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番外編
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しおりを挟む「どうしてですか、ノア殿下!!」
椅子に座って書類を読む皇太子殿下にテオドールが机に手をついて前のめりに詰め寄る。珍しく怒りを露わにしてきたテオドールに少しだけ視線を向けた。だが、申し訳ないという気持ちがあるからか、すぐにその視線を逸らす。
「はぁ……だからいま人員をあまりさけないんだ。新しく交易する他国からの視察もあってだな」
「だとしても! ルイとか……」
「あいつに行かせるのはさすがに酷だとは思わないのか。それにあいつも帝国にいなくなったら、それこそ駄目だろう」
「っ、それは……そうですが」
『そんなに嫌なら別日にしたらどうだ?』という皇太子殿下の提案にテオドールは悔しそうに首を振る。
「これ以上、あの父親を待たせたら僕は殺される気がします」
「あぁ……」
なるほどと頷いた。テオドールへ向けられた父親のあの憎悪の感情を思い出せば心底同情してしまう。
「にしても、この忙しいときにお前もいなくなることもかなりの痛手なんだ。こちらの事情も汲んでくれ」
「ッ……」
「大丈夫だ。あいつの能力は高位魔術師なみのものがある」
「いえ、僕が心配してるのはそこではなくて……」
「……あぁ、やっぱりそうだよな」
頭を抱えるテオドールにため息をついて椅子から立ち上がる。背中を叩いて、なんとか納得してもらおうと言葉を続ける。
「身分はしっかりしたやつだし、なによりツーツェイはお前の婚約者だ。大丈夫だろう」
「……あのルイの妻だとしても手を出すようなやつが、ツェイに何もしないとお思いですか、殿下」
ポンポンと背中を叩いていた皇太子殿下の手が固まる。ギロリと頭を抱える腕の間から睨んできたテオドールに笑顔がひくついてしまう。
「もう決まったことだ。諦めろ」
「そんなこと言うのなら、今度は彼に皇太子妃の警備をさせてください!」
「……」
「あ……」
笑顔が一瞬で凍りついた皇太子殿下にテオドールはしまったと顔を顰める。この皇太子殿下が皇太子妃を溺愛していることを忘れていた。気がつけば身体を取り囲んでいる黒魔術陣。
「テオドール、これ以上お前とする話はない。出ていけ」
「で、殿下、お待ちくださいっ!! いまのは……ッく!!」
その瞬間、強い風が起こって扉が開かれて身体を持ち上げられ部屋から無理やり出された。バンッと強く閉められてしまった扉の前で呆然と立ち尽くす。
(なんでこんなことに……)
本当であれば道中だけでもツーツェイとの旅行を楽しむつもりだった。必ず嫌がらせされるだろう父親のいない時間だけでもと。けれども、それも許されない。むしろ警備する対象が増えてしまったことにまたテオドールは頭を抱えた。
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