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連絡先ゲット
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「えい!」
私の手から離れたダーツは、盤の端っこあたりに刺さる。
「すごいすごい」
由依香さんがパチパチと拍手をしてくれる。
ギリギリ当たったって感じだけど、さっきまで、かすりもしなかったから上出来かな。
「由依香さんの言った通りにしたら当たりました」
「ううん。葵ちゃんの勘の良さがあるからだよ」
「いやいや、上手い上手い。私なんか、今でも当たるの10回に1回だもん」
萌さんも褒めてくれて、思わずはしゃいでしまう。
同年代の子たちとは違う雰囲気。
なんていうか、大人の対応って感じがする。
これが沙也加とかだったら、負けないからって言って、勝負をしかけてくるところだ。
「それじゃ、ゲームをやってみようか」
「えー、でも早いですよ。狙ったところに全然投げれないですし」
「いいんだよ、それで。楽しめればいいんだから。大丈夫大丈夫」
由依香さんに大丈夫って言われれば、そんな気になってくる。
ホント、不思議な人だな、由依香さんって。
「じゃあ、私もやるー!」
「私や葵ちゃんに当てたらダメだよ?」
「当てるか―!」
萌さんが口を尖らせると、あははと由依香さんが笑う。
なんだろ。凄く楽しいなぁ。
駅でいきなりダーツバーに行くぞって言われたときは、正直不安だったけど、来てよかった。
この後、何回かゲームをやって私たちは大いに盛り上がったのだった。
「よかったら、また遊ぼうね」
ダーツバーを出て駅に向かう途中、由依香さんが微笑みながらそう言ってくれた。
「はい! ぜひ、また誘ってください!」
「へー、由依香がそんなこと言うなんて珍しいね」
萌さんが意外そうな顔をして、そう言った。
「え? そうかな?」
「そうだよ。いつも、誘われて渋々ついてくるって感じじゃん」
「えー、渋々じゃないよ」
萌さんは今度は私の方を見て、ニッと笑った。
「でもわかるよ。葵ちゃん、可愛いもんね」
「だよね。なんか、妹って感じがするの」
「あはははは。超失礼! 葵ちゃん、同い年だっての」
「あっ! そっか。ごめんね」
「いえいえ。いいんですよ」
本当は17歳ですから。
がっつり、年下です……。
「葵ちゃん見てると、妹ってこうだったのかなって思っちゃうんだ」
「……」
なんだろ?
変な言い回しな気がする。
でも、気に入って貰えて、すごく嬉しい。
「番号、交換してくれる?」
「もちろんです!」
「あ、じゃあ、私も―」
こうして私は由依香さんと萌さんの連絡先をゲットしたのだった。
「よくやった」
盛良くんの家に向かう途中、隣を歩く盛良くんが不機嫌そうな顔でそうつぶやいた。
あれ?
表情と台詞、合ってなくない?
「初回で連絡先まで入手するか? 普通」
「……あ、いや、その」
「俺なんて、15回目だぞ、15回目! しかも、結構、ごり押ししてだ!」
「えっと……怒ってます?」
「怒ってねえよ!」
いやー、怒ってるじゃないですか。
というか、私に嫉妬しないでくださいよー。
「いや、その、同性なら敷居は低いと思いますよ」
「わかってるっつーの!」
……全然、納得してないって顔だ。
「けど、まあ、作戦の第一段階はクリアだな」
そうだった。
私が由依香さんの友達になって、色々と情報収集しつつ、盛良くんをプッシュするって作戦だったんだっけ。
「頼んだぞ。上手くいくかはお前次第なんだからな」
なんか、盛良くんらしくない感じだ。
どんなときも物怖じしないで突き進むタイプだと思ってたんだけど。
「あの……盛良くん、全然、由依香さんに話しかけてなかったですよね? もう少しアピールしたらどうです?」
「……」
「……盛良くん?」
隣の盛良くんの顔を覗き見ると、耳まで真っ赤にしていた。
「う、うるせーな。……なに話していいか、わかんなくなるんだよ……」
ええー!
なに、その乙女感。
照れた顔が初々しくて可愛い。
「それにしたって、ゲームに一緒に参加するとか……」
「……せっかく、楽しそうにしてるのに、邪魔できないだろ」
なんていうか、見てるだけで幸せになってるんだろうか?
そんなんじゃ、上手くいくのもいかなくなる。
「まずは由依香さんに慣れるところからですね」
「……」
いきなり立ち止まる盛良くん。
そして、私の両頬をつまんで引っ張る。
「ひらい、らにするんへすひゃ?」
「うるせー! 馬鹿にすんな」
口を尖らせて歩き出す盛良くんを、私は慌てて追ったのだった。
次の日の朝。
いきなり麗香さんから呼び出しがあり、事務所に向った。
家を出るとき、お兄ちゃんはまだ部屋で寝ていたから、どうやらケモメンの付き添いということではなさそうだ。
事務所に到着すると、中には既に盛良くんが来ていた。
「盛良くんも呼ばれたんですか?」
「……ああ。爆睡してるところ、呼び出された」
すると、バンと社長室のドアが開き、麗香さんが出てくる。
物凄い不機嫌そうな顔をしている。
……なんだろう?
「……あんたたち、これの説明をしてちょうだい」
そう言って麗香さんがスマホの写真を見せてくる。
それは、昨日、5人で遊んだ時の写真だ。
町中を楽しそうに歩いているところを撮ったんだと思う。
あ、いい写真。欲しいなぁ。
って、あれ?
なんで、麗香さんがその写真を持っているんだろう?
「これ、SNSで出てる写真」
「あっ!」
麗香さんの言葉に、私と盛良くんが同時に声を上げた。
そうだった。
そもそも、盛良くんと由依香さんの写真がSNSで話題になってたのが発端だった。
あの後、もっと大きな、雑誌の件があったからすっかり忘れていた。
「あんたたち、本当にいい度胸ね」
麗香さんはニッコリと笑みを浮かべていたが、しっかりとこめかみの血管が浮き出ていた。
私の手から離れたダーツは、盤の端っこあたりに刺さる。
「すごいすごい」
由依香さんがパチパチと拍手をしてくれる。
ギリギリ当たったって感じだけど、さっきまで、かすりもしなかったから上出来かな。
「由依香さんの言った通りにしたら当たりました」
「ううん。葵ちゃんの勘の良さがあるからだよ」
「いやいや、上手い上手い。私なんか、今でも当たるの10回に1回だもん」
萌さんも褒めてくれて、思わずはしゃいでしまう。
同年代の子たちとは違う雰囲気。
なんていうか、大人の対応って感じがする。
これが沙也加とかだったら、負けないからって言って、勝負をしかけてくるところだ。
「それじゃ、ゲームをやってみようか」
「えー、でも早いですよ。狙ったところに全然投げれないですし」
「いいんだよ、それで。楽しめればいいんだから。大丈夫大丈夫」
由依香さんに大丈夫って言われれば、そんな気になってくる。
ホント、不思議な人だな、由依香さんって。
「じゃあ、私もやるー!」
「私や葵ちゃんに当てたらダメだよ?」
「当てるか―!」
萌さんが口を尖らせると、あははと由依香さんが笑う。
なんだろ。凄く楽しいなぁ。
駅でいきなりダーツバーに行くぞって言われたときは、正直不安だったけど、来てよかった。
この後、何回かゲームをやって私たちは大いに盛り上がったのだった。
「よかったら、また遊ぼうね」
ダーツバーを出て駅に向かう途中、由依香さんが微笑みながらそう言ってくれた。
「はい! ぜひ、また誘ってください!」
「へー、由依香がそんなこと言うなんて珍しいね」
萌さんが意外そうな顔をして、そう言った。
「え? そうかな?」
「そうだよ。いつも、誘われて渋々ついてくるって感じじゃん」
「えー、渋々じゃないよ」
萌さんは今度は私の方を見て、ニッと笑った。
「でもわかるよ。葵ちゃん、可愛いもんね」
「だよね。なんか、妹って感じがするの」
「あはははは。超失礼! 葵ちゃん、同い年だっての」
「あっ! そっか。ごめんね」
「いえいえ。いいんですよ」
本当は17歳ですから。
がっつり、年下です……。
「葵ちゃん見てると、妹ってこうだったのかなって思っちゃうんだ」
「……」
なんだろ?
変な言い回しな気がする。
でも、気に入って貰えて、すごく嬉しい。
「番号、交換してくれる?」
「もちろんです!」
「あ、じゃあ、私も―」
こうして私は由依香さんと萌さんの連絡先をゲットしたのだった。
「よくやった」
盛良くんの家に向かう途中、隣を歩く盛良くんが不機嫌そうな顔でそうつぶやいた。
あれ?
表情と台詞、合ってなくない?
「初回で連絡先まで入手するか? 普通」
「……あ、いや、その」
「俺なんて、15回目だぞ、15回目! しかも、結構、ごり押ししてだ!」
「えっと……怒ってます?」
「怒ってねえよ!」
いやー、怒ってるじゃないですか。
というか、私に嫉妬しないでくださいよー。
「いや、その、同性なら敷居は低いと思いますよ」
「わかってるっつーの!」
……全然、納得してないって顔だ。
「けど、まあ、作戦の第一段階はクリアだな」
そうだった。
私が由依香さんの友達になって、色々と情報収集しつつ、盛良くんをプッシュするって作戦だったんだっけ。
「頼んだぞ。上手くいくかはお前次第なんだからな」
なんか、盛良くんらしくない感じだ。
どんなときも物怖じしないで突き進むタイプだと思ってたんだけど。
「あの……盛良くん、全然、由依香さんに話しかけてなかったですよね? もう少しアピールしたらどうです?」
「……」
「……盛良くん?」
隣の盛良くんの顔を覗き見ると、耳まで真っ赤にしていた。
「う、うるせーな。……なに話していいか、わかんなくなるんだよ……」
ええー!
なに、その乙女感。
照れた顔が初々しくて可愛い。
「それにしたって、ゲームに一緒に参加するとか……」
「……せっかく、楽しそうにしてるのに、邪魔できないだろ」
なんていうか、見てるだけで幸せになってるんだろうか?
そんなんじゃ、上手くいくのもいかなくなる。
「まずは由依香さんに慣れるところからですね」
「……」
いきなり立ち止まる盛良くん。
そして、私の両頬をつまんで引っ張る。
「ひらい、らにするんへすひゃ?」
「うるせー! 馬鹿にすんな」
口を尖らせて歩き出す盛良くんを、私は慌てて追ったのだった。
次の日の朝。
いきなり麗香さんから呼び出しがあり、事務所に向った。
家を出るとき、お兄ちゃんはまだ部屋で寝ていたから、どうやらケモメンの付き添いということではなさそうだ。
事務所に到着すると、中には既に盛良くんが来ていた。
「盛良くんも呼ばれたんですか?」
「……ああ。爆睡してるところ、呼び出された」
すると、バンと社長室のドアが開き、麗香さんが出てくる。
物凄い不機嫌そうな顔をしている。
……なんだろう?
「……あんたたち、これの説明をしてちょうだい」
そう言って麗香さんがスマホの写真を見せてくる。
それは、昨日、5人で遊んだ時の写真だ。
町中を楽しそうに歩いているところを撮ったんだと思う。
あ、いい写真。欲しいなぁ。
って、あれ?
なんで、麗香さんがその写真を持っているんだろう?
「これ、SNSで出てる写真」
「あっ!」
麗香さんの言葉に、私と盛良くんが同時に声を上げた。
そうだった。
そもそも、盛良くんと由依香さんの写真がSNSで話題になってたのが発端だった。
あの後、もっと大きな、雑誌の件があったからすっかり忘れていた。
「あんたたち、本当にいい度胸ね」
麗香さんはニッコリと笑みを浮かべていたが、しっかりとこめかみの血管が浮き出ていた。
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