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「なぁ、ルーディア。
1つ聞いていいか?」

「え、えぇ……」


グランはその無遠慮さと持ち前の明るさで私に問いかけてくる。


「何で演じてんの?」


それは、今の私の核心をつく言葉だった。
私の心へ土足で入ってくるような…そんな不快感。


「演じている……とは?」

「んー……良くわかんねぇけど、無理してる感じすんだよなぁ…」


ギクリとした。
絶対にバレんとしてきた事がこんなところで明かされるとは思っていなかったから。


「無理…ですか。
このような場所だからそう感じるだけだと思いますが……。
見ての通り、私は本来であればこのようなパーティーに参加する必要は無いはずでしたので」

「んー……そうじゃねぇんだけど……ま、いっか」


なんとか誤魔化せた様でホッとしたのも束の間。
グランは私の耳元で囁いた。


はいいにしといてやる。
けど、せめて2人きりん時は普通に話せよ」


と。
全く誤魔化せていなかったようだ。
というか、まず耳元で囁くのをやめてもらいたい。


「ルーディア、何を話している?
……あぁ、グランか」


2人は知り合いらしい。
……まぁ、グランもここに来ることはある様だから知り合いでもおかしくはない。
……これでも伯爵家だし。


「おー、シェードじゃんか。
聞いたぞー、お前が無理言って候補に入ったって」

「まぁな。
お前らに取られるつもりは無い」

「私はどなたとも婚約するつもりは無いのですが?」


私の声はスルーされた。
好きだとか言う割には冷たくない?


「では、私はこれで失礼します」

「ちょっと待て、ルーディア」


チッ…と舌打ちしそうになるのをグッとこらえた私はシェードから逃げるのを諦めた。


「……何ですか?」

「お前、ジェラルドと約束しただろう。
私ともそんな約束などした事ないだろう」

「シェードには関係ないと思いますが」

「関係はある。
言っただろう。
私はお前が好きだと」

「そうですか、では、諦めてください」


私は笑顔でシェードを突き放す。
シェードに対してだけはかなりドライな私だった。

それからしばらくして無事、逃げられた私は会場から抜け出し庭へ来ていた。

昔、ここに来たばかりの頃はここでよく歌ったものだ。
……しかも、この世界の曲じゃないものを。

しかし、そこには先客がいたようだ。


「隣、よろしいでしょうか?」

「はい」


私は彼に声を掛けると隣に腰掛ける。
白髪で金の瞳をしたその人は傍から見ればまるで、天使のような…と言われそうな、そんな儚げな容姿をしていた。

そんな彼は何もない上空を見つめていた。


「結界、ですか?」

「…はい」


そこにはこの国を守護すると言われる結界の発動源があった。
そしてそれは、結界を維持する聖魔導師のいる塔の頂上だった。


「聖魔導師の生涯は酷いものだと…そう思いませんか?」

「聖魔導師の生涯…ですか?」

「はい。
聖魔導師はその貴重さ故に母国から出ることさえ許されない。
特に、結界維持の担当になったものはあの塔から出ることさえも出来ない」


そう口にした彼の表情は暗く、悲壮感に溢れていた。
きっと、私が回復術師でなく、普通の者であればただ、頷いていただろう。


「私はそうとは思いません。
動いていても結界の維持出来る程の人物であれば街に出ることもありますし、申請をすれば国から出ることも可能ですから」


一応、自由はあるのだ。
私達回復術師にも、聖魔導師にも。
ただ、制限されるだけで。


「ですが……」

「それに、私はこうも思うのです。
回復術師や聖魔導師程人々を守り、助けられる仕事はないと。
こうも必要とされる仕事はないと」


私は私が回復術師であるという事を誇りに思っている。
医術とは違い、奇跡と呼ばれるこの力を。


「…あなたは…眩しすぎます。
僕にはとても……。
僕はレイトです。
レイと呼んでください」

「私はルーディアです。
ルーと呼んでください、レイ」

「はい、ルー。
ルー、僕と友達になってくれないかな?」

「喜んで」


私はここにきて素で話せる友を手に入れた。


「レイは結界維持を変わるの?」

「うん、まぁ予定だけど……」

「あー、だったら最初の頃はキツいだろうし……。
私、暇な時に差し入れ持って遊びに行くね」

「うん、ありがとう」


レイは天使の様な笑みを浮かべる。
その笑顔に可愛いと思ってしまうのは仕方ないと思う。
まぁ、本人は女として見られるのが嫌な様なので決して口には出さないが。




「ルー、またね」

「うん、じゃあね、レイ」



そして、私達はそのまま自分の家(部屋)へと戻った。
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