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Scene11 〝正しい〟が持つ魔力
scene11-10 血まみれの共鳴 後編
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良善が司と達真の元へ向かったそのすぐ後。
美紗都達が避難した雑居ビルには黒ずくめで重武装を纏った見るからに特殊部隊という風体の集団が一斉に攻め込んで来ていた。顔を覆い言葉は発せず、それでいてハンドサインをしている様子もなく迅速にビルを登っていく黒い部隊。そして、あと二階分階段を昇れば屋上に辿り着くという所で、階段の踊り場に血瞳を輝かす和装の少女と会敵する。
「一体どういうご用件かしら? 生憎こっちはなんだかんだとボロボロでね、大人しく帰ってくれたらあんた達は明日の朝日を拝めるわよ?」
背中に担ぐ白木の大太刀に手をかけ寒気が走る微笑で警告する紗々羅。
ただ、そんな彼女の足下に滴る血とほんの微かに傾く紗々羅の肩のライン。
相手は負傷している。黒の集団はしばし動きを止めるが、次の瞬間一斉に手にしたアサルトライフルの銃口を向け――。
「――馬鹿」
二つ並んだ血色の輝線が波打つように階段を駆け下り黒い兵士達の間を滑り抜ける。
そして、まるで牡丹の花弁が落ちる様にコロンと数人の首が転げ落ち、一拍置いてその場はまるで赤いスクリンプラーが作動した様に天井、壁、床、全てが赤く塗り潰されてしまった。
「チッ、痛ぁ……踏み込む足が鈍るわ」
外骨格をフィルムの様に纏わせているのか、辺り一帯に撒き散らされる返り血は紗々羅の身体の表面を滑り落ちて彼女を汚さない。しかし、今の間合い詰めと居合でここに来る前に七緒に加勢して奏と戦った時受けた脚の傷がさらに開いたのか、着物の裾に内側から血の染みが一段と広がる。
「くッ! 妙にナノマシンの治癒が鈍いし、不自然に痛みも引かない。……あの女、一体何をくれたのよ?」
以前会った時とは全くの別人の様な動きになっていた奏に少々面食らい不覚にも一発攻撃を受けてしまったが、その一発に残るスリップダメージが異様に長く、さしもの紗々羅も現状長時間の戦闘は避けたかった。
「あっちは上手くやれてるかしら? あの子まだイマイチ殻が破れてないし、フォローした方がいいわよね?」
ようやく周囲の赤い噴水も収まり、紗々羅は〝殺そうとしてきたんだから殺されても文句を言うな〟と、動かなくなった屍を飛び石にして血の池を渡り、廊下を進みさらに下の階へ向かう階段の手摺りを滑り降りた。
すると……。
「こぉんのおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」
銃声や何かが壁に叩き付けられる様な激しい戦闘音を切り裂くなりふり構っていられないといった具合の少々品の無い叫び。紗々羅が現場に到着して覗き込むと、そこには先程紗々羅が仕留めた先行部隊に続く第二陣と思わしき黒い兵士達がズタボロになって叩き伏せられ、その真ん中に両手から白煙を上げる美紗都が立っていた。
「ハァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ! こ、こんな……奴らに! ハァ! ハァ! て、手こずって……ハァッ! ハァッ! わ、私……どうして、こんなに……ハァッ! ハァッ! 弱いのよ……」
銃器やプロテクターまで装備して完全武装の特殊部隊を素手で返り討ちにしていた美紗都が悔しそうに唇を噛み俯いていた。負傷している紗々羅に変わり、屋上から飛び降りてビルの中層から奇襲するという作戦もしっかり成功。
与えられた役割はきちんと果たした。しかし、それでも美紗都が早く追い付きたい司の戦場ではこんな戦果は何の意味も無い。
唇を噛み締め肩を震わせる美紗都。
それを見た紗々羅は内心『寧ろ勝てない方が普通だよ』と思いかけたが、今更一般側へ突き返すのも酷というモノ。
軽く咳払い気持ちを整え、人外側として招く様に声を掛ける。
「お疲れお疲れ~~。あらあら随分と荒々しい戦い方ですこと♪ ん? あ~あ~両手ボロボロじゃん。何? 防弾防刃っぽいプロテクターを拳だけで打ち抜いたの? あんた意外と脳筋? あ、いや、誰も死んでない……え、全員生け捕り? もぉ、器用なのか不器用なのかどっちな訳?」
血が滲む両手を握り締めて立ち尽くして震え泣く美紗都に近付く紗々羅。
その手を取り傷を見ると、見る見る内に傷は塞がり傷跡も残っていない。
(悪くない修正速度……身体の中の〝D・E〟の定着率に問題は無いはず。となると、やっぱり理由は……)
「うッ、うぅッ! なんでッ!? 前の側流世界では出来てたってルーツィアさんが言ってたのにぃ! 私が自分でちゃんと使いこなせなきゃ意味が無いのにぃッ! わ、私…やっぱり、センス……無いのかな……?」
もどかしさを吐き出す美紗都。
紗々羅の手を掴み返すその震えは、どうやら本人も相当悩んではいるものの完全に行き詰っている感じだった。
「はぁ……その点は心配しなくていいと思うわよ? 良善さんの作り出した力にセンスは必要無いの。『人によって使える使えないが分かれる力なんて二流だ』『誰にでも簡単に使える万能さは〝力〟という要素の絶対条件だ』良善さんがよく言ってたわ。つまり〝D・E〟は良善さん曰く完璧な力。その力に振り回されているだけの者や、せっかく手に入れたそれをより良いモノへ自分なりに磨こうとしない者は、良善さん的に生きる価値無し。逆にその力をしっかり道具として使いこなす者や自分なりの新しい解釈を生み出す者は大好き。私やルーツィアは前者、司様は後者の方ね」
「そ、それじゃあ私……そのうち良善さんに殺されちゃう? もう起源体の対策は済ませてるし、そのうち『目障りだ!』って……」
「殺ろされない殺ろされない……まぁ『なんでこんなことが出来ないんだ? 何か原因があるかもしれないから一度頭を開いて中を見てみようか』くらいはあり得……――あぁッ! 嘘! 嘘だから! 本気で絶望した顔しないでよ! 私が司様に怒られちゃうじゃん!」
目に涙を浮かべる美紗都を慌ててフォローする紗々羅。
基本的に良善は〝無能〟というだけで誰かを処すことは無い。
そこには、彼が超越者であるが故の価値観が関係していた。
「そもそもあの人からすれば自分以外は無能がデフォなのよ。そんな中であの人が手を下すのは〝無能なくせに頑張らない人〟か〝自分の作品に粋がって手を加えて寧ろ改悪した人〟前者に関しては信条で後者は好き嫌いの領分ね。あの人は〝向上〟を愛してるから、どんなに無能で役立たずだろうが頑張っていればとりあえず殺されはしないわよ。まぁ、興味の対象が続くかと言われたら流石にそこまでは保証出来ないけどね」
ポンポンと肩を叩き美紗都を落ち着ける紗々羅。
一旦はホッとした様子の美紗都だが、銃火器を向けられてもその固有能力が発揮出来ない理由は未だに分からない。
だが、そこで紗々羅が不意に美紗都の顎下へ太刀の柄を添えて親身なのか意地悪なのか判断の難しい笑みを浮かべて来た。
「せっかく出来た可愛い後輩だし……アドバイスしてあげようか?」
「え? あ、ぅ! ア、アドバイス?」
「うん。実は私はあんたが上手く能力が発揮出来ない理由に何となく心当たりがある」
「えッ!? それってどういう……――ひゃうッ!?」
紗々羅の握る柄が美紗都の顎を撫で喉を滑り降りて鎖骨の間を付く。
鞘に納められているとはいえ、人を細切れにする様な真剣を這わされて美紗都の血の気が引く。
「あんたは司様が取り込んだ〝D・E〟のさらにバージョンアップ版を取り込んでる。あんたは見てないでしょうけど、司様の最初はなかなかグロかったわよ? でも、それを元に良善さんが調整をしたことであんたはあまり酷い目には合わずに基礎能力を身に付けた。多分その辺の温さが原因……あんたの〝D・E〟は、まだ気合が入っていないのよ」
「き、気合……? で、でも……じゃあなんで前の側流世界では……」
「一過性のランハイじゃない? それじゃあエンジンが掛かり切れない。……美紗都、あんたは司様の傍に居たいとか役に立ちたいとかで能力を解放しようと頑張ってるでしょ? ふふッ! 違う違う……そういう自分を守る理由じゃダメ。それを持つなって訳ではないけど、必要なのはあんたの中の〝D・E〟に攻める理由を示すこと。いい、美紗都? 〝D・E〟は生きているわ。実際に喋ったりもう一人の自分みたいな反応が返って来たりはしないけど、あんたの中の〝D・E〟は、あんたの心の奥底から溢れ出るもっとも強い自身を主軸にした感情を具現化しようとするの」
「自身を……主軸に?」
「えぇ、他人からどう見えるかは関係ない。下らないことだろうが間抜けなことだろうが馬ッ鹿馬鹿しいことだろうが、本人がガチなら〝D・E〟は応える……良くも悪くもね。コツさえ掴んじゃえばあとは……――ん?」
ニヤニヤと含みのある笑みをしていた紗々羅の顔が締まり、美紗都の胸元を突いていた太刀を下ろして近くの壁に当てると静かに目を閉じる。
「……敵の増援。でも、人じゃない? 重い振動……――ッ!? まさかッ!」
目を見開き強張る表情をした紗々羅が突然太刀を抜き壁の切り刻む。
賽の目状にコンクリートが崩れ落ち、その穴から顔を覗かせ外を見ると……。
「やっばッ! 壁から離れて!」
「え? えッ!? ――きゃあッ!?」
――ドゴオオオオォォォォンッッ!!
紗々羅が美紗都を突き飛ばした刹那、二人がいた場所がビルの外側から抉り取られて周囲が爆散する。
「な、何ッ!? 今の何ッ!?」
「くっそぉッ! 戦車よ戦車ぁッ! 側流世界だからって今回もまぁ無茶苦茶やるわね! 不味い! 今屋上を狙われたら曉燕達はともかくこの世界の司様と円はひとたまりもないッ! ――うぐッ!?」
――ドゴオオオオォォォォンッッ!!
躊躇いも無く放たれる第二射。
防衛施設でも無いただの民間ビル。
掠らされているとはいえ、あと一発でも喰らえばあっさり倒壊してしまうかもしれない。
「チッ! 舐めてるわねぇッ! 美紗都! 屋上に行って何とかルーツィアを叩き起こしてきなさいッ! 私が時間を稼ぐッ!」
「え!? じ、時間を稼ぐって……さ、紗々羅ちゃんッ!」
削られたビルから飛び降りる紗々羅。
するとすぐさま今度は機関銃を思わせる金切り音が響き、先ほどの突入部隊の何倍もの黒い兵士達が現れ、そこに紗々羅が斬りかかりビルの周囲はあっという間に破壊と戦火に包まれる。
「こ、こんなの……――ひぃッ!?」
超越者の戦いよりはいくらか現実的。
だが、それが返ってまだ常人寄りの美紗都には余計に生々しく見えて気持ち悪かった。
紗々羅が建物の影へ駆け込むとすぐに悲鳴が上がり、そこへ銃火器が向き切るよりも先に刀身にべったりと血糊をこびり付けた紗々羅が戻って来て、救援に向かう小隊がバラバラに刻まれる。
装甲車が体当たりを仕掛けると足の怪我で避ける方がしんどいと言わんばかりに上段構えからの一刀で装甲車は中の搭乗員達ごと真っ二つに割かれて紗々羅の背後で爆散する。
あまりにも簡単に人を殺す紗々羅。そして、美紗都が倒したまだ生きていたはずの兵士達が何一つ警告も無いまま放たれた砲撃で身体を引き裂かれて床や壁に血染みとなっている光景。
あまりにも簡単に目の前に広がる〝死〟が美紗都の瞳に焼け付いていく。
「ハァ……ハァ……ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ! は、はは……私、やっぱりまだ、何にも……分かってなかったんだ」
心臓が早鐘を打つ。
この兵士達の正体が何なのかはまだはっきりしていない。
使い捨て戦闘兵にされた元〝Answers,Twelve〟傘下の構成員か?
はたまた、この側流世界の住人達を言葉巧みに扇動しているのか?
ただ、どちらであっても……。
「私らを殺したいなら……自分達が攻めて来なさいよ……」
気に入らない。
謂れの無い未来の罪で殺そうとして来ただけでも腹立たしいというのに、どうにも敵の動きには姑息さを感じる。
上役がいるのは明らかなのにその者達はまるでこちらに姿を見せず、圧倒的に質で劣る者を物量にモノを言わせてぶつけ続け、あわよくばという目論見が透けて見える。
「自分達以外は消耗品? 偽善者も極まれりね……司様が怒り散らしているのも納得だわ」
気に入らない。
手段もそうだが、こうして千切れ飛んで死んでいく者がいる中でその無念さに思いを馳せることも無いのであろう〝ロータス〟の悠々さが美紗都には看過し切れない。
「……ん?」
足下の血だまりから光の粒が湧き上がる。
どうやらこの黒い兵士達は誑かされたこの側流世界の住人達であったらしい。
そして、ものの数秒でバラバラになった肉塊は綺麗に消え去り〝ロータス〟の血の色を問いたくなる様な冷酷な行為の痕跡は何も残らなかった。
「隠蔽もバッチリ……別にこの世界ごと消せるし、そもそも他の人に見られるはずもないだろうに……自分達の正当性を守るための完璧主義? ――う、ぐぅッ! 反吐が出るわよッ!」
前髪を握り締め歯を食い縛る美紗都。
身体が熱い……血管の中で血液が摩擦熱を起こしているかの様だ。
先の世界よりもより死が鮮明であるせいか、はたまた美紗都がこれまで生きて来た環境に近しい世界での惨劇のせいか。
徐々にだが、確実に体内で何かが起きている。
しかし……。
「くッ! でも、まずはとりあえず屋上に行かないと……」
忌々しいが今は受け身。
それにこの世界の司と円を傷付ける訳にはいかない。
美紗都は紗々羅の指示通り、屋上へと向かおうとしたが、紗々羅が来た方へ向いた瞬間背中に弱々しい殺気を感じ取る。
「――うぐッ!?」
――ダァァァンッッ!!
身体を反らせて寸前で回避。
先程まで戦った兵士達が持つ銃器に比べると大分威力の低いモノでこれなら避ける必要も無かったかと気付いたのは避け切ったあと。ただ、その反り回って見た背後の弾丸の出所には廊下の奥で壁にめり込む弾丸よりも遥かに強いインパクトがあった。
「あッ! あぁぁッ! よ、避けられた!? ど、どど……どうしようどうしようどうしょう!」
「え? ……こ、子ども?」
美紗都の視線の先では両手で握ってもその小銃の衝撃に耐えられなかったのか、尻餅を付いて慌てふためく少女が一人。
千紗と同じくらいの小柄さに黒髪ショートが無垢さを感じさせる大人しそうな印象。ただ、その可愛らしい見栄えと顔立ちにはあまりに不釣り合いな全身を包む黒いアーマーベストやプロテクター。流石にサイズが無かったのか所々をバンドで無理矢理止めているが、そもそもそんな物騒なモノを身に纏うこと自体が間違っているいたいけさだ。
「あ、あなた……どうして、こんな所に。いや、そんなことよりもあなた今……私のことを銃で撃ったわね?」
「――ひぃッ!?」
問い質すまでもないことをあえて口にする……もちろんわざとだ。『そちらが先に殺そうとして来たのだから逆に殺されても文句は無いわよね?』という雰囲気で睨みつけると、少女は分かりやすいほど顔を青褪めさせて震え出した。
3~4mほどの距離だが、カチカチと震え鳴る歯の音が美紗都の耳まで聞こえて両目からは大粒の涙が溢れていた。
(こういう状況に慣れてるって訳ではなさそうね。〝ロータス〟が嗾けたの? いや、こんな女の子を戦わせたところで戦力になんて……あぁ、あえてね。とにかく物量……それに加えて、こういう子を混ぜておくと油断や隙になるかもと……腐ってるわね)
この側流世界に来てすぐに見た過剰正義の世界観。
悪党にはどんな仕打ちをしてもいい。そしてその中でも〝Answers,Twelve〟という存在は最悪であり、その巨悪を討つためには全ての者が一丸となるのが当然であり、それに協力しないというのはその者も悪である証拠だ。
このか弱い少女もそんな妄言を疑いも無く受け入れた口か、それとも同調圧力に屈しただけか。
美紗都はそれが知りたくて一歩少女に歩み寄る。
「……あなた、名前は?」
無意味に手首を回したら指を閉じたり開いたりして〝いつでも殺せるぞ〟感を出しつつ美紗都は少女を見る。
本当はこんな悠長なことをしている場合ではない。
しかし、恐らくこのあとこの少女に聞く質問に返答が来れば、今自分の中で起きている何かに新たな刺激が加わり何らかの答えが出る。
〝何か〟〝何らか〟何一つ明確なことが無いのに美紗都は何故か漠然と確信していた。
「あ、あぁ……う、ぅぅ……」
「いきなり頭から齧りつく化物みたいに見ないでよ……私は凪梨美紗都。お名前を教えてくれないとこっちはあなたをなんて呼んだらいいか分からないわ」
もう圧を掛けるまでもない。
美紗都は表情から少し険を抜いた
すると……。
「あ、ぅ……つ、月見……夜空……」
一歩前進。
桜の花びらの様な小さな唇をまごつかせながら、少女――夜空はようやく自分の名前を名乗ってくれた。
「へぇ……なかなか詩的ないい名前じゃない。さて、夜空ちゃん。あなたは――」
――カチャッ!
「――……なんで、そうなるかな?」
降ろされていた銃口が再び美紗都に向く。
かなり穏やかに話しかけていたはずだ。
相手は可愛らしい女の子、下手に含むこともなく自然な笑顔で優しく語り掛けれていたはず。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……んくッ!」
向けられた銃先は震え、見ているだけで夜空の内から溢れる恐怖が伺える。
だが、そうまでして勇気を振り絞っている意味が美紗都には理解出来ない。
「一体何なの、夜空ちゃん。お姉さん……あなたに何か恨みでも持たれてるのかな?」
生憎、初対面でいきなり殺意を向けられることにはもう慣れてしまっていて、そんな自分に何故か美紗都は少し笑ってしまった。
「な、なんで……笑ってるの! ご、極悪人なんでしょッ!? 一杯色んな人を苦しめてる悪い人なんでしょッ!?」
(あぁ……やっぱりこの子もそういう口なのね)
この世界の異様なほど極端化した勧善懲悪。
やはりこの少女もその改変に染められてしまったらしい。
「お姉さん達を撃つのは正義なんだもんッ! 小さい頃からずっと『そうしないといけない!』って教えられて来たもん! こ、これが正し……――ひぃッ!?」
美紗都の目が少し吊り上がり、ただでさえ震えていた夜空が竦み上がる。
夜空が言った〝小さい頃からずっと〟という言葉が妙に引っ掛かった。
(私達と〝ロータス〟がこの世界に来たタイミングは時間軸がズレてるっぽいのはこの世界の司様が拷問されてた感じから分かるけど……小さい頃からって何? その言い方だと半年とか一年とかそんなレベルの話じゃないよね? 記憶を弄られた? 司様の時と一緒の方法? いや、多分ここに来てから見て来たモノを考えれば、きっとこの側流世界そのものを自分達の都合の良い様に造り変えたんだわ)
となると、ここでいくら美紗都があれやこれやと言ったところでその心に積み重なって来た言葉の量で敵うはずが無い。
いくら説得しようが夜空からすれは悪党の言い訳にしかならない。
ただ、一体どうしたものかと美紗都が言葉を選んでいると……。
「で、出来る……出来……る、もん……ッ! さ、さっきだって……も、もう……」
自分に言い聞かせる様に呟き続けている夜空。
しかし、両手に構えた拳銃の震えはもはや引き金を引いたところで当たるかどうか怪しい。
(あ、この子……根はまともっぽいわね)
自分のしようとしていることに疑問を持っている。
色々なことを吹き込まれながら『本当にそれは正しいのか?』と考える頭は持っている。
しかし、それを主張して自分の考えを口にするほどの勇気は無いといったところか。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……こ、怖いぃ……」
いよいよ目を閉じて俯いてしまう夜空。
その目元からポロポロと涙が溢れ、美紗都の中でのこの少女の評価が確定した。
「夜空ちゃん、あなた……自分が正しいって自信持てる? 自分はいい子だってちゃんと胸を張れてるの?」
この少女は周囲の大人に押さえつけられているだけだ。
別に助け出してやる義理など無いが、この少女を自分達の手駒として支配出来ているつもりの馬鹿な大人達が気に入らない。
「わ、分かんない……でも、みんな……正義は悪を叩いていいって同じことばっかり言ってて……変。なんか、すっごく頭悪そうに見える。でも、ちょっとでも違って言うと……お前も悪かって、叩かれるんだもん。い、痛いの……嫌で……」
(ほら来た。自分で考えた訳でも無いことを全人類の常識みたいに大声で叫んで、違う切り口を示されるとキレ散らかして拒絶する奴。やっぱりどこにでもいるのね……)
いよいよ銃が落ち、夜空はえずく様に泣き始める。
きっと積もり積もったモノが溢れつつあるのだろう。
この世界の価値観ではさぞ異端扱いを受けて来たであろう夜空の感覚。
上手い言葉を掛けてやれる自信は無いが、せめてその震える身体を抱き寄せてあげたい。
そう思い、美紗都はゆっくりと夜空に近付く。
しかし、そこでようやく気が付いた。
華奢な夜空の身体を包む無骨なアーミージャケット。
ミリタリーの知識は乏しい美紗都でも、その胸元にいくつも据え付けられているのは銃の弾倉なんだろうと勝手に見ていたが、よく見るとそれは一見区切られている様に見えて実際はキャンプなどでお米を炊く際に使うと雰囲気が出る飯ごうの様な形をしたプレートが当てられており、そこから伸びるコードが夜空の左肩に据え付けられたボックスに繋がって小さな赤いランプの点滅が徐々に早くなり……。
「――――あ」
――ドゴォォォォンッッッ!!
指向性を持った爆発が廊下を塗り潰す様に呑み込みビル全体が震える。
そんな廊下の真下では数人の黒い兵士達が身を庇めていた。
第三陣の突入部隊。その反応を見る限り恐らくは無理矢理同行させたのであろう弱い少女を使って油断を誘い爆殺の囮とする。正気を疑う非道な行いだが兵士達に罪悪感の色はまるで無く、悪を一人屠ったことへの達成感に拳を握り喜び合っていた。
「よし……よし! よくやったわ、月見! あんたのことは勇敢な子だったって伝えておいてあげる!」
若い女性も混じっているのか、兵士達は互いに小さくタッチを交わし、階段から流れ落ちて来る爆煙が晴れるのを待って状況の確認へ向かう準備に入る。悪党を倒すということは命を懸けるに相応しい行為だと正当化している様だが、それを自分以外の者に強いていることへの疑問を抱いている様子が無い。
自分を正義と思う者は自分を悪とする者よりも残酷になれる。
その驕りが……その傲慢さが……二人目を目覚めさせることになった。
「く、そ……がぁ……」
少しずつ爆煙の量が減っていく中から聞こえる氷の様に冷たい罵声。
兵士達は思わず硬直してまず自分達の耳を疑った。
あり得ない。
夜空の肩に据え付けていた起爆用発信機にはカメラも搭載されており、ターゲットは無防備に近付いて来ているのを確認していた。爆薬と標的の距離はもうほんの1~2mまで近付いていて回避など不可能なはず。
しかし……。
「くそが……くそが、くそが、くそが……。あんたら……マジで、キモいよ」
漂う煙が乱れる。
そこにいたのはごく普通に階段を降りて来た少し身体のあちこちに煤汚れが付いただけの無傷な美紗都。
その片腕には気を失っているが特に目立った怪我をしている様子は無い夜空。
そして、もう片方の手には灰色と赤色が強烈に渦巻いているボーリングの玉ほどの球体が掴まれていた。
「……う、嘘でしょ。こんなの……夢、よ」
女性兵士がポツりと呟いた。無理も無い感想だろう。
防爆装備をしていても危うい至近距離での爆発で、何故寧ろ薄着なくらいの女子が傷一つ無い?
標的の健在をその目で確認しながらも、兵士達は思考がフリーズして棒立ちのままになっていた。
「分かった……今分かった……やっと分かったよ。私は……馬鹿が嫌いなんだ。自惚れた偽善者も嫌いだけど、そんなクソみたいな奴らにコロッと騙されて自分で導き出した訳でもないことを〝正しい〟と決めつけて『自分は正しいことをしている!』って思い込む馬鹿が、私は……嫌い。虫唾が走るわよ……くそ共」
これまで生きて来た中で一番汚い感情と言葉が自然と口を出る。
汚らわしくて不快な感覚。だが、そんな最悪な気分とは裏腹に身体の中では何かが上手い具合に噛み合う引っ掛かりが取れた様な心地良さが湧く。
今までずっともどかしく空回りしていた歯車がしっかりとはまった。
しかし、同時にもう一つ思うことがある。
(まぁ、私も結局はこいつらと同じだったんだろうな。親か友達か……どっちかに騙されてゴミか生ゴミかのどっちかで終わってた馬鹿な人生)
「ふふッ……くふッ! あはははッ!! 丁度いいわッ! 折角生き延びてちょっと力も貰えたんだもん! 元からお互い正義だなんて名乗れる立場じゃないんだし、馬鹿同士で殺し合ってどっちが少しだけ地球を綺麗に出来るか競いましょッ!? 加減とか馬鹿馬鹿しい! 元の善良な一般人にでも戻れるつもりでいたの私ぃッ!? 馬鹿馬鹿馬鹿! 今更そんなの無理に決まってるじゃん! そもそも私今未来から殺されようとしてんのよ!? 誰も助けてくれないって! あははははッ! やっと気付いたわこの馬鹿ぁッ!!」
敵を知り己を知ればなんとやら……パッと頭にそんな言葉が浮かんだ美紗都だったが、これはこういう場合に使うモノだろうか? いや、もうそんなこともどうでもいい。ここにいるのは馬鹿だけ。馬鹿と馬鹿が殺し合い、確実に世の中のためになる実に憂いの無い殺し合い。手足に籠る力の手応えが格段に良くなった。瞳の血色も今までになく濃く渦巻き、一人の少女が人間から人外へ変貌することを歓迎するかの様に輝く。
そして、紗々羅には否定されたが、美紗都は聞いた。
〝D・E〟の囁き……『やれることをやっちゃおうよ』と。
ナノマシンに善悪は関係ない。
人が持つ理性の枷を引き千切り、宿主の本能を目覚めさせて存分に力を行使させる。
〝D・E〟は人を惑わす悪魔だ。そしてその甘言に人が堕ちる瞬間……ここでそれを戒め心を引き戻すだけの徳を積んだ大人がいれば、美紗都にはまた違った未来があったかもしれない。
しかし、残念ならが今ここには小さな女の子を自爆兵にすることすら肯定出来る姑息な馬鹿とそれが良くないことだと分かっているのにもう考えるのも億劫になった馬鹿しかいない。
正論を持って文化的に解決出来る者など一人もいなかった…………。
美紗都達が避難した雑居ビルには黒ずくめで重武装を纏った見るからに特殊部隊という風体の集団が一斉に攻め込んで来ていた。顔を覆い言葉は発せず、それでいてハンドサインをしている様子もなく迅速にビルを登っていく黒い部隊。そして、あと二階分階段を昇れば屋上に辿り着くという所で、階段の踊り場に血瞳を輝かす和装の少女と会敵する。
「一体どういうご用件かしら? 生憎こっちはなんだかんだとボロボロでね、大人しく帰ってくれたらあんた達は明日の朝日を拝めるわよ?」
背中に担ぐ白木の大太刀に手をかけ寒気が走る微笑で警告する紗々羅。
ただ、そんな彼女の足下に滴る血とほんの微かに傾く紗々羅の肩のライン。
相手は負傷している。黒の集団はしばし動きを止めるが、次の瞬間一斉に手にしたアサルトライフルの銃口を向け――。
「――馬鹿」
二つ並んだ血色の輝線が波打つように階段を駆け下り黒い兵士達の間を滑り抜ける。
そして、まるで牡丹の花弁が落ちる様にコロンと数人の首が転げ落ち、一拍置いてその場はまるで赤いスクリンプラーが作動した様に天井、壁、床、全てが赤く塗り潰されてしまった。
「チッ、痛ぁ……踏み込む足が鈍るわ」
外骨格をフィルムの様に纏わせているのか、辺り一帯に撒き散らされる返り血は紗々羅の身体の表面を滑り落ちて彼女を汚さない。しかし、今の間合い詰めと居合でここに来る前に七緒に加勢して奏と戦った時受けた脚の傷がさらに開いたのか、着物の裾に内側から血の染みが一段と広がる。
「くッ! 妙にナノマシンの治癒が鈍いし、不自然に痛みも引かない。……あの女、一体何をくれたのよ?」
以前会った時とは全くの別人の様な動きになっていた奏に少々面食らい不覚にも一発攻撃を受けてしまったが、その一発に残るスリップダメージが異様に長く、さしもの紗々羅も現状長時間の戦闘は避けたかった。
「あっちは上手くやれてるかしら? あの子まだイマイチ殻が破れてないし、フォローした方がいいわよね?」
ようやく周囲の赤い噴水も収まり、紗々羅は〝殺そうとしてきたんだから殺されても文句を言うな〟と、動かなくなった屍を飛び石にして血の池を渡り、廊下を進みさらに下の階へ向かう階段の手摺りを滑り降りた。
すると……。
「こぉんのおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」
銃声や何かが壁に叩き付けられる様な激しい戦闘音を切り裂くなりふり構っていられないといった具合の少々品の無い叫び。紗々羅が現場に到着して覗き込むと、そこには先程紗々羅が仕留めた先行部隊に続く第二陣と思わしき黒い兵士達がズタボロになって叩き伏せられ、その真ん中に両手から白煙を上げる美紗都が立っていた。
「ハァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ! こ、こんな……奴らに! ハァ! ハァ! て、手こずって……ハァッ! ハァッ! わ、私……どうして、こんなに……ハァッ! ハァッ! 弱いのよ……」
銃器やプロテクターまで装備して完全武装の特殊部隊を素手で返り討ちにしていた美紗都が悔しそうに唇を噛み俯いていた。負傷している紗々羅に変わり、屋上から飛び降りてビルの中層から奇襲するという作戦もしっかり成功。
与えられた役割はきちんと果たした。しかし、それでも美紗都が早く追い付きたい司の戦場ではこんな戦果は何の意味も無い。
唇を噛み締め肩を震わせる美紗都。
それを見た紗々羅は内心『寧ろ勝てない方が普通だよ』と思いかけたが、今更一般側へ突き返すのも酷というモノ。
軽く咳払い気持ちを整え、人外側として招く様に声を掛ける。
「お疲れお疲れ~~。あらあら随分と荒々しい戦い方ですこと♪ ん? あ~あ~両手ボロボロじゃん。何? 防弾防刃っぽいプロテクターを拳だけで打ち抜いたの? あんた意外と脳筋? あ、いや、誰も死んでない……え、全員生け捕り? もぉ、器用なのか不器用なのかどっちな訳?」
血が滲む両手を握り締めて立ち尽くして震え泣く美紗都に近付く紗々羅。
その手を取り傷を見ると、見る見る内に傷は塞がり傷跡も残っていない。
(悪くない修正速度……身体の中の〝D・E〟の定着率に問題は無いはず。となると、やっぱり理由は……)
「うッ、うぅッ! なんでッ!? 前の側流世界では出来てたってルーツィアさんが言ってたのにぃ! 私が自分でちゃんと使いこなせなきゃ意味が無いのにぃッ! わ、私…やっぱり、センス……無いのかな……?」
もどかしさを吐き出す美紗都。
紗々羅の手を掴み返すその震えは、どうやら本人も相当悩んではいるものの完全に行き詰っている感じだった。
「はぁ……その点は心配しなくていいと思うわよ? 良善さんの作り出した力にセンスは必要無いの。『人によって使える使えないが分かれる力なんて二流だ』『誰にでも簡単に使える万能さは〝力〟という要素の絶対条件だ』良善さんがよく言ってたわ。つまり〝D・E〟は良善さん曰く完璧な力。その力に振り回されているだけの者や、せっかく手に入れたそれをより良いモノへ自分なりに磨こうとしない者は、良善さん的に生きる価値無し。逆にその力をしっかり道具として使いこなす者や自分なりの新しい解釈を生み出す者は大好き。私やルーツィアは前者、司様は後者の方ね」
「そ、それじゃあ私……そのうち良善さんに殺されちゃう? もう起源体の対策は済ませてるし、そのうち『目障りだ!』って……」
「殺ろされない殺ろされない……まぁ『なんでこんなことが出来ないんだ? 何か原因があるかもしれないから一度頭を開いて中を見てみようか』くらいはあり得……――あぁッ! 嘘! 嘘だから! 本気で絶望した顔しないでよ! 私が司様に怒られちゃうじゃん!」
目に涙を浮かべる美紗都を慌ててフォローする紗々羅。
基本的に良善は〝無能〟というだけで誰かを処すことは無い。
そこには、彼が超越者であるが故の価値観が関係していた。
「そもそもあの人からすれば自分以外は無能がデフォなのよ。そんな中であの人が手を下すのは〝無能なくせに頑張らない人〟か〝自分の作品に粋がって手を加えて寧ろ改悪した人〟前者に関しては信条で後者は好き嫌いの領分ね。あの人は〝向上〟を愛してるから、どんなに無能で役立たずだろうが頑張っていればとりあえず殺されはしないわよ。まぁ、興味の対象が続くかと言われたら流石にそこまでは保証出来ないけどね」
ポンポンと肩を叩き美紗都を落ち着ける紗々羅。
一旦はホッとした様子の美紗都だが、銃火器を向けられてもその固有能力が発揮出来ない理由は未だに分からない。
だが、そこで紗々羅が不意に美紗都の顎下へ太刀の柄を添えて親身なのか意地悪なのか判断の難しい笑みを浮かべて来た。
「せっかく出来た可愛い後輩だし……アドバイスしてあげようか?」
「え? あ、ぅ! ア、アドバイス?」
「うん。実は私はあんたが上手く能力が発揮出来ない理由に何となく心当たりがある」
「えッ!? それってどういう……――ひゃうッ!?」
紗々羅の握る柄が美紗都の顎を撫で喉を滑り降りて鎖骨の間を付く。
鞘に納められているとはいえ、人を細切れにする様な真剣を這わされて美紗都の血の気が引く。
「あんたは司様が取り込んだ〝D・E〟のさらにバージョンアップ版を取り込んでる。あんたは見てないでしょうけど、司様の最初はなかなかグロかったわよ? でも、それを元に良善さんが調整をしたことであんたはあまり酷い目には合わずに基礎能力を身に付けた。多分その辺の温さが原因……あんたの〝D・E〟は、まだ気合が入っていないのよ」
「き、気合……? で、でも……じゃあなんで前の側流世界では……」
「一過性のランハイじゃない? それじゃあエンジンが掛かり切れない。……美紗都、あんたは司様の傍に居たいとか役に立ちたいとかで能力を解放しようと頑張ってるでしょ? ふふッ! 違う違う……そういう自分を守る理由じゃダメ。それを持つなって訳ではないけど、必要なのはあんたの中の〝D・E〟に攻める理由を示すこと。いい、美紗都? 〝D・E〟は生きているわ。実際に喋ったりもう一人の自分みたいな反応が返って来たりはしないけど、あんたの中の〝D・E〟は、あんたの心の奥底から溢れ出るもっとも強い自身を主軸にした感情を具現化しようとするの」
「自身を……主軸に?」
「えぇ、他人からどう見えるかは関係ない。下らないことだろうが間抜けなことだろうが馬ッ鹿馬鹿しいことだろうが、本人がガチなら〝D・E〟は応える……良くも悪くもね。コツさえ掴んじゃえばあとは……――ん?」
ニヤニヤと含みのある笑みをしていた紗々羅の顔が締まり、美紗都の胸元を突いていた太刀を下ろして近くの壁に当てると静かに目を閉じる。
「……敵の増援。でも、人じゃない? 重い振動……――ッ!? まさかッ!」
目を見開き強張る表情をした紗々羅が突然太刀を抜き壁の切り刻む。
賽の目状にコンクリートが崩れ落ち、その穴から顔を覗かせ外を見ると……。
「やっばッ! 壁から離れて!」
「え? えッ!? ――きゃあッ!?」
――ドゴオオオオォォォォンッッ!!
紗々羅が美紗都を突き飛ばした刹那、二人がいた場所がビルの外側から抉り取られて周囲が爆散する。
「な、何ッ!? 今の何ッ!?」
「くっそぉッ! 戦車よ戦車ぁッ! 側流世界だからって今回もまぁ無茶苦茶やるわね! 不味い! 今屋上を狙われたら曉燕達はともかくこの世界の司様と円はひとたまりもないッ! ――うぐッ!?」
――ドゴオオオオォォォォンッッ!!
躊躇いも無く放たれる第二射。
防衛施設でも無いただの民間ビル。
掠らされているとはいえ、あと一発でも喰らえばあっさり倒壊してしまうかもしれない。
「チッ! 舐めてるわねぇッ! 美紗都! 屋上に行って何とかルーツィアを叩き起こしてきなさいッ! 私が時間を稼ぐッ!」
「え!? じ、時間を稼ぐって……さ、紗々羅ちゃんッ!」
削られたビルから飛び降りる紗々羅。
するとすぐさま今度は機関銃を思わせる金切り音が響き、先ほどの突入部隊の何倍もの黒い兵士達が現れ、そこに紗々羅が斬りかかりビルの周囲はあっという間に破壊と戦火に包まれる。
「こ、こんなの……――ひぃッ!?」
超越者の戦いよりはいくらか現実的。
だが、それが返ってまだ常人寄りの美紗都には余計に生々しく見えて気持ち悪かった。
紗々羅が建物の影へ駆け込むとすぐに悲鳴が上がり、そこへ銃火器が向き切るよりも先に刀身にべったりと血糊をこびり付けた紗々羅が戻って来て、救援に向かう小隊がバラバラに刻まれる。
装甲車が体当たりを仕掛けると足の怪我で避ける方がしんどいと言わんばかりに上段構えからの一刀で装甲車は中の搭乗員達ごと真っ二つに割かれて紗々羅の背後で爆散する。
あまりにも簡単に人を殺す紗々羅。そして、美紗都が倒したまだ生きていたはずの兵士達が何一つ警告も無いまま放たれた砲撃で身体を引き裂かれて床や壁に血染みとなっている光景。
あまりにも簡単に目の前に広がる〝死〟が美紗都の瞳に焼け付いていく。
「ハァ……ハァ……ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ! は、はは……私、やっぱりまだ、何にも……分かってなかったんだ」
心臓が早鐘を打つ。
この兵士達の正体が何なのかはまだはっきりしていない。
使い捨て戦闘兵にされた元〝Answers,Twelve〟傘下の構成員か?
はたまた、この側流世界の住人達を言葉巧みに扇動しているのか?
ただ、どちらであっても……。
「私らを殺したいなら……自分達が攻めて来なさいよ……」
気に入らない。
謂れの無い未来の罪で殺そうとして来ただけでも腹立たしいというのに、どうにも敵の動きには姑息さを感じる。
上役がいるのは明らかなのにその者達はまるでこちらに姿を見せず、圧倒的に質で劣る者を物量にモノを言わせてぶつけ続け、あわよくばという目論見が透けて見える。
「自分達以外は消耗品? 偽善者も極まれりね……司様が怒り散らしているのも納得だわ」
気に入らない。
手段もそうだが、こうして千切れ飛んで死んでいく者がいる中でその無念さに思いを馳せることも無いのであろう〝ロータス〟の悠々さが美紗都には看過し切れない。
「……ん?」
足下の血だまりから光の粒が湧き上がる。
どうやらこの黒い兵士達は誑かされたこの側流世界の住人達であったらしい。
そして、ものの数秒でバラバラになった肉塊は綺麗に消え去り〝ロータス〟の血の色を問いたくなる様な冷酷な行為の痕跡は何も残らなかった。
「隠蔽もバッチリ……別にこの世界ごと消せるし、そもそも他の人に見られるはずもないだろうに……自分達の正当性を守るための完璧主義? ――う、ぐぅッ! 反吐が出るわよッ!」
前髪を握り締め歯を食い縛る美紗都。
身体が熱い……血管の中で血液が摩擦熱を起こしているかの様だ。
先の世界よりもより死が鮮明であるせいか、はたまた美紗都がこれまで生きて来た環境に近しい世界での惨劇のせいか。
徐々にだが、確実に体内で何かが起きている。
しかし……。
「くッ! でも、まずはとりあえず屋上に行かないと……」
忌々しいが今は受け身。
それにこの世界の司と円を傷付ける訳にはいかない。
美紗都は紗々羅の指示通り、屋上へと向かおうとしたが、紗々羅が来た方へ向いた瞬間背中に弱々しい殺気を感じ取る。
「――うぐッ!?」
――ダァァァンッッ!!
身体を反らせて寸前で回避。
先程まで戦った兵士達が持つ銃器に比べると大分威力の低いモノでこれなら避ける必要も無かったかと気付いたのは避け切ったあと。ただ、その反り回って見た背後の弾丸の出所には廊下の奥で壁にめり込む弾丸よりも遥かに強いインパクトがあった。
「あッ! あぁぁッ! よ、避けられた!? ど、どど……どうしようどうしようどうしょう!」
「え? ……こ、子ども?」
美紗都の視線の先では両手で握ってもその小銃の衝撃に耐えられなかったのか、尻餅を付いて慌てふためく少女が一人。
千紗と同じくらいの小柄さに黒髪ショートが無垢さを感じさせる大人しそうな印象。ただ、その可愛らしい見栄えと顔立ちにはあまりに不釣り合いな全身を包む黒いアーマーベストやプロテクター。流石にサイズが無かったのか所々をバンドで無理矢理止めているが、そもそもそんな物騒なモノを身に纏うこと自体が間違っているいたいけさだ。
「あ、あなた……どうして、こんな所に。いや、そんなことよりもあなた今……私のことを銃で撃ったわね?」
「――ひぃッ!?」
問い質すまでもないことをあえて口にする……もちろんわざとだ。『そちらが先に殺そうとして来たのだから逆に殺されても文句は無いわよね?』という雰囲気で睨みつけると、少女は分かりやすいほど顔を青褪めさせて震え出した。
3~4mほどの距離だが、カチカチと震え鳴る歯の音が美紗都の耳まで聞こえて両目からは大粒の涙が溢れていた。
(こういう状況に慣れてるって訳ではなさそうね。〝ロータス〟が嗾けたの? いや、こんな女の子を戦わせたところで戦力になんて……あぁ、あえてね。とにかく物量……それに加えて、こういう子を混ぜておくと油断や隙になるかもと……腐ってるわね)
この側流世界に来てすぐに見た過剰正義の世界観。
悪党にはどんな仕打ちをしてもいい。そしてその中でも〝Answers,Twelve〟という存在は最悪であり、その巨悪を討つためには全ての者が一丸となるのが当然であり、それに協力しないというのはその者も悪である証拠だ。
このか弱い少女もそんな妄言を疑いも無く受け入れた口か、それとも同調圧力に屈しただけか。
美紗都はそれが知りたくて一歩少女に歩み寄る。
「……あなた、名前は?」
無意味に手首を回したら指を閉じたり開いたりして〝いつでも殺せるぞ〟感を出しつつ美紗都は少女を見る。
本当はこんな悠長なことをしている場合ではない。
しかし、恐らくこのあとこの少女に聞く質問に返答が来れば、今自分の中で起きている何かに新たな刺激が加わり何らかの答えが出る。
〝何か〟〝何らか〟何一つ明確なことが無いのに美紗都は何故か漠然と確信していた。
「あ、あぁ……う、ぅぅ……」
「いきなり頭から齧りつく化物みたいに見ないでよ……私は凪梨美紗都。お名前を教えてくれないとこっちはあなたをなんて呼んだらいいか分からないわ」
もう圧を掛けるまでもない。
美紗都は表情から少し険を抜いた
すると……。
「あ、ぅ……つ、月見……夜空……」
一歩前進。
桜の花びらの様な小さな唇をまごつかせながら、少女――夜空はようやく自分の名前を名乗ってくれた。
「へぇ……なかなか詩的ないい名前じゃない。さて、夜空ちゃん。あなたは――」
――カチャッ!
「――……なんで、そうなるかな?」
降ろされていた銃口が再び美紗都に向く。
かなり穏やかに話しかけていたはずだ。
相手は可愛らしい女の子、下手に含むこともなく自然な笑顔で優しく語り掛けれていたはず。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……んくッ!」
向けられた銃先は震え、見ているだけで夜空の内から溢れる恐怖が伺える。
だが、そうまでして勇気を振り絞っている意味が美紗都には理解出来ない。
「一体何なの、夜空ちゃん。お姉さん……あなたに何か恨みでも持たれてるのかな?」
生憎、初対面でいきなり殺意を向けられることにはもう慣れてしまっていて、そんな自分に何故か美紗都は少し笑ってしまった。
「な、なんで……笑ってるの! ご、極悪人なんでしょッ!? 一杯色んな人を苦しめてる悪い人なんでしょッ!?」
(あぁ……やっぱりこの子もそういう口なのね)
この世界の異様なほど極端化した勧善懲悪。
やはりこの少女もその改変に染められてしまったらしい。
「お姉さん達を撃つのは正義なんだもんッ! 小さい頃からずっと『そうしないといけない!』って教えられて来たもん! こ、これが正し……――ひぃッ!?」
美紗都の目が少し吊り上がり、ただでさえ震えていた夜空が竦み上がる。
夜空が言った〝小さい頃からずっと〟という言葉が妙に引っ掛かった。
(私達と〝ロータス〟がこの世界に来たタイミングは時間軸がズレてるっぽいのはこの世界の司様が拷問されてた感じから分かるけど……小さい頃からって何? その言い方だと半年とか一年とかそんなレベルの話じゃないよね? 記憶を弄られた? 司様の時と一緒の方法? いや、多分ここに来てから見て来たモノを考えれば、きっとこの側流世界そのものを自分達の都合の良い様に造り変えたんだわ)
となると、ここでいくら美紗都があれやこれやと言ったところでその心に積み重なって来た言葉の量で敵うはずが無い。
いくら説得しようが夜空からすれは悪党の言い訳にしかならない。
ただ、一体どうしたものかと美紗都が言葉を選んでいると……。
「で、出来る……出来……る、もん……ッ! さ、さっきだって……も、もう……」
自分に言い聞かせる様に呟き続けている夜空。
しかし、両手に構えた拳銃の震えはもはや引き金を引いたところで当たるかどうか怪しい。
(あ、この子……根はまともっぽいわね)
自分のしようとしていることに疑問を持っている。
色々なことを吹き込まれながら『本当にそれは正しいのか?』と考える頭は持っている。
しかし、それを主張して自分の考えを口にするほどの勇気は無いといったところか。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……こ、怖いぃ……」
いよいよ目を閉じて俯いてしまう夜空。
その目元からポロポロと涙が溢れ、美紗都の中でのこの少女の評価が確定した。
「夜空ちゃん、あなた……自分が正しいって自信持てる? 自分はいい子だってちゃんと胸を張れてるの?」
この少女は周囲の大人に押さえつけられているだけだ。
別に助け出してやる義理など無いが、この少女を自分達の手駒として支配出来ているつもりの馬鹿な大人達が気に入らない。
「わ、分かんない……でも、みんな……正義は悪を叩いていいって同じことばっかり言ってて……変。なんか、すっごく頭悪そうに見える。でも、ちょっとでも違って言うと……お前も悪かって、叩かれるんだもん。い、痛いの……嫌で……」
(ほら来た。自分で考えた訳でも無いことを全人類の常識みたいに大声で叫んで、違う切り口を示されるとキレ散らかして拒絶する奴。やっぱりどこにでもいるのね……)
いよいよ銃が落ち、夜空はえずく様に泣き始める。
きっと積もり積もったモノが溢れつつあるのだろう。
この世界の価値観ではさぞ異端扱いを受けて来たであろう夜空の感覚。
上手い言葉を掛けてやれる自信は無いが、せめてその震える身体を抱き寄せてあげたい。
そう思い、美紗都はゆっくりと夜空に近付く。
しかし、そこでようやく気が付いた。
華奢な夜空の身体を包む無骨なアーミージャケット。
ミリタリーの知識は乏しい美紗都でも、その胸元にいくつも据え付けられているのは銃の弾倉なんだろうと勝手に見ていたが、よく見るとそれは一見区切られている様に見えて実際はキャンプなどでお米を炊く際に使うと雰囲気が出る飯ごうの様な形をしたプレートが当てられており、そこから伸びるコードが夜空の左肩に据え付けられたボックスに繋がって小さな赤いランプの点滅が徐々に早くなり……。
「――――あ」
――ドゴォォォォンッッッ!!
指向性を持った爆発が廊下を塗り潰す様に呑み込みビル全体が震える。
そんな廊下の真下では数人の黒い兵士達が身を庇めていた。
第三陣の突入部隊。その反応を見る限り恐らくは無理矢理同行させたのであろう弱い少女を使って油断を誘い爆殺の囮とする。正気を疑う非道な行いだが兵士達に罪悪感の色はまるで無く、悪を一人屠ったことへの達成感に拳を握り喜び合っていた。
「よし……よし! よくやったわ、月見! あんたのことは勇敢な子だったって伝えておいてあげる!」
若い女性も混じっているのか、兵士達は互いに小さくタッチを交わし、階段から流れ落ちて来る爆煙が晴れるのを待って状況の確認へ向かう準備に入る。悪党を倒すということは命を懸けるに相応しい行為だと正当化している様だが、それを自分以外の者に強いていることへの疑問を抱いている様子が無い。
自分を正義と思う者は自分を悪とする者よりも残酷になれる。
その驕りが……その傲慢さが……二人目を目覚めさせることになった。
「く、そ……がぁ……」
少しずつ爆煙の量が減っていく中から聞こえる氷の様に冷たい罵声。
兵士達は思わず硬直してまず自分達の耳を疑った。
あり得ない。
夜空の肩に据え付けていた起爆用発信機にはカメラも搭載されており、ターゲットは無防備に近付いて来ているのを確認していた。爆薬と標的の距離はもうほんの1~2mまで近付いていて回避など不可能なはず。
しかし……。
「くそが……くそが、くそが、くそが……。あんたら……マジで、キモいよ」
漂う煙が乱れる。
そこにいたのはごく普通に階段を降りて来た少し身体のあちこちに煤汚れが付いただけの無傷な美紗都。
その片腕には気を失っているが特に目立った怪我をしている様子は無い夜空。
そして、もう片方の手には灰色と赤色が強烈に渦巻いているボーリングの玉ほどの球体が掴まれていた。
「……う、嘘でしょ。こんなの……夢、よ」
女性兵士がポツりと呟いた。無理も無い感想だろう。
防爆装備をしていても危うい至近距離での爆発で、何故寧ろ薄着なくらいの女子が傷一つ無い?
標的の健在をその目で確認しながらも、兵士達は思考がフリーズして棒立ちのままになっていた。
「分かった……今分かった……やっと分かったよ。私は……馬鹿が嫌いなんだ。自惚れた偽善者も嫌いだけど、そんなクソみたいな奴らにコロッと騙されて自分で導き出した訳でもないことを〝正しい〟と決めつけて『自分は正しいことをしている!』って思い込む馬鹿が、私は……嫌い。虫唾が走るわよ……くそ共」
これまで生きて来た中で一番汚い感情と言葉が自然と口を出る。
汚らわしくて不快な感覚。だが、そんな最悪な気分とは裏腹に身体の中では何かが上手い具合に噛み合う引っ掛かりが取れた様な心地良さが湧く。
今までずっともどかしく空回りしていた歯車がしっかりとはまった。
しかし、同時にもう一つ思うことがある。
(まぁ、私も結局はこいつらと同じだったんだろうな。親か友達か……どっちかに騙されてゴミか生ゴミかのどっちかで終わってた馬鹿な人生)
「ふふッ……くふッ! あはははッ!! 丁度いいわッ! 折角生き延びてちょっと力も貰えたんだもん! 元からお互い正義だなんて名乗れる立場じゃないんだし、馬鹿同士で殺し合ってどっちが少しだけ地球を綺麗に出来るか競いましょッ!? 加減とか馬鹿馬鹿しい! 元の善良な一般人にでも戻れるつもりでいたの私ぃッ!? 馬鹿馬鹿馬鹿! 今更そんなの無理に決まってるじゃん! そもそも私今未来から殺されようとしてんのよ!? 誰も助けてくれないって! あははははッ! やっと気付いたわこの馬鹿ぁッ!!」
敵を知り己を知ればなんとやら……パッと頭にそんな言葉が浮かんだ美紗都だったが、これはこういう場合に使うモノだろうか? いや、もうそんなこともどうでもいい。ここにいるのは馬鹿だけ。馬鹿と馬鹿が殺し合い、確実に世の中のためになる実に憂いの無い殺し合い。手足に籠る力の手応えが格段に良くなった。瞳の血色も今までになく濃く渦巻き、一人の少女が人間から人外へ変貌することを歓迎するかの様に輝く。
そして、紗々羅には否定されたが、美紗都は聞いた。
〝D・E〟の囁き……『やれることをやっちゃおうよ』と。
ナノマシンに善悪は関係ない。
人が持つ理性の枷を引き千切り、宿主の本能を目覚めさせて存分に力を行使させる。
〝D・E〟は人を惑わす悪魔だ。そしてその甘言に人が堕ちる瞬間……ここでそれを戒め心を引き戻すだけの徳を積んだ大人がいれば、美紗都にはまた違った未来があったかもしれない。
しかし、残念ならが今ここには小さな女の子を自爆兵にすることすら肯定出来る姑息な馬鹿とそれが良くないことだと分かっているのにもう考えるのも億劫になった馬鹿しかいない。
正論を持って文化的に解決出来る者など一人もいなかった…………。
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