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怒りの心と許す心シリーズ
怒り心と許す心すルーズ
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「怒り心と許す心シリーズ」原作 献残屋藤吉郎
第一話「悪名」
第二話「やくざ先生」
第一話「悪名」
遊び好きな男の物語り。。博打好き、女好き、喧嘩好きな男の気ままな人生旅。。。
生まれは関東、筑波山の田舎育ち
桜川で産湯をつかり
筑波山ろくを駆け巡り
物足りずに山下り
(1)放蕩息子、、勘当となる
筑波山の麓、、冬になるとつくばおろしの寒い町、しかし、春にはつつじが満開に咲き誇る町、そして、筑波山の麓を流れる桜川が霞ケ浦に注ぎ込まれる田園風景の町。
そんな田舎町で江戸時代から商いをしていた「北条木材」は商人でありながら名字帯刀を許された豪商であった。
その北条木材の北条市左衛門は頭を抱えていた。北条材木は一代限りごとに跡取り息子は「市左衛門」を名乗ることと定められていた。
そんな由緒ある家の跡取りが、親の育て方が悪かったのか、手の付けられない「放蕩三昧」をしているのであった。
放蕩息子の名前は「北条太郎」と言う。
北条太郎が18歳を過ぎたころから、悪がきを発揮し始めた、、、地元の名門と言われた高校に入学はしたものの、喧嘩好きな暴れ者になっていたのであった。
入学当時は柔道部に入り、成績も良く、世間の評判も良かったが、柔道が強くなり、高校3年の時には黒帯、柔道3段にまで昇格していた。
そして、いつの間にか「番長」を気取って、
毎日のように、他の高校生と喧嘩をしていた上に、どこで道を踏み外したか、酒を飲み、たばこを吹かして土浦の町を流すようになっていた。
親の戒めも聞かずに、最終的は酒場で酒を飲み、それが発覚して「停学処分」を受けたのであった。それも無期停学処分を、、、
その時に親の北条市左衛門は、男だから喧嘩や酒、たばこは仕方がないかと、諦め心で許した。
そんな暴れん坊だった、太郎も大学はどうにか入学できたのであった。北条市左衛門は諦めて、ダメなら材木運びでもやらせようと考えていた。
しかし、当時は私立でも一流の早稲田大学に受かったので吃驚していた。
これで少しは前向きに進んでいくと思っていたが。。。
大学に入ってからはどうにもならない放蕩道楽な人間になった。。。
しかし、親馬鹿なものだった。。。北条市左衛門は見て見ぬ振りをしていた。
そして、卒業後は仕事もせずに、遊び歩いていた、まるで遊び人のような行動をとっていた太郎だった。
訪ねて来る友達も、人も遊び人風なような、、、
太郎には妹が一人いたので、市左衛門はそんな環境を心配していた。
息子太郎の生活が改まらずに、3年ほど続いていた。
昔から何事も「石の上にも3年」と言う様な諺もあるように、、、北条市左衛門は根の腐ってしまったようになっていく太郎に最後のつもりで、覚悟を決めていった。
「太郎、、、そろそろ仕事をしないと、お前を跡取りには出来からな、、、覚悟を決めて返事をしてくれよ、、」
父としては大分、柔らかく、優しく諭したつもりだった。
「別に俺を跡取りにしなくてもいいよ。。こんな放蕩息子だものな、、、おやじも愛想が尽きたようだから。。」
そんな会話を一人娘の「桜」は聞いていた。
(2)太郎は知っていた。
北条太郎が高校一年の夏休みに、父、市左衛門の弟が経営する木材伐採の会社で、山林の木々を伐採している現場でアルバイトをしている時だった。
北条家が代々、受け継いでいる杉山の伐採した木材を運搬していた現場で、太郎が社長の跡取りとは知らないで、休憩時間に噂話をしていた。
「今の跡取り息子は貰っ子だってな。。。」
「俺も聞いたことがあるよ、、前の戦争の時に、社長宅に親子で疎開して、そのまま母子ともに面倒見てもらったって話だよ。」
しかし、社長の市左衛門が、戦争が終わったころに嫁さんを貰い、今の跡取り息子の母親は家を出てったと、、、
その後、疎開した太郎は市左衛門の長男として育ったらしい。
その話を聞いた太郎は、目の前が真っ暗になったのであった。それから、太郎は変わっていった。
太郎はそれから、自分を生んでくれた母親の夢をみた。
高校生活を送りながら、学業に励み、柔道にも、そのことを忘れようと突進していった。
しかし、その後は父や育ててくれた母を見るたびに、心のどかで密かに抵抗心が生まれてきた。
良くして貰えれば、されるほど、自分は他人だから、遠慮されている。
その反面、妹の「桜」は実の子供だから、と言うだけで、、、太郎はどこかに嫉妬心が芽生えた来た。
何をするにしても、兄妹として育ってきたが、今までのようには接することが出来なくなっていった。太郎は愛情を込めて、育ててくれた両親には感謝をしていた。そして、妹は愛しく可愛かった。
しかし、山の中で知らされた真実が、太郎の心から離れなかった。
そのまま、高校時代はうやむやしながら、気が付けば不良と言うレッテルを張られていた。そして、なんとなくか、運よく大学にも進学が出来た。
太郎は大学在学中は、その時間を母親探しに没頭していた。
そして、つくばから疎開した後を太郎は追った。
時間はかかったが、母親の足跡を見つけ、太郎が20歳の時に突き止めた。
太郎はどうしても知りたかった、、、母親を、、、名前は「美佐子」と言う自分の母親を見つけた。
神奈川県川崎に住んでいたところまでは探し当てた、しかし、亡くなっていた。
太郎は母親「美佐子」の墓を探し、その小さな墓前に花を添えたのだった。その御墓からは寂しさを覚えた。
そして、生前の母親の生活を知りたくて、いろいろと調べた。
母親を知る人たちから聞いてた話では、苦労したようだった。太郎は顔も忘れた、逢いたかった母親を心から労り、涙した。
そして、その亭主が遊び人で、母親「美佐子」には優しかったが貧困な生活を送っていたらしいとも聞いた。
二人の間には一人の男の子供がいたのだった。
太郎は母親に逢えなかったことで、その男の子供を探した。名前は「次郎」と言う。
太郎は育ててくれた北条市左衛門のもとで、何ひとつ、不自由なく育ったことに感謝しながら、自分には弟がいたことを知り、人の生まれと言うか、環境に違って、人の幸せが違うことに心が痛んだ。
人は経済的に恵まれたことが、同じ人間でも違うんだということを知らされた。
母親「美佐子」」のもとで育った弟は、間違いなく経済的には不幸だったような。。。それは、母親の生活環境を知って、分かった事であった。
そして、母親には会えなかったが、弟「次郎」に会いたくなった。
太郎は勝手に思った。母親が「次郎」と名付けた理由が、、、きっと、母親「美佐子」も気にかけていてくれたことを、、、
本当に逢いたかった。
そんな思いで、残りの学生時代の時間を弟探しに当てた。
そして、太郎が大学4年の暮れに、弟「次郎」を見つけた。
(弟、次郎に会って)
太郎が大学の友達と暮れの新宿を歩いていた。友達も実家に帰るというので、忘年会をかねて集まった。
新宿の飲み屋街、にぎやかな街を太郎は少し気分を良くしていた、、、酒も入っていたので。
反ぐれ風の兄さんたちにすれ違った時だった、
「ちょっと、、待ていやーーー人の方にぶつかっておいて、だんまりかよ」と因縁をつけてきた。
太郎の友達は3人とも柔道の猛者ばかりで、酒も入っていたので、、喧嘩を買ってしまった。
相手は5人いたが、太郎たちの敵ではなかった。因縁をつけて来た相手は叩きのめされてしまった。
警察も来たので、反ぐれの連中は逃げるように消えてしまった。事情を説明して、警察は聞き取ってくれた。
そして、「気を付けてくださいよ、、、新宿はああいう反ぐれが多いから、、、関わらないように」」と、、、、
太郎いるが西武新宿線駅の方に歩いていると、喧嘩したばかりの反ぐれがやって来た。
そして、人数も増えていた。リーダーらしき一人が口を聞いた。
「先ほどはどうも、、、仲間を面倒見てくれたな、」と、、、言いながら絡んできた。
リーダーらしき男がナイフを持って斬りつけた来た、咄嗟の事なのでよけきれずに太郎が腕を刺された。
太郎も気が強かったので、払いのけて、その男を道路に叩きつけた。ほかの反ぐれはそれを見て逃げ出した。
リーダーらしき男は潔ぎよかった。
太郎たちに負けを認めて、酒でも飲もうかと言うことになった。
その男は次郎と名乗った。気持ちのさっぱりした反ぐれだった。なんとなく気が合い、酒を酌み交わしていく間に、太郎は身の上話を聞きだした。
その男は名前を「川崎次郎」」と言って、話を聞くうちに、母親の名前が一緒だった。「美佐子」と言い、その生い立ちや母親の過去が重なってきたのだった。
そして、太郎も名乗り、母親の名前が「美佐子」で、、、間違いなくその男、「次郎」は弟だと確信した。
その晩は次郎を含めて4人で飲み明かした。
そして、太郎は嬉しかった。会いたかった弟「次郎」を見つけたからだ。本当に心から嬉しかった。
(そして、決意した太郎だった)
太郎は母親の消息も分かり、すでに亡くなっていたことも知った。そして、母親「美佐子」の子供とも会うことが出来た。
弟、次郎とは会う約束をして別れた。そして、何度も会った。
太郎は大学を卒業して、実家に戻った。家業を継いで仕事をするでもなく、毎日を遊興三昧で過ごしていた。
太郎は家を出るつもりでいた。心に決めていたのである。
北条材木は妹の桜が継げばいい、、、いい伴侶を見つけて、市左衛門の実子が後を取ればいいと思っていた。
太郎には弟次郎が現れた、、、亡くなった母親「美佐子」の忘れ形見が出来たのであった。
どう見ても、出来そこないの半端者だ。
血の繋がった弟次郎を面倒見なくてはと思った。18歳の悪ガキが弟なのだ。
母親には何も出来ず、父市左衛門のもとで、何、不自由なく育った自分が、太郎としては許せなかった。
だから、母親に出来なかった親孝行なのかも知れない、真似事を、その分を弟次郎に情がけしたかったのかも。
しかし、父市左衛門には言えなかった。
しばらくの間、太郎はもやもやした気分で過ごしていた。
甘えかも知れない、、贅沢かも知れない。。父、市左衛門からの勘当を待っていたような。
そして、その日が来た。
太郎は家を出る前の日に、、、妹「桜」と話し合った。
妹「桜」は泣いた。
「お兄ちゃん、、その弟さんのことを、お父さんに話してみたら。。。きっと、分かる筈だよ」
しかし、太郎には話せなかった。
出ていった母親の事も。
一度は父のもとで生活をして、自分を育ててくれた父には話せなかった。
妹「桜」には理解して貰った。きっと、理解はしていなかった筈と思いながら、太郎は旅立つことを決めたのであった。
(旅たち、そして、逃亡者)
太郎は東京へ戻った。次郎と落ちあって、これからの事を相談するつもりだった。
太郎の部屋で次郎を待った。いろいろな夢を持って、兄弟二人で生きていこうと考えていた。
しかし、その晩、弟次郎は帰らなかった。
翌日、次郎たちが屯している、ゲームセンターを訪ね、
次郎の友達がいて、教えてくれた。
次郎が反ぐれをしている、上層団体のやくざ組織「新宿連合」に追われていることを知った。
次郎の反ぐれ仲間が覚せい剤を持ち逃げしたらしい、そのトラブルに巻き込まれていたのであった。
次郎の反ぐれ仲間がみんなで探していた、太郎も一緒に探したが、東京の何処にももいなかった。
次郎の友達が九州福岡なので、一緒に逃げたらしい。しかし、逃げられるものでは無い。
暴力団の追及はきつい筈だ、、、太郎は何とかしなくては考え、次郎の友達の実家を聞いて、
そして、太郎は福岡へ向かった。
福岡の友達の実家に二人で隠れてた。いずれは見つかるので、二人を連れ出した。
捕まれば殺されるまであるというので、兎に角、逃げることにした。
次郎と新しい旅たちが、、、逃亡の始まりとなってしい、おまけに次郎の反ぐれが一人増えてしまった。
その次郎の友達も19歳で、副島剛といった。
旅たちではなく、逃避行だ、一人増えても同じようなものだ。
三人の旅が始まった。
誰も知らない北海道へ、、、
悪名旅の始まりであった。
(追われる旅人、、、逃げられるか)
逃げて逃げて
守るは弟次郎
北の大地の果てまでも
太郎は弟たちを連れて北海道まで流れて来た。
太郎は大学時代の悪友、花房雄一を訪ね、彼の実家は日高で牧場を経営したいた。そして、彼は親の後を継いでいた。
競走馬の飼育牧場であったので、
とりあえず、事情を説明して、潜り込んだ。
牧場の下働きで、牧夫見習いとして、、、、
青空の下で、広々とした大地の匂いを嗅いで、三人は生き返ったようだった。
「雄一、、、面倒かけるな。よろしく頼む。。。しばらく、行く当てもないので、牧場仕事を覚えるよ」
「太郎、話は聞いてる、、、一緒に牧場経営をやろうや。
お前とは気心を知っているので、、、楽しみだよ」
「雄一、俺同様に弟たちもよろしくな。。」
北海道日高での最初の日は、雄一にご馳走になり、
太郎たちは花房牧場の社員になって働く事になった。
北海道に着いたのは10月であったが、肌寒さを感じた。
「次郎、、剛、、お前たちも男なのだから、ここで本腰を入れて頑張ろうや、、、」
「一人前になって、今までの人生を取り戻さないと。。」
太郎は、次郎も剛もこの日高で調教師の道を進んで、一人前の男にしてやろうと考えていた。
最初の夜は、二人に覚悟を決めさせた。
(3)馬と生きる道
太郎は思った。迷うな、、どんな道でも一流になれと。
弟次郎と剛に太郎の決意を語った。
人にはそれぞれの道があるように、偶然でも与えられた目の前の道、、、追われて、逃げて、たどり着いた運命の道だ、
偶然でもいい、、、突如現れた開けた道だ。
北海道の日高で、、、広々とした草原で開いた道だ。
これこそ、二人に与えられた天命かも知れない。
二人は励んだ、、、来る日も来る日も馬とともに。
そして、二人は見つけた。調教師と言う仕事に。
太郎も嬉しかった。
初めから定められていた天職のような仕事、、、そして、二人とも馬が好きだった。
太郎は悪友の花房雄一とともに牧場経営を一から学んだ。
そして、牧場にひと時の栄をもたらした。
しかし、人生とはなかなか上手くいかないものだ。
花房雄一の知らない人生の中に、落とし穴があったのだった。
父、花房寅吉が過去において、面倒を見ていた、牧場主仲間の花田構造と言う人物がいた。
その花田構造が多額の借金を背負っていたのであった、その男が社会悪の集団詐欺に騙され、、、そして、その詐欺内容に罠が仕掛けられていた。
花田構造が振り出した約束手形の裏書を、花房雄一の父がしていた。
期日は過ぎていたけれども、不渡り手形であり、商法的に責任が残っていたのである。
不渡り手形金額は「5億円」であった。
花房雄一には寝耳に水と言ったことであったが、花房雄一は亡くなった父より財産を相続しており、責任が残っていた。
その話を聞いて太郎は苦しんだ。
しかし、自分の出来る範囲で、力で能力で助けなくてはと思った。
太郎は助けられた恩義はあり、何とかしないと。。。
不渡り手形を返済しないと、法的な手続きを取られるのであった。
まずは裁判で告訴され、合法的な借金なので差し押さえをされる。
時間をかけて、罠を暴けば助かるが、父の花房寅雄も亡くなっており、不利であった。日本での裁判は時間が掛かる。
判決が出るまでは差し押さえが実行される。
不動産、特に牧場が差し抑えられる。
今、差し押さえれると困るのであった。次郎たちが調教している馬が有望なのだ。
不渡り事件は後から解決したとしても、まずは差し押さえ、牧場使用停止がされては困るのだった。
それだけは避けなければと、、、、
(太郎男をさげる、、、)
太郎は考えた。しかし、友達の花房雄一を助ける方法は一つしかなかった。太郎としては一番したくなかったことだった。いや、出来ないことだった。
それでもやらなければ、世話になった花房牧場は潰れてしまう。太郎は悩んだ末に、茨城県北条に向かっていた。
北条木材の会社の玄関に立った、太郎は入りずらかった。
先に気が付いてくれたのは妹の「桜」で、
「お兄ちゃん、どうしたの、、、暫くぶりだね、、、そんなところにいないで入りなさいよ、、、自分の家でしょう」
そう言って、妹の桜は手を引いてくれた。
そして、妹の桜が父市左衛門を呼んできてくれた。
「太郎、、、どうした、、入りなさい」
父は太郎の親不孝を咎めもせずに、心暖かく迎えてくれた。
「太郎、、、遠慮するなよ、、、お前の家だろう、、さあさあ、、上がって」
と、、父市左衛門も招いてくれた。
太郎はすまない、、、好き勝手ばかりして、、、と、心で詫びていた。
「おやじ殿、、ご無沙汰しています、、いろいろ、すいません」と,詫びながら部屋にあがった。
そこへ、義理の母親が出てきて、、「あら、太郎ちゃん、元気だった、、、さあ、、自分の家なんだから遠慮しないで、上がって、、、今夜はご馳走を作るからね」
と、優しく出迎えてくれた。
太郎は感謝した、、、なんて、優しい、、、、いい人ばかりなんだと、、、
その晩は親子水入らずの楽しい団欒を過ごした。
太郎は悩み事を頼みずらくなってしまっていた。その晩は何も言わずに、懐かしい部屋で寝た。
なんとも言えない、思い出が匂ってきた。
次の朝、父の市左衛門が太郎の部屋に入っ来た。以前にもなかったことなので、太郎もびっくりした。
「太郎、、、わしに用があって戻って来たんだろう、、、金か、、、いくら必要なんだと、、」
太郎の気持ちを知ってか、先に聞かれた。
「太郎、、遠慮しないで云ってみろ、、、わしに出来ることなら協力するから、、、いくらだ、、、」
ズバリ、父親から言われてしまった。
心からありがたいと思う、太郎だった。
話は早かった、、父親市左衛門は太郎が欲しい金額を出してくれた。
「理由は聞かない、、、お前の事だから心配はしていない。」と承諾をしてくれた。
「太郎、、、男の仕事をしろよ、、、」
そして、太郎は北海道に戻った。
(太郎、男になる)
太郎は北海道日高に戻った。
「雄一、金は用意できた、、、心配するなよ」
しかし、今回の約束手形裏書の件では、まともに支払えば「5億円」と、損害金の支払いになる。
裁判を起こして支払いを少しでも減らそうと努力していた。
太郎たちの大学の同級生の寺内浩二が東京四谷で弁護士事務所を開いているので相談をした。
民亊を得意としていたので、、、特に約束手形トラブルに関して、そして、今回の裏書保証に関して調べてもらった。
保証には商業保証と個人補償があり、今回の花房牧場に関しては商業保証の裏書だった。
本人同士は既に死亡しており、本人確認は執れない。
従って、記入されている事実に従って判断が下される。
今回の保証支払いは当然に起きて来るのであった。
しかし、花房雄一は花房牧場株式会社の相続継承はしていなかった。当時、会社経営が不況だったので、債務を引けられなかった。
それで、新規会社での登記をしたのであった、同じ名称で、、そして、事業を新規で始めたのである。
従って、外から見れば同じ会社と思われても中身形態は別であった。
そんなことで、財産相続した財産は無く、、、個人資産は消滅し、財産放棄をしていたのであった。
従って、裏書保証はしなくてよかったのである。
しかし、こまごまな問題は残った。今回の事で整理する意味で、友達の寺内弁護士に後始末を依頼した。
降って湧いたような手形問題も解決して、太郎たちは牧場経営に励んだ。
(太郎たちは北の新天地で励んだ)
北海道日高に戻った、北条太郎は弟たちと牧場経営に励んだ。大学時代の悪友の花房雄一から牧場経営を学び、弟たちには調教師の道を切り開いて行き、ともに共同経営に参加する覚悟で日々を過ごしていた。太郎にとっては充実した毎日だった。
北の新天地に夢を見つけ、己の道を進める気がしたのであった。
そんなある日、妹のさくらから連絡が入った。
「お兄ちゃん、、お父さんが交通事故で、大変なの、、直に帰って来て、、お願い、、」と云いながら電話口で泣いていたのである。
話を聞いたら、命に関わるほどの事故なので、、というのであった。
太郎は次郎たちに訳を話して、筑波に戻ることにした、札幌まで次郎が車で送ってくれた。
「兄貴、こっちは心配しないで、、言って来い」と、送り出してくれた。
その日の特急電車と新幹線を乗り継いで、筑波まで急ぎ戻った、太郎であった。
太郎は祈った、、「親父、死ぬなよ、、死なないでくれ、、」と、、念じながら筑波に気持ちだけは飛んでいた。
土浦からは北条材木店から車が迎えに来てくれたので、、兎に角、病院へ向かった。
病院はつくば市学園都市の総合病院だったので、土浦駅からは20分で着いた。途中の夜景は普段なら見る余裕もあったと思うが、今夜の太郎には何も見えなかった。真っ暗な闇ばかりだった。近い筈の病院が遠かったのであった。
連絡をしておいたので、病院の玄関まで、妹のさくらが迎えに出ていてくれた。目にはいっぱいの泪を、、拭くことも忘れて、、立っていた。
「お兄ちゃん、、、、」言葉にならず、泣き乍ら、太郎の胸に飛び込んで来た。
(太郎は予感を感じた)
「お兄ちゃん、、お父さんが、、お父さんが死んじゃいそうだよ、、助けて、、」と、、泣きじゃくて、涙が止まらなくなっていた。
「分かった、、とにかく、病室へ行こう、、」と、、妹,さくらを抱えながら歩いた。
病室には義母が付いていて、気丈に父を見守っていた。
太郎の顔を見るなり、、今まで気の張っていた義母も安心したのか、泣き崩れた。
「太郎ちゃん、、帰ってきてくれてありがとう、、今日明日が乗り越えられれば、、大丈夫だと先生は言ってくれているの、、」と云い、義母は震えながら、目には涙を貯めていた。
堪えるのがやっとのことだった。
「お母さん、、後は俺が見てるから、、少し休んでください、、」と、、言って、病室のソファに休ませた。
太郎は北条木材の専務取締役から、交通事故の詳しい話を聞かされた、、、専務取締役は北条木材の社長「市左衛門」の実弟であり、事故の現場にいたので、事情を理解出来ていた。
話によると、木材の切り出し現場で、市左衛門社長と打ち合わせをして、現場の作業車で帰る山道で事故が起きたというのであった。
現場に積んであった木材が崩れて、市左衛門の車に落ちて来て、車ごと崖下に転落したと云う、、
警察の現場検証では、縛っておいたワイヤーが切れての事故であった、、ワイヤーが錆びて、積んであった木材の重みで切れたのでは無いかということであったが、、北条専務の話では、そうではないと云うのであった。
誰かが故意に斬ったのではと、、云うのである。
その話を聞いた太郎は、市左衛門社長の快復を待って、調べようと思った。
今は市左衛門の無事を祈るだけだった。
(太郎、事故の話を聞いて、怒る、、)
市左衛門が奇跡的に助かり、太郎は心から嬉しかった。妹さくらも喜び、義母もみんなが心から市左衛門の快復を喜んだ。
目が覚めた市左衛門を家族みんなで祝福したのであった。
「親父、、良かった、、本当に良かった、、ゆっくり、休んで直して欲しい、、親父が休んでいる間は、俺が山を見るから、、安心してくれ、、、」と、、太郎は自然に山に戻ることを約束した、、、
それを聞いた市左衛門は、大きく頷いて、「ああ、、ゆっくり、休むよ、、」と、云いながら、目を閉じた。その目には薄っすらではあるが、光るものがあった。
市左衛門の様態が落ち着いてから、太郎は北条木材の山に入り、交通事故の現場に立った。
そして、太郎は北条専務から、再び、現場の説明を聞いたのであった。
現在、北条木材の山を含めた山林で、産業廃棄物処分場の建設計画があって、地元の「双葉建設興行(株)」が土地買収を進めているということであるが、、市左衛門の山林が一番面積が多く、一番反対していると云うので問題が起きていた。
市左衛門は「とんでもない、、誰がごみ山にするものか、、わしの目の黒いうちは、どんなことがあっても売る気はない、、そして、設置反対をするから、」と、正面切って啖呵を切っていた。更に、土地を手放そうとする地主から、市左衛門は山林を買収を始めたのであった。
市左衛門から言わせると「勝手に、人の山林で、ふざけた産業廃棄物処理施設の計画など相談も無く、やるな、、」と、、意気を巻いても居たのであった。
ましてや、、愚連隊上がりのやくざ同様な連中に好き勝手はさせないと思っていた。
従がって、「双葉建設興行(株)」からすれば、、市左衛門は目の上のタンコブだったのである。
「双葉建設興行(株)」はつくば市近郊の愚連隊の無法者の寄せ集めが、建設会社を作り、筑波学園都市建設の時代の波に乗って、急上昇した土建屋集団であった。しかし、時代の流れとは怖ろしいもので、規模も大きく成り、「資金力」を持つように成り、、地元の指定暴力団「秋葉会」の幹部との付き合いで、顔役に祀られて、肩を振って歩くようになった。
「金力」」に「暴力」を加て、地元の権力者になったつもりで、その行動範囲が横暴になってきたのであった。
何でも自分の思うままに出来るという「うぬぼれ」が沸き上がり、、今回の計画が起ったのである。
その計画に真っ向から反対した市左衛門が標的になったようだった。
そんな内容の話を聞いた太郎は、、考えた、、そして、「今に見てろよ、、思い知らせてやるからな、、」と、、報復を考えた。
(太郎は市左衛門の事故を調べた)
秋風が吹いて、肌寒さを感じる朝になっていた、、そんな朝に目覚めた太郎は、父、市左衛門の事故には疑問を覚え、事故当時の現場を調べることにした。そして、朝飯を食べて、病院の市左衛門を見舞い、、元気になって来た父を見て、ひと安心した太郎であった。
「お兄ちゃん、もう大丈夫だって、、先生が云っていたよ、、、でも、暫くは車椅子だって、、、」と、、付き添っている妹のさくらから云われ、、更に安心した。
そして、父、市左衛門が話して来たのだった。
「太郎、、お前の性格を知っているから、、言っておくが、、馬鹿なことは考えるなよ、、わしの事故の件は警察に任せてな、、分かったか、、」と、、釘を刺された。
「大丈夫だよ、、、馬鹿なことはしないから、、安二郎おじさんの言うことを聞いて、仕事を手伝うから心配しないでくれ、、」と、太郎は答えたが、腹の中では違うことを考えていた。
ふざけたことをした「双葉建設興行」を許すことなと、、、事故原因を調べて、必ず,故意に仕組んだ証拠を見つけてやると決めていたのであった。
父、市左衛門の元気な様子を見て、太郎はつくば山の伐採現場に向かった。
途中、北海道の次郎に連絡を取り、状況を聞いて、もうしばらく、筑波に居ることを告げた。
「兄貴、、心配しなくて大丈夫だよ、、花房社長も良くしてくれるし、相棒の剛も頑張っているから、、安心してくれ、、、」と、、元気に言ってくれたので、筑波の事故調査を擦ることにした。
太郎は北条木材の専務でもある、安二郎に事故調査の了解を貰い、仕事の合間に調査を始めた。
「安二郎おじさん、、調査をしていることは親父には内緒で、、、」と、、頼んだ。
「分かったけで、、相手はヤクザだからな、、無理するなよ、、いいな、、」と。。念を押された。
太郎は昔、遊んでいた頃の悪友、田畑剛志を土浦に訪ねた、、
「久し振りだな、、太郎、、元気でいたか、、家を飛び出したことは聞いているけど、、今は何してる、、」と、、聞かれたので、、
太郎は簡単に事情を話して、今は北海道で暮らしていることを告げて、父親が事故を起こしたので、筑波に一時、帰っていると、、
「そうか、、元気で良かった、、喧嘩相手、飲み友達が急にいなくなったので、少しだけ寂しかったぜ、、、ふふ、、あはは、、」と、、、云いながら、、
「丁度、昼時だから、、飯でも食いに行こう、、、」となり、、
田畑剛志は懐かしい「焼肉帆掛船」に、太郎を案内した。
「懐かしいだろう,,お前に惚れていた朱美は、いい女将になってるよ、、」と、、云いながら
暖簾を潜った。
「いらっしゃい、、」と、、威勢の良い、女性が出たきた、、、
「あれーあらーー太郎ちゃんじゃあないの、、、生きてたの、、死んだとか聞いたけど、、
元気でよかった、、、逢えて、嬉しい。。。剛志、連れて来てくれたの、、ありがとう、、」
と云いながら、一度調理室に入り、、注文を聞きに来た。
「太郎、、懐かしいだろう、、此処の肉は旨いからな、、食べようか、、」と、、
途中から朱美も加わって、楽しい懐かしい食事をした太郎だった。
話の中で分かったのだが、剛志は極道になっていた。それも、今回の太郎の調査相手の「秋葉会」の幹部になっていたので、太郎は聞きずらかった。
そんな話のなかで、、剛志は勘が鋭い方なので、、「太郎、、お前の親父の事故の件だろう、、俺に聞きたいことは、、中身は知っているよ、、俺も秋葉会の人間だから、言ってはいけないのだが、、太郎、お前との中だから、さわりだけは話してやるよ、、しかし、云えば俺もやばいからな、、、」と、、太郎の性格を知っている剛志だから、話してくれた。
その日は夜まで太郎は剛志に付き合ったのである。
(今のやくざは変わった)
久し振りにあった悪友「田畑剛志」も、やくざになっていたが大人になっていた。
太郎は剛志と酒を酌み交わしながら、昔話などを懐かしみなら時間の経つのも忘れて楽しく呑んだ、、、途中から幼馴染の朱美も入って、、
朱美が亭主を連れて来た、、、「ああ、、太郎、、朱美の亭主は俺の舎弟分で、堅気になって、今は二人で「焼肉帆影船」を継いでいるので、、宜しくな」と、、紹介してくれた。
「初めまして、、隆一と言います、、太郎さんの話は聞いていますので、、宜しくお願いします、、」と、、挨拶をして、一緒に飲み始めた。
「隆一、、本当に酷い奴なんだよ、、太郎は、、ある日、突然消えてしまってな、、俺との夢を壊した奴なんだから、、まったく、ふざけた野郎なんだから、、」と、、
剛志は酒の飲み過ぎか、愚痴を言い出した。
傍で聞いていた朱美までもが、、「そうだよ、、裏切って、消えてしまったんだからね、、剛志、、うんと、、言ってやれ、、阿保たれ、、」と、、二人で文句を云いだした。
「もう、、勘弁してくれ、、これからは今までの、借りは返すからな、、」と、、二人を宥めた。剛志も朱美も本気では怒ってはいなかった、、昔を懐かしむ気持から、少々、愚痴を云ったのであった。
太郎と剛志は仲の良い兄弟分であり、、将来は秋葉会を背負って,行こうとまで誓い、、会長からも期待されていた二人だったのであるが、、太郎が消えてからは、力抜けた剛志であったのであった。
「太郎、、やくざも変わったよ、、俺も今度は若頭になるけどな、、お前が居ない組には、今一なんだよな、、お前、、もう、戻る気はないよな、、分かっているから、、無理しなくて良い。。」と、、言ってくれた。
「剛志、、真っ当な商いの付き合いをしようや、、、俺も北海道で骨を埋める気でいたが、、事情が変わったので、筑波でも考えていることがある、、お前と一緒にやりたいのでな、、
これからのやくざは警察から追いかけられるようなことのない商いをしないと、、、」と、、話を勧めた。
しかし、その前に片付けないとならないことがあるので、、剛志に確認しておきたいことがあったと、、切り出した。
「剛志、、お前にはすまないが、、双葉建設興行にだけは、けじめをつけないとな、、親父があんなことになったので、、そのことで、お前に迷惑がかかるのでないかと、気になったのだが、、、」と、、尋ねた。
「いや、、気にしないで良いよ、、双葉建設興行は、秋葉会のつくば支部で面倒を見ているが、やくざ特有の資金源のひとつだから、、やばいと思えば、つくば支部も手を引くよ、、
ましてや、つくば支部の支部長は長谷川巧だから、、太郎が絡んでくれば、何も云わないから大丈夫だよ、、気の済むようにすれば良い、、、」
と、、教えてくれた。
考えて見れば、、双葉建設興行も哀れであった、、しかし、やくざとはそいうものだ。
現代やくざには「義理」だの「恩義」は無く、全て利害関係だけのようだった、
徳があれば利用して、不利益となれば切り捨てる世界のようなのは、昔も今も変わらない。
そんな汚れた、「義理も糞」も一緒な世界に嫌気が差している、剛志でもあった。
久し振りに剛志は太郎と楽しい夜を過ごした、、朱美や舎弟分の隆一とも、笑いの出る酒飲みであり、ほろ酔いで少々、錆びれた土浦の夜道を歩いた太郎も楽しかった。
(太郎は悪友、剛志と会って、、)
太郎は久し振りに剛志と会い、、幼馴染の朱美とも逢えて、心晴れやかになり、、筑波に戻った。帰りのタクシーの中で、土浦から筑波までの田園地帯が変わったことに目を見張りながら、、昔を懐かしんだ。
余りにも変貌した筑波、、特に学園都市はまるで小東京の様だった。
夜も遅かったので、父、市左衛門の入院している病院には寄らずに自宅に帰った、様態も落ち着いたので、安心していた太郎だった。
そして,剛志に土浦ヤクザの状況も聞いたので、明日は双葉建設興行へ乗り込む心積もりをしたのだった。
朝目が覚めた太郎は、義母の作ってくれた朝飯を食べながら、、
「お袋、、良かったな、、親父も元気になって、、俺も親父が許してくれたら、、親父を手伝うけど、、やらして貰えるかな、、」と、、話けたら、、、
「太郎ちゃん、、大丈夫だよ、、お父さんは初めから、その積りだから、、」と、、言ってくれた。
昔から親父よりは義母の方が話しやすかった、太郎であった。
朝食を済ませた太郎は、、「お袋,、行ってくるよ、、」と、、用意してくれた弁当を持って出かけた。
「ああ、、それから、、帰りは病院へ行ってくるから、、、親父に何か伝言はあるかな。。」と、、云いながら。
太郎は専務の安二郎おじさんに連絡をしてから、双葉建設興行へ向かった。
(太郎、双葉建設興行へ)
太郎の心は怒りで燃えていた、しかし、襲われた父親の仇討をすれば済むというだけでは、三流やくざのする事と思い、昔の悪友で有る剛志とも会い、情報を集めて、考えた上での訪問であった。
太郎は北条木材の人間としての面会を、双葉建設興行の千葉徹社長に申し込み,会うことになっていたので、約束の時間に会うことが出来た。
「初めまして、、北条です、、千葉社長には時間を執って頂き、ありがとうございます、、」と、挨拶をした。
「いえ、、そんなことはありません、、私も北条木材の若社長とは御会いしたかったので、、宜しくお願いします、、」と云うことで、話合いが始まった。
内容は北条木材所有の山林を含めた土地での、「産業廃棄物処理施設」での話し合いであり、、その事業計画を取りやめて欲しいことを太郎は申し込んだのであった。
しかし、双葉建設興行の千葉社長は、、「今更、止める訳にはいかないですよ、、資金も投入して、許可申請の根回しも終わっているので、、」と、、言葉を返して来た。
「本当にそうですか、、地上げも完了していないのに、その事業計画は出来るのですか。。」と、太郎は聞き返したのであった。
そして、「千葉社長、私たち北条木材が土地を売らないと云ったら、、出来ないでしょう」
と、、言うと、
「今更、何を云うですか、、仲介人の大和不動産(株)が話を決めているのに、、」
更に、言葉を足して来た。「若社長、今回の事業には秋葉会が後ろ建てなんですよ、、」と、、云いながら威圧を掛けたきた。
太郎は内心、面白く為って来たな、、と、思いながら、、話を聞いていた。
大和不動産は北条木材の縁石に当たるが、父、市左衛門からは相手にされてはいなかった上に、借財が増えて、会社そのものが火の車だったのであった。
「分かりました、、それでは大和不動産(株)と秋葉会の人と、一度会わせてください、、
話を聞いて、納得できることなら、再度、話合いをしませんか、、その段取りをお願いしたいのですが、、」と、、頼んで、、
土地買収の話は次回、日時を決めてすることになり、、、太郎は引き上げた。
双葉建設興行の千葉社長が後日、連絡することで、その日の話し合いは終わった。
(双葉建設興行、、慌てる)
双葉建設興行の千葉社長に、「秋葉会つくば支部の長谷川巧支部長」からの連絡であった。
「千葉社長、、あんた、攻める相手を間違ったな、、今回の北条木材に絡んだ事業計画からは秋葉会としては手を引くよ、、、一切、関りは無いと考えてくれ、、」と、通達をされた。
千葉社長とあしては、納得がいかなかったので、その訳を訪ねた。
すると、長谷川巧支部長からは「馬鹿野郎、、俺たちに話を持ってくる時には、よくよく、調査をして来いよ、、お前な、、とんでもない相手に喧嘩を仕掛けているんだからな、、
良く聞けよ、、北条太郎という人は、本来ならば、秋葉会四代目になる人で、俺たちの親分筋に当る、、だから、誰が何と云おうと出来ないのだ、、分かったか、、お前とは縁切りになるぞ、、今回の事はお前自身で、けじめをつけてな、、」と、、云われたのであった。
更に、大和不動産の大久保実社長は姿を晦まし、行方不明となったしまったいた。
そんなことで、双葉建設興行の千葉社長は、慌てた。
秋葉会から自分でけじめをつけろと云われても、どうしていいか分からなかった。
本音は逃げ出したい気持ちであり、、個人会社ではあったが、社内の幹部と相談したのであった。しかし、今までがワンマン経営であったために、誰も意見や考えなどは無かった。
北条太郎と会う日が迫った。
双葉建設興行の千葉社長は、北条木材を訪ね、、太郎に面会を求めて来た。
そして、、太郎と北条木材の事務所で会うことになったのである。
千葉社長はもともと、強いものには頭を下げ、弱者には威張る男だったので、北条木材の事務所に入り、太郎に会うなり、土下座をしたのであった。
北条木材の社員たちがびっくりした、、今までの双葉建設興行の千葉社長とは打って変わった姿に、、何が起きたかと思ったほどであった。
太郎が、、「千葉社長、、そんなことをしないで、、中へ入ってください。。」と、応接室に案内した。
「先日は失礼なことを云いまして、誠に申し訳ございません、、若社長、、何でもして、償いますので許してください、、」と、半べそをかきながら、頭を下げた。
「どうしたんですか、、、秋葉会の人や大和不動産の大久保社長は話が付きましたか、、」と、、云われて、、また又、土下座をしたのであった。
太郎は当然、結果は分かっていたので、驚きもしなかった。
同席した叔父の専務がビックリしたのである。
「若社長、、秋葉会の長谷川支部長から、話は聞きました、、そして、秋葉会は手を引くので、自分でけじめをつけて来いといわれましたが、、どうすれば、いいのか分かりません、、どうか、今回の件では何でも責任を取りますので、許して欲しいのです、、何でも、申し付けて下さい、、」と、、平身低頭、許しを願って来た。
「分かりました、、まずは手を挙げて、、座った下さい、、」と、、太郎は話を始め
(双葉建設興行の千葉社長,謝る)
今回の事業計画の件では申し訳なかったと、、千葉社長は謝りに来て、平身低頭、頭を下げた、、太郎が尋ねた、、、
北条木材の社長の木材落下事故については、どうなんですかと、、
その件に付いては知らないと言ったので、太郎は激怒した。
「千葉社長、、本当に知らないのですか、、私が調べた結果では,故意の事故だったのであったが、、本当に知らないと言い張るのですか、、、」
「はい、、天地天命に誓って、私はやっていませんよ、、」と、、云い張った。
「千葉社長、、言葉を変えて、、聞くけどな、、どうしても、シラを切るつもりかな、、俺の方では調べて、証拠も揃っているけど、、素直に謝る気はないようだな、、
」と、、云いながら、、
棚に飾ってあった「ライフル」を持ち出し、、行き成り、千葉社長の座っている椅子に銃弾を撃ち込んだ。
千葉社長は慌てたというより、、肝を抜かれて、座っている椅子が濡れて来た、、云わゆる漏らしたのであった。
傍にいた叔父の専務も驚いて、黙っていた。
「こら、、千葉、、てめえ、、いつまでもシラバクレテ居たら殺すぞ、、お前、、秋葉会から何を聞いているんだ、、ちゃんと言えよ、、」と、、云われて、初めて太郎の恐ろしさを知らされた。
「千葉、、本当のことをちゃんと話せ、、いいか、今度、嘘を云ったら、お前の心臓を撃ち抜くぞ、、二度は無いからな、、」
「お前のような外道は、どうにでも始末出来るから、、正直に話せよ、、いいな」
と、云われて、腰を抜かしたようであり、、震えながら話を始めた。
北条木材の社員たちも銃声の音でビックリして、静かにしていた。
千葉社長は「はい、、いいますから、、殺さないでください、、」と、、云いながら、
全て、自分がやりましたと白状したのだった。
「馬鹿野郎、、初めから云って,謝れよ、、あんたは男じゃないな、、秋葉会から見放された時に、覚悟を決めて、けじめを付けろよ、、、」
「千葉、、あんた、秋葉会からケジメは自分で付けろと云われていたろう、、」
そんなことで、双葉建設興行の千葉社長は改めて、腰を抜かしたままに、命乞いをしたのであった。
そして、、五郎から条件が出された。
まず、父の市左衛門に心から謝って貰うことを条件とした。
それから、、千葉社長に約束をさせたのである、、、やくざの真似事は辞めることと、、やくざ世界は甘くはなく、、利用出来なくなったら、蜥蜴の尾っぽ切りではないが、見捨てられることを教えた、、絶対に不要になった人間は助けないからと、、
今回の事では秋葉会から責任問題で普通なら責められる筈で有るが、、その件は話を付けるから心配するなと言い、、二度とやくざな振る舞いはしないと、、約束させた。
そして、建設業の専念することを誓わせたのであった。
これからは地域の為に貢献して、利益が出たなら、遊ぶ金があったら、弱者救済をすことにして欲しいと、、少しでもやくざ紛いな行動をしたら、、いつでも償って貰うから覚えておけよと云い伝えた。
(太郎、秋葉会の若頭となった田畑剛志と会う)
双葉建設興行のつば社長と話し合いが付いた後に、土浦へ出向いて剛志と会って、その結果を報告した。
「そうか、、太郎らしいな、、、許したか。良かったな、、筑波支部の長谷川巧には話してくよ、、今後、この件に付いては何もするなと、、」
「心配かけて,済まなかった、、、何の例も出来ず、申し訳ない、、いずれ、この借りは返すからな、、ありがとう、、」
と、太郎は剛志に礼を述べた。
「太郎、、寿司でも食べに行こうか、、」と云って,剛志が懐かしい「源兵衛寿司」に連れて行った行ったくれた。
懐かしい暖簾を潜ったら、、威勢の良い声が聞こえて来て、、「いらっしゃい、、あれ、、兄貴ですか、、珍しいですね、、」と云いながら、
太郎を見て、、「ええ、、筑波の兄貴ですか、、ご無沙汰しています、、どうしたんですか、、」と、、源兵衛寿司の源次は声を震わせて、懐かしんだ。
「さあ、、、どうぞ、」と、言って、余りの懐かしさにうっすらと光るものがあった。
「おう、、源次か、、本当に久し振りだな、、元気だったか、、」と、言葉を交わした。
そして、、奥の調理場に声を掛けて、、姉の幸子を呼んで来た。
出て来た幸子は言葉にならなかった、、余りの突然の事だったので、、、
やっと、声を出したような涙声で、挨拶をしたのだった。
「若頭、、人が悪いや、、黙って、筑波の兄貴を連れて来るなんて,狡いよ、、参ったな。。嬉しくて、嬉しくて、、、姉貴もあははっ、、泣いてるぜ、、」
と云いながら,再会を喜んだ姉弟であった。
源次は「兄貴たちに、今日は特別、旨い寿司を握るから、、今日入ったばかりの魚があるので、、楽しみしていてください、、」
と、、張り切って調理場に消えていった。
残った幸子は顔を赤らめて、、太郎に話しかけていた。
「太郎さん。。土浦から消えて、どうしていたんですか、、突然にいなくなったので心配していましたわ、、」と、、
「そうだよな、、こいつはいい加減だからな、、黙って消えた時には本当に、俺も面食らったからよ、、まったくふざけた野郎だからな、、幸子さん、、うんと言ってやれよ、、」と、、傍にいた剛志も口を挟んだ。
「太郎、、お前な、、幸子さんは今も、一人で源次と頑張っているんだからな、、少しは考えろよ、、」とも、、付け加えた。
そんな積話をしているところへ、源次が刺身の盛り合わせを持ってきて、、、
「さあ、、若頭も、筑波の兄貴も味見してください、、」と、、云いながら、その日は源兵衛寿司は貸し切りで、太郎の再会を祝ってくれたのであった。
「ありがとう,剛志、、」心から太郎は礼を述べて、その日は懐かしい、過去へ置き忘れた幸子たちと楽しいひと時を過ごした。
(太郎、一度、北海道へ、、)
太郎は父、市左衛門も元気に退院して、、双葉建設興行の件も一段楽したので、、次郎たちが心配になり、北海道日高を訪ねた。
札幌駅まで次郎と副島剛が迎えに来てくれていて、、「兄貴、、お帰り、、元気で何よりです、、」と。。。
「おお、、次郎たちも元気そうだな、、、良かった、、仕事は順調か、、覚えたか、、」と、云いながら日高へ向かった。
花房牧場では、、花房雄一が迎えてくれて、その日の夕食は楽しい宴になった。
「太郎、、問題は解決したのか、、、今度は本腰を入れて、牧場の仕事が出来るな、、」と、、喜んでくてたのだった。
「雄一、、その件で相談があるので、、明日、時間を空けてくれないか。。」と、太郎は話をして、、言葉を濁した。
次の日、次郎たちが調教で出掛けている間に、太郎は雄一に相談をしたのだった。
太郎はこれからの事業計画を事細かく説明をした、、、
「雄一、、俺はお前との約束通りに、牧場経営をする積りでいるが、、筑波の木材業務も見なくてはならなくなった、、」と、話をしてから、、
「ここからが相談なのだが、、」と、告げて、太郎の壮大な計画を説明したのだった。
「何、、太郎、、牧場経営を辞めるのか、、」と、、云って来た。
「最後まで、話を聞いてから、雄一、お前の考えを聞かせてくれ、、」と、云って、太郎は雄一の言葉を遮った。
そして、太郎はつくばに「調教施設」を造り、北海道日高で競争場をある時期まで育てて、競馬場施設に近い、筑波で調教をしたいと、、更に、交通状況の悪い東京ではなく、自然豊かな筑波での「場外馬券売り場」を創りたい計画を話して、、日高の牧場経営と全てを総合的に、一緒にやりたい計画を説明したのだった。
そして、土地は広大な広さで確保出来るので、付帯施設を作って行きたいことも話した。将来はレジャーランドも併設することも、、また、馬たちの頻尿処理から、ガス再生を取り入れた「温泉施設」まで、、考えていることを、太郎は雄一に力説したのだった。
話を聞いた雄一は唸った。。「そうか、、そこまで、考えているのか、、太郎は凄いな。。」と、、云いながら、、最終的には賛成してくれた。
「勿論、検討することはいろいろある、、それを、雄一、お前と相談していきたい、、、だから、、時間はかかるが、筑波に来て、、予定現場を見ながら、、一緒に考えてくれ、、」との、、相談であった。
そして、二人の壮大な事業計画は始まった。
第二話「やくざ先生」
(1)やくざ先生、、、、
神宮司龍二は10年ぶりに筑波山の麓にある私学つくば学園の前に立った。懐かしい匂いがする、、、春も終だというのに桜吹雪が風に舞っていた。
何もかも10年前と変わらない、、、学園の広場を職員室の入り口に手をかざした。
同時に引き違い戸が開いた。。。
大川学園長の顔が出てきた。。「おお、、、龍二か、よく来たな、、、、そうか、もうあれから10年か、、、早いもんだな」
「迎えにも行かず、、、済まん、、、忘れた訳ではないのだが、、、済まん、、すまん]と詫びてくた。
「どうだ、、、龍二、変わらんじゃろ、、、相変わらずの貧乏世帯じゃ、、、済まんのう、、、」
「とりあえず、、、入れや、、、何にも無いがのう、、話は山ほどあるからの、、」
大川学園長は心から歓迎してくれた。お前の大好きなばあさんも去年亡くなったよ。。。と、寂しげだった。
龍二が職員室に入ってから、暫くして、大川学園長の娘さんが飛んで来た。
「龍ちゃん、、お帰り、、、会いたかったよ。。。今日はゆっくり出来るんだろう、、、美味しいもの作るから」
と、、、飛びついてきた。
その晩は学園内にある宿舎で、花が咲いた。
学園長は酒が好きだから、日本酒を飲んだ、、、龍二は出所したばかりなのでビールを少し飲んだ。
娘の花代は父の手伝いで、まだ、独り身だった。父の晩酌の付き合いで花代は酒を飲むようになっていた。
「ところで、龍ちゃん、仕事はどうするの、、、、まだ、決まっていなかったら、つくば学園を手伝って欲しいな」
大川学園長も手伝ってくれたらと、願っていた。
(2)緑吹く風にのびのびと。。。
大川学園長に連れられて、龍二は3年生の教室へ向かった。
そして、紹介をされた。
「今日から本校に来て貰った、、神宮司龍二先生だ。
みんなの体育を担当する、、そして、柔道部の顧問をして貰らう、、、よろしくな、、、仲良くてくれな」
「神宮司龍二です、、、よろしくお願いします」
そして、、、大川学園長が少ない、生徒を紹介してくれた。
「みんな、これからは神宮司先生も学校の宿舎に寝泊まりするので、、食事も一緒だから仲良くしてな、、、
神宮司龍二も仲良くしていこうと思った。
3年生は男25人、女性15人だった。
神宮司龍二から見ると、みんな癖のある生徒に見えた。
全員が親無しか、片親の子供たちばかりだった。
でも、見た限りでは明るかった。
龍二は好きになれそうだった。
生徒全員の紹介は時間が掛かったが、大川学園長が紹介してくれた。学園長には愛情が溢れていた。
筑波学園は1年から3年まで合計で120名の学園であった。
通いの学生は80人で、後は宿舎住まいであった。
その日の夜はささやかな歓迎会があった。
龍二は嬉しかった。新しいつくば学園で精一杯生きてみよと思った。
3(自然の中で、、胸張って)
龍二は思った。今度こそ人生の道を間違えずに歩いてみようと。。。。
目の間にいる子供たちと生きてみようと思った。
筑波学園の生徒120名のうちの、80名が宿舎生活の生徒たちだった。親なし子供が60人もいた。
しかし、みんな明るく素直に見えた。それは龍二から見た欲目だった。
親なし生徒たちは何処か違っていた、、、、いいのか悪いのかはまだ、分からなかったが、反抗心が強かった。
龍二にもなんとなく理解出来た。
もうすぐ、夏休みが近づいて来た、、、親なし生徒たちは帰るところがなかった。
それで、学園側の企画した5日間のキャンプ合宿があった
夏休みが近づくと、キャンプは3班に分かれていくので、その班分けが大変だった。
宿舎生活者も1年から3年までいるので、本当に組分が決まるまでは大変だったのである。
好き嫌いもあり、、、平均して決まるまでには、いろいろ揉めた。
それでも、何とかまとまり、準備は出来た。
龍二は何も出来ず、黙って手伝うだけだった。
学園長の娘、花代がてきぱきと段取りをしていた。
昔しか知らない龍二は、花代が大人になったことに驚いていた。
4(キャンプに参加して)
神宮司龍二は嬉しくもあり、楽しかった。
人と、、、仲間と触れ合うことを忘れていた。。常に監視されて、見張られて生きてきた自分が恥ずかしかった。
随分と長い間、狭いところで,窮屈な生活をしていた自分が悲しかった。
今は何の囲いもなく、自然の中で、胸いっぱいに空気を吸って、生きてることに、涙した。
大川学園長に感謝していた。こんなにも暖かく迎えてくれたことへの感謝だった。
そして、子供たちと過ごせる喜びを、、、
大川学園で子供たちと一緒に生活することにも感謝し,好きな柔道をすることが出来て嬉しいことばかりであった。
龍二は柔道部に夢を持っていた。。。生徒の中に頼もしい奴がふたりいるのであった。
大山勝次と小山正一の二人であった。
宿舎生活で、どちらも親無しであった。学校対抗の団体戦には5人必要であったが、、、戦力は今いちであったが、頑張っている。
今回のキャンプにも5人が揃って参加している。
素直な子供たちなので、実量を伸ばしてやりたいと思っている。
神宮司龍二は学生時代に大学選手権で優勝したことがあるので、勝つことを覚えさせたかった。
5(勝つことの楽しみ、喜び)
神宮司龍二は筑波学園の生徒たちに勝つことの楽しみを、喜びを知ってもらいたかった。
仲間同士で、環境の素晴らしい自然の中で躍動することは素晴らしいことだ。その中で、青春時代に競い合うことの素晴らしさ、切磋琢磨することの素敵なこと、汗を流して青春時代を進むことを知って貰たかった。
競い合うことの逞しさを覚えて欲しいと思った。
夏休キャンプ生活を楽しんでいる生徒たちに、今度は競う会う青春を楽しんで貰いたいと思うようになった。
筑波学園の夏休みも終わり、新学期が始まった。
神宮司龍二も教員生活に慣れて来た。
そして、特に部活活動に明るさを見出していた。指導している柔道部が力を出し始めていた。
特に個人部門では大山勝次と小山正一の二人だった。
大山勝次は重量級の強さを持っていた。小山正一は背丈は小さいが背負い投げの特異な奴だった。
団体戦では後の3人がほどほどで、何とか頑張っていた。
夏休が終わると秋の大会が近づき、練習も盛んに行うようになった。
龍二は柔道部員に教え込んだ、、、勝つことの喜びを。。
そして、練習にも力が入つていた。
そんなある日、、、柔道部員の家族から苦情が入った。
柔道ばかりで、、、勉強の学力が落ちてきているので、、、心配と。。。。今のままでは大学への進学が心配で仕方が無いので、、、柔道を辞めさせてほしいと。。。
本人は柔道をやりやがっていた。しかし、家族の強い反対で
辞めることになったのであった。
そして、生徒から直接相談を受けた、神宮司龍二は迷った。
大川学園長に相談して、話し合いをしたのであった。
生徒の親は地元の有力者であり、学園にも協力してれているので、学校側は困った。
しかし、本人は柔道を続けたいというので、、、神宮司龍二は親元に直に頼み込んだのだった。
熱心に神宮寺龍次は頼んだ。。。。
余りの熱心さに絆されて、、、また、自分の息子の必死に諭されて、、、有力者は折れた。
今回の大会で入賞出来たらと言うことで。。。。
それから、有力者の生徒は夢中で頑張った。
(6)諦めるな、、、弱音を吐くな
地方の私学である筑波学園が柔道大会で県大会に出場して、決勝まで勝ち進むとは奇跡に近かった。
個人戦ならばいざ知らず、団体戦で決勝まで来たので、地元を上げて大騒ぎだった。
5人のうち3人までは強かったが、後二人はさほどに強くはなかった、、、しかし、頑張った。練習も良くした。
顧問の神宮司龍二も頑張った。
県大会決勝の前日に、神宮寺龍二は大学時代の友と再会した。
大学時代に早稲田大学の竜虎言われた、柔道仲間の坂本良助と偶然にあった。そして、決勝大会を競ったのであった。
「おい、、龍二じゃあないか、、、久しぶりだな」
と坂本良助から近寄ってきた。
「おお、、坂本か、、、よろしくな」と言いながら、
決勝戦は始まった。
兎に角、試合が終わってからと言うことで、、別れた。
神宮司龍二は教え子たちに激を飛ばした。
小さな地方の学園が全国大会まで、勝ち上がり,今、決勝大会に臨もうとしていることに、、、龍二は感激していた。
そして、決勝の相手が大学時代の友である、坂本との決勝であった。夢のようなことだった。
神宮司龍二と坂本良助は常に技を競い、勝ち負けを競っていた。
(7)懐かしい昔、、、
柔道の対抗試合は坂本良助が率いる、東京都立早稲田実業が勝った。強かった。しかし、神宮司龍二が率いるつくば学園も強かった。
試合の数日後に坂本良助がつくば学園を訪ねて来た。
龍二がバス停まで迎えに出た。
「良助、、、、ビックリしたろう、、田舎なので」
「龍二、本当にしばらくだった、、、12年ぶりかな、、、元気だったか」
「ああ、、、ありがとう、わざわざ、会いに来てくれて、、、本当にありがとう」
二人は自然一杯のが学園の宿舎で祝杯を挙げた。
12年間の積もる話は尽きなかった。
坂本は結婚していた、、、
「龍二、あの後の事件のことは知っているよ、、、ご苦労さんだったな。。。しかし、仕方がないよ。。。でも、元気でよかった。」
神宮司龍二は父親が会社を倒産して、そのあとの借金地獄でのやくざの追い込みで、家族を守るためにしたことだった。
母親と妹さんは自殺に追い込まれて、それまでの催促と酷い嫌がれせで、家庭は崩壊してしまった。
本当に辛ったな、、、、俺が来たことで嫌なことを思い出させてしまったと、、、昔を涙した。
でも、大丈夫だよ、、、
大川学園長に拾われて、今は人生を楽しんでいるよ。
しかし、「坂本、、、お前と柔道をやっていてよかった、、、柔道があるから生徒たちと明日への光を見つけて、、日々生きてられるよ」
「坂本、、こんな俺でよかったら、ずっと、付き合って欲しいな」
二人は夜通し酒を酌み交わしながら語った。
(8)仇として狙われる龍二
久しぶりに訪ねて来てくれた坂本良助と楽しい一夜を過ごした。夏休みも終わりに近かったが、次の日に良助は帰った。
寄宿舎で寛いでいた龍二のもとにまぬかれぬ客が訪ねてきた。
花代さんが5人の男を案内して来てくれた。人相の悪い男たちであった。
龍二は一目で分かった。12年前に殺し合ったやくざたちであった。関東連合のやくざで、幹部やくざの大畑長次郎と言っていた筈だった。後の4人ははっきりとは覚えていなかった。「ご無沙汰しています、、、大畑です。随分探しましたよ。
あれから人を訪ねて歩きました。。。龍二さんの友達の坂本良助さんを見張っていれば、必ず、逢えると思っていましたので、、ずっと、彼を見晴らしていましたよ」
「どうして、来たかは分かりますよね、、、私たちの稼業は親分を取られた時は必ず、その仕返しをしなくては筋が通らないので,、、本当に探しましたよ。。ましてや、兄貴分まで殺られているので、覚悟してください」
「12年間は長かったけど、付き合ってください」
神宮司龍二も「分かりました、、、しかし、私はやくざでも何でもないので、、他の方法はないのですか」
すると、他の一緒にいる連中が、、、
「ふざけるな、、、俺たちはお前の命を貰わないと組に戻れないんだよ、、、ぐたぐた、、今更、泣き言を云うなよ」
と、もう、刀を抜いていた。
神宮司龍二も覚悟はした。刑務所の中でも何度か襲われたので。。。
学校は夏休みだったので生徒は誰もいなかった。宿舎の外に出た龍二は5人の男に囲まれていた。
絶対絶命だった、もし、仮に戦って勝っても良いことはない。
しかし、火の粉は払わなければならない。。。
そんな困っている龍二に助け船が出て来た。
園長の娘の花代が大きな声を上げて、、、「人殺し。。」と
叫びながらホースで水を撒いて来たのであった。
花代の「人殺し」と言う叫び声で、人が集まって来て、決闘は一時止まった。
やくざの幹部である大畑長次郎が止めたのであった。
「龍二さん、日を改めて会おう、、今日はここで引き上げるから、、、」
と言って、やくざは引き上げた。
神宮司龍二は助かった。学園長の娘、花代に救われた。
大川学園長が帰ってからが大変だった。
9(再び会うことを約束して,大畑長次郎は引き上げた)
花代に救われた龍二であった。しかし、大畑長次郎は再度会うことを約束したのであった。いずれは決着をつけなければならなかった。探し当てられた以上は逃げる訳にはいかなかった。相手はやくざであり、12年もかけて探し当てた親分の仇である、、、何が何でも形をつけようとするだろう。大畑長次郎たちが帰った後の事が問題だった。大川学園長は知っていたが、誰も知らないことだったので、、、娘の花代も知ってはいたが。。。
夏休の事とは言え、学校内でのやくざとの闘争である、、すぐに噂になり、問題となった。
父兄の間からも問題が起こり、犯罪人に、ましてや人殺しに子供を預ける訳にはいかないとなった。
そして、評判の良かった住民にも反対を唱える者が出て来た。
大川学園長が事情を説明したが納得の往かないものが出た。
大川学園長は困った。
生徒たちは神宮司先生の過去には問題が無い。今まで通りに学校に残って欲しいと嘆願された。
神宮司龍二は大川学園長に迷惑はかけたくないので、辞めたと言って来た。
大和学園長と生徒の父兄、、地元住民と話し合った結果、神宮司龍二が身を引くことになった。
この話を聞いた生徒たちはストライキを起こした。
しかし、神宮司龍二の意志は固く、生徒たちを説得した。
そして、自分はやくざたちと話をつけてから、農園を開くことにした。
良かったら、学園を卒業したら、農園を一緒にやりやいと考えているから、手伝って欲しいと。。。
折角知り合った仲間なので、ずっと、いたいのでは農場経営をしたいと、、、
みんなが安心して働ける農場を作って、待ってると約束をした。
翌日、別れを告げて龍二は学園を後にした。
その前にやることをやってからな、、、大畑長次郎との決着だった。
10(さようなら、、仲間たち)
神宮司龍二はお世話になった大川学園長に、迷惑をかけられなかったので、学園に別れを告げることにした。
龍二としてもずっといたかった。生徒たちとも特に柔道を通しての青春愛が出来上がっていた。
人が人を教えるという教育愛を知ったような気がして来た矢先であった。心から大川学園長のもとで、もっともっと教えもしたかったし、学びもしたかった。
しかし、自分の犯した罰の報いなのかも知れない。
償わなければいけないのだ。たとえ、相手がやくざであっても、人を殺したことには違いないのだから。
そんな気持ちを持ちながら、大畑長次郎との約束の場所に向かった。
龍二は覚悟はしていた、自分の犯した罪の償いは,償わなければと。。。
筑波山の麓、広々とした河原の一画で、大畑長次郎は待っていた。
「龍二、、、よく来たな、逃げずに。。。あんたの度胸と気持ちに答えて一対一の勝負をしよう。。。」
「龍二、他の者には手は出させないから、、、たとえ、俺が負けても約束は守るよ」
「そして、この勝負で恨みつらみは無いことにしよう。あんたも堅気の人間だ。これが最後の勝負だ、、、いいな」
「誰も手を出すなよ、、、じゃあ、行くぜ」
と、大畑長次郎は二本の日本刀を出した。
龍二も覚悟はした。
二人が構えたその時に、、、30人からの学生が何処で知ったか、駆け込んで
来て、二人の仲に割り込んで来た。
「先生を守れ、、、先生、俺たちが戦っている間に逃げてください。。。先生、死んじゃ駄目だよ、、、」
龍二は学生を止めた。
「やめないか、、、危ないから、どいていてくれ、、、」
と、龍二は叫んだ。
この学生たちの真剣さを見た、大畑長次郎は刀を引いた。
「龍二、やめよう、、、この勝負はまたにしよう」
大畑長次郎は生徒たちの真剣な、命がけの行動に胸が熱くなった。もともと、情のあるやくざだったから、手を引いた。
そして、「龍二、今回は学生たちに免じて、手を引くよ、、、いずれ、何処かで会ったらら、覚悟しておけよ。」
と言って、さっさと引き上げた。
なんとも男気のある男だった。
龍二は頭を下げた、、、引き揚げていく大畑長次郎に。。。
深々と頭を下げて見送った。
学生たちは喜んだ、、、そして、その様子を見ていた大川学園長も涙して、頭を下げていた。
11(その後の龍二は、、、、農場造りに励んだ)
大川学園長や学生たちと別れた神宮司龍二は一人旅に出た、
大学時代の友で、先だって柔道大会で再会した、坂本良助を訪ねた。
彼は北海道の実家に戻っていた。連絡を取ったら、是非、北海道へ来いということで尋ねたいった。
彼の実家は日高で牧場を経営したいた、競走馬の飼育であった。
広々とした北海道日高の牧場で手伝いながらのんびり過ごした。
そんな日、「龍二、、、話し聞いたよ、、、どうだろう、、、俺の牧場を手つだってくれないか、、、」と誘われた。
龍二はまだ行く当てはなった。大川学園を出てから、独立農場を作って、自分なりの青春道場を作るつもりでいた。まだ、構想中ではあったが、仕事もしながら、運動もしながら精神修養の場を作って、今の若い連中と人生の道を究めていこうと思っていた。
坂本良助に牧場経営に参加しないかと言われて、心から感謝した。龍二も北海道日高の草原で、自然に囲まれた中で、競走馬を相手に仕事をしようと思った。
早く仕事を覚えて、龍二を慕ってくれている若者を呼び寄せたかった。
龍二は大川学園長に連絡を取って、相談をした。
来年卒業の学生を送ってくれると約束をしてくれたので、
龍二は今度こそ、人生最後の夢を叶えようと、心が弾んだ。
春が来るのが楽しみなった。
12(龍二、、、春を迎えて)
龍二は嬉しかった。そして、迎えてくれた良助に心から感謝した。
「良助、、、なんでも言って欲しい、、、俺は何も知らないのだから、教えてくれ、、、そして、指導してくれよ」
「春に若き仲間が来るまでには、いろいろと覚えたいからな」
良助も喜んでくれた。
「ああ、、、慌てずに覚えてくれ、、、先は長いんだからな」
「良助、、一つ聞きたいんだけど、、、牧場の外れにある小屋は、今は使ってないのかな、、、」
「ああ、、、使ってないよ、どうしてだ」
「使ってなかったら、俺に貸して貰いたいんだけどな、、」
「いいけど、、、どうするんだ、、」
龍二は少し手を入れて、道場を作りたいことを話した。
春に生徒たちが来たら、、、一緒に柔道の道場を作りたいんだと話した。
良助も賛成してくれた。
龍二は春までに牧場の仕事を覚えていたい、、、そして、みんなが来るのを楽しみに待ちたい。
北海道日高の大地で夢を開きたい、、、、、
(13)龍二にも戻って来た青春が。。
神宮寺龍二にも消えた青春が戻って来たようだった、、、大事な青春時代の10年間を刑務所で過ごした龍二であったが、つくばでの大川学園時代で青春のやり直しをしてきた、、、自然の中で10代の若人と過ごした3年間、そして、過去に起こした過ちを見なおさせてくれた大畑長次郎との出会い、過去を清算させてくれた戦い。
刑務所生活から教員生活の真似事を通じて、人世道を少しだけ学んだような。。。
そして、大学時代の友である、坂本良助の友情と、、、、
龍二は人の情けをしみじみと知った。
人とは良いもんだ、、、心を開いて通じ合える友が、仲間がいるということは素晴らしいということを感じた。
これからは、その温情を大事にして、人を大事にして、相手を、、、人を知って、生きていきたい。
春になって、尋ねて来る教え子と言うか、仲間を迎えて、新しい大地で生きていきたい。
人が生きるということの素晴らしさや、大切さを大事にして、仲間と切磋拓魔して人生を歩んでいきたい。
14(蘇った青春)
神宮司龍二は春が待ち遠しかった。
失った青春をもう一度、やり直そうと思っていた。
今から胸がわくわくしていた。
筑波学園の生徒たちと会えるのが心待ちに嬉しかった。
そして、柔道を共に練習して、全国大会にまで出場したことが懐かしい。。。早く、あの、大山勝次と小山正一にも会いたい、、、、他につくは学園から5人がやって来る。
龍二は夢に膨らんでいた。
少ない仲間たちと坂本の牧場を手伝いながら、自分たちの農園を作ることであった。
農園を作る土地は友達の坂本良助から借りることが決まっていた。
15)北の新天地で夢を、、、
神宮寺龍二は北海道日高に来て、大学時代の同級生の坂本良助の牧場で働いていた。。。いずれは独立して「農園経営」をすることを話していたのである。
とりあえずは良助の経営する牧場を手伝った。良助の牧場は競馬馬を育成していたのである。
龍二は北海道日高の広い牧場を見て、、、何処までもも澄み渡った空を眺めて、、「ここだ、、」と思い、覚悟を新たにした。
「農園経営」をすると決めても何も知らない龍二であり、、これから全て、「一から、、」やることであったが、意気込みだけはあったのである。
良助の知人で「ハウス農業」をしている、川島健太郎を紹介して貰って
勉強訓練中であった。
龍二は良助から「牧場経営」も学んでいたのである。
将来は農業と牧場を併用した事業を、筑波学園からくる仲間たちと一緒に経営していく積りでいた。
16)龍二は「ハウス農業」の準備を。。。
龍二はこれから参加する、、大山勝次と小山正一他に3名のつくば学園卒業の若者と「ハウス農業」をするために、準備を進めたのであった。
春には高校を卒業して、夢振らませてやって来る若者たちに落胆はさせられない、、、龍二は自分を頼って来てくれる彼らに期待もされているので、自分の人生を掛けて頑張らないとならないと思ったいた。
その「ハウス農業」をするために、大学の同級の坂本良助も協力を惜しまずに手助けをしてくれたのである。
そして、北海道での「ハウス農業」期待してくれていた。
そのために広大な土地を貸してくれたのである。
「ハウス農業」そのやり方は、、、北の新地で野菜を中心にした農業であった。
新鮮な野菜を栽培して、、、東京などの都会に直送することであり、、生活苦で苦しむ低所得者向きに、いかに安く作るかを考えて、、、経営する低経費農業であった。
友人の坂本良助が経営する牧場の排出する「排泄物」を利用して、、肥料及びメタンガスなどを熱源として、効率のいい、リサイクル事業と結び付けて運営することであった。
また、輸送も競馬馬との絡みで、、馬の輸送などを考えて、野菜の低価格販売をするシステムを構築することであった。
17)春が来て、、、大山勝次と小山正一他3名の若者がやって来た。
龍二には待ちに待った日がやって来た、、、列車できた5人を札幌駅まで迎えに行き、、再会を喜んだ。
「よく来たな、、、待ってたよ、、、疲れたろう、、、」と言って出迎えたのである。
大山勝次、小山正一、山田三郎、花山悟、それにでぶちょの大久保理三郎か、、、懐かしいな、、、
と言いながら5人を車に連れて行った。
「先生、、、元気だったみたいだな、、、北海道は食べ物が旨いのか、、、少し、太ったみたいだよ、、、あはあはあは、、、」と笑い声が響いていた。
牧場から借りてきたワゴン車で6人は日高に向かった。
途中は海岸線が多く、景色もよく、晴れた日だったので、、、「なんか、、、修学旅行みたいだな、、」といつも陽気なでぶちょの理三郎がはしゃいでいたのであった。
「先生、、、北海道は広いなーー、なんか気持ちがでっかくなったみたいだよ、、、やりがいがあるようだ、、、広い台地で先生と一緒に出来るなんて嬉しいよ、、宜しくお願いします。」
と、、大山勝次が話しかけてきた。
「ああ、、それから大川学園長がよろしくと言っていました、、、それと花代さんもくれぐれもよろしとだった、、、」
「そうか、、、みんな元気か、、、学園長も花代さんも達者でいるかな、、」
と、、龍二が聞き返したら。。。
「ああ、、元気だよ、、、今年の夏休みには会いに来ると言っていましたよ、、」
そんな会話をしているうちに「日高の宿舎」に着いた。
「みんな、この宿舎は仮だからな、、これからみんなで新しい宿舎を建てるから、よろしくな」
と言いながら、、、龍二の親友の坂本良助の家に入った。
その日の夜は良助が龍二の仲間たちを歓迎してくれたのである。
18)龍二の仲間が増えて、、、いよいよ「ハウス農業」始まる
つくば学園から大山勝次たち5人が来てくれた夜は、坂本良助の家族が歓迎会をしてくれたのである。北海道のジンギスカン鍋で、龍二の教え子たちにご馳走を振舞ってくれた。。。みんな喜んで「旨い、、旨い」と言って食べた。
食事が済んだあとは、、、牧場の大浴場でみんな一緒に入り、夢を語りながらはしゃいでいた。
寝るところは仮ずまいの牧場にある宿舎で寝た、、、みんな、長旅で疲れていたのか、すぐに寝てしまった。
龍二はみんなの寝顔を見ながら、ひとり、これからの夢を描いていたのである。
何もないところからの出発であった、、、金もない、、、前途多難な道だとは思うけど、、、「こいつらがいる、、、仲間がいるんだ」と、思うと燃えてきたのである。
これからは食事も洗濯も何でも自分たちでやるのだと、、、心を引き締めた龍二であった。
龍二が牧場の食堂を借りることになっていたので、、、「おはよう、、、起きろ、、」
とみんなを起こしたのである。
そして、まずは洗面所に連れて行き、、、そのあとに食堂の炊事場に行きみんなで食事の支度をした、、、「いいか、、、勝次、、正一もいつも手分けして、まず朝は飯のしたくだから、、、係りを決めて効率よくしてくれな、、、」と、、、龍二は指示をしたのである。
すべて、、自炊であり、、何でも自分たちでやるのだから、、当番を決めて、、、順番良くしないと、、、作業も出来なくなるからな頑張って欲しい。
初めての炊事なので、坂本良助の奥さんの美咲さんが手伝ってくれた。
「いいか、、、みんな、明日からは自分でやるんだからな、、もたもたするなよ」と、、、隆二はみんなにはっぱをかけたのである。。
そして、、、「いいか、みんな、、、俺は無一文だからな、、、稼げるまでは、借金で賄って
やるんだから、、その積りでいてくれ、、」
「だから、、最初は牧場の手伝いが半分で、ハウス農業の準備が半分だから、、辛いけど頑張って欲しい。。」
と、、、龍二は念を押したのである。
それでも、みんなで作って食べる朝飯は旨かった。
19)仲間で作る「ハウス農業」のハウス
龍二は坂本良助の力を借りて、、、「ハウス農業」の建物を作り始めた。
良助から借金をしてという「投資援助」をして貰い、、ハウス農業の建物の基礎工事にりかかったのである。。。
規模は1,980平方メートル(600坪)の鉄骨造りのビニールハウスであった。。。当初は2棟立てることにした、、、
骨組みは寸法を出して、、、鉄骨会社に加工をして貰い、、、自分たちで組み立てをする方法を執ったのである。鉄骨組み立てはボルト締めと溶接でやることにしていた、、、北海道に来てから龍二は良助の知人である「鉄骨加工会社」で見習いをして、技術を習得してた。
更に、基礎工事の生コン打ちも習得していた。
ビニールハウスを鉄骨で組み立てるには理由があったのである。
後々の電気は「太陽光発電」を屋根に取り付けるためだった。
龍二は将来は電気は自家発電で、、、水は井戸水でという風に、、金を掛けないというか、自前で賄うことを考えていたのである。
そのほかにも、あらゆることを「経費」を節約して、、、安価のいい野菜を作ることを考えていたのであった。
とりあえずは、、、一番もとになる「ハウス」を作ることであり、、、其のハウスを自分たちの労働力で作ることであったのである。
それが一番の「経費」削減に通じるからであった。。。
仲間で出来ないながらも力を合わせ、汗を流して作る「農業ハウス」に意義があると、、龍二は仲間5人に言い聞かせ、、、来る日も来る日も頑張ったので。。
そして、仲間で汗を流して働いた後の「握り飯」は旨かった。
20)毎日、汗を流して作る「鉄骨ハウス」
龍二も朝は5時から起きて、、、勝次や正一ら5人を起こす準備をするのである、、、まだまだ「18歳の少年」であり、、青年への出発時点であるから、若い仲間が起きたら、すぐに朝ごはんの支度が出来る、下準備をしておくのだった。
そして、、「おはようございます、、、」と5人が起きてくる。
「さあ、、、今日もやるぞ、、顔を洗って、朝飯の支度だ、、、もたもたするなよ」と、、、声をかけて、
龍二は朝飯を作り始めた。朝ごはんを食べながら、一日の段取りを説明したのである。
みんな、よく話を聞いた、、そして、質問をした。
現場に入ると、分からないまでも必死に動いた、、、「今日は生コンを打つための型枠を組むからな、、、力仕事だ、、
朝飯をいっぱい食えよ」と、、、はっぱをかけたのである。。
「はーい、、、頑張ります、、、飯が旨いよ、、、」でぶちょの理三郎がいかにも食いしん坊らしい言葉を吐いた。
「よーし、、、やるか、、、昼飯まで頑張れよ」、、、
と、、、龍二たちは「タオル鉢巻き」をして、現場に直行した。
そして、みんなで生コンを打つための型枠つくりを始めたのである、、、木材を寸法に合わせて切ったり、、敷地の基礎を打つところに砕石を敷き詰めたりして汗を流した。
お昼まで頑張ったので、、、型枠を設置し、生コンを流し込む準備は出来たのである。。
「よし、、、お昼にしょう、、」と、、朝、用意してきた「握り飯」を食べた、、、おかずは良助の奥さんが作ってくれた「おしんこ、、、漬物」を摘まみながら、、、
「旨い、、、旨い。。」と食べた。
汗を流した後の食事は旨い筈である、、、龍二は思った「働いた後の飯の旨さを」知って欲しいと、、、
昼休みは、仕事を効率よくするために「1時間」を取った。
慣れない力仕事の為か、、、近くの木陰で昼寝をした。疲れているみたいで「いびき」を掻くやつも。。。
仕事は若い奴が動くので早かった。
午後も慣れて来たので作業も順調に進んだのである。。。
会社勤めと違うので、、、5時で終わりとはいかなかった、、
龍二が「自分たちの仕事だから、、、日の出で始まり、、日没で終わりだからな、、」と、、言ってみんなを励ました。
宿舎に帰ると、、良助の奥さんと賄のおばさんたちが夕食の支度をしていてくれた。
みんな「旨いなーーうまいなー」と言ってむさぼりつくように食べた。
龍二の合図のもとに「ありがとうございます、、、本当に旨いです」と、、礼を言って頭を下げた。
21)農業ハウスが出来て、、、
龍二たちの「農業ハウス」も朝昼と日曜日も休まずに作り続けていた、、、6月は雨に降られたが、頑張った甲斐があって、屋根の上の「太陽光発電施設」まで仕上がったのである。
農業ハウスの中の照明もついたので、、、夜間作業も捗った。
農業ハウスの中の設備、、「トマトは水耕栽培で」「レタスも水耕栽培」という設備も出来上がった。
当初は「600坪(1980平方メートル)二つの水耕栽培」なのであるが、、、売り上げに応じて増やしていく計画であったので、、、売り上げのための販路を作らねばならなかった。
其の売り上げに協力してくれたのが、、、昔の仇と狙われた「やくざの大畑長次郎」が現在は東京で運送会社をやっていた、、、龍二と二人で命がけの決闘をした中ではあったが。。。なぜか「気が合う仲になり、便りを交換していたのであった。」
それで、龍二が北海道で「野菜つくり」をしていると知ると、そん販路を作り、運送までしてくれることになったのである。。。
龍二とは相談をして、、生産する側と、販売運送する側とに分かれて共同事業をすることにしたのであった。
「農業ハウス」の次には北海道の土地に適した「ジャガイモ」「トウモロコシ」と、、外での栽培作業を始めた。
そんな準備が済んだ頃に「夏休み」が来て、、、筑波学園の「大川学長と娘の花代さん」が、次に希望している若者を連れて,やって来たのである。
龍二にとっても勝次や正一たちにとっても嬉しい出来事であった。
その日の為に「宿舎」も広げたり、、、部屋数を増やしていた。
北海道日高は冬は寒いが、、、夏はクーラーが要らないほどの涼しさがあったのである。
そして、、、何よりも良いことは「電気代がゼロ」ということであった。
勝次や正一、、そして、、他の三人も頑張ったので快適な施設が出来ていたのである。
大川学長が連れてくる若者は総勢「15名」」であった。
10名は農業従事生、5名は良助の牧場で競馬育成の仕事に就きたいとのことであり、、
良助も歓迎していたのである。
そして、夏休みが来て、、15名の若者がやって来た、、、北の新天地に。。。
22)大川学園長と娘の花代も来た、、、
龍二は待ちに待った大川学園長と花代さんが来てくれる朝は落ち着かなかった。
勝次たちに冷やかされていたのである、、、r
「やっぱりな、、先生は花代さんに「ほ」の字だったんだな、、、良かったな、、
先生、花代さんも来てくれて」
龍二は良助の牧場のマイクロバスを借りて,勝次と札幌駅に出かけた。
札幌駅についたら勝次がみんなを迎えに行ってくれたのである、、、
龍二は待ち遠したかった、、、わずかな時間が長く感じた。
しばらくすると勝次がみんなを引き連れて戻って来たのである。。。
最初に声をかけて来たのは大川学園長であった、、、「龍二、元気そうだな、、会いたかったよ」
「学園長、、、ご無沙汰しております、、この度はすいませんでした、無理を言いまして。。」と、、龍二は挨拶をしたのである、、そして、、、
「花代さん、しばらくでした、、、元気でしたか、、、よく来ましたね」と、、言いながら、
一緒に来た学生たちに挨拶をして、、車に乗る様に指示を出した。
勝次が説明をしながら乗り込んで来たのである。。
「勝次、、、みんなの乗ったかな、行くぞ、、、」と、、日高に向かった。
日高についたら正一たちが出迎えてくれた。
新しく出来た宿舎に案内して、、、先輩らしく正一が「大広間」「個室」を見せながら説明をしていたのである。。
学園長と花代さんは特別室で、、学生は二人づつの部屋であると説明すると、、
勝次が「学園長たちの部屋は龍二先生が特別、愛情をかけて造っていましたよ、、、」と、、
付け足した。
すると、、、学園長が「おれの為ではないな、、、それは違うだろう」と、、謎めいた言葉を吐いた。
そんな話をしながら、、みんな広間に集まった。
そして、龍二が世話になっている坂本良助を紹介したのある。
それから、お互いが挨拶をした。
23)久しぶりの仲間同士、、恩師との再会、、、、
龍二は大川学園長との久しぶりの談話に花が咲いた、、、そして、娘さんの花代さんとも会話が出来たので嬉しかった。
現在、一緒に仕事をしている勝次や正一からは冷やかされていたのである。。。
「今回は龍二先生が一番、楽しみしていたよ、、、何しろ、花代先生に会えるとな、、、あはあはあは、、、」と、、それを聞いた仲間が全員で聲高々と笑っていたのである。
そして、、「龍二先生、、、この際だから、プロポーズしなよ、、遠慮しないで、、、北海道で一緒に住んでくれたら、、俺たちは嬉しいんだけど、、、」
そんな話を聞いている花代は、一人で顔を赤らめていた、、、
「そうか、、、そうだったのか、、、おい、龍二はどうなんだ、、」と、、大川学園長が尋ねたのである、、、本当は知ってる癖にと、勝次たちは思い。。。
龍二先生も言い出せないでいるので、、、勝次と正一が謎をかけたのであった。
そして、、坂本良助も言ってくれたのである。。。
「決まった、、今夜は二人の婚約パーティと、みんなの歓迎会を楽しもうではないか、、、アはあはあはだな、、、細かい打ち合わせは後にして、、、今夜は愉快だ」、、
と、、、良助はもう、二人の結婚が決まったように振舞っていた。
「おい、、龍二、同級生で可笑しいかも知れないが、、、俺が媒酌人をしてやるからな」
という話まで弾んだのである。
「良助、話が早すぎるよ、、第一失礼だよ、、花代さんに承諾も貰わないで、、」
と、、、照れくさそうに龍二が言ったのであるが、、、
大川学園長が「龍二、よろしく頼むよ、、、こんな娘でよかったら貰ってやってくれ、、」と頼まれて、花代も満更では無く、、俯いてにこにこしていた。
24)龍二と花代の婚約、、、、
北海度での龍二の日課は忙しかった。そして、、龍二は以前より花代に厚意を寄せていたのである、、、
周囲の人間は生徒までも知っていた。今回の婚約の話は遅かったぐらいだった。
坂本良助などはもろ手を挙げて歓迎した。
勝次や正一も、、他の三人も大賛成だった、、、、婚約の話はとんとん拍子に決まり、その晩は歓迎一色に染まったのである。
大川学園長などは余程、嬉しかったと見えて、心から酒酔いをしていた。
龍二も良助もみんな酔った、、、、
しかし、龍二たちは朝食の時間にはいつものように行動して作業に就いていた、、、
そして、、大川学園長や花代さんを引き連れて、学生たち15名に農園ハウスと、作っている野菜をみせていたのである。。
それを見た大川学園長は唸った。
「見事だ、、、龍二、よくここまで頑張ったな、、、、」
「これを見て安心したよ、、、お前に生徒たちを預けられるよ、、、そして、花代もな、、宜しく頼む、、あはあはは、、」と、ご満悦だった。
ところでハウス農業のことはよく分かったが牧場の方も案内説明してくれと言われて、、、良助に頼んでやって貰ったのである、、、
牧場の施設は近代的であり、馬の育成から調教まで全て揃っており、、大川学園長は安心した
これで、花代の結婚式だけ済めば、、親として一安心だったのである、、男親ひとつで育てた学園長はあの世の妻に、、、報告が出来るとひとり、、そっと、目がしらを拭った。。。
そして、、、あはあははと、、一人満足していたのである。。。
北の新天地でのいい朝であった。
25)大川学園長は満足だった、、、
龍二と花代は大川学園長の前で、仲間たちの居るところで婚約をしたのであった。そして、良助の媒酌人も決まり、日取りを決めての結婚式となった。。
花代の希望で「冬の結婚式」が決まった、、、雪の中での純白の結婚式を願ったのである。
今年の冬休みと決まった。
北海道の生徒たちの見学実習も終わり、大川学園長と花代たちは帰っていった。。。
花代の心には明るい嬉しい花が咲いていたことだろう。
龍二たちは仲間たちが帰った後は忙しかった、、、野菜の収穫もあり、、東京から来た「大畑運送」(大畑長次郎の経営する会社)のトラックに積み込む仕事がこの秋から増えたのであった。
ハウス農業の以外の「ジャガイモ」「トウモロコシ」の収穫もい忙しかった。
しかし、龍二も勝次たちも汗だくになって、泥まみれになって働いた。
大畑運送の長次郎社長も農園まで来て、手伝ってくれていたのである。。。
その晩は泥まみれになった体を、牧場の大浴場でみんなで洗い、温めた。
みんな裸の付き合いであり、、長次郎社長の入れ墨を珍しく眺めていたので、、、龍二が、、「凄いだろう、、
この人は昔は怖い人だったんだよ、、」と笑みを浮かべて昔話を少しだけしたのだった。
「ところで、、先生、花代さんと結婚したら、どこに住むの、、」と云うから、、、
龍二は「みんなと一緒に、、ここの宿舎に住むから宜しくな。。。」
長次郎社長が「へえーー結婚するのか、、、俺も呼ぶんだろうな、、、」と言われて、、、
「勿論だよ、、、早めに日時は知らせるから、、宜しくな」と、、、裸の付き合いは笑いに包まれて、湯気の中に消えていった。
風呂を出たころには大広間に食事の用意がしてあった。
長次郎社長が来ていたので「ジンギスカン鍋」が用意されていたので、、、良助も参加して、まるで「収穫祭」のように、賑やかだった。
26)北の新天地の幸せが、、、
龍二は北海道日高に来て、、、自分の望んでいる人生道が開けていくことに幸せを覚えていた。
大学時代に事件を起こして、、「懲役10年の実刑」を言い渡された時にはお先真っ暗であり、、絶望感を味わった、、、しかし、それも仕方のない人殺しであったのである。。
古いかも知れないが「父の仇」というか、自分の父親を助けるための「やくざとの抗争」であった、、
龍二自身が我慢すればよかったのであるが、、、まだ、龍二も若く、、血の気が多かったので、後先を考えずにやってしまったことであった。
その時に関係したやくざが「大畑長次郎」で、、、今は無二の仲間になっていたのである。
そして、服役を済ませた後に、何も言わずに迎えてくれたのが大川学園長であり、、
今も子弟の関係を保ち、、娘の花代までも嫁にしてくれることになった。
更に大学時代の友人である、、坂本良助も過去を気にせず、、快く受け入れてくれたのであるから、、、龍二は幸せだった。
大川学園時代の教え子たちも慕って、、、龍二のハウス農業に参加してくれていたのでる。。
良助の歓迎する「ジンギスカン鍋パーティー」は涙が出るほど嬉しかった。
龍二は皆の顔、仲間の顔を眺めて、、一人一人に感謝をしていたのである。。。
「おい、、、龍二、お前は幸せ者だよ。。。こんないい仲間に囲まれて、、
羨ましいよ、、、」と。、酒が回ってきた長次郎が大声で叫んだ。
北の新地には笑いが幸せが渦巻いていたのである、、、、
27)龍二は仲間に祝福されて花代さんと夫婦に。。。
龍二たちは夏が過ぎてから、勝次や正一たちも仕事に慣れたので、ハウス農業も順調に進んでいった。ハウス農業以外の「じゃがいも」と「トウモロコシ」の生産も進んだので、耕作面積を増やしていった。
来年の春からはつくば学園から「10名」の増員もあるので、、その準備も進めたのである。良助の牧場へも「5名」が参加するので、龍二としては忙しかった。
そして、年が明けての正月に「花代」との結婚式もあるので、その準備でもやることが多かった。
仕事が終わってのお風呂の中で勝次たちが、、、
「先生、、、あと半年だね、、花代先生が来たら急がしいから、、、準備を万端にしてよ、、、手伝うことがあったら言ってよな、、」
と、、冷やかしながら、心配をしてくれた。
勝次たちも喜んでくれたいた、、、「花代先生が来てくれると、、宿舎に花が咲いたみたいでいいよ、、、俺たちも嬉しい」と、、、
風呂から上がると大広間の食堂に良助が待っていた。
「龍二、、、いよいよだな、、、あと半年か、早いな、、、準備はいいか、、」
と、、心配してくれていたのである。
毎日、毎晩であるが、、龍二と花代さんの結婚式の話題で花が咲いていた。
そして、1月が来たのである。筑波学園の冬休みに、大川学園長が娘の花代を連れてやって来た。
龍二は勝次を連れて札幌駅まで迎えに行ったのである。
二人を迎えた龍二は笑顔でいっぱいの出迎えだった。日高の龍二たちの農園ハウスにつく頃には二人の結婚式を祝ってくれるかのように、雪が降りだしてきた。
龍二は心の中で呟いていた、、、「これで、純白の白い結婚式が出来る、、」と、、、、心が躍った。
日高の農園道に入るころには、、、まるで「シルクロード」を走っているように、道が白く染まっていた。
龍二たちの車が宿舎の前についた時には、、、坂本良助夫婦と農園の仲間たちがで迎えてくれたのである。
大川学園長と花代さんが車から降りると、、、「おめでとうございます、、待っていました、、、」と、拍手と仲間たちの笑いがあった。
「龍二、花代さんおめでとう、、、花代さんが願ってた雪が降って来たよ、、、素敵な結婚式になるな、、」
良助が心から喜んでくれたのであった。
「龍二、、、あと二日だな、、、お正月に結婚式だよ、、今年はいい年になるな、、俺も凄く嬉しいよ」と、、、
そして、結婚式の当日が来たのであった。
龍二の結婚式をみんなが祝ってくれてるようだった。大川学園長は嬉しくて、初めから終わりまで涙いっぱいの結婚式であった。
坂本良助夫妻も媒酌人を務めながら、、嬉しさのあまりに「お祝いの言葉」を忘れるほどに喜んでいたのである。
敵同士であった大畑長次郎も東京から、前日に来てくれて、諸手を挙げて喜び、祝ってくれた。
勝次と正一たちがお祝いの言葉を述べて、、、
「龍二先生、、、花代先生おめでとうございます、、、幸せになってください、、、花代先生、綺麗だよ」と。。。
何よりも嬉しい言葉を送ってくれた。
28)やくざ先生の青春祭り
神宮寺龍二は春にやってくる仲間たちを待って、その準備に取り掛かった。
龍二はつくば学園に来てから、、大川学園長に拾われてから、、夢中で自分なりに先生らしくなろうと生きてきたのである。。
学園長に恵まれて、、娘の花代さんにも会えて、結婚まで出来て、、教え子たちにも慕われて、一緒に柔道を通じての子弟愛にも恵まれ、、良助との友情愛にも育まれてきた自分が幸せ過ぎていいのかと考える時がある。
そして、仇と狙われた元ヤクザの大畑長次郎とも無二の仲間に慣れた我が人生を疑う時があるのだった。
与えられた幸せを大事に生きて行かないと罰が当たるような気がした。
今度、やってくるつくば学園の生徒たちを温かく仲間として迎え入れをしないと、、と、思いながら勝次や正一郎たちと話し合いをしていたのである。
龍二は花代も入れて、、大山勝次、小山正一、山田三郎、花山悟、愛嬌のあるでぶちょの大久保理三郎を集めて伝言を託した。
「来年の春にくる15名のつくば学園の仲間たちには頑張って貰うために、、
これから農業ハウスと宿舎をしっかり作らないとな、、頼んだぞ、、
勿論、専門の大工さんたちも手伝ってくれるから、、気を抜かずに、体を大事にな、、それまでは寒い冬だから風邪ひくなよ、、」
と、、幸せいっぱいの龍二は伝えたのだった。
「先生こそ、、頑張り過ぎて体を壊さないようにな、、」と、、勝次たちに冷やかされていたのである。
「それからは今度来るうちの5名は牧場で働くのだから、、面倒を見てな、、
農業仕事と違うからといって、仲間外れは駄目だから」
と、、念を押した。
29)龍二大いに羽ばたく
神宮寺龍二は北海道日高に来てから、、ハウス農業に励んだ。
農業などしたことのない龍二が日高で農業を営む農家で1年間、実習生として最初から学んだのである。
やりだしたころには悩んだ龍二であった。
土いじりが大変だということを、しみじみ味わった。。畑仕事とか田んぼの稲つくりが傍から見れば難しいとは思わなかったのであった。
しかし、やってみて、、「これは偉いことを始めたな、、、」と、少しだけど後悔したのである、止める訳にはいかなかった。
龍二は踏ん張ったのである、、半年も過ぎた頃から体が動く様になった。
そして、友人の坂本良助の助けも借りて、、何とか「百姓」に近付いたのである。
良助の友達の、、工務店経営の大下肇にも手伝って貰い、、鉄骨ハウスを作ることも出来たのであった。
勝次や正一たちも参加して、、、労働力が増えたので、鉄骨ハウス造りも捗り、工務店経営の大下肇の力を借りて、、宿舎も出来た。
鉄骨ハウス以外の畑仕事も、、良助の農業経営の友達、南構造の紹介で日高農協からの借り入れも出来た上に「農機具、、耕運機など」も購入が出来たので、畑仕事も捗っていた。
そんなこともあって、、今回の二期目の工事は宿舎建設も、鉄骨ハウスの建設も進み、、来年の4月に入ってくるつくば学園の仲間たちが参加するまでには間に合うと期待が持てたのである。
そして、今度来る仲間のうち、5名は牧場勤務であり、、その仲間の宿舎も間に合いそうであった。
牧場勤務の仲間は「馬の調教」が主体での競走馬の飼育であり、、良助も楽しみにしていた。
龍二の夢は膨らんでいった。
そして、、野菜の運搬を担当している、大畑長次郎との合同会社を設立して、総合的な生産運搬のシステムを構築して、
効率のいい経営をして行こうと考えていたのである。
30)坂本良助の牧場でトラブルが起きた、、、
良助の経営する競馬の飼育調教をしている中でのトラブルだった。良助の牧場で設備投資の借入金があったが、、、その借入金のうち仲間からの投資金があったのである。。
その投資先の経営が悪化して資金回収を迫られたのであった。悪いことに、その仲間が反社会勢力関係の金融会社からの借り入れをしていたので、
そして、友達の資金回収の責任が良助に廻って来たのである。
突然に予定外の資金手当てなので、、良助は困った。
その金額も「2000万円」だったので、慌てた、、、
反社会勢力の「日高興行(株)」が強硬に返済を言って来た。日高興行(株)は北海連合会の傘下であり、地元では暴力的なやくざ組織である。、
良助が手塩にかけて育てた競走馬であり、、将来、夢のある馬だったので、
相談を受けた龍二も困った。
投資して貰った資金なので、返済の猶予が貰えないかどうかを聞いてもらったのであるが、、、
返ってきた言葉は、、、「ふざけるな、、、遊びで金貸しをしてる訳じゃぁないんだ、、、」と、、無碍に断られた。
良助は投資して貰った友達と、金を寄せ集めた、、龍二も少ないけど協力したのであった。
とりあえず「金利分」だけで、返済の時間を延ばして貰う交渉をした、、、
そして、、一か月だけ待って貰ったのである。
龍二はいつも良助には助けて貰ったいるので、何とかしなくてはと、、
東京の大畑長次郎にも相談したのであった。彼は東京から飛んで来てくれたのである。
偶然にも「北海連合会」の滝内大造会長を知っていたので、大畑長次郎は会いに行ってくれた、、、そして、返済期間を延ばして貰った。。
「ありがとう、、長次郎、、本当にありがとう、、良かったよ、、」
龍二も良助も感謝した。
その話をまとめた長次郎は、その晩に荷物をトラックに積んで東京へ戻ったのである。
その晩に龍二の嫁さんの花代が、、言ってきたのあった。
「龍二さん、、父から2000万円を送って来たよ、、、それで返済すようにと言われたから、」
「ええー、親父さんが、、、ありがとうな花代、、親父さんに連絡しないと、、」
急いで龍二は電話をしたのだった。龍二は花代に感謝していた、、、親父さんに相談してくれて助けられたのである。。
31)日高に春が来る日、、
良助にも心から感謝もされ、お礼も言われた、、、全て、大川学園長のお影だった、、龍二は流石だと思った、、、そして、今の仕事を頑張って、親父さんには返さないといけないと心に言い聞かせた。
借金を還した龍二と良助は誓った、、、農場も牧場経営も頑張っていくことを、、、
また、運送に携わる長次郎もやる気になり、、燃えたのであった。
仲間の勝次、正一、三郎、悟、理三郎たちも龍二と約束をしたのである。
そして、新しい仲間がつくば学園から来るまでに新しい、農業ハウスと宿舎を建設すると毎日、朝から暗くなるまで作業に励んだ。
良助の牧場の社員たちも手伝ってくれたので、工事は捗った。
龍二たちは春が待ち遠しかった。
早く春よ来いだったのであった。
そして、4月が来た、、、新しい仲間が来る日に龍二は花代と勝次を連れて札幌まで迎えに行った。
今回も15名と大川学園長が来るので「マイクロバス」で、、、
札幌駅には花代と勝次が出迎えに行き、、龍二は車で待った。
新しい仲間たちが駐車場に現れた時の嬉しさは格別だった、、これから始まる日高での新しいドラマが目に浮かんだ。
龍二は大川学園長に真っ先にお礼を述べた、、「親父さん、、ありがとうございました、、良助も心から感謝していました、、本当に何から何までありがとうございます。。」
と、、言いながら、新しい仲間を車に誘導したのであった。
日髙に着いたら、良助を始め農場の仲間が、牧場の社員たちがみんなで出迎えた。
良助も大川学園長に駆け寄って礼を述べたのである。
そして、、みんなで大広間の食堂に集まった。
北海道日高の夜は真っ赤に燃えた、、若者の血潮で、龍二たちの熱気で燃えたのであった。、、、、
第一話「悪名」
第二話「やくざ先生」
第一話「悪名」
遊び好きな男の物語り。。博打好き、女好き、喧嘩好きな男の気ままな人生旅。。。
生まれは関東、筑波山の田舎育ち
桜川で産湯をつかり
筑波山ろくを駆け巡り
物足りずに山下り
(1)放蕩息子、、勘当となる
筑波山の麓、、冬になるとつくばおろしの寒い町、しかし、春にはつつじが満開に咲き誇る町、そして、筑波山の麓を流れる桜川が霞ケ浦に注ぎ込まれる田園風景の町。
そんな田舎町で江戸時代から商いをしていた「北条木材」は商人でありながら名字帯刀を許された豪商であった。
その北条木材の北条市左衛門は頭を抱えていた。北条材木は一代限りごとに跡取り息子は「市左衛門」を名乗ることと定められていた。
そんな由緒ある家の跡取りが、親の育て方が悪かったのか、手の付けられない「放蕩三昧」をしているのであった。
放蕩息子の名前は「北条太郎」と言う。
北条太郎が18歳を過ぎたころから、悪がきを発揮し始めた、、、地元の名門と言われた高校に入学はしたものの、喧嘩好きな暴れ者になっていたのであった。
入学当時は柔道部に入り、成績も良く、世間の評判も良かったが、柔道が強くなり、高校3年の時には黒帯、柔道3段にまで昇格していた。
そして、いつの間にか「番長」を気取って、
毎日のように、他の高校生と喧嘩をしていた上に、どこで道を踏み外したか、酒を飲み、たばこを吹かして土浦の町を流すようになっていた。
親の戒めも聞かずに、最終的は酒場で酒を飲み、それが発覚して「停学処分」を受けたのであった。それも無期停学処分を、、、
その時に親の北条市左衛門は、男だから喧嘩や酒、たばこは仕方がないかと、諦め心で許した。
そんな暴れん坊だった、太郎も大学はどうにか入学できたのであった。北条市左衛門は諦めて、ダメなら材木運びでもやらせようと考えていた。
しかし、当時は私立でも一流の早稲田大学に受かったので吃驚していた。
これで少しは前向きに進んでいくと思っていたが。。。
大学に入ってからはどうにもならない放蕩道楽な人間になった。。。
しかし、親馬鹿なものだった。。。北条市左衛門は見て見ぬ振りをしていた。
そして、卒業後は仕事もせずに、遊び歩いていた、まるで遊び人のような行動をとっていた太郎だった。
訪ねて来る友達も、人も遊び人風なような、、、
太郎には妹が一人いたので、市左衛門はそんな環境を心配していた。
息子太郎の生活が改まらずに、3年ほど続いていた。
昔から何事も「石の上にも3年」と言う様な諺もあるように、、、北条市左衛門は根の腐ってしまったようになっていく太郎に最後のつもりで、覚悟を決めていった。
「太郎、、、そろそろ仕事をしないと、お前を跡取りには出来からな、、、覚悟を決めて返事をしてくれよ、、」
父としては大分、柔らかく、優しく諭したつもりだった。
「別に俺を跡取りにしなくてもいいよ。。こんな放蕩息子だものな、、、おやじも愛想が尽きたようだから。。」
そんな会話を一人娘の「桜」は聞いていた。
(2)太郎は知っていた。
北条太郎が高校一年の夏休みに、父、市左衛門の弟が経営する木材伐採の会社で、山林の木々を伐採している現場でアルバイトをしている時だった。
北条家が代々、受け継いでいる杉山の伐採した木材を運搬していた現場で、太郎が社長の跡取りとは知らないで、休憩時間に噂話をしていた。
「今の跡取り息子は貰っ子だってな。。。」
「俺も聞いたことがあるよ、、前の戦争の時に、社長宅に親子で疎開して、そのまま母子ともに面倒見てもらったって話だよ。」
しかし、社長の市左衛門が、戦争が終わったころに嫁さんを貰い、今の跡取り息子の母親は家を出てったと、、、
その後、疎開した太郎は市左衛門の長男として育ったらしい。
その話を聞いた太郎は、目の前が真っ暗になったのであった。それから、太郎は変わっていった。
太郎はそれから、自分を生んでくれた母親の夢をみた。
高校生活を送りながら、学業に励み、柔道にも、そのことを忘れようと突進していった。
しかし、その後は父や育ててくれた母を見るたびに、心のどかで密かに抵抗心が生まれてきた。
良くして貰えれば、されるほど、自分は他人だから、遠慮されている。
その反面、妹の「桜」は実の子供だから、と言うだけで、、、太郎はどこかに嫉妬心が芽生えた来た。
何をするにしても、兄妹として育ってきたが、今までのようには接することが出来なくなっていった。太郎は愛情を込めて、育ててくれた両親には感謝をしていた。そして、妹は愛しく可愛かった。
しかし、山の中で知らされた真実が、太郎の心から離れなかった。
そのまま、高校時代はうやむやしながら、気が付けば不良と言うレッテルを張られていた。そして、なんとなくか、運よく大学にも進学が出来た。
太郎は大学在学中は、その時間を母親探しに没頭していた。
そして、つくばから疎開した後を太郎は追った。
時間はかかったが、母親の足跡を見つけ、太郎が20歳の時に突き止めた。
太郎はどうしても知りたかった、、、母親を、、、名前は「美佐子」と言う自分の母親を見つけた。
神奈川県川崎に住んでいたところまでは探し当てた、しかし、亡くなっていた。
太郎は母親「美佐子」の墓を探し、その小さな墓前に花を添えたのだった。その御墓からは寂しさを覚えた。
そして、生前の母親の生活を知りたくて、いろいろと調べた。
母親を知る人たちから聞いてた話では、苦労したようだった。太郎は顔も忘れた、逢いたかった母親を心から労り、涙した。
そして、その亭主が遊び人で、母親「美佐子」には優しかったが貧困な生活を送っていたらしいとも聞いた。
二人の間には一人の男の子供がいたのだった。
太郎は母親に逢えなかったことで、その男の子供を探した。名前は「次郎」と言う。
太郎は育ててくれた北条市左衛門のもとで、何ひとつ、不自由なく育ったことに感謝しながら、自分には弟がいたことを知り、人の生まれと言うか、環境に違って、人の幸せが違うことに心が痛んだ。
人は経済的に恵まれたことが、同じ人間でも違うんだということを知らされた。
母親「美佐子」」のもとで育った弟は、間違いなく経済的には不幸だったような。。。それは、母親の生活環境を知って、分かった事であった。
そして、母親には会えなかったが、弟「次郎」に会いたくなった。
太郎は勝手に思った。母親が「次郎」と名付けた理由が、、、きっと、母親「美佐子」も気にかけていてくれたことを、、、
本当に逢いたかった。
そんな思いで、残りの学生時代の時間を弟探しに当てた。
そして、太郎が大学4年の暮れに、弟「次郎」を見つけた。
(弟、次郎に会って)
太郎が大学の友達と暮れの新宿を歩いていた。友達も実家に帰るというので、忘年会をかねて集まった。
新宿の飲み屋街、にぎやかな街を太郎は少し気分を良くしていた、、、酒も入っていたので。
反ぐれ風の兄さんたちにすれ違った時だった、
「ちょっと、、待ていやーーー人の方にぶつかっておいて、だんまりかよ」と因縁をつけてきた。
太郎の友達は3人とも柔道の猛者ばかりで、酒も入っていたので、、喧嘩を買ってしまった。
相手は5人いたが、太郎たちの敵ではなかった。因縁をつけて来た相手は叩きのめされてしまった。
警察も来たので、反ぐれの連中は逃げるように消えてしまった。事情を説明して、警察は聞き取ってくれた。
そして、「気を付けてくださいよ、、、新宿はああいう反ぐれが多いから、、、関わらないように」」と、、、、
太郎いるが西武新宿線駅の方に歩いていると、喧嘩したばかりの反ぐれがやって来た。
そして、人数も増えていた。リーダーらしき一人が口を聞いた。
「先ほどはどうも、、、仲間を面倒見てくれたな、」と、、、言いながら絡んできた。
リーダーらしき男がナイフを持って斬りつけた来た、咄嗟の事なのでよけきれずに太郎が腕を刺された。
太郎も気が強かったので、払いのけて、その男を道路に叩きつけた。ほかの反ぐれはそれを見て逃げ出した。
リーダーらしき男は潔ぎよかった。
太郎たちに負けを認めて、酒でも飲もうかと言うことになった。
その男は次郎と名乗った。気持ちのさっぱりした反ぐれだった。なんとなく気が合い、酒を酌み交わしていく間に、太郎は身の上話を聞きだした。
その男は名前を「川崎次郎」」と言って、話を聞くうちに、母親の名前が一緒だった。「美佐子」と言い、その生い立ちや母親の過去が重なってきたのだった。
そして、太郎も名乗り、母親の名前が「美佐子」で、、、間違いなくその男、「次郎」は弟だと確信した。
その晩は次郎を含めて4人で飲み明かした。
そして、太郎は嬉しかった。会いたかった弟「次郎」を見つけたからだ。本当に心から嬉しかった。
(そして、決意した太郎だった)
太郎は母親の消息も分かり、すでに亡くなっていたことも知った。そして、母親「美佐子」の子供とも会うことが出来た。
弟、次郎とは会う約束をして別れた。そして、何度も会った。
太郎は大学を卒業して、実家に戻った。家業を継いで仕事をするでもなく、毎日を遊興三昧で過ごしていた。
太郎は家を出るつもりでいた。心に決めていたのである。
北条材木は妹の桜が継げばいい、、、いい伴侶を見つけて、市左衛門の実子が後を取ればいいと思っていた。
太郎には弟次郎が現れた、、、亡くなった母親「美佐子」の忘れ形見が出来たのであった。
どう見ても、出来そこないの半端者だ。
血の繋がった弟次郎を面倒見なくてはと思った。18歳の悪ガキが弟なのだ。
母親には何も出来ず、父市左衛門のもとで、何、不自由なく育った自分が、太郎としては許せなかった。
だから、母親に出来なかった親孝行なのかも知れない、真似事を、その分を弟次郎に情がけしたかったのかも。
しかし、父市左衛門には言えなかった。
しばらくの間、太郎はもやもやした気分で過ごしていた。
甘えかも知れない、、贅沢かも知れない。。父、市左衛門からの勘当を待っていたような。
そして、その日が来た。
太郎は家を出る前の日に、、、妹「桜」と話し合った。
妹「桜」は泣いた。
「お兄ちゃん、、その弟さんのことを、お父さんに話してみたら。。。きっと、分かる筈だよ」
しかし、太郎には話せなかった。
出ていった母親の事も。
一度は父のもとで生活をして、自分を育ててくれた父には話せなかった。
妹「桜」には理解して貰った。きっと、理解はしていなかった筈と思いながら、太郎は旅立つことを決めたのであった。
(旅たち、そして、逃亡者)
太郎は東京へ戻った。次郎と落ちあって、これからの事を相談するつもりだった。
太郎の部屋で次郎を待った。いろいろな夢を持って、兄弟二人で生きていこうと考えていた。
しかし、その晩、弟次郎は帰らなかった。
翌日、次郎たちが屯している、ゲームセンターを訪ね、
次郎の友達がいて、教えてくれた。
次郎が反ぐれをしている、上層団体のやくざ組織「新宿連合」に追われていることを知った。
次郎の反ぐれ仲間が覚せい剤を持ち逃げしたらしい、そのトラブルに巻き込まれていたのであった。
次郎の反ぐれ仲間がみんなで探していた、太郎も一緒に探したが、東京の何処にももいなかった。
次郎の友達が九州福岡なので、一緒に逃げたらしい。しかし、逃げられるものでは無い。
暴力団の追及はきつい筈だ、、、太郎は何とかしなくては考え、次郎の友達の実家を聞いて、
そして、太郎は福岡へ向かった。
福岡の友達の実家に二人で隠れてた。いずれは見つかるので、二人を連れ出した。
捕まれば殺されるまであるというので、兎に角、逃げることにした。
次郎と新しい旅たちが、、、逃亡の始まりとなってしい、おまけに次郎の反ぐれが一人増えてしまった。
その次郎の友達も19歳で、副島剛といった。
旅たちではなく、逃避行だ、一人増えても同じようなものだ。
三人の旅が始まった。
誰も知らない北海道へ、、、
悪名旅の始まりであった。
(追われる旅人、、、逃げられるか)
逃げて逃げて
守るは弟次郎
北の大地の果てまでも
太郎は弟たちを連れて北海道まで流れて来た。
太郎は大学時代の悪友、花房雄一を訪ね、彼の実家は日高で牧場を経営したいた。そして、彼は親の後を継いでいた。
競走馬の飼育牧場であったので、
とりあえず、事情を説明して、潜り込んだ。
牧場の下働きで、牧夫見習いとして、、、、
青空の下で、広々とした大地の匂いを嗅いで、三人は生き返ったようだった。
「雄一、、、面倒かけるな。よろしく頼む。。。しばらく、行く当てもないので、牧場仕事を覚えるよ」
「太郎、話は聞いてる、、、一緒に牧場経営をやろうや。
お前とは気心を知っているので、、、楽しみだよ」
「雄一、俺同様に弟たちもよろしくな。。」
北海道日高での最初の日は、雄一にご馳走になり、
太郎たちは花房牧場の社員になって働く事になった。
北海道に着いたのは10月であったが、肌寒さを感じた。
「次郎、、剛、、お前たちも男なのだから、ここで本腰を入れて頑張ろうや、、、」
「一人前になって、今までの人生を取り戻さないと。。」
太郎は、次郎も剛もこの日高で調教師の道を進んで、一人前の男にしてやろうと考えていた。
最初の夜は、二人に覚悟を決めさせた。
(3)馬と生きる道
太郎は思った。迷うな、、どんな道でも一流になれと。
弟次郎と剛に太郎の決意を語った。
人にはそれぞれの道があるように、偶然でも与えられた目の前の道、、、追われて、逃げて、たどり着いた運命の道だ、
偶然でもいい、、、突如現れた開けた道だ。
北海道の日高で、、、広々とした草原で開いた道だ。
これこそ、二人に与えられた天命かも知れない。
二人は励んだ、、、来る日も来る日も馬とともに。
そして、二人は見つけた。調教師と言う仕事に。
太郎も嬉しかった。
初めから定められていた天職のような仕事、、、そして、二人とも馬が好きだった。
太郎は悪友の花房雄一とともに牧場経営を一から学んだ。
そして、牧場にひと時の栄をもたらした。
しかし、人生とはなかなか上手くいかないものだ。
花房雄一の知らない人生の中に、落とし穴があったのだった。
父、花房寅吉が過去において、面倒を見ていた、牧場主仲間の花田構造と言う人物がいた。
その花田構造が多額の借金を背負っていたのであった、その男が社会悪の集団詐欺に騙され、、、そして、その詐欺内容に罠が仕掛けられていた。
花田構造が振り出した約束手形の裏書を、花房雄一の父がしていた。
期日は過ぎていたけれども、不渡り手形であり、商法的に責任が残っていたのである。
不渡り手形金額は「5億円」であった。
花房雄一には寝耳に水と言ったことであったが、花房雄一は亡くなった父より財産を相続しており、責任が残っていた。
その話を聞いて太郎は苦しんだ。
しかし、自分の出来る範囲で、力で能力で助けなくてはと思った。
太郎は助けられた恩義はあり、何とかしないと。。。
不渡り手形を返済しないと、法的な手続きを取られるのであった。
まずは裁判で告訴され、合法的な借金なので差し押さえをされる。
時間をかけて、罠を暴けば助かるが、父の花房寅雄も亡くなっており、不利であった。日本での裁判は時間が掛かる。
判決が出るまでは差し押さえが実行される。
不動産、特に牧場が差し抑えられる。
今、差し押さえれると困るのであった。次郎たちが調教している馬が有望なのだ。
不渡り事件は後から解決したとしても、まずは差し押さえ、牧場使用停止がされては困るのだった。
それだけは避けなければと、、、、
(太郎男をさげる、、、)
太郎は考えた。しかし、友達の花房雄一を助ける方法は一つしかなかった。太郎としては一番したくなかったことだった。いや、出来ないことだった。
それでもやらなければ、世話になった花房牧場は潰れてしまう。太郎は悩んだ末に、茨城県北条に向かっていた。
北条木材の会社の玄関に立った、太郎は入りずらかった。
先に気が付いてくれたのは妹の「桜」で、
「お兄ちゃん、どうしたの、、、暫くぶりだね、、、そんなところにいないで入りなさいよ、、、自分の家でしょう」
そう言って、妹の桜は手を引いてくれた。
そして、妹の桜が父市左衛門を呼んできてくれた。
「太郎、、、どうした、、入りなさい」
父は太郎の親不孝を咎めもせずに、心暖かく迎えてくれた。
「太郎、、、遠慮するなよ、、、お前の家だろう、、さあさあ、、上がって」
と、、父市左衛門も招いてくれた。
太郎はすまない、、、好き勝手ばかりして、、、と、心で詫びていた。
「おやじ殿、、ご無沙汰しています、、いろいろ、すいません」と,詫びながら部屋にあがった。
そこへ、義理の母親が出てきて、、「あら、太郎ちゃん、元気だった、、、さあ、、自分の家なんだから遠慮しないで、上がって、、、今夜はご馳走を作るからね」
と、優しく出迎えてくれた。
太郎は感謝した、、、なんて、優しい、、、、いい人ばかりなんだと、、、
その晩は親子水入らずの楽しい団欒を過ごした。
太郎は悩み事を頼みずらくなってしまっていた。その晩は何も言わずに、懐かしい部屋で寝た。
なんとも言えない、思い出が匂ってきた。
次の朝、父の市左衛門が太郎の部屋に入っ来た。以前にもなかったことなので、太郎もびっくりした。
「太郎、、、わしに用があって戻って来たんだろう、、、金か、、、いくら必要なんだと、、」
太郎の気持ちを知ってか、先に聞かれた。
「太郎、、遠慮しないで云ってみろ、、、わしに出来ることなら協力するから、、、いくらだ、、、」
ズバリ、父親から言われてしまった。
心からありがたいと思う、太郎だった。
話は早かった、、父親市左衛門は太郎が欲しい金額を出してくれた。
「理由は聞かない、、、お前の事だから心配はしていない。」と承諾をしてくれた。
「太郎、、、男の仕事をしろよ、、、」
そして、太郎は北海道に戻った。
(太郎、男になる)
太郎は北海道日高に戻った。
「雄一、金は用意できた、、、心配するなよ」
しかし、今回の約束手形裏書の件では、まともに支払えば「5億円」と、損害金の支払いになる。
裁判を起こして支払いを少しでも減らそうと努力していた。
太郎たちの大学の同級生の寺内浩二が東京四谷で弁護士事務所を開いているので相談をした。
民亊を得意としていたので、、、特に約束手形トラブルに関して、そして、今回の裏書保証に関して調べてもらった。
保証には商業保証と個人補償があり、今回の花房牧場に関しては商業保証の裏書だった。
本人同士は既に死亡しており、本人確認は執れない。
従って、記入されている事実に従って判断が下される。
今回の保証支払いは当然に起きて来るのであった。
しかし、花房雄一は花房牧場株式会社の相続継承はしていなかった。当時、会社経営が不況だったので、債務を引けられなかった。
それで、新規会社での登記をしたのであった、同じ名称で、、そして、事業を新規で始めたのである。
従って、外から見れば同じ会社と思われても中身形態は別であった。
そんなことで、財産相続した財産は無く、、、個人資産は消滅し、財産放棄をしていたのであった。
従って、裏書保証はしなくてよかったのである。
しかし、こまごまな問題は残った。今回の事で整理する意味で、友達の寺内弁護士に後始末を依頼した。
降って湧いたような手形問題も解決して、太郎たちは牧場経営に励んだ。
(太郎たちは北の新天地で励んだ)
北海道日高に戻った、北条太郎は弟たちと牧場経営に励んだ。大学時代の悪友の花房雄一から牧場経営を学び、弟たちには調教師の道を切り開いて行き、ともに共同経営に参加する覚悟で日々を過ごしていた。太郎にとっては充実した毎日だった。
北の新天地に夢を見つけ、己の道を進める気がしたのであった。
そんなある日、妹のさくらから連絡が入った。
「お兄ちゃん、、お父さんが交通事故で、大変なの、、直に帰って来て、、お願い、、」と云いながら電話口で泣いていたのである。
話を聞いたら、命に関わるほどの事故なので、、というのであった。
太郎は次郎たちに訳を話して、筑波に戻ることにした、札幌まで次郎が車で送ってくれた。
「兄貴、こっちは心配しないで、、言って来い」と、送り出してくれた。
その日の特急電車と新幹線を乗り継いで、筑波まで急ぎ戻った、太郎であった。
太郎は祈った、、「親父、死ぬなよ、、死なないでくれ、、」と、、念じながら筑波に気持ちだけは飛んでいた。
土浦からは北条材木店から車が迎えに来てくれたので、、兎に角、病院へ向かった。
病院はつくば市学園都市の総合病院だったので、土浦駅からは20分で着いた。途中の夜景は普段なら見る余裕もあったと思うが、今夜の太郎には何も見えなかった。真っ暗な闇ばかりだった。近い筈の病院が遠かったのであった。
連絡をしておいたので、病院の玄関まで、妹のさくらが迎えに出ていてくれた。目にはいっぱいの泪を、、拭くことも忘れて、、立っていた。
「お兄ちゃん、、、、」言葉にならず、泣き乍ら、太郎の胸に飛び込んで来た。
(太郎は予感を感じた)
「お兄ちゃん、、お父さんが、、お父さんが死んじゃいそうだよ、、助けて、、」と、、泣きじゃくて、涙が止まらなくなっていた。
「分かった、、とにかく、病室へ行こう、、」と、、妹,さくらを抱えながら歩いた。
病室には義母が付いていて、気丈に父を見守っていた。
太郎の顔を見るなり、、今まで気の張っていた義母も安心したのか、泣き崩れた。
「太郎ちゃん、、帰ってきてくれてありがとう、、今日明日が乗り越えられれば、、大丈夫だと先生は言ってくれているの、、」と云い、義母は震えながら、目には涙を貯めていた。
堪えるのがやっとのことだった。
「お母さん、、後は俺が見てるから、、少し休んでください、、」と、、言って、病室のソファに休ませた。
太郎は北条木材の専務取締役から、交通事故の詳しい話を聞かされた、、、専務取締役は北条木材の社長「市左衛門」の実弟であり、事故の現場にいたので、事情を理解出来ていた。
話によると、木材の切り出し現場で、市左衛門社長と打ち合わせをして、現場の作業車で帰る山道で事故が起きたというのであった。
現場に積んであった木材が崩れて、市左衛門の車に落ちて来て、車ごと崖下に転落したと云う、、
警察の現場検証では、縛っておいたワイヤーが切れての事故であった、、ワイヤーが錆びて、積んであった木材の重みで切れたのでは無いかということであったが、、北条専務の話では、そうではないと云うのであった。
誰かが故意に斬ったのではと、、云うのである。
その話を聞いた太郎は、市左衛門社長の快復を待って、調べようと思った。
今は市左衛門の無事を祈るだけだった。
(太郎、事故の話を聞いて、怒る、、)
市左衛門が奇跡的に助かり、太郎は心から嬉しかった。妹さくらも喜び、義母もみんなが心から市左衛門の快復を喜んだ。
目が覚めた市左衛門を家族みんなで祝福したのであった。
「親父、、良かった、、本当に良かった、、ゆっくり、休んで直して欲しい、、親父が休んでいる間は、俺が山を見るから、、安心してくれ、、、」と、、太郎は自然に山に戻ることを約束した、、、
それを聞いた市左衛門は、大きく頷いて、「ああ、、ゆっくり、休むよ、、」と、云いながら、目を閉じた。その目には薄っすらではあるが、光るものがあった。
市左衛門の様態が落ち着いてから、太郎は北条木材の山に入り、交通事故の現場に立った。
そして、太郎は北条専務から、再び、現場の説明を聞いたのであった。
現在、北条木材の山を含めた山林で、産業廃棄物処分場の建設計画があって、地元の「双葉建設興行(株)」が土地買収を進めているということであるが、、市左衛門の山林が一番面積が多く、一番反対していると云うので問題が起きていた。
市左衛門は「とんでもない、、誰がごみ山にするものか、、わしの目の黒いうちは、どんなことがあっても売る気はない、、そして、設置反対をするから、」と、正面切って啖呵を切っていた。更に、土地を手放そうとする地主から、市左衛門は山林を買収を始めたのであった。
市左衛門から言わせると「勝手に、人の山林で、ふざけた産業廃棄物処理施設の計画など相談も無く、やるな、、」と、、意気を巻いても居たのであった。
ましてや、、愚連隊上がりのやくざ同様な連中に好き勝手はさせないと思っていた。
従がって、「双葉建設興行(株)」からすれば、、市左衛門は目の上のタンコブだったのである。
「双葉建設興行(株)」はつくば市近郊の愚連隊の無法者の寄せ集めが、建設会社を作り、筑波学園都市建設の時代の波に乗って、急上昇した土建屋集団であった。しかし、時代の流れとは怖ろしいもので、規模も大きく成り、「資金力」を持つように成り、、地元の指定暴力団「秋葉会」の幹部との付き合いで、顔役に祀られて、肩を振って歩くようになった。
「金力」」に「暴力」を加て、地元の権力者になったつもりで、その行動範囲が横暴になってきたのであった。
何でも自分の思うままに出来るという「うぬぼれ」が沸き上がり、、今回の計画が起ったのである。
その計画に真っ向から反対した市左衛門が標的になったようだった。
そんな内容の話を聞いた太郎は、、考えた、、そして、「今に見てろよ、、思い知らせてやるからな、、」と、、報復を考えた。
(太郎は市左衛門の事故を調べた)
秋風が吹いて、肌寒さを感じる朝になっていた、、そんな朝に目覚めた太郎は、父、市左衛門の事故には疑問を覚え、事故当時の現場を調べることにした。そして、朝飯を食べて、病院の市左衛門を見舞い、、元気になって来た父を見て、ひと安心した太郎であった。
「お兄ちゃん、もう大丈夫だって、、先生が云っていたよ、、、でも、暫くは車椅子だって、、、」と、、付き添っている妹のさくらから云われ、、更に安心した。
そして、父、市左衛門が話して来たのだった。
「太郎、、お前の性格を知っているから、、言っておくが、、馬鹿なことは考えるなよ、、わしの事故の件は警察に任せてな、、分かったか、、」と、、釘を刺された。
「大丈夫だよ、、、馬鹿なことはしないから、、安二郎おじさんの言うことを聞いて、仕事を手伝うから心配しないでくれ、、」と、太郎は答えたが、腹の中では違うことを考えていた。
ふざけたことをした「双葉建設興行」を許すことなと、、、事故原因を調べて、必ず,故意に仕組んだ証拠を見つけてやると決めていたのであった。
父、市左衛門の元気な様子を見て、太郎はつくば山の伐採現場に向かった。
途中、北海道の次郎に連絡を取り、状況を聞いて、もうしばらく、筑波に居ることを告げた。
「兄貴、、心配しなくて大丈夫だよ、、花房社長も良くしてくれるし、相棒の剛も頑張っているから、、安心してくれ、、、」と、、元気に言ってくれたので、筑波の事故調査を擦ることにした。
太郎は北条木材の専務でもある、安二郎に事故調査の了解を貰い、仕事の合間に調査を始めた。
「安二郎おじさん、、調査をしていることは親父には内緒で、、、」と、、頼んだ。
「分かったけで、、相手はヤクザだからな、、無理するなよ、、いいな、、」と。。念を押された。
太郎は昔、遊んでいた頃の悪友、田畑剛志を土浦に訪ねた、、
「久し振りだな、、太郎、、元気でいたか、、家を飛び出したことは聞いているけど、、今は何してる、、」と、、聞かれたので、、
太郎は簡単に事情を話して、今は北海道で暮らしていることを告げて、父親が事故を起こしたので、筑波に一時、帰っていると、、
「そうか、、元気で良かった、、喧嘩相手、飲み友達が急にいなくなったので、少しだけ寂しかったぜ、、、ふふ、、あはは、、」と、、、云いながら、、
「丁度、昼時だから、、飯でも食いに行こう、、、」となり、、
田畑剛志は懐かしい「焼肉帆掛船」に、太郎を案内した。
「懐かしいだろう,,お前に惚れていた朱美は、いい女将になってるよ、、」と、、云いながら
暖簾を潜った。
「いらっしゃい、、」と、、威勢の良い、女性が出たきた、、、
「あれーあらーー太郎ちゃんじゃあないの、、、生きてたの、、死んだとか聞いたけど、、
元気でよかった、、、逢えて、嬉しい。。。剛志、連れて来てくれたの、、ありがとう、、」
と云いながら、一度調理室に入り、、注文を聞きに来た。
「太郎、、懐かしいだろう、、此処の肉は旨いからな、、食べようか、、」と、、
途中から朱美も加わって、楽しい懐かしい食事をした太郎だった。
話の中で分かったのだが、剛志は極道になっていた。それも、今回の太郎の調査相手の「秋葉会」の幹部になっていたので、太郎は聞きずらかった。
そんな話のなかで、、剛志は勘が鋭い方なので、、「太郎、、お前の親父の事故の件だろう、、俺に聞きたいことは、、中身は知っているよ、、俺も秋葉会の人間だから、言ってはいけないのだが、、太郎、お前との中だから、さわりだけは話してやるよ、、しかし、云えば俺もやばいからな、、、」と、、太郎の性格を知っている剛志だから、話してくれた。
その日は夜まで太郎は剛志に付き合ったのである。
(今のやくざは変わった)
久し振りにあった悪友「田畑剛志」も、やくざになっていたが大人になっていた。
太郎は剛志と酒を酌み交わしながら、昔話などを懐かしみなら時間の経つのも忘れて楽しく呑んだ、、、途中から幼馴染の朱美も入って、、
朱美が亭主を連れて来た、、、「ああ、、太郎、、朱美の亭主は俺の舎弟分で、堅気になって、今は二人で「焼肉帆影船」を継いでいるので、、宜しくな」と、、紹介してくれた。
「初めまして、、隆一と言います、、太郎さんの話は聞いていますので、、宜しくお願いします、、」と、、挨拶をして、一緒に飲み始めた。
「隆一、、本当に酷い奴なんだよ、、太郎は、、ある日、突然消えてしまってな、、俺との夢を壊した奴なんだから、、まったく、ふざけた野郎なんだから、、」と、、
剛志は酒の飲み過ぎか、愚痴を言い出した。
傍で聞いていた朱美までもが、、「そうだよ、、裏切って、消えてしまったんだからね、、剛志、、うんと、、言ってやれ、、阿保たれ、、」と、、二人で文句を云いだした。
「もう、、勘弁してくれ、、これからは今までの、借りは返すからな、、」と、、二人を宥めた。剛志も朱美も本気では怒ってはいなかった、、昔を懐かしむ気持から、少々、愚痴を云ったのであった。
太郎と剛志は仲の良い兄弟分であり、、将来は秋葉会を背負って,行こうとまで誓い、、会長からも期待されていた二人だったのであるが、、太郎が消えてからは、力抜けた剛志であったのであった。
「太郎、、やくざも変わったよ、、俺も今度は若頭になるけどな、、お前が居ない組には、今一なんだよな、、お前、、もう、戻る気はないよな、、分かっているから、、無理しなくて良い。。」と、、言ってくれた。
「剛志、、真っ当な商いの付き合いをしようや、、、俺も北海道で骨を埋める気でいたが、、事情が変わったので、筑波でも考えていることがある、、お前と一緒にやりたいのでな、、
これからのやくざは警察から追いかけられるようなことのない商いをしないと、、、」と、、話を勧めた。
しかし、その前に片付けないとならないことがあるので、、剛志に確認しておきたいことがあったと、、切り出した。
「剛志、、お前にはすまないが、、双葉建設興行にだけは、けじめをつけないとな、、親父があんなことになったので、、そのことで、お前に迷惑がかかるのでないかと、気になったのだが、、、」と、、尋ねた。
「いや、、気にしないで良いよ、、双葉建設興行は、秋葉会のつくば支部で面倒を見ているが、やくざ特有の資金源のひとつだから、、やばいと思えば、つくば支部も手を引くよ、、
ましてや、つくば支部の支部長は長谷川巧だから、、太郎が絡んでくれば、何も云わないから大丈夫だよ、、気の済むようにすれば良い、、、」
と、、教えてくれた。
考えて見れば、、双葉建設興行も哀れであった、、しかし、やくざとはそいうものだ。
現代やくざには「義理」だの「恩義」は無く、全て利害関係だけのようだった、
徳があれば利用して、不利益となれば切り捨てる世界のようなのは、昔も今も変わらない。
そんな汚れた、「義理も糞」も一緒な世界に嫌気が差している、剛志でもあった。
久し振りに剛志は太郎と楽しい夜を過ごした、、朱美や舎弟分の隆一とも、笑いの出る酒飲みであり、ほろ酔いで少々、錆びれた土浦の夜道を歩いた太郎も楽しかった。
(太郎は悪友、剛志と会って、、)
太郎は久し振りに剛志と会い、、幼馴染の朱美とも逢えて、心晴れやかになり、、筑波に戻った。帰りのタクシーの中で、土浦から筑波までの田園地帯が変わったことに目を見張りながら、、昔を懐かしんだ。
余りにも変貌した筑波、、特に学園都市はまるで小東京の様だった。
夜も遅かったので、父、市左衛門の入院している病院には寄らずに自宅に帰った、様態も落ち着いたので、安心していた太郎だった。
そして,剛志に土浦ヤクザの状況も聞いたので、明日は双葉建設興行へ乗り込む心積もりをしたのだった。
朝目が覚めた太郎は、義母の作ってくれた朝飯を食べながら、、
「お袋、、良かったな、、親父も元気になって、、俺も親父が許してくれたら、、親父を手伝うけど、、やらして貰えるかな、、」と、、話けたら、、、
「太郎ちゃん、、大丈夫だよ、、お父さんは初めから、その積りだから、、」と、、言ってくれた。
昔から親父よりは義母の方が話しやすかった、太郎であった。
朝食を済ませた太郎は、、「お袋,、行ってくるよ、、」と、、用意してくれた弁当を持って出かけた。
「ああ、、それから、、帰りは病院へ行ってくるから、、、親父に何か伝言はあるかな。。」と、、云いながら。
太郎は専務の安二郎おじさんに連絡をしてから、双葉建設興行へ向かった。
(太郎、双葉建設興行へ)
太郎の心は怒りで燃えていた、しかし、襲われた父親の仇討をすれば済むというだけでは、三流やくざのする事と思い、昔の悪友で有る剛志とも会い、情報を集めて、考えた上での訪問であった。
太郎は北条木材の人間としての面会を、双葉建設興行の千葉徹社長に申し込み,会うことになっていたので、約束の時間に会うことが出来た。
「初めまして、、北条です、、千葉社長には時間を執って頂き、ありがとうございます、、」と、挨拶をした。
「いえ、、そんなことはありません、、私も北条木材の若社長とは御会いしたかったので、、宜しくお願いします、、」と云うことで、話合いが始まった。
内容は北条木材所有の山林を含めた土地での、「産業廃棄物処理施設」での話し合いであり、、その事業計画を取りやめて欲しいことを太郎は申し込んだのであった。
しかし、双葉建設興行の千葉社長は、、「今更、止める訳にはいかないですよ、、資金も投入して、許可申請の根回しも終わっているので、、」と、、言葉を返して来た。
「本当にそうですか、、地上げも完了していないのに、その事業計画は出来るのですか。。」と、太郎は聞き返したのであった。
そして、「千葉社長、私たち北条木材が土地を売らないと云ったら、、出来ないでしょう」
と、、言うと、
「今更、何を云うですか、、仲介人の大和不動産(株)が話を決めているのに、、」
更に、言葉を足して来た。「若社長、今回の事業には秋葉会が後ろ建てなんですよ、、」と、、云いながら威圧を掛けたきた。
太郎は内心、面白く為って来たな、、と、思いながら、、話を聞いていた。
大和不動産は北条木材の縁石に当たるが、父、市左衛門からは相手にされてはいなかった上に、借財が増えて、会社そのものが火の車だったのであった。
「分かりました、、それでは大和不動産(株)と秋葉会の人と、一度会わせてください、、
話を聞いて、納得できることなら、再度、話合いをしませんか、、その段取りをお願いしたいのですが、、」と、、頼んで、、
土地買収の話は次回、日時を決めてすることになり、、、太郎は引き上げた。
双葉建設興行の千葉社長が後日、連絡することで、その日の話し合いは終わった。
(双葉建設興行、、慌てる)
双葉建設興行の千葉社長に、「秋葉会つくば支部の長谷川巧支部長」からの連絡であった。
「千葉社長、、あんた、攻める相手を間違ったな、、今回の北条木材に絡んだ事業計画からは秋葉会としては手を引くよ、、、一切、関りは無いと考えてくれ、、」と、通達をされた。
千葉社長とあしては、納得がいかなかったので、その訳を訪ねた。
すると、長谷川巧支部長からは「馬鹿野郎、、俺たちに話を持ってくる時には、よくよく、調査をして来いよ、、お前な、、とんでもない相手に喧嘩を仕掛けているんだからな、、
良く聞けよ、、北条太郎という人は、本来ならば、秋葉会四代目になる人で、俺たちの親分筋に当る、、だから、誰が何と云おうと出来ないのだ、、分かったか、、お前とは縁切りになるぞ、、今回の事はお前自身で、けじめをつけてな、、」と、、云われたのであった。
更に、大和不動産の大久保実社長は姿を晦まし、行方不明となったしまったいた。
そんなことで、双葉建設興行の千葉社長は、慌てた。
秋葉会から自分でけじめをつけろと云われても、どうしていいか分からなかった。
本音は逃げ出したい気持ちであり、、個人会社ではあったが、社内の幹部と相談したのであった。しかし、今までがワンマン経営であったために、誰も意見や考えなどは無かった。
北条太郎と会う日が迫った。
双葉建設興行の千葉社長は、北条木材を訪ね、、太郎に面会を求めて来た。
そして、、太郎と北条木材の事務所で会うことになったのである。
千葉社長はもともと、強いものには頭を下げ、弱者には威張る男だったので、北条木材の事務所に入り、太郎に会うなり、土下座をしたのであった。
北条木材の社員たちがびっくりした、、今までの双葉建設興行の千葉社長とは打って変わった姿に、、何が起きたかと思ったほどであった。
太郎が、、「千葉社長、、そんなことをしないで、、中へ入ってください。。」と、応接室に案内した。
「先日は失礼なことを云いまして、誠に申し訳ございません、、若社長、、何でもして、償いますので許してください、、」と、半べそをかきながら、頭を下げた。
「どうしたんですか、、、秋葉会の人や大和不動産の大久保社長は話が付きましたか、、」と、、云われて、、また又、土下座をしたのであった。
太郎は当然、結果は分かっていたので、驚きもしなかった。
同席した叔父の専務がビックリしたのである。
「若社長、、秋葉会の長谷川支部長から、話は聞きました、、そして、秋葉会は手を引くので、自分でけじめをつけて来いといわれましたが、、どうすれば、いいのか分かりません、、どうか、今回の件では何でも責任を取りますので、許して欲しいのです、、何でも、申し付けて下さい、、」と、、平身低頭、許しを願って来た。
「分かりました、、まずは手を挙げて、、座った下さい、、」と、、太郎は話を始め
(双葉建設興行の千葉社長,謝る)
今回の事業計画の件では申し訳なかったと、、千葉社長は謝りに来て、平身低頭、頭を下げた、、太郎が尋ねた、、、
北条木材の社長の木材落下事故については、どうなんですかと、、
その件に付いては知らないと言ったので、太郎は激怒した。
「千葉社長、、本当に知らないのですか、、私が調べた結果では,故意の事故だったのであったが、、本当に知らないと言い張るのですか、、、」
「はい、、天地天命に誓って、私はやっていませんよ、、」と、、云い張った。
「千葉社長、、言葉を変えて、、聞くけどな、、どうしても、シラを切るつもりかな、、俺の方では調べて、証拠も揃っているけど、、素直に謝る気はないようだな、、
」と、、云いながら、、
棚に飾ってあった「ライフル」を持ち出し、、行き成り、千葉社長の座っている椅子に銃弾を撃ち込んだ。
千葉社長は慌てたというより、、肝を抜かれて、座っている椅子が濡れて来た、、云わゆる漏らしたのであった。
傍にいた叔父の専務も驚いて、黙っていた。
「こら、、千葉、、てめえ、、いつまでもシラバクレテ居たら殺すぞ、、お前、、秋葉会から何を聞いているんだ、、ちゃんと言えよ、、」と、、云われて、初めて太郎の恐ろしさを知らされた。
「千葉、、本当のことをちゃんと話せ、、いいか、今度、嘘を云ったら、お前の心臓を撃ち抜くぞ、、二度は無いからな、、」
「お前のような外道は、どうにでも始末出来るから、、正直に話せよ、、いいな」
と、云われて、腰を抜かしたようであり、、震えながら話を始めた。
北条木材の社員たちも銃声の音でビックリして、静かにしていた。
千葉社長は「はい、、いいますから、、殺さないでください、、」と、、云いながら、
全て、自分がやりましたと白状したのだった。
「馬鹿野郎、、初めから云って,謝れよ、、あんたは男じゃないな、、秋葉会から見放された時に、覚悟を決めて、けじめを付けろよ、、、」
「千葉、、あんた、秋葉会からケジメは自分で付けろと云われていたろう、、」
そんなことで、双葉建設興行の千葉社長は改めて、腰を抜かしたままに、命乞いをしたのであった。
そして、、五郎から条件が出された。
まず、父の市左衛門に心から謝って貰うことを条件とした。
それから、、千葉社長に約束をさせたのである、、、やくざの真似事は辞めることと、、やくざ世界は甘くはなく、、利用出来なくなったら、蜥蜴の尾っぽ切りではないが、見捨てられることを教えた、、絶対に不要になった人間は助けないからと、、
今回の事では秋葉会から責任問題で普通なら責められる筈で有るが、、その件は話を付けるから心配するなと言い、、二度とやくざな振る舞いはしないと、、約束させた。
そして、建設業の専念することを誓わせたのであった。
これからは地域の為に貢献して、利益が出たなら、遊ぶ金があったら、弱者救済をすことにして欲しいと、、少しでもやくざ紛いな行動をしたら、、いつでも償って貰うから覚えておけよと云い伝えた。
(太郎、秋葉会の若頭となった田畑剛志と会う)
双葉建設興行のつば社長と話し合いが付いた後に、土浦へ出向いて剛志と会って、その結果を報告した。
「そうか、、太郎らしいな、、、許したか。良かったな、、筑波支部の長谷川巧には話してくよ、、今後、この件に付いては何もするなと、、」
「心配かけて,済まなかった、、、何の例も出来ず、申し訳ない、、いずれ、この借りは返すからな、、ありがとう、、」
と、太郎は剛志に礼を述べた。
「太郎、、寿司でも食べに行こうか、、」と云って,剛志が懐かしい「源兵衛寿司」に連れて行った行ったくれた。
懐かしい暖簾を潜ったら、、威勢の良い声が聞こえて来て、、「いらっしゃい、、あれ、、兄貴ですか、、珍しいですね、、」と云いながら、
太郎を見て、、「ええ、、筑波の兄貴ですか、、ご無沙汰しています、、どうしたんですか、、」と、、源兵衛寿司の源次は声を震わせて、懐かしんだ。
「さあ、、、どうぞ、」と、言って、余りの懐かしさにうっすらと光るものがあった。
「おう、、源次か、、本当に久し振りだな、、元気だったか、、」と、言葉を交わした。
そして、、奥の調理場に声を掛けて、、姉の幸子を呼んで来た。
出て来た幸子は言葉にならなかった、、余りの突然の事だったので、、、
やっと、声を出したような涙声で、挨拶をしたのだった。
「若頭、、人が悪いや、、黙って、筑波の兄貴を連れて来るなんて,狡いよ、、参ったな。。嬉しくて、嬉しくて、、、姉貴もあははっ、、泣いてるぜ、、」
と云いながら,再会を喜んだ姉弟であった。
源次は「兄貴たちに、今日は特別、旨い寿司を握るから、、今日入ったばかりの魚があるので、、楽しみしていてください、、」
と、、張り切って調理場に消えていった。
残った幸子は顔を赤らめて、、太郎に話しかけていた。
「太郎さん。。土浦から消えて、どうしていたんですか、、突然にいなくなったので心配していましたわ、、」と、、
「そうだよな、、こいつはいい加減だからな、、黙って消えた時には本当に、俺も面食らったからよ、、まったくふざけた野郎だからな、、幸子さん、、うんと言ってやれよ、、」と、、傍にいた剛志も口を挟んだ。
「太郎、、お前な、、幸子さんは今も、一人で源次と頑張っているんだからな、、少しは考えろよ、、」とも、、付け加えた。
そんな積話をしているところへ、源次が刺身の盛り合わせを持ってきて、、、
「さあ、、若頭も、筑波の兄貴も味見してください、、」と、、云いながら、その日は源兵衛寿司は貸し切りで、太郎の再会を祝ってくれたのであった。
「ありがとう,剛志、、」心から太郎は礼を述べて、その日は懐かしい、過去へ置き忘れた幸子たちと楽しいひと時を過ごした。
(太郎、一度、北海道へ、、)
太郎は父、市左衛門も元気に退院して、、双葉建設興行の件も一段楽したので、、次郎たちが心配になり、北海道日高を訪ねた。
札幌駅まで次郎と副島剛が迎えに来てくれていて、、「兄貴、、お帰り、、元気で何よりです、、」と。。。
「おお、、次郎たちも元気そうだな、、、良かった、、仕事は順調か、、覚えたか、、」と、云いながら日高へ向かった。
花房牧場では、、花房雄一が迎えてくれて、その日の夕食は楽しい宴になった。
「太郎、、問題は解決したのか、、、今度は本腰を入れて、牧場の仕事が出来るな、、」と、、喜んでくてたのだった。
「雄一、、その件で相談があるので、、明日、時間を空けてくれないか。。」と、太郎は話をして、、言葉を濁した。
次の日、次郎たちが調教で出掛けている間に、太郎は雄一に相談をしたのだった。
太郎はこれからの事業計画を事細かく説明をした、、、
「雄一、、俺はお前との約束通りに、牧場経営をする積りでいるが、、筑波の木材業務も見なくてはならなくなった、、」と、話をしてから、、
「ここからが相談なのだが、、」と、告げて、太郎の壮大な計画を説明したのだった。
「何、、太郎、、牧場経営を辞めるのか、、」と、、云って来た。
「最後まで、話を聞いてから、雄一、お前の考えを聞かせてくれ、、」と、云って、太郎は雄一の言葉を遮った。
そして、太郎はつくばに「調教施設」を造り、北海道日高で競争場をある時期まで育てて、競馬場施設に近い、筑波で調教をしたいと、、更に、交通状況の悪い東京ではなく、自然豊かな筑波での「場外馬券売り場」を創りたい計画を話して、、日高の牧場経営と全てを総合的に、一緒にやりたい計画を説明したのだった。
そして、土地は広大な広さで確保出来るので、付帯施設を作って行きたいことも話した。将来はレジャーランドも併設することも、、また、馬たちの頻尿処理から、ガス再生を取り入れた「温泉施設」まで、、考えていることを、太郎は雄一に力説したのだった。
話を聞いた雄一は唸った。。「そうか、、そこまで、考えているのか、、太郎は凄いな。。」と、、云いながら、、最終的には賛成してくれた。
「勿論、検討することはいろいろある、、それを、雄一、お前と相談していきたい、、、だから、、時間はかかるが、筑波に来て、、予定現場を見ながら、、一緒に考えてくれ、、」との、、相談であった。
そして、二人の壮大な事業計画は始まった。
第二話「やくざ先生」
(1)やくざ先生、、、、
神宮司龍二は10年ぶりに筑波山の麓にある私学つくば学園の前に立った。懐かしい匂いがする、、、春も終だというのに桜吹雪が風に舞っていた。
何もかも10年前と変わらない、、、学園の広場を職員室の入り口に手をかざした。
同時に引き違い戸が開いた。。。
大川学園長の顔が出てきた。。「おお、、、龍二か、よく来たな、、、、そうか、もうあれから10年か、、、早いもんだな」
「迎えにも行かず、、、済まん、、、忘れた訳ではないのだが、、、済まん、、すまん]と詫びてくた。
「どうだ、、、龍二、変わらんじゃろ、、、相変わらずの貧乏世帯じゃ、、、済まんのう、、、」
「とりあえず、、、入れや、、、何にも無いがのう、、話は山ほどあるからの、、」
大川学園長は心から歓迎してくれた。お前の大好きなばあさんも去年亡くなったよ。。。と、寂しげだった。
龍二が職員室に入ってから、暫くして、大川学園長の娘さんが飛んで来た。
「龍ちゃん、、お帰り、、、会いたかったよ。。。今日はゆっくり出来るんだろう、、、美味しいもの作るから」
と、、、飛びついてきた。
その晩は学園内にある宿舎で、花が咲いた。
学園長は酒が好きだから、日本酒を飲んだ、、、龍二は出所したばかりなのでビールを少し飲んだ。
娘の花代は父の手伝いで、まだ、独り身だった。父の晩酌の付き合いで花代は酒を飲むようになっていた。
「ところで、龍ちゃん、仕事はどうするの、、、、まだ、決まっていなかったら、つくば学園を手伝って欲しいな」
大川学園長も手伝ってくれたらと、願っていた。
(2)緑吹く風にのびのびと。。。
大川学園長に連れられて、龍二は3年生の教室へ向かった。
そして、紹介をされた。
「今日から本校に来て貰った、、神宮司龍二先生だ。
みんなの体育を担当する、、そして、柔道部の顧問をして貰らう、、、よろしくな、、、仲良くてくれな」
「神宮司龍二です、、、よろしくお願いします」
そして、、、大川学園長が少ない、生徒を紹介してくれた。
「みんな、これからは神宮司先生も学校の宿舎に寝泊まりするので、、食事も一緒だから仲良くしてな、、、
神宮司龍二も仲良くしていこうと思った。
3年生は男25人、女性15人だった。
神宮司龍二から見ると、みんな癖のある生徒に見えた。
全員が親無しか、片親の子供たちばかりだった。
でも、見た限りでは明るかった。
龍二は好きになれそうだった。
生徒全員の紹介は時間が掛かったが、大川学園長が紹介してくれた。学園長には愛情が溢れていた。
筑波学園は1年から3年まで合計で120名の学園であった。
通いの学生は80人で、後は宿舎住まいであった。
その日の夜はささやかな歓迎会があった。
龍二は嬉しかった。新しいつくば学園で精一杯生きてみよと思った。
3(自然の中で、、胸張って)
龍二は思った。今度こそ人生の道を間違えずに歩いてみようと。。。。
目の間にいる子供たちと生きてみようと思った。
筑波学園の生徒120名のうちの、80名が宿舎生活の生徒たちだった。親なし子供が60人もいた。
しかし、みんな明るく素直に見えた。それは龍二から見た欲目だった。
親なし生徒たちは何処か違っていた、、、、いいのか悪いのかはまだ、分からなかったが、反抗心が強かった。
龍二にもなんとなく理解出来た。
もうすぐ、夏休みが近づいて来た、、、親なし生徒たちは帰るところがなかった。
それで、学園側の企画した5日間のキャンプ合宿があった
夏休みが近づくと、キャンプは3班に分かれていくので、その班分けが大変だった。
宿舎生活者も1年から3年までいるので、本当に組分が決まるまでは大変だったのである。
好き嫌いもあり、、、平均して決まるまでには、いろいろ揉めた。
それでも、何とかまとまり、準備は出来た。
龍二は何も出来ず、黙って手伝うだけだった。
学園長の娘、花代がてきぱきと段取りをしていた。
昔しか知らない龍二は、花代が大人になったことに驚いていた。
4(キャンプに参加して)
神宮司龍二は嬉しくもあり、楽しかった。
人と、、、仲間と触れ合うことを忘れていた。。常に監視されて、見張られて生きてきた自分が恥ずかしかった。
随分と長い間、狭いところで,窮屈な生活をしていた自分が悲しかった。
今は何の囲いもなく、自然の中で、胸いっぱいに空気を吸って、生きてることに、涙した。
大川学園長に感謝していた。こんなにも暖かく迎えてくれたことへの感謝だった。
そして、子供たちと過ごせる喜びを、、、
大川学園で子供たちと一緒に生活することにも感謝し,好きな柔道をすることが出来て嬉しいことばかりであった。
龍二は柔道部に夢を持っていた。。。生徒の中に頼もしい奴がふたりいるのであった。
大山勝次と小山正一の二人であった。
宿舎生活で、どちらも親無しであった。学校対抗の団体戦には5人必要であったが、、、戦力は今いちであったが、頑張っている。
今回のキャンプにも5人が揃って参加している。
素直な子供たちなので、実量を伸ばしてやりたいと思っている。
神宮司龍二は学生時代に大学選手権で優勝したことがあるので、勝つことを覚えさせたかった。
5(勝つことの楽しみ、喜び)
神宮司龍二は筑波学園の生徒たちに勝つことの楽しみを、喜びを知ってもらいたかった。
仲間同士で、環境の素晴らしい自然の中で躍動することは素晴らしいことだ。その中で、青春時代に競い合うことの素晴らしさ、切磋琢磨することの素敵なこと、汗を流して青春時代を進むことを知って貰たかった。
競い合うことの逞しさを覚えて欲しいと思った。
夏休キャンプ生活を楽しんでいる生徒たちに、今度は競う会う青春を楽しんで貰いたいと思うようになった。
筑波学園の夏休みも終わり、新学期が始まった。
神宮司龍二も教員生活に慣れて来た。
そして、特に部活活動に明るさを見出していた。指導している柔道部が力を出し始めていた。
特に個人部門では大山勝次と小山正一の二人だった。
大山勝次は重量級の強さを持っていた。小山正一は背丈は小さいが背負い投げの特異な奴だった。
団体戦では後の3人がほどほどで、何とか頑張っていた。
夏休が終わると秋の大会が近づき、練習も盛んに行うようになった。
龍二は柔道部員に教え込んだ、、、勝つことの喜びを。。
そして、練習にも力が入つていた。
そんなある日、、、柔道部員の家族から苦情が入った。
柔道ばかりで、、、勉強の学力が落ちてきているので、、、心配と。。。。今のままでは大学への進学が心配で仕方が無いので、、、柔道を辞めさせてほしいと。。。
本人は柔道をやりやがっていた。しかし、家族の強い反対で
辞めることになったのであった。
そして、生徒から直接相談を受けた、神宮司龍二は迷った。
大川学園長に相談して、話し合いをしたのであった。
生徒の親は地元の有力者であり、学園にも協力してれているので、学校側は困った。
しかし、本人は柔道を続けたいというので、、、神宮司龍二は親元に直に頼み込んだのだった。
熱心に神宮寺龍次は頼んだ。。。。
余りの熱心さに絆されて、、、また、自分の息子の必死に諭されて、、、有力者は折れた。
今回の大会で入賞出来たらと言うことで。。。。
それから、有力者の生徒は夢中で頑張った。
(6)諦めるな、、、弱音を吐くな
地方の私学である筑波学園が柔道大会で県大会に出場して、決勝まで勝ち進むとは奇跡に近かった。
個人戦ならばいざ知らず、団体戦で決勝まで来たので、地元を上げて大騒ぎだった。
5人のうち3人までは強かったが、後二人はさほどに強くはなかった、、、しかし、頑張った。練習も良くした。
顧問の神宮司龍二も頑張った。
県大会決勝の前日に、神宮寺龍二は大学時代の友と再会した。
大学時代に早稲田大学の竜虎言われた、柔道仲間の坂本良助と偶然にあった。そして、決勝大会を競ったのであった。
「おい、、龍二じゃあないか、、、久しぶりだな」
と坂本良助から近寄ってきた。
「おお、、坂本か、、、よろしくな」と言いながら、
決勝戦は始まった。
兎に角、試合が終わってからと言うことで、、別れた。
神宮司龍二は教え子たちに激を飛ばした。
小さな地方の学園が全国大会まで、勝ち上がり,今、決勝大会に臨もうとしていることに、、、龍二は感激していた。
そして、決勝の相手が大学時代の友である、坂本との決勝であった。夢のようなことだった。
神宮司龍二と坂本良助は常に技を競い、勝ち負けを競っていた。
(7)懐かしい昔、、、
柔道の対抗試合は坂本良助が率いる、東京都立早稲田実業が勝った。強かった。しかし、神宮司龍二が率いるつくば学園も強かった。
試合の数日後に坂本良助がつくば学園を訪ねて来た。
龍二がバス停まで迎えに出た。
「良助、、、、ビックリしたろう、、田舎なので」
「龍二、本当にしばらくだった、、、12年ぶりかな、、、元気だったか」
「ああ、、、ありがとう、わざわざ、会いに来てくれて、、、本当にありがとう」
二人は自然一杯のが学園の宿舎で祝杯を挙げた。
12年間の積もる話は尽きなかった。
坂本は結婚していた、、、
「龍二、あの後の事件のことは知っているよ、、、ご苦労さんだったな。。。しかし、仕方がないよ。。。でも、元気でよかった。」
神宮司龍二は父親が会社を倒産して、そのあとの借金地獄でのやくざの追い込みで、家族を守るためにしたことだった。
母親と妹さんは自殺に追い込まれて、それまでの催促と酷い嫌がれせで、家庭は崩壊してしまった。
本当に辛ったな、、、、俺が来たことで嫌なことを思い出させてしまったと、、、昔を涙した。
でも、大丈夫だよ、、、
大川学園長に拾われて、今は人生を楽しんでいるよ。
しかし、「坂本、、、お前と柔道をやっていてよかった、、、柔道があるから生徒たちと明日への光を見つけて、、日々生きてられるよ」
「坂本、、こんな俺でよかったら、ずっと、付き合って欲しいな」
二人は夜通し酒を酌み交わしながら語った。
(8)仇として狙われる龍二
久しぶりに訪ねて来てくれた坂本良助と楽しい一夜を過ごした。夏休みも終わりに近かったが、次の日に良助は帰った。
寄宿舎で寛いでいた龍二のもとにまぬかれぬ客が訪ねてきた。
花代さんが5人の男を案内して来てくれた。人相の悪い男たちであった。
龍二は一目で分かった。12年前に殺し合ったやくざたちであった。関東連合のやくざで、幹部やくざの大畑長次郎と言っていた筈だった。後の4人ははっきりとは覚えていなかった。「ご無沙汰しています、、、大畑です。随分探しましたよ。
あれから人を訪ねて歩きました。。。龍二さんの友達の坂本良助さんを見張っていれば、必ず、逢えると思っていましたので、、ずっと、彼を見晴らしていましたよ」
「どうして、来たかは分かりますよね、、、私たちの稼業は親分を取られた時は必ず、その仕返しをしなくては筋が通らないので,、、本当に探しましたよ。。ましてや、兄貴分まで殺られているので、覚悟してください」
「12年間は長かったけど、付き合ってください」
神宮司龍二も「分かりました、、、しかし、私はやくざでも何でもないので、、他の方法はないのですか」
すると、他の一緒にいる連中が、、、
「ふざけるな、、、俺たちはお前の命を貰わないと組に戻れないんだよ、、、ぐたぐた、、今更、泣き言を云うなよ」
と、もう、刀を抜いていた。
神宮司龍二も覚悟はした。刑務所の中でも何度か襲われたので。。。
学校は夏休みだったので生徒は誰もいなかった。宿舎の外に出た龍二は5人の男に囲まれていた。
絶対絶命だった、もし、仮に戦って勝っても良いことはない。
しかし、火の粉は払わなければならない。。。
そんな困っている龍二に助け船が出て来た。
園長の娘の花代が大きな声を上げて、、、「人殺し。。」と
叫びながらホースで水を撒いて来たのであった。
花代の「人殺し」と言う叫び声で、人が集まって来て、決闘は一時止まった。
やくざの幹部である大畑長次郎が止めたのであった。
「龍二さん、日を改めて会おう、、今日はここで引き上げるから、、、」
と言って、やくざは引き上げた。
神宮司龍二は助かった。学園長の娘、花代に救われた。
大川学園長が帰ってからが大変だった。
9(再び会うことを約束して,大畑長次郎は引き上げた)
花代に救われた龍二であった。しかし、大畑長次郎は再度会うことを約束したのであった。いずれは決着をつけなければならなかった。探し当てられた以上は逃げる訳にはいかなかった。相手はやくざであり、12年もかけて探し当てた親分の仇である、、、何が何でも形をつけようとするだろう。大畑長次郎たちが帰った後の事が問題だった。大川学園長は知っていたが、誰も知らないことだったので、、、娘の花代も知ってはいたが。。。
夏休の事とは言え、学校内でのやくざとの闘争である、、すぐに噂になり、問題となった。
父兄の間からも問題が起こり、犯罪人に、ましてや人殺しに子供を預ける訳にはいかないとなった。
そして、評判の良かった住民にも反対を唱える者が出て来た。
大川学園長が事情を説明したが納得の往かないものが出た。
大川学園長は困った。
生徒たちは神宮司先生の過去には問題が無い。今まで通りに学校に残って欲しいと嘆願された。
神宮司龍二は大川学園長に迷惑はかけたくないので、辞めたと言って来た。
大和学園長と生徒の父兄、、地元住民と話し合った結果、神宮司龍二が身を引くことになった。
この話を聞いた生徒たちはストライキを起こした。
しかし、神宮司龍二の意志は固く、生徒たちを説得した。
そして、自分はやくざたちと話をつけてから、農園を開くことにした。
良かったら、学園を卒業したら、農園を一緒にやりやいと考えているから、手伝って欲しいと。。。
折角知り合った仲間なので、ずっと、いたいのでは農場経営をしたいと、、、
みんなが安心して働ける農場を作って、待ってると約束をした。
翌日、別れを告げて龍二は学園を後にした。
その前にやることをやってからな、、、大畑長次郎との決着だった。
10(さようなら、、仲間たち)
神宮司龍二はお世話になった大川学園長に、迷惑をかけられなかったので、学園に別れを告げることにした。
龍二としてもずっといたかった。生徒たちとも特に柔道を通しての青春愛が出来上がっていた。
人が人を教えるという教育愛を知ったような気がして来た矢先であった。心から大川学園長のもとで、もっともっと教えもしたかったし、学びもしたかった。
しかし、自分の犯した罰の報いなのかも知れない。
償わなければいけないのだ。たとえ、相手がやくざであっても、人を殺したことには違いないのだから。
そんな気持ちを持ちながら、大畑長次郎との約束の場所に向かった。
龍二は覚悟はしていた、自分の犯した罪の償いは,償わなければと。。。
筑波山の麓、広々とした河原の一画で、大畑長次郎は待っていた。
「龍二、、、よく来たな、逃げずに。。。あんたの度胸と気持ちに答えて一対一の勝負をしよう。。。」
「龍二、他の者には手は出させないから、、、たとえ、俺が負けても約束は守るよ」
「そして、この勝負で恨みつらみは無いことにしよう。あんたも堅気の人間だ。これが最後の勝負だ、、、いいな」
「誰も手を出すなよ、、、じゃあ、行くぜ」
と、大畑長次郎は二本の日本刀を出した。
龍二も覚悟はした。
二人が構えたその時に、、、30人からの学生が何処で知ったか、駆け込んで
来て、二人の仲に割り込んで来た。
「先生を守れ、、、先生、俺たちが戦っている間に逃げてください。。。先生、死んじゃ駄目だよ、、、」
龍二は学生を止めた。
「やめないか、、、危ないから、どいていてくれ、、、」
と、龍二は叫んだ。
この学生たちの真剣さを見た、大畑長次郎は刀を引いた。
「龍二、やめよう、、、この勝負はまたにしよう」
大畑長次郎は生徒たちの真剣な、命がけの行動に胸が熱くなった。もともと、情のあるやくざだったから、手を引いた。
そして、「龍二、今回は学生たちに免じて、手を引くよ、、、いずれ、何処かで会ったらら、覚悟しておけよ。」
と言って、さっさと引き上げた。
なんとも男気のある男だった。
龍二は頭を下げた、、、引き揚げていく大畑長次郎に。。。
深々と頭を下げて見送った。
学生たちは喜んだ、、、そして、その様子を見ていた大川学園長も涙して、頭を下げていた。
11(その後の龍二は、、、、農場造りに励んだ)
大川学園長や学生たちと別れた神宮司龍二は一人旅に出た、
大学時代の友で、先だって柔道大会で再会した、坂本良助を訪ねた。
彼は北海道の実家に戻っていた。連絡を取ったら、是非、北海道へ来いということで尋ねたいった。
彼の実家は日高で牧場を経営したいた、競走馬の飼育であった。
広々とした北海道日高の牧場で手伝いながらのんびり過ごした。
そんな日、「龍二、、、話し聞いたよ、、、どうだろう、、、俺の牧場を手つだってくれないか、、、」と誘われた。
龍二はまだ行く当てはなった。大川学園を出てから、独立農場を作って、自分なりの青春道場を作るつもりでいた。まだ、構想中ではあったが、仕事もしながら、運動もしながら精神修養の場を作って、今の若い連中と人生の道を究めていこうと思っていた。
坂本良助に牧場経営に参加しないかと言われて、心から感謝した。龍二も北海道日高の草原で、自然に囲まれた中で、競走馬を相手に仕事をしようと思った。
早く仕事を覚えて、龍二を慕ってくれている若者を呼び寄せたかった。
龍二は大川学園長に連絡を取って、相談をした。
来年卒業の学生を送ってくれると約束をしてくれたので、
龍二は今度こそ、人生最後の夢を叶えようと、心が弾んだ。
春が来るのが楽しみなった。
12(龍二、、、春を迎えて)
龍二は嬉しかった。そして、迎えてくれた良助に心から感謝した。
「良助、、、なんでも言って欲しい、、、俺は何も知らないのだから、教えてくれ、、、そして、指導してくれよ」
「春に若き仲間が来るまでには、いろいろと覚えたいからな」
良助も喜んでくれた。
「ああ、、、慌てずに覚えてくれ、、、先は長いんだからな」
「良助、、一つ聞きたいんだけど、、、牧場の外れにある小屋は、今は使ってないのかな、、、」
「ああ、、、使ってないよ、どうしてだ」
「使ってなかったら、俺に貸して貰いたいんだけどな、、」
「いいけど、、、どうするんだ、、」
龍二は少し手を入れて、道場を作りたいことを話した。
春に生徒たちが来たら、、、一緒に柔道の道場を作りたいんだと話した。
良助も賛成してくれた。
龍二は春までに牧場の仕事を覚えていたい、、、そして、みんなが来るのを楽しみに待ちたい。
北海道日高の大地で夢を開きたい、、、、、
(13)龍二にも戻って来た青春が。。
神宮寺龍二にも消えた青春が戻って来たようだった、、、大事な青春時代の10年間を刑務所で過ごした龍二であったが、つくばでの大川学園時代で青春のやり直しをしてきた、、、自然の中で10代の若人と過ごした3年間、そして、過去に起こした過ちを見なおさせてくれた大畑長次郎との出会い、過去を清算させてくれた戦い。
刑務所生活から教員生活の真似事を通じて、人世道を少しだけ学んだような。。。
そして、大学時代の友である、坂本良助の友情と、、、、
龍二は人の情けをしみじみと知った。
人とは良いもんだ、、、心を開いて通じ合える友が、仲間がいるということは素晴らしいということを感じた。
これからは、その温情を大事にして、人を大事にして、相手を、、、人を知って、生きていきたい。
春になって、尋ねて来る教え子と言うか、仲間を迎えて、新しい大地で生きていきたい。
人が生きるということの素晴らしさや、大切さを大事にして、仲間と切磋拓魔して人生を歩んでいきたい。
14(蘇った青春)
神宮司龍二は春が待ち遠しかった。
失った青春をもう一度、やり直そうと思っていた。
今から胸がわくわくしていた。
筑波学園の生徒たちと会えるのが心待ちに嬉しかった。
そして、柔道を共に練習して、全国大会にまで出場したことが懐かしい。。。早く、あの、大山勝次と小山正一にも会いたい、、、、他につくは学園から5人がやって来る。
龍二は夢に膨らんでいた。
少ない仲間たちと坂本の牧場を手伝いながら、自分たちの農園を作ることであった。
農園を作る土地は友達の坂本良助から借りることが決まっていた。
15)北の新天地で夢を、、、
神宮寺龍二は北海道日高に来て、大学時代の同級生の坂本良助の牧場で働いていた。。。いずれは独立して「農園経営」をすることを話していたのである。
とりあえずは良助の経営する牧場を手伝った。良助の牧場は競馬馬を育成していたのである。
龍二は北海道日高の広い牧場を見て、、、何処までもも澄み渡った空を眺めて、、「ここだ、、」と思い、覚悟を新たにした。
「農園経営」をすると決めても何も知らない龍二であり、、これから全て、「一から、、」やることであったが、意気込みだけはあったのである。
良助の知人で「ハウス農業」をしている、川島健太郎を紹介して貰って
勉強訓練中であった。
龍二は良助から「牧場経営」も学んでいたのである。
将来は農業と牧場を併用した事業を、筑波学園からくる仲間たちと一緒に経営していく積りでいた。
16)龍二は「ハウス農業」の準備を。。。
龍二はこれから参加する、、大山勝次と小山正一他に3名のつくば学園卒業の若者と「ハウス農業」をするために、準備を進めたのであった。
春には高校を卒業して、夢振らませてやって来る若者たちに落胆はさせられない、、、龍二は自分を頼って来てくれる彼らに期待もされているので、自分の人生を掛けて頑張らないとならないと思ったいた。
その「ハウス農業」をするために、大学の同級の坂本良助も協力を惜しまずに手助けをしてくれたのである。
そして、北海道での「ハウス農業」期待してくれていた。
そのために広大な土地を貸してくれたのである。
「ハウス農業」そのやり方は、、、北の新地で野菜を中心にした農業であった。
新鮮な野菜を栽培して、、、東京などの都会に直送することであり、、生活苦で苦しむ低所得者向きに、いかに安く作るかを考えて、、、経営する低経費農業であった。
友人の坂本良助が経営する牧場の排出する「排泄物」を利用して、、肥料及びメタンガスなどを熱源として、効率のいい、リサイクル事業と結び付けて運営することであった。
また、輸送も競馬馬との絡みで、、馬の輸送などを考えて、野菜の低価格販売をするシステムを構築することであった。
17)春が来て、、、大山勝次と小山正一他3名の若者がやって来た。
龍二には待ちに待った日がやって来た、、、列車できた5人を札幌駅まで迎えに行き、、再会を喜んだ。
「よく来たな、、、待ってたよ、、、疲れたろう、、、」と言って出迎えたのである。
大山勝次、小山正一、山田三郎、花山悟、それにでぶちょの大久保理三郎か、、、懐かしいな、、、
と言いながら5人を車に連れて行った。
「先生、、、元気だったみたいだな、、、北海道は食べ物が旨いのか、、、少し、太ったみたいだよ、、、あはあはあは、、、」と笑い声が響いていた。
牧場から借りてきたワゴン車で6人は日高に向かった。
途中は海岸線が多く、景色もよく、晴れた日だったので、、、「なんか、、、修学旅行みたいだな、、」といつも陽気なでぶちょの理三郎がはしゃいでいたのであった。
「先生、、、北海道は広いなーー、なんか気持ちがでっかくなったみたいだよ、、、やりがいがあるようだ、、、広い台地で先生と一緒に出来るなんて嬉しいよ、、宜しくお願いします。」
と、、大山勝次が話しかけてきた。
「ああ、、それから大川学園長がよろしくと言っていました、、、それと花代さんもくれぐれもよろしとだった、、、」
「そうか、、、みんな元気か、、、学園長も花代さんも達者でいるかな、、」
と、、龍二が聞き返したら。。。
「ああ、、元気だよ、、、今年の夏休みには会いに来ると言っていましたよ、、」
そんな会話をしているうちに「日高の宿舎」に着いた。
「みんな、この宿舎は仮だからな、、これからみんなで新しい宿舎を建てるから、よろしくな」
と言いながら、、、龍二の親友の坂本良助の家に入った。
その日の夜は良助が龍二の仲間たちを歓迎してくれたのである。
18)龍二の仲間が増えて、、、いよいよ「ハウス農業」始まる
つくば学園から大山勝次たち5人が来てくれた夜は、坂本良助の家族が歓迎会をしてくれたのである。北海道のジンギスカン鍋で、龍二の教え子たちにご馳走を振舞ってくれた。。。みんな喜んで「旨い、、旨い」と言って食べた。
食事が済んだあとは、、、牧場の大浴場でみんな一緒に入り、夢を語りながらはしゃいでいた。
寝るところは仮ずまいの牧場にある宿舎で寝た、、、みんな、長旅で疲れていたのか、すぐに寝てしまった。
龍二はみんなの寝顔を見ながら、ひとり、これからの夢を描いていたのである。
何もないところからの出発であった、、、金もない、、、前途多難な道だとは思うけど、、、「こいつらがいる、、、仲間がいるんだ」と、思うと燃えてきたのである。
これからは食事も洗濯も何でも自分たちでやるのだと、、、心を引き締めた龍二であった。
龍二が牧場の食堂を借りることになっていたので、、、「おはよう、、、起きろ、、」
とみんなを起こしたのである。
そして、まずは洗面所に連れて行き、、、そのあとに食堂の炊事場に行きみんなで食事の支度をした、、、「いいか、、、勝次、、正一もいつも手分けして、まず朝は飯のしたくだから、、、係りを決めて効率よくしてくれな、、、」と、、、龍二は指示をしたのである。
すべて、、自炊であり、、何でも自分たちでやるのだから、、当番を決めて、、、順番良くしないと、、、作業も出来なくなるからな頑張って欲しい。
初めての炊事なので、坂本良助の奥さんの美咲さんが手伝ってくれた。
「いいか、、、みんな、明日からは自分でやるんだからな、、もたもたするなよ」と、、、隆二はみんなにはっぱをかけたのである。。
そして、、、「いいか、みんな、、、俺は無一文だからな、、、稼げるまでは、借金で賄って
やるんだから、、その積りでいてくれ、、」
「だから、、最初は牧場の手伝いが半分で、ハウス農業の準備が半分だから、、辛いけど頑張って欲しい。。」
と、、、龍二は念を押したのである。
それでも、みんなで作って食べる朝飯は旨かった。
19)仲間で作る「ハウス農業」のハウス
龍二は坂本良助の力を借りて、、、「ハウス農業」の建物を作り始めた。
良助から借金をしてという「投資援助」をして貰い、、ハウス農業の建物の基礎工事にりかかったのである。。。
規模は1,980平方メートル(600坪)の鉄骨造りのビニールハウスであった。。。当初は2棟立てることにした、、、
骨組みは寸法を出して、、、鉄骨会社に加工をして貰い、、、自分たちで組み立てをする方法を執ったのである。鉄骨組み立てはボルト締めと溶接でやることにしていた、、、北海道に来てから龍二は良助の知人である「鉄骨加工会社」で見習いをして、技術を習得してた。
更に、基礎工事の生コン打ちも習得していた。
ビニールハウスを鉄骨で組み立てるには理由があったのである。
後々の電気は「太陽光発電」を屋根に取り付けるためだった。
龍二は将来は電気は自家発電で、、、水は井戸水でという風に、、金を掛けないというか、自前で賄うことを考えていたのである。
そのほかにも、あらゆることを「経費」を節約して、、、安価のいい野菜を作ることを考えていたのであった。
とりあえずは、、、一番もとになる「ハウス」を作ることであり、、、其のハウスを自分たちの労働力で作ることであったのである。
それが一番の「経費」削減に通じるからであった。。。
仲間で出来ないながらも力を合わせ、汗を流して作る「農業ハウス」に意義があると、、龍二は仲間5人に言い聞かせ、、、来る日も来る日も頑張ったので。。
そして、仲間で汗を流して働いた後の「握り飯」は旨かった。
20)毎日、汗を流して作る「鉄骨ハウス」
龍二も朝は5時から起きて、、、勝次や正一ら5人を起こす準備をするのである、、、まだまだ「18歳の少年」であり、、青年への出発時点であるから、若い仲間が起きたら、すぐに朝ごはんの支度が出来る、下準備をしておくのだった。
そして、、「おはようございます、、、」と5人が起きてくる。
「さあ、、、今日もやるぞ、、顔を洗って、朝飯の支度だ、、、もたもたするなよ」と、、、声をかけて、
龍二は朝飯を作り始めた。朝ごはんを食べながら、一日の段取りを説明したのである。
みんな、よく話を聞いた、、そして、質問をした。
現場に入ると、分からないまでも必死に動いた、、、「今日は生コンを打つための型枠を組むからな、、、力仕事だ、、
朝飯をいっぱい食えよ」と、、、はっぱをかけたのである。。
「はーい、、、頑張ります、、、飯が旨いよ、、、」でぶちょの理三郎がいかにも食いしん坊らしい言葉を吐いた。
「よーし、、、やるか、、、昼飯まで頑張れよ」、、、
と、、、龍二たちは「タオル鉢巻き」をして、現場に直行した。
そして、みんなで生コンを打つための型枠つくりを始めたのである、、、木材を寸法に合わせて切ったり、、敷地の基礎を打つところに砕石を敷き詰めたりして汗を流した。
お昼まで頑張ったので、、、型枠を設置し、生コンを流し込む準備は出来たのである。。
「よし、、、お昼にしょう、、」と、、朝、用意してきた「握り飯」を食べた、、、おかずは良助の奥さんが作ってくれた「おしんこ、、、漬物」を摘まみながら、、、
「旨い、、、旨い。。」と食べた。
汗を流した後の食事は旨い筈である、、、龍二は思った「働いた後の飯の旨さを」知って欲しいと、、、
昼休みは、仕事を効率よくするために「1時間」を取った。
慣れない力仕事の為か、、、近くの木陰で昼寝をした。疲れているみたいで「いびき」を掻くやつも。。。
仕事は若い奴が動くので早かった。
午後も慣れて来たので作業も順調に進んだのである。。。
会社勤めと違うので、、、5時で終わりとはいかなかった、、
龍二が「自分たちの仕事だから、、、日の出で始まり、、日没で終わりだからな、、」と、、言ってみんなを励ました。
宿舎に帰ると、、良助の奥さんと賄のおばさんたちが夕食の支度をしていてくれた。
みんな「旨いなーーうまいなー」と言ってむさぼりつくように食べた。
龍二の合図のもとに「ありがとうございます、、、本当に旨いです」と、、礼を言って頭を下げた。
21)農業ハウスが出来て、、、
龍二たちの「農業ハウス」も朝昼と日曜日も休まずに作り続けていた、、、6月は雨に降られたが、頑張った甲斐があって、屋根の上の「太陽光発電施設」まで仕上がったのである。
農業ハウスの中の照明もついたので、、、夜間作業も捗った。
農業ハウスの中の設備、、「トマトは水耕栽培で」「レタスも水耕栽培」という設備も出来上がった。
当初は「600坪(1980平方メートル)二つの水耕栽培」なのであるが、、、売り上げに応じて増やしていく計画であったので、、、売り上げのための販路を作らねばならなかった。
其の売り上げに協力してくれたのが、、、昔の仇と狙われた「やくざの大畑長次郎」が現在は東京で運送会社をやっていた、、、龍二と二人で命がけの決闘をした中ではあったが。。。なぜか「気が合う仲になり、便りを交換していたのであった。」
それで、龍二が北海道で「野菜つくり」をしていると知ると、そん販路を作り、運送までしてくれることになったのである。。。
龍二とは相談をして、、生産する側と、販売運送する側とに分かれて共同事業をすることにしたのであった。
「農業ハウス」の次には北海道の土地に適した「ジャガイモ」「トウモロコシ」と、、外での栽培作業を始めた。
そんな準備が済んだ頃に「夏休み」が来て、、、筑波学園の「大川学長と娘の花代さん」が、次に希望している若者を連れて,やって来たのである。
龍二にとっても勝次や正一たちにとっても嬉しい出来事であった。
その日の為に「宿舎」も広げたり、、、部屋数を増やしていた。
北海道日高は冬は寒いが、、、夏はクーラーが要らないほどの涼しさがあったのである。
そして、、、何よりも良いことは「電気代がゼロ」ということであった。
勝次や正一、、そして、、他の三人も頑張ったので快適な施設が出来ていたのである。
大川学長が連れてくる若者は総勢「15名」」であった。
10名は農業従事生、5名は良助の牧場で競馬育成の仕事に就きたいとのことであり、、
良助も歓迎していたのである。
そして、夏休みが来て、、15名の若者がやって来た、、、北の新天地に。。。
22)大川学園長と娘の花代も来た、、、
龍二は待ちに待った大川学園長と花代さんが来てくれる朝は落ち着かなかった。
勝次たちに冷やかされていたのである、、、r
「やっぱりな、、先生は花代さんに「ほ」の字だったんだな、、、良かったな、、
先生、花代さんも来てくれて」
龍二は良助の牧場のマイクロバスを借りて,勝次と札幌駅に出かけた。
札幌駅についたら勝次がみんなを迎えに行ってくれたのである、、、
龍二は待ち遠したかった、、、わずかな時間が長く感じた。
しばらくすると勝次がみんなを引き連れて戻って来たのである。。。
最初に声をかけて来たのは大川学園長であった、、、「龍二、元気そうだな、、会いたかったよ」
「学園長、、、ご無沙汰しております、、この度はすいませんでした、無理を言いまして。。」と、、龍二は挨拶をしたのである、、そして、、、
「花代さん、しばらくでした、、、元気でしたか、、、よく来ましたね」と、、言いながら、
一緒に来た学生たちに挨拶をして、、車に乗る様に指示を出した。
勝次が説明をしながら乗り込んで来たのである。。
「勝次、、、みんなの乗ったかな、行くぞ、、、」と、、日高に向かった。
日高についたら正一たちが出迎えてくれた。
新しく出来た宿舎に案内して、、、先輩らしく正一が「大広間」「個室」を見せながら説明をしていたのである。。
学園長と花代さんは特別室で、、学生は二人づつの部屋であると説明すると、、
勝次が「学園長たちの部屋は龍二先生が特別、愛情をかけて造っていましたよ、、、」と、、
付け足した。
すると、、、学園長が「おれの為ではないな、、、それは違うだろう」と、、謎めいた言葉を吐いた。
そんな話をしながら、、みんな広間に集まった。
そして、龍二が世話になっている坂本良助を紹介したのある。
それから、お互いが挨拶をした。
23)久しぶりの仲間同士、、恩師との再会、、、、
龍二は大川学園長との久しぶりの談話に花が咲いた、、、そして、娘さんの花代さんとも会話が出来たので嬉しかった。
現在、一緒に仕事をしている勝次や正一からは冷やかされていたのである。。。
「今回は龍二先生が一番、楽しみしていたよ、、、何しろ、花代先生に会えるとな、、、あはあはあは、、、」と、、それを聞いた仲間が全員で聲高々と笑っていたのである。
そして、、「龍二先生、、、この際だから、プロポーズしなよ、、遠慮しないで、、、北海道で一緒に住んでくれたら、、俺たちは嬉しいんだけど、、、」
そんな話を聞いている花代は、一人で顔を赤らめていた、、、
「そうか、、、そうだったのか、、、おい、龍二はどうなんだ、、」と、、大川学園長が尋ねたのである、、、本当は知ってる癖にと、勝次たちは思い。。。
龍二先生も言い出せないでいるので、、、勝次と正一が謎をかけたのであった。
そして、、坂本良助も言ってくれたのである。。。
「決まった、、今夜は二人の婚約パーティと、みんなの歓迎会を楽しもうではないか、、、アはあはあはだな、、、細かい打ち合わせは後にして、、、今夜は愉快だ」、、
と、、、良助はもう、二人の結婚が決まったように振舞っていた。
「おい、、龍二、同級生で可笑しいかも知れないが、、、俺が媒酌人をしてやるからな」
という話まで弾んだのである。
「良助、話が早すぎるよ、、第一失礼だよ、、花代さんに承諾も貰わないで、、」
と、、、照れくさそうに龍二が言ったのであるが、、、
大川学園長が「龍二、よろしく頼むよ、、、こんな娘でよかったら貰ってやってくれ、、」と頼まれて、花代も満更では無く、、俯いてにこにこしていた。
24)龍二と花代の婚約、、、、
北海度での龍二の日課は忙しかった。そして、、龍二は以前より花代に厚意を寄せていたのである、、、
周囲の人間は生徒までも知っていた。今回の婚約の話は遅かったぐらいだった。
坂本良助などはもろ手を挙げて歓迎した。
勝次や正一も、、他の三人も大賛成だった、、、、婚約の話はとんとん拍子に決まり、その晩は歓迎一色に染まったのである。
大川学園長などは余程、嬉しかったと見えて、心から酒酔いをしていた。
龍二も良助もみんな酔った、、、、
しかし、龍二たちは朝食の時間にはいつものように行動して作業に就いていた、、、
そして、、大川学園長や花代さんを引き連れて、学生たち15名に農園ハウスと、作っている野菜をみせていたのである。。
それを見た大川学園長は唸った。
「見事だ、、、龍二、よくここまで頑張ったな、、、、」
「これを見て安心したよ、、、お前に生徒たちを預けられるよ、、、そして、花代もな、、宜しく頼む、、あはあはは、、」と、ご満悦だった。
ところでハウス農業のことはよく分かったが牧場の方も案内説明してくれと言われて、、、良助に頼んでやって貰ったのである、、、
牧場の施設は近代的であり、馬の育成から調教まで全て揃っており、、大川学園長は安心した
これで、花代の結婚式だけ済めば、、親として一安心だったのである、、男親ひとつで育てた学園長はあの世の妻に、、、報告が出来るとひとり、、そっと、目がしらを拭った。。。
そして、、、あはあははと、、一人満足していたのである。。。
北の新天地でのいい朝であった。
25)大川学園長は満足だった、、、
龍二と花代は大川学園長の前で、仲間たちの居るところで婚約をしたのであった。そして、良助の媒酌人も決まり、日取りを決めての結婚式となった。。
花代の希望で「冬の結婚式」が決まった、、、雪の中での純白の結婚式を願ったのである。
今年の冬休みと決まった。
北海道の生徒たちの見学実習も終わり、大川学園長と花代たちは帰っていった。。。
花代の心には明るい嬉しい花が咲いていたことだろう。
龍二たちは仲間たちが帰った後は忙しかった、、、野菜の収穫もあり、、東京から来た「大畑運送」(大畑長次郎の経営する会社)のトラックに積み込む仕事がこの秋から増えたのであった。
ハウス農業の以外の「ジャガイモ」「トウモロコシ」の収穫もい忙しかった。
しかし、龍二も勝次たちも汗だくになって、泥まみれになって働いた。
大畑運送の長次郎社長も農園まで来て、手伝ってくれていたのである。。。
その晩は泥まみれになった体を、牧場の大浴場でみんなで洗い、温めた。
みんな裸の付き合いであり、、長次郎社長の入れ墨を珍しく眺めていたので、、、龍二が、、「凄いだろう、、
この人は昔は怖い人だったんだよ、、」と笑みを浮かべて昔話を少しだけしたのだった。
「ところで、、先生、花代さんと結婚したら、どこに住むの、、」と云うから、、、
龍二は「みんなと一緒に、、ここの宿舎に住むから宜しくな。。。」
長次郎社長が「へえーー結婚するのか、、、俺も呼ぶんだろうな、、、」と言われて、、、
「勿論だよ、、、早めに日時は知らせるから、、宜しくな」と、、、裸の付き合いは笑いに包まれて、湯気の中に消えていった。
風呂を出たころには大広間に食事の用意がしてあった。
長次郎社長が来ていたので「ジンギスカン鍋」が用意されていたので、、、良助も参加して、まるで「収穫祭」のように、賑やかだった。
26)北の新天地の幸せが、、、
龍二は北海道日高に来て、、、自分の望んでいる人生道が開けていくことに幸せを覚えていた。
大学時代に事件を起こして、、「懲役10年の実刑」を言い渡された時にはお先真っ暗であり、、絶望感を味わった、、、しかし、それも仕方のない人殺しであったのである。。
古いかも知れないが「父の仇」というか、自分の父親を助けるための「やくざとの抗争」であった、、
龍二自身が我慢すればよかったのであるが、、、まだ、龍二も若く、、血の気が多かったので、後先を考えずにやってしまったことであった。
その時に関係したやくざが「大畑長次郎」で、、、今は無二の仲間になっていたのである。
そして、服役を済ませた後に、何も言わずに迎えてくれたのが大川学園長であり、、
今も子弟の関係を保ち、、娘の花代までも嫁にしてくれることになった。
更に大学時代の友人である、、坂本良助も過去を気にせず、、快く受け入れてくれたのであるから、、、龍二は幸せだった。
大川学園時代の教え子たちも慕って、、、龍二のハウス農業に参加してくれていたのでる。。
良助の歓迎する「ジンギスカン鍋パーティー」は涙が出るほど嬉しかった。
龍二は皆の顔、仲間の顔を眺めて、、一人一人に感謝をしていたのである。。。
「おい、、、龍二、お前は幸せ者だよ。。。こんないい仲間に囲まれて、、
羨ましいよ、、、」と。、酒が回ってきた長次郎が大声で叫んだ。
北の新地には笑いが幸せが渦巻いていたのである、、、、
27)龍二は仲間に祝福されて花代さんと夫婦に。。。
龍二たちは夏が過ぎてから、勝次や正一たちも仕事に慣れたので、ハウス農業も順調に進んでいった。ハウス農業以外の「じゃがいも」と「トウモロコシ」の生産も進んだので、耕作面積を増やしていった。
来年の春からはつくば学園から「10名」の増員もあるので、、その準備も進めたのである。良助の牧場へも「5名」が参加するので、龍二としては忙しかった。
そして、年が明けての正月に「花代」との結婚式もあるので、その準備でもやることが多かった。
仕事が終わってのお風呂の中で勝次たちが、、、
「先生、、、あと半年だね、、花代先生が来たら急がしいから、、、準備を万端にしてよ、、、手伝うことがあったら言ってよな、、」
と、、冷やかしながら、心配をしてくれた。
勝次たちも喜んでくれたいた、、、「花代先生が来てくれると、、宿舎に花が咲いたみたいでいいよ、、、俺たちも嬉しい」と、、、
風呂から上がると大広間の食堂に良助が待っていた。
「龍二、、、いよいよだな、、、あと半年か、早いな、、、準備はいいか、、」
と、、心配してくれていたのである。
毎日、毎晩であるが、、龍二と花代さんの結婚式の話題で花が咲いていた。
そして、1月が来たのである。筑波学園の冬休みに、大川学園長が娘の花代を連れてやって来た。
龍二は勝次を連れて札幌駅まで迎えに行ったのである。
二人を迎えた龍二は笑顔でいっぱいの出迎えだった。日高の龍二たちの農園ハウスにつく頃には二人の結婚式を祝ってくれるかのように、雪が降りだしてきた。
龍二は心の中で呟いていた、、、「これで、純白の白い結婚式が出来る、、」と、、、、心が躍った。
日高の農園道に入るころには、、、まるで「シルクロード」を走っているように、道が白く染まっていた。
龍二たちの車が宿舎の前についた時には、、、坂本良助夫婦と農園の仲間たちがで迎えてくれたのである。
大川学園長と花代さんが車から降りると、、、「おめでとうございます、、待っていました、、、」と、拍手と仲間たちの笑いがあった。
「龍二、花代さんおめでとう、、、花代さんが願ってた雪が降って来たよ、、、素敵な結婚式になるな、、」
良助が心から喜んでくれたのであった。
「龍二、、、あと二日だな、、、お正月に結婚式だよ、、今年はいい年になるな、、俺も凄く嬉しいよ」と、、、
そして、結婚式の当日が来たのであった。
龍二の結婚式をみんなが祝ってくれてるようだった。大川学園長は嬉しくて、初めから終わりまで涙いっぱいの結婚式であった。
坂本良助夫妻も媒酌人を務めながら、、嬉しさのあまりに「お祝いの言葉」を忘れるほどに喜んでいたのである。
敵同士であった大畑長次郎も東京から、前日に来てくれて、諸手を挙げて喜び、祝ってくれた。
勝次と正一たちがお祝いの言葉を述べて、、、
「龍二先生、、、花代先生おめでとうございます、、、幸せになってください、、、花代先生、綺麗だよ」と。。。
何よりも嬉しい言葉を送ってくれた。
28)やくざ先生の青春祭り
神宮寺龍二は春にやってくる仲間たちを待って、その準備に取り掛かった。
龍二はつくば学園に来てから、、大川学園長に拾われてから、、夢中で自分なりに先生らしくなろうと生きてきたのである。。
学園長に恵まれて、、娘の花代さんにも会えて、結婚まで出来て、、教え子たちにも慕われて、一緒に柔道を通じての子弟愛にも恵まれ、、良助との友情愛にも育まれてきた自分が幸せ過ぎていいのかと考える時がある。
そして、仇と狙われた元ヤクザの大畑長次郎とも無二の仲間に慣れた我が人生を疑う時があるのだった。
与えられた幸せを大事に生きて行かないと罰が当たるような気がした。
今度、やってくるつくば学園の生徒たちを温かく仲間として迎え入れをしないと、、と、思いながら勝次や正一郎たちと話し合いをしていたのである。
龍二は花代も入れて、、大山勝次、小山正一、山田三郎、花山悟、愛嬌のあるでぶちょの大久保理三郎を集めて伝言を託した。
「来年の春にくる15名のつくば学園の仲間たちには頑張って貰うために、、
これから農業ハウスと宿舎をしっかり作らないとな、、頼んだぞ、、
勿論、専門の大工さんたちも手伝ってくれるから、、気を抜かずに、体を大事にな、、それまでは寒い冬だから風邪ひくなよ、、」
と、、幸せいっぱいの龍二は伝えたのだった。
「先生こそ、、頑張り過ぎて体を壊さないようにな、、」と、、勝次たちに冷やかされていたのである。
「それからは今度来るうちの5名は牧場で働くのだから、、面倒を見てな、、
農業仕事と違うからといって、仲間外れは駄目だから」
と、、念を押した。
29)龍二大いに羽ばたく
神宮寺龍二は北海道日高に来てから、、ハウス農業に励んだ。
農業などしたことのない龍二が日高で農業を営む農家で1年間、実習生として最初から学んだのである。
やりだしたころには悩んだ龍二であった。
土いじりが大変だということを、しみじみ味わった。。畑仕事とか田んぼの稲つくりが傍から見れば難しいとは思わなかったのであった。
しかし、やってみて、、「これは偉いことを始めたな、、、」と、少しだけど後悔したのである、止める訳にはいかなかった。
龍二は踏ん張ったのである、、半年も過ぎた頃から体が動く様になった。
そして、友人の坂本良助の助けも借りて、、何とか「百姓」に近付いたのである。
良助の友達の、、工務店経営の大下肇にも手伝って貰い、、鉄骨ハウスを作ることも出来たのであった。
勝次や正一たちも参加して、、、労働力が増えたので、鉄骨ハウス造りも捗り、工務店経営の大下肇の力を借りて、、宿舎も出来た。
鉄骨ハウス以外の畑仕事も、、良助の農業経営の友達、南構造の紹介で日高農協からの借り入れも出来た上に「農機具、、耕運機など」も購入が出来たので、畑仕事も捗っていた。
そんなこともあって、、今回の二期目の工事は宿舎建設も、鉄骨ハウスの建設も進み、、来年の4月に入ってくるつくば学園の仲間たちが参加するまでには間に合うと期待が持てたのである。
そして、今度来る仲間のうち、5名は牧場勤務であり、、その仲間の宿舎も間に合いそうであった。
牧場勤務の仲間は「馬の調教」が主体での競走馬の飼育であり、、良助も楽しみにしていた。
龍二の夢は膨らんでいった。
そして、、野菜の運搬を担当している、大畑長次郎との合同会社を設立して、総合的な生産運搬のシステムを構築して、
効率のいい経営をして行こうと考えていたのである。
30)坂本良助の牧場でトラブルが起きた、、、
良助の経営する競馬の飼育調教をしている中でのトラブルだった。良助の牧場で設備投資の借入金があったが、、、その借入金のうち仲間からの投資金があったのである。。
その投資先の経営が悪化して資金回収を迫られたのであった。悪いことに、その仲間が反社会勢力関係の金融会社からの借り入れをしていたので、
そして、友達の資金回収の責任が良助に廻って来たのである。
突然に予定外の資金手当てなので、、良助は困った。
その金額も「2000万円」だったので、慌てた、、、
反社会勢力の「日高興行(株)」が強硬に返済を言って来た。日高興行(株)は北海連合会の傘下であり、地元では暴力的なやくざ組織である。、
良助が手塩にかけて育てた競走馬であり、、将来、夢のある馬だったので、
相談を受けた龍二も困った。
投資して貰った資金なので、返済の猶予が貰えないかどうかを聞いてもらったのであるが、、、
返ってきた言葉は、、、「ふざけるな、、、遊びで金貸しをしてる訳じゃぁないんだ、、、」と、、無碍に断られた。
良助は投資して貰った友達と、金を寄せ集めた、、龍二も少ないけど協力したのであった。
とりあえず「金利分」だけで、返済の時間を延ばして貰う交渉をした、、、
そして、、一か月だけ待って貰ったのである。
龍二はいつも良助には助けて貰ったいるので、何とかしなくてはと、、
東京の大畑長次郎にも相談したのであった。彼は東京から飛んで来てくれたのである。
偶然にも「北海連合会」の滝内大造会長を知っていたので、大畑長次郎は会いに行ってくれた、、、そして、返済期間を延ばして貰った。。
「ありがとう、、長次郎、、本当にありがとう、、良かったよ、、」
龍二も良助も感謝した。
その話をまとめた長次郎は、その晩に荷物をトラックに積んで東京へ戻ったのである。
その晩に龍二の嫁さんの花代が、、言ってきたのあった。
「龍二さん、、父から2000万円を送って来たよ、、、それで返済すようにと言われたから、」
「ええー、親父さんが、、、ありがとうな花代、、親父さんに連絡しないと、、」
急いで龍二は電話をしたのだった。龍二は花代に感謝していた、、、親父さんに相談してくれて助けられたのである。。
31)日高に春が来る日、、
良助にも心から感謝もされ、お礼も言われた、、、全て、大川学園長のお影だった、、龍二は流石だと思った、、、そして、今の仕事を頑張って、親父さんには返さないといけないと心に言い聞かせた。
借金を還した龍二と良助は誓った、、、農場も牧場経営も頑張っていくことを、、、
また、運送に携わる長次郎もやる気になり、、燃えたのであった。
仲間の勝次、正一、三郎、悟、理三郎たちも龍二と約束をしたのである。
そして、新しい仲間がつくば学園から来るまでに新しい、農業ハウスと宿舎を建設すると毎日、朝から暗くなるまで作業に励んだ。
良助の牧場の社員たちも手伝ってくれたので、工事は捗った。
龍二たちは春が待ち遠しかった。
早く春よ来いだったのであった。
そして、4月が来た、、、新しい仲間が来る日に龍二は花代と勝次を連れて札幌まで迎えに行った。
今回も15名と大川学園長が来るので「マイクロバス」で、、、
札幌駅には花代と勝次が出迎えに行き、、龍二は車で待った。
新しい仲間たちが駐車場に現れた時の嬉しさは格別だった、、これから始まる日高での新しいドラマが目に浮かんだ。
龍二は大川学園長に真っ先にお礼を述べた、、「親父さん、、ありがとうございました、、良助も心から感謝していました、、本当に何から何までありがとうございます。。」
と、、言いながら、新しい仲間を車に誘導したのであった。
日髙に着いたら、良助を始め農場の仲間が、牧場の社員たちがみんなで出迎えた。
良助も大川学園長に駆け寄って礼を述べたのである。
そして、、みんなで大広間の食堂に集まった。
北海道日高の夜は真っ赤に燃えた、、若者の血潮で、龍二たちの熱気で燃えたのであった。、、、、
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