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しおりを挟むその後、いつも通り掃除をして昼食を食べ部屋に戻る。椅子に座ってむうっと唇を尖らせるツーツェイの目の前の机に置かれているのはテオドールに渡された小さな白封筒。夜に読むようにと言われていたけれど……。
(なんだか嫌な予感がする……)
朝からツーツェイを包む気持ち悪さ。背筋がぞわりとするような悪寒に近いものだった。
その封を切ってしまうか迷ったが、その悪寒に急かされるようにペーパーナイフを手に取り封を切った。
そこには手紙が入っていて、綺麗な均等のとれたテオドールの文字が書かれている。だけれど手紙を持つツーツェイの手が震える。
(なぜ……)
『結婚はなかったことにしてほしい』
その手紙に書かれた一文。ツーツェイのこれからに関してはしっかりと面倒を見るとの付け加えもある。
それに『すべてが終わればもう自分に関わらないでほしい』とも書かれていてツーツェイの額から汗が溢れて頬を伝う。
(なんで……どうして……)
ツーツェイはテオドールにそう伝えられたら、すぐに屋敷を出ようと思っていた。けれども……。
――――あまりに酷い
昨日、自分にあんなに甘い口付けをしておいてと指先が震えてくる。
(どうしてこんなにも残酷なことができるのだろう)
諦めようと思っていれば、さらに深くのめり込んでくるように体内に入ってきたのに、近づけば出ていってしまう。
ガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がる。ツーツェイはこのうえなく怒っていた。涙はこの間、距離を離されたと感じたときにたくさん流したからだ。
あのときも絶望させておいて、また口付けして希望を持たせて、また今日絶望を与えられた。
(あんの勘違い製造機に一言文句を言わないと気が済まない!!)
最初から結婚をやめるつもりなら、あんなにも甘い口付けをしなくてもよかったのにと震える拳を握り締める。それに朝、浮き足立ってデレデレとしてしまった自分にもこのうえなく恥ずかしくなる。
(それに……私のファーストキス!! 初めてだったのに!)
別に大切にとっておいてあるわけではなかったけれど、重要なものには変わりない。ツーツェイは白い封筒を強く握りしめて部屋を飛び出した。
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