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「ツェイの瞳と髪色に似てる」

 優しい微笑みを浮かべるテオドールが鏡に映る。その笑みにツーツェイの迷っていた気持ちがなくなって、すぐにどれを買うか決まった。

『これがいいです!   気に入りました!!』

 そうボードに記せば、また笑みを返して店主に声をかける。支払いをするために鞄から金貨を出そうとしたけれど、テオドールに手で止められる。

「いいよ。僕が買ってあげる」

 それは悪いと首を横に振ろうと思ったが、鞄に入っている金貨も結局はテオドールからもらったものなので変わりないことに気がつく。
   申し訳なくて眉を寄せてしまえば、テオドールがわざとむっとしたような表情を浮かべる。

「喜んで欲しいんだけど?」

 そんなテオドールに慌ててコクコクと頷く。『ありがとうございます』と書かれたプレートを出せば、頭を優しく撫でられた。


(綺麗な花の宝石、すごく素敵)

 奥にいる店主とテオドールがやり取りしている間に、鏡の前でくるくると頭を左右に揺らして、その輝きにうっとりとしてしまう。


「嬢ちゃん!! なんでそんな花を付けてるんだ!?」
「っ!?」

 いきなりの怒鳴り声に驚いて振り向けば、年配の女性がツーツェイを睨みつけている。なにかしただろうかとアワアワと焦っていると、さらにため息をつかれた。

「ったく! 昔の憎しみを忘れた若いもんが多くて困るよ!!」

(なに……? 憎しみ?)

「ばあちゃん! いつまで昔のことを引きずってるんだよ」
「なんだい!? あんたんとこが変なもんを売るからだろう!」
「あ~、はいはい! わかった、わかったから」

 店主が慌てて間に入ってくれる。手馴れたような口ぶりなので常連なのかもしれない。

「ったく、リンドワールの国花の飾りなんて売るんじゃないよ!」

(リンドワール……? たしか昔にこの帝国と大戦した相手国)

 昔に読んだ歴史書の僅かな記憶を引っ張り出す。この年配の女性の話から国花が金木犀なのだろう。

「この間も小競り合いがあったばかりだろう!? 首謀者は自らを帝国民だと偽っていたらしいじゃないか!」
「それも解決したから、もういいだろう? それにリンドワールもいまは良い国王に変わったじゃないかよ」
「よくないよ! あいつらはなに考えてるかわからん奴らだからね!! まずこの帝国に歯向かってきた時点でおかしいじゃないか!」

 店主とその女性のあまりに激しいやり取りに驚いてしまって、どうしたらいいかわからない。声も出せないので止める手段もない。

「申し訳ありません」
「なんだい!? いまは……ッ!!」

 その年配の女性が振り向けば、テオドールが悲しそうに眉を寄せて頭を下げる。

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