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しおりを挟む朝、私はいつも通り回復術師の正装に着替えていた。
「ルーディア様!?
何故そちらを着てるんですか!?
今日から学園でしょう!」
「あ……」
「忘れてらしたのですか!?
あなたが行きたいと言っていたのに!」
ユリアにみっちり叱られた後はちゃんと制服へと着替えた。
…カーフィスに知られなくて良かった。
あいつに知られてたら間違えなく笑いものにされたし。
「ルーディア様…学園の中には私達は入れませんので……お気を付けて」
「えぇ、分かっています」
ユリアの心配そうな声に返事を返すと、少しだけ安心したようにユリアは微笑んだ。
私は、城を出ると朝の早い王都の街を歩きながら学園に向かう。
普通は馬車なのだろうが……シェードと一緒だなんてゴメンだ。
そんな事を思いながら歩いていると私の前で馬車が止まった。
「ルー、何故歩いているのですか……」
窓から顔を出したのはルドだった。
「偶にはこういうのも悪くはないと思い…」
「…はぁ……、回復術師にそのようなことをさせていると思われたら不味いのですよ…。
ルー、乗ってください」
「……失礼します」
確かに回復術師の不遇を訴えている様だ。
うん、申し訳無かった。
ちゃんと考えるべきだった。
私はルドの馬車に乗り込むとまず、お礼を口にした。
「ありがとうございます、ルド」
「えぇ…。
次からは注意してください…」
「はい……」
私が少しだけ落ち込んでいるとルドは笑みを浮かべた。
「あなたは……しっかりしているようでどこか抜けていますね……」
それは普通の笑みというよりも呆れや、微笑ましいといった感情を含んでいる気がする。
そして、今までよりも優しげな視線に感じた。
「…ルー、そろそろ着きますよ」
「はい…。
少し、緊張しますね…」
「ルー、大丈夫です。
私がいますから」
少しだけ、照れくさそうなルドを見て私の心も落ち着きを取り戻した。
「ありがとうございます、ルド」
「……えぇ」
学園に着くと、馬車から降りる際、ルドが私をエスコートしてくれる。
そのせいで先程よりも体が強ばったがルドには笑われた。
絶対に分かっていてやったのだろう。
「ジェラルド様っ……!」
「ジェラルド様、おめでとうございますっ!」
「ジェラルド様、受け取ってください!」
人気だなぁ…などと傍観していた私だったがおめでとうございますという言葉に違和感を抱く。
「ルド…もしかしてとは思いますが…今日が誕生日ですか?」
「えぇ……まぁ」
何も用意していなかった。
友人に何も渡さないというのは流石に罪悪感がある。
…まだ、カーフィスならばまだしも。
まぁ、ルドは甘党だしお菓子とかでいいかな。
「ルド、申し訳ありませんが何も用意していないので少し遅れますが……今週中に渡せるようにします」
「ルー、気にしなくとも…」
「友人としてそんなわけには行きません」
「友人として……ですか……」
複雑そうな表情だったが結局、ルドは受け取る事になった。
「ジェラルド様、受け取ってください!」
様々な令嬢達からプレゼントの箱を差し出されるルド。
はたしてそのうち何人がルドの立場目当てと顔目当てなのだろうか?
「そういったものは受け取れません」
とルドが謝る中、何人かの令嬢が声を挙げた。
「ですが、そこの方のものは受け取るとお聞きしました!」
「えぇ、受け取りますよ」
あっさり認めてしまった。
穏便に済ませるためには否と言うべきなのに。
「何故!」
「私が彼女の婚約者候補だからです」
「ルド!?
そこは普通友人と言うべきでは……!」
「私は、ルーを殿下に取られるつもりはありませんよ。
ガルアやレイトにも……ね」
……何故こうなったのだろうか?
私はどこで失敗したのか……。
「ルー、どうかしたのですか?」
ルドのせいだ!
と叫びたくなるのをグッとこらえ、私は微笑んだ。
「ルド、申し訳ありませんが……。
私、婚約者を決める予定はありませんから他の方を探してください」
と。
いつだったかシェードにいった事と同じ内容を口にしたのだった。
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