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ついに、王都へ戻る日がやってきた。
この4日間、色々とあったが収穫も多かった。
私の専属が2人増えたり回復術師の卵が増えたり……。


「ルーディア…またいつでもとはいかないと思うが…戻ってこい」

「ラナも一緒に帰ってきなさい。
じゃあ、元気でね。
ルーディア、ラナ…行ってらっしゃい」

「お父さん、お母さん…またすぐに会うことになると思うけど…。
また手紙を出すよ。
それと、体には気をつけてね?
……絶対、ラナと一緒に帰ってくるから。
まぁ、カーフィスは知らないけど」


カーフィスとは一緒に帰れるかは分からないという意味で口にした言葉だったが私はいつも通りに笑った。


「おい!?」


カーフィスの声を聞かなかったことにして私は別れの挨拶を交わす。


「お父さん、お母さん…行ってきます」

「行ってきます…!」

「あぁ…行っておいで。
必ず、無事に帰ってくるんだぞ」


お父さんとお母さんは私とラナを抱きしめてから送り出した。






























そして、王都に着くとライ先輩が出迎えてくれた。


「ルー、おかえり」

「ただいま戻りました、ライ先輩」


ライ先輩は挨拶を早々に切り上げると私の後ろに隠れているラナに目をやった。


「で、その子が回復術師の?」

「はい。
ラナと言います。
ラナ、こちらはライ先輩。
回復術師としては先輩なの」

「……よろしくお願いします?」

「よろしく」


ライ先輩は明るい笑みを浮かべたが、後ろからの足音にビクリと体を震わせた。


「ライ?
部屋に居ると言っていただろう?
探したじゃないか」

「げっ……トール…」


ライ先輩があからさまに嫌そうな表情を浮かべた。
それなのに、相手の男は凍えるような冷たい笑みを浮かべているだけだった。


「…ライ先輩」


まるで逃げる様な体制をしているライ先輩に咎める様な視線を送る。
それに気付いたライ先輩は私の肩をガシッと掴んだ。
いつもよりも強いその力がライ先輩の必死さを示しているようで怖かった。


「…ルーディア、コレはおかしい。
頭のネジが数本外れているんだ。
そうでなければ僕を選ぶはずがない」

「…またそんな事を言っているんですか…。
トール様、私達はこれで失礼致しますのでライ先輩とごゆっくりとお過ごしください」


この方はトール様と言って、ライ先輩の契約者だ。
ライ先輩も突き放そうとはしているもののそこまで嫌そうという訳でもない。
まぁ、トール様が変わり者なのは認めるが。

だが、ライ先輩への想いは本物だ……と、私は思う。

だからこそ私は密かに応援をしていた。


「えぇ、そうさせていただきます……。
あぁ、そういえば…ルーディア様、陛下がお呼びでしたよ」

「……まさか、私にも回ってきたのですか?」

「さぁ…私の知るところではありませんので…」


トール様は国内有数の権力者である公爵家の息子だ。
絶対何か知っているとは思うが、わざわざここで問い詰める気力も起きなかった。

きっと話は私の婚約者についてなのだから。


「……カーフィス、アルト、あなた達はしばらく部屋で休んでいなさい。
ユリアには悪いけれど付いてきてもらいます」

「ん、分かった」

「はい」

「私でよろしければ…」


それぞれ私の言葉に返事を返すと私はユリアを連れて国王の執務室へと向かった。


部屋の前で息を整えると意を決して扉をノックした。
すぐに返事があり、中へ入るとソファに座らされる。
そして、私の婚約者候補だという者の写真を見せられた。


「候補者は4人、シェードと、レイト、ジェラルド、グランだ…」


シェード…まさか殿下まで候補の中に入っているとは。
殿下はこの国の第二王子だ。
ただし、第一王子が武闘派で将来は騎士団長になるという発言が元となり第二王子のシェード殿下が王太子となっている。


「何故殿下まで……」

「本人たっての希望でな……」


そう口にする国王の表情は苦労人の顔であった。
……お疲れ様です、と思わず言いたくなるほどには。

私が部屋を出ると、そこにはシェード殿下がいた。


「……殿下、余程お暇な様ですね」

「そうでもないがな。
父上の話はどうだった?」

「どうもこうも予想通りです。
婚約者候補の話をされました」

「だろうな」


私は文句の1つでも口にしてやろうかとも思ったがやめておいた。
それは、シェード殿下自身も婚約者を決めなければならず、大変な思いをしていると知っていたからだ。


「まさか、殿下まで候補に入っているとは思いませんでした」

「だろうな。
お前は特別鈍いからな」 


鈍い…どこが鈍いと言うのかが分からない。
あぁ、殿下の女嫌いという噂の事だろうか?
噂は当てにならないからな。


「大丈夫です、殿下。
殿下は少し腹黒くて態度が極端なだけです」

「おい待て。
ルーディア、お前今何を考えた!?」

「私は分かっていますから」

「おい!
変な方向に話を進めるのはやめろ!!」


怒られてしまった。
殿下は溜息を1度ついてからいつになく優しげに微笑むと私の前で膝をついた。


「ルーディア…俺はお前の事が好きだ。
愛している…。
だから、俺を選べ。
ルーディア」


私はそんな殿下の告白に固まった。

「…………は?え?
…冗談は好きではありません」

「私も嫌いだ。
まぁ、その返事は待ってやる」

「え……嘘、では…?」

「そんな訳あるか。
候補とはいえ、ようやくここまで来たんだぞ。
そんなつまらん嘘を口にしてどうする?」


そして私はそんな殿下の言葉に現実逃避したのだった。
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