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しおりを挟むあれからまた一悶着あり、ようやく教室へ来た頃には既に疲れ果てていた。
「…ルーディア、馬車に乗らずに来たな?」
「えぇ、最初は歩いていこうとも思ったのですが…ルドが送ってくれました」
「……何?
ジェラルドがか?」
「ルーが1人で歩いていたので。
流石に回復術師を歩かせるのは不味いでしょう」
流石にシェードも言い返せなかったのか、神妙な表情で頷いた。
「ルーディア、これからは歩いて行こうとするな。
いいな?」
「うっ……分かりました。
歩いては行かないようにします…」
確か闇の属性に影移動とかあったはずだしそれを使えるようにすれば何の問題もない。
「………体調を崩したんじゃなくて良かった」
立ち去り際のシェードの呟きに私は思わず振り返ってしまった。
「…シェード、埋め合わせは必ず。
それと、回復術師が体調を崩すのは魔力の使いすぎか呪いのせいですからご心配なく」
「あ、あぁ…」
私はシェードの事を考えずに出てきてしまったのだ。
流石にそれはどんな理由があろうと許されることではないだろう。
「ならば、ルー、そう呼んでもいいか?」
「……ご自由にどうぞ」
「あぁ、そうさせてもらうぞルー」
これが原因でシェードに愛称呼びを許可することになるとは……。
数分前の私に言ってやりたい。
『なんて事してくれたんだ!』と。
そして、先生が入ってきて私は前で挨拶をすることになった。
「名前と目指している職業、得意な魔法を言ってくれ」
「ルーディアと申します。
目指している…至って普通の回復術師…ですね。
得意…一番よく使うのは回復魔法です。
訳あって編入させていただく事になりましたが…宜しくお願いします」
最後まで回復術師として乗り切った。
密かにホッと息を吐くと、私は先程と同じ、一番後ろの席へと座った。
…理由?
黒板は見えるから特に問題がないだけだ。
授業が始まった。
よりによって、最初の授業は実技。
私がいることにより試合になった。
「ルーディアと…フィネア。
前へ」
しかも私が一番目とは。
他の人の実力を見て合わせておきたかったんだけど。
「初め!」
始まってしまった。
取り敢えず、結界を発動させておくことにする。
防御結界については慣れたもので詠唱無しで発動できる。
『我が眼前に広がるは氷がすべし極寒の地なり!
氷よ、我が敵を凍てつかせよ!』
早速水の中でも難易度が高いと言われる氷関連の魔法を使ってきますか。
流石は国内最高難度と言われる魔法学園のSクラス。
でも………。
その頃、観客席では……。
「決まったな」
「……えぇ、残念ですがルーの負け…ですか」
「違う、その逆だ。
ルーの勝利が決まった」
といった会話がされている事など知る由もなかった。
「私には効きませんよ」
【当然だ】
私の中でシヴァが答える。
その声からは確固たる自信が伺える。
まぁ…シヴァは水を司っているので当然と言えば当然なのだが。
【私のルーディアに傷を付けられるはずがないだろう】
……少し違ったようだが。
「シヴァ、中級並でお願いします」
【承知した】
シヴァは私の声に応じると彼女が使った魔法を我がものとし、操った。
「な、なんですのよ…これ…。
何で私からコントロールを奪えるんですの!?」
「私の言われても困るのですが……」
シヴァだから、としか言い様がないのだから。
「まだやりますか?」
「っ…降参しますわ」
第一戦目は私の勝利で幕を閉じた。
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