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59 男性魔術師たちの悩み①
しおりを挟む「あのテオドール様がとうとう既婚者か~。ん? となると女の子からの視線は全て俺のものってこと?」
「……」
「わぁ! めっちゃ最高じゃん、ルイ派もテオドール派もいなくなって全ては俺のもの!!」
「……」
「ちょっと、ルイ! さすがに俺が痛いじゃん、せめて突っ込んでよ~!!」
裏庭のベンチで腰かけて本を読んでいれば、ルイの魔術学園のときの同窓で黒魔術師のライトが机を挟んだ向かいのベンチに腰かけて絡んでくる。その美貌で自他ともに認める遊び人のライトに『うるさい。早々に追い払うか』と魔術陣を描こうとしていれば、人影が見えて顔をあげた。
「ルイ、ライト。隣いい?」
そこには微笑んでルイたちを見つめるテオドール。
けれど、また何かに悩んでいるのか片方の指が絡んでいる。そんなテオドールになにか嫌な予感を感じ取ったルイが少し眉を歪める。『他の所にしてくれ』と声を出そうとしたが……。
「どうぞどうぞ~」
その声を出す前にライトが招き入れたせいで隣に腰掛けられた。
「いやぁ、テオドール様に本当に恋人できるなんて~。しかもめっちゃ美人なんですよね!?」
「うん……そうだね」
「今度、挨拶させてほしいなぁ」
「うん……機会があれば……」
『絶対会わせない』とテオドールが小声で呟いたのをルイだけは聞こえて、そこだけは同意した。
「それでテオドール、なんのようだ」
「あ……うん…えっと……」
このテオドールがなにかを聞きに、それか話を聞いてほしそうなのはわかっていた。これも早く聞き終えてこの場を去りたいと思ったルイが問い詰める。
「煮え切らないな。早くしろ。暇じゃないんだ」
「あぁ、もう。ルイは冷たいなぁ~。テオドール様、聞きたいことがあるんならなんでも聞いてくださいよ」
「うん……えっと……」
二人からの圧に少し目線を泳がせたが、その後決意を固めたように口を開いた――……。
「ふ、はははは!! やばっ、超面白い!!」
大爆笑するライトが机をバンバンと叩いている。その前で頭を抱えるテオドール。
「それはっ、心配になるだろう! めちゃくちゃ久しぶりなんだから!!」
「いやっ、にしても数カ月一緒に暮らしてて……ぷぷくく……まだキスしかしてないなんて!! ぶはっ、だめだっ、笑う! 学生かよ! 」
笑い転げるライトに顔を赤くして震えるテオドールだったが、さすがに怒ったのか長い魔唱を唱え始めたのでライトが慌てて『すみませんでした』と頭を下げた。
「ツェイは初めてだろうから怖がらせたくないんだ。彼女が嫌がることはしたくない」
「うーん、それはわからんでもないですが……てか、まじでなんも触ってないんですか? ほら、最後までしなくてもその前までとか……」
「なっ、するわけないだろ!? 想いも通じてないのに触るなんて最低だろ!!」
その言葉にライトとルイになにか思うところがあったのか、しんっと無言になる。
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