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しおりを挟む「ルーディア!」
「……カーフィス?」
私が、陛下の部屋を出て自室へと戻ると、途中でカーフィスに呼び止められた。
訓練終わりだったのか、汗をかいているのがわかった。
「ちょっと待って。
動かないで」
『水よ、洗い流せ』
カーフィスを水で洗い流してから、話を聞く。
「お、サンキュー!
ルーディア、今日時間は?
あるなら、ちょっと狩りにでも行こうぜ」
まさかの狩りの誘いだった。
普通であれば行っただろう。
だが、回復術師である私がそう簡単に出られるはずがない。
「……さすがはバカーフィス。
私が行けるとでも?
無理に決まってるでしょ」
「バカーフィス言うな!
ちゃんと許可は取ったからな!?」
意外だった。
まさか、許可が降りるとは。
「建前としては、今度の大会のため、連携を確認したいってことで。
まぁ、時間はかかったけど案外簡単におりたぞ」
今回はそれほどまでに勝ちたいらしい。
それだけの何かがあるというのか。
今まで以上に力が入っている気がするのだ。
「で、どうすんだよ」
「決まってるでしょ!
30分後に部屋まで来てくれる?
それまでに準備しとくから」
「ん、了解!」
「ちなみに、何を狩りに行く予定?」
「決まってるだろ。
ワイバーンの群れ」
やっぱり、カーフィスはバカーフィスだった。
2人でワイバーンの群れとは。
まぁ、シヴァもいるし、今はアルテミスもいるから大丈夫だろうけど。
群れだと少し心配ではある。
「んじゃ、待ってる」
「うん。
じゃあ、また後で」
*
そして1時間後、私とカーフィスは全力で逃げていた。
「この……バカーフィス!
何がワイバーンの群れなの!?
これのどこがワイバーンなのか教えてくれないかな!?」
「知るかぁぁぁぁぁ!!
ワイバーンって聞いてたんだよ!
まさか、地竜の群れだとは思うか!」
ワイバーンの群れならばなんとかできる。
だが、地竜となると話は別だ。
ワイバーンと地竜の決定的な差は、魔法を使えることと何よりその硬い鱗だ。
その鱗のせいで攻撃が通らず、倒すことが難しい。
これが火竜ならばまだ、シヴァでゴリ押しすればなんとかなったかもしれないが。
グルォォォォォォ!!
「まずい、追いつかれる!」
「俺がくいとめる!」
「了解!」
地竜が怒り狂った様子で体当たりをしてくるが、それをカーフィスが受け流す。
カーフィスはバカだが、剣の腕は相変わらず良いのだ。
「ぐっ……」
カーフィスが苦しそうな声を漏らす。
地竜の攻撃力はそれだけ重かったのだろう。
【聖なる光よ。
我が声を聞き届け、いかなる攻撃も通さぬ加護を!】
私は防御結界を貼ると、すぐさま他の魔法の詠唱へと移る。
「シヴァ、いくよ。
カーフィス、時間をかせいで!」
【あぁ、承知した】
「おう!」
『水の子たる我が命じる!
抽出せよ!』
シヴァの協力のもと、地竜に含まれる水を抜く。
その瞬間、カーフィスが一気に距離を詰め、切り捨てた。
地竜は岩で出来ている。
それ故に、こうして水を全て抜いてしまえば……。
「簡単に風化する」
風化してしまえば、あとはカーフィスがなんとかしてくれる。
とはいっても、これで終わりではないけれど。
「……おっし、んじゃ残りの地竜も狩るぞ!
ルーディア!」
カーフィスが笑顔で告げたその言葉に、分かってはいたものの気が遠くなる。
私は、まだ後ろに続いている地竜の群れの数を見て……。
「ふ、ふふっ……。
えぇ、やってやろうじゃないの!
風化させてあげるから、まとめてかかってきなさい!」
ヤケになって叫んだ。
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