頼りすぎているのは認めよう。
だが、レイトは関係ないだろう」
王子がまっすぐに俺を見る。
確かに、今大会でトリプルに唯一出ていない奴だ。
だが、俺から言わせればそいつが一番タチが悪い。
「なら、何故トリプルに参加しない?」
「それは!
僕の魔法は防御に特化していて、ルーよりも劣るからで。
それに、僕にはルーほどの魔力もないし……」
「だから、なんだ?
そんなもん、使いようだろうが。
防御に特化してるってならそれで良いじゃねぇか。
それを理由にルーディアに押し付け、逃げたんだろ、お前は。
あいつは治癒術師だ。
聖魔導師じゃねぇんだよ」
ルーディアは確かに、聖属性も扱える。
だが、それだけだ。
あれだけ使えるようになったのは、ただ足でまといになりたくない一心で努力をしてきたから。
それでも、まだ、膨大な魔力を持つルーディアにとって聖属性の魔法は脅威でしかない。
たった少し、魔力を流し過ぎただけで爆発することもあるし、人を殺しかねない威力になることだってありうる。
だからこそ、あいつは聖属性の魔法だけは慎重に使う。
魔力のコントロールも、術式も、全てにおいて誤差を許さない。
考えてみればすぐに分かることだ。
それだけ一つ一つの魔法に慎重になり、集中しているのだ。
消耗具合は、他の奴らの比ではない。
よく、ここまで頑張ったと賞賛したくなるくらいに。
「そんなこと、分かってる。
いいから、さっさと退けよ!」
バカが言う。
コイツもまだ理解していないらしい。
「……分かってねぇから言ってんだよ。
テメェ、さっきルーディアの結界があるからと周りも確認せず勝手に敵に突っ込んだな?
それが、ルーディアに頼ってるって言ってんだよ。
あいつの魔力は多すぎるんだよ。
一歩間違えば、爆発する可能性だってある。
だが、少なすぎたらまとも発動しねぇ。
そのギリギリを見極めるのが、どんだけ大変か分かってんのか?
んで、お前が突っ込んだせいでルーディアもお前のサポートに回る羽目になった。
お前は、二人の邪魔しかしてねぇんだよ」
グランは心当たりがあったのか、黙り込んだ。
そして、魔力が多すぎるという言葉で、ジェラルドも気付いたようだ。
「……だから、ですか。
ルーがあれほどまでに魔力操作に拘っていたのは。
だから、覚えたての魔法を決して人前では使わなかったのですね」
学園でのルーディアの様子に納得がいったのだろう。
だが、遅すぎる。
「なぁ、ルーディアがあんなに消耗してんだ。
今度は、お前らだけで勝ってくるよな?」
「……えぇ、まぁ。
確かに、ルーだけに頼りきりになってしまうのは良くありませんから」
「俺とシェードとジェラルドか?」
「いや、だが防御結界がなければ……」
「僕が、ルーの代わりに出ます。
防御結界だけなら、誰にも破られない自信がありますから」
応援ありがとうございます!
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退会済ユーザのコメントです
しばらく更新されていませんが、もう更新しないんですか?
面白いのに残念です
1話の
そして何より、ありません私には前世の記憶というものごおるってことだ。
誤字?