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そう心の中で何度も謝れば、テオドールが微笑む。
「ツェイは僕を助けようとしてくれたんだよね、ありがとう」
また抱きしめられて頭を優しく撫でられる。
(どうして……私は恐ろしいことをしようとしたのに……)
こんなときまでテオドールは優しい。その優しさが残酷なものであることがわかっているけれど、その優しさにいまは甘く溶かされていく。そっと胸に頬を擦り寄せる。
そのときバタバタと足音が聞こえて部屋の扉が開かれる。開かれた扉の外から炎で燃え盛る部屋を見てルイが眉を歪めている。
「ちっ、遅かったか」
その後ろには魔術師たちも何人かいて、部屋から溢れた煙にむせている。
すぐにルイが魔唱を唱えて大量の水を出し、部屋を取り囲んでいる炎を消していく。そのおかげで炎は綺麗に消えた。
(私たちもびしょびしょなのはわざとかしら)
高い能力があるこの高位黒魔術師が燃えていないところも水浸しにするヘマはしないことはなんとなく分かってきていた。
「あー、えっと、ルイ。助けてくれたのはありがたいんだけど……これはあえてかな?」
「相談もなく勝手に行動したお前たちが悪いのだろう。本当であれば小一時間ほど水漬けにしたいくらいだ」
「あー、うん……ごめんね」
テオドールが濡れる髪を振り払うように頭を振って雫を落とす。魔唱を唱えれば光に包まれて濡れていた身体がすぐに乾いて温かい。こんなことも出来るのかと感動してしまう。
「っあ!?」
ルイが床に倒れ込んでいたエリオットの首の襟を掴む。
「こいつは連れていく。皇帝陛下の命令だ」
「は、離しなさい!! 私になにかするつもりなら国同士の問題になるわよ!」
「うるさい。いまここで口を閉ざされたくなければ黙っていろ」
「ひぃっ!!」
手の上に大きな炎を出したのにすぐに口を噤む。そして、そのまま後ろにいた魔術師に放り投げた。
「穢らわしいものに触れてしまった。これもお前のせいだ」
「うん……それは同意するかも」
床に落ちていた白のローブを拾って手を拭う。そのローブをテオドールに投げつける。
「あと、まだ陛下からの命令がある」
「え……」
ローブの中から白い長方形の封筒を取り出す。それを見てテオドールが目を開く。けれどすぐにルイが一瞬で燃やして灰にして床に落とした。
「お前の辞職願は破棄するとのことだ」
(辞職願? もしかして辞めるとお伝えしたもの?)
テオドールが魔術師を辞めることにならなくて良かったとツーツェイがほっとしていればルイの鋭い視線がツーツェイに向けられる。
「すぐにそいつと王宮へ向かえ。それも陛下からの命令だ」
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