132 / 136
閑幕 4
閑幕 世界の裏側に育つ芽 ③
しおりを挟む 人形娘は文字どうり人形の外観をしている。その外観は着ぐるみと変わらず可愛らしい姿をしている。ただ着ぐるみと違うのは、着ぐるみは人間が衣装を纏っているようなものなので、脱ぐ事ができる、だから”中の人”は別の存在である。
しかし人形娘は外観を構成する表皮と”中の人”は完全に融合させられているので、特別な方法を使わない限り物理的に引き離すのは不可能である。いわば”中の人”は人形娘に幽閉された囚人と一緒だった。
「ナオミ、今日はあなたの人形娘としての機能をテストさせてもらいます。プログラムですが先ほどあなたの電脳にダウンロードしましたので、指示の様にしてください。リエも比較のため同じテストを受けてください」
アンナは指示についてしゃべっていたが、彼女の顔面にあるスクリーンにも同じ事が表示されていた。ナオミはなんかテレビモニターが顔に張り付いているかのように見えたのでおかしくってたまらなかったが、いまは人形娘の統括システムが自我に優先して活動しているので、噴出すような事はしなかった。もっとも顔の表情は固定されているので、できるはずもなかった。
人形娘にされた者は電脳化されているので、シュミレーションは可能であるが、実際に人形娘の身体を使った機能テストも必要であった。今日はメイドなのでナオミは料理を作る事になった、この研究所で”人間”なのは男性のみで、この日は大桃所長しかいなかった。
「なによ! それじゃ昨日の朝までのあたしと同じじゃないの! 父さ・・じゃなかった所長の好物を作ればいいじゃないのよ」
ナオミはそう思いながら大桃秀夫の好きなマカロニグラタンなどを作り出した。この時、人形娘になったことを実感した。物凄くテキパキと出来るのだ。人間のときはテレビやマンガを見たりしながら、料理をするサボリ癖があったので、なかなか前に進まない時があった。秀夫からはお前はだらしないなといわれたこともあった。
そうこうしているうちに、あっという間に料理が出来たが、大変な事に気付いた。味見が出来ないのだ。あたりまえだがナオミの口内は特殊な物質で覆われ舌が使えないし、口は開けられなかった。言葉だけは人形娘の管制システムが脳波を読み取って発声していたが、ナオミの声帯は使えないようになっていた。
そう思っていると、ナオミの電脳に様々な情報が流入してた。これは味の情報だった。どうも人形娘のセンサーである程度の事は判るので、ナオミの人間だった時の経験から出来がいいかまずいかの判断がつくようだった。それで、これは食べさせても大丈夫だという事にした。
そのころ、秀夫はモニターでこの様子を観察していた。上手く奈緒美の経験とナオミのシステムが連携できている事を確認した。
「取りあえず合格だなナオミ。次はお前の戦闘モードにしてみて調べてやるぞ! 次は鬼畜系になるけど勘弁せえ! 」
そういうと、次にナオミにやらせるプログラミングの設定をオペレーターにやらせ始めた。そのオペレーターは人形娘七号と十三号だった。
人形娘七号と十三号は初期の試作機で、自我を殆どもっていないので機械と変わらなかった。昨日、ナオミの着替えさせた人形娘より技術的に進化していたが、事故や病気で瀕死の女性を改造したので、自我を人形娘の電脳にインストールできなかったのだ。
当時はナノマシーンによる記憶の変換に問題があったので、大桃所長が意図したような『人間の少女を人形に改造する』事は出来ても、人間としての記憶の大部分を失ってしまった。
「人間のままの記憶を持ったまま人形娘になるのと、以前自分が何者かわからなくなった人形娘ではどっちが幸福なんだろうか? 」
そんなことを大桃所長が考える事もあったが、それは偽善といえた。少女を人形にする研究そのものが悪魔の所業といえるからだ。
しかし人形娘は外観を構成する表皮と”中の人”は完全に融合させられているので、特別な方法を使わない限り物理的に引き離すのは不可能である。いわば”中の人”は人形娘に幽閉された囚人と一緒だった。
「ナオミ、今日はあなたの人形娘としての機能をテストさせてもらいます。プログラムですが先ほどあなたの電脳にダウンロードしましたので、指示の様にしてください。リエも比較のため同じテストを受けてください」
アンナは指示についてしゃべっていたが、彼女の顔面にあるスクリーンにも同じ事が表示されていた。ナオミはなんかテレビモニターが顔に張り付いているかのように見えたのでおかしくってたまらなかったが、いまは人形娘の統括システムが自我に優先して活動しているので、噴出すような事はしなかった。もっとも顔の表情は固定されているので、できるはずもなかった。
人形娘にされた者は電脳化されているので、シュミレーションは可能であるが、実際に人形娘の身体を使った機能テストも必要であった。今日はメイドなのでナオミは料理を作る事になった、この研究所で”人間”なのは男性のみで、この日は大桃所長しかいなかった。
「なによ! それじゃ昨日の朝までのあたしと同じじゃないの! 父さ・・じゃなかった所長の好物を作ればいいじゃないのよ」
ナオミはそう思いながら大桃秀夫の好きなマカロニグラタンなどを作り出した。この時、人形娘になったことを実感した。物凄くテキパキと出来るのだ。人間のときはテレビやマンガを見たりしながら、料理をするサボリ癖があったので、なかなか前に進まない時があった。秀夫からはお前はだらしないなといわれたこともあった。
そうこうしているうちに、あっという間に料理が出来たが、大変な事に気付いた。味見が出来ないのだ。あたりまえだがナオミの口内は特殊な物質で覆われ舌が使えないし、口は開けられなかった。言葉だけは人形娘の管制システムが脳波を読み取って発声していたが、ナオミの声帯は使えないようになっていた。
そう思っていると、ナオミの電脳に様々な情報が流入してた。これは味の情報だった。どうも人形娘のセンサーである程度の事は判るので、ナオミの人間だった時の経験から出来がいいかまずいかの判断がつくようだった。それで、これは食べさせても大丈夫だという事にした。
そのころ、秀夫はモニターでこの様子を観察していた。上手く奈緒美の経験とナオミのシステムが連携できている事を確認した。
「取りあえず合格だなナオミ。次はお前の戦闘モードにしてみて調べてやるぞ! 次は鬼畜系になるけど勘弁せえ! 」
そういうと、次にナオミにやらせるプログラミングの設定をオペレーターにやらせ始めた。そのオペレーターは人形娘七号と十三号だった。
人形娘七号と十三号は初期の試作機で、自我を殆どもっていないので機械と変わらなかった。昨日、ナオミの着替えさせた人形娘より技術的に進化していたが、事故や病気で瀕死の女性を改造したので、自我を人形娘の電脳にインストールできなかったのだ。
当時はナノマシーンによる記憶の変換に問題があったので、大桃所長が意図したような『人間の少女を人形に改造する』事は出来ても、人間としての記憶の大部分を失ってしまった。
「人間のままの記憶を持ったまま人形娘になるのと、以前自分が何者かわからなくなった人形娘ではどっちが幸福なんだろうか? 」
そんなことを大桃所長が考える事もあったが、それは偽善といえた。少女を人形にする研究そのものが悪魔の所業といえるからだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる