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「ルナ!
良かった、君が目を覚ましてくれて……」

「カイン?
っ……あれからどうなったのですか!
私が倒れてからどのくらい経ったのですか!
お兄様とお父様は無事なのですか!?」


目覚めた時、石造りの部屋のベッドに私は寝ていた。
そして、傍にいたカインに気になっていた事を問いただす。


「ルナ、落ち着いて。
君が倒れてからもう3日経っている。
ルナのおかげで皆無事だ」

「ほ、本当ですか?」

「あぁ、本当だよ」


良かった。
ただ、とてつもない不安にかられる。
それは、あの魔法を使った【代償】のせいだろう。
私は、しばらく月魔法を使えない。
普段は身近に感じていた月の力も、その恩恵も……。
今は全く感じられないのだ。
それが、とてつもなく恐ろしかった。


「ルナ?」

「あ……なんでしょうか?」

「震えているから。
どうかした?」


そんなに震えているのだろうか。
確かに、月の力が感じられないのは初めてのことで恐怖さえ感じる。
だが、それでもここまで恐れることなのだろうか。
そして、私は何か、重要なことを忘れている気がする。
それがとてつもなく恐怖を煽る。


「……いえ、なんでもありません」


私は、誤魔化すように口にした。


「……そんなに、私を信用出来ないかな?」

「いえっ、そういうことでは!
……その、目が覚めてから月の力が感じられないのです。
今まで感じていたその恩恵も、力も何もかもが。
それが、とてつもなく恐ろしいのです」


結局、打ち明けてしまった。
カインは私の言葉に驚いたように目を開いた。
そして、包み込むかのように私を抱きしめた。


「大丈夫。
きっとすぐに戻るよ。
それまで私がルナの傍にいて守るから」

「……はい。
ありがとうございます、カイン」

「お前は守られる側だろうが。
そろそろ俺の妹から離れろ、カイン。
そもそも、俺が守るに決まってんだろうが」


不意に声を掛けてきたのはお兄様だった。
いつから居たのか、笑いながらこちらを見ているお兄様はカインを揶揄うように言葉を続けた。


「ルーナの傍にいる、ねぇ?」

「んなっ……ヴォル!
お前、いつからそこに……」

「ルナのおかげで皆無事だ、ってところくらいからだな」


それは、私が目覚めて数分くらいの出来事だった。
あまりの恥ずかしさに顔から火が出るのではないかというほど熱くなる。
カインを見ると、カインも同じように顔を赤くしていた。


「最初からじゃないか!
何故声をかけてくれなかった!」

「邪魔しちゃ悪いかと思ったんでな。
と、それよりルーナ。
体は大丈夫か?」

「……はい、一応は。
ただ、かなり魔力を使ったようであまり力は出ませんし、聞いていたでしょうが月の恩恵が感じられません。
それと、何か大切なことを忘れてしまっているような気がします」

「……今までそういったことは無かったんだな?」

「はい。
魔力に関してはともかく、少なくとも記憶や月に関してはありませんでした」


今までとは何かが違う。
これが、本格的に月魔法を使う【代償】なのか。
それともただ、慣れていないからなのか。
何もかもがわからない。


「……分かった。
俺も調べておく。
お前はゆっくり寝てろ」

「……分かりました、お兄様」


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