愚者の門番、賢者の聖杯

春森夢花

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戻そう。

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その叫び声を不思議そうにゆら、とジモンの前にいた化け物は顔を揺らしてから、にい、と大きく笑った。

ジモンの悲鳴が、止んだ。あまりの恐怖に、声を出すことも忘れてただ、その化け物と対峙していた。

化け物が言う。

「こぼしたな、ジモン。あれだけこぼすな、と神が言ったのに」
「ひい」
「もどそう」
「た、頼む、頼む、なんでもやる、許してくれ」
「なにも、いらないのだ。神は全てを持っている」
「あ……、ああ……」
「もどそう、ジモン」

そう言うと化け物たちが一斉に動き出した。白い触手のような化け物の一つが、頭をジモンの口に突っ込んだ。それを必死で顔を振って出そうとするジモンの顔が赤黒くなる。なにか、液体がジモンの口から漏れ出ている。えづきながらジモンは抵抗していたが、やがて泣きながら喉をごくん、と嚥下した。ごく、ごく、ごく。

(ああ、そうか。こいつらはさっきジモンが出した液体をもう一度ジモンの体内に戻そうとしてやがるんだ)

何の為にかはさっぱり解らなかった。ただ、四肢の自由を奪われ、口には長い胴体のついた白い饅頭を突っ込まれている男を見ているのは最高に気味の悪い絵面えづらだったが俺はその場を動かなかった。動けなかったと言っても良い。

動いたら、駄目だ。

俺がここから動けば、同じようになるかもしれない。

そんな思いが頭から離れず、とにかく自分が持っている聖杯を揺らさないようにしながらジモンを見つめているしかなかった。やがて、ジモンの体を化け物共は持ち上げる。俺と裸のジモンが対峙している。ご丁寧にジモンはМ字開脚だ。俺には男のチンポを見て喜ぶ趣味はないからうんざりしていると、急にジモンの顔が消えた。ぐん、と勢いよくジモンの上半身が床に押し付けられ、俺から見えているのはジモンの下半身だけになった。よく鍛えられた筋肉がついた足、それにどっしりとしたチンポと毛深い陰毛が俺の視界に入ってくる。そのチンポはジモンが暴れる度にぶらぶら、と揺れていた。なにをする気なのだ、と思って見ていると、左足に巻き付いていた化け物と右足に巻き付ていた化け物の頭がつつ……、とジモンの性器の近くにやってきた。

まず。左足に巻き付いていた化け物が、大きく口を開けた。それは頭が半分に割れるのではないか、と言うくらいの大きな、口だ。そしてそいつはいきなりジモンのチンポを飲み込んだ。

「んお……ッ!」

ジモンが呻く中、そいつは胴体を揺らしながらジモンのチンポを飲み込んだまま、ダンスをするように上下に揺れ始める。愛撫を施しているのか。その動きを始める相棒に対抗しはじめたのか、右足に巻き付いていた化け物。こいつの頭部がいきなり細長く変形した。そして、ゆっくりとジモンの臀部へと向かっていく。まさか、と思った。だが、そうかもしれない、とも思った。なぜならジモンは尻の穴から何かを噴き出したからだ。大便ではない。神の酒を、だ。それは、誰かに尻の中になみなみと入れられたからでしかない。

神様風に言うならば【たらふく】飲んだのだ。

びくびく、と足を痙攣させるジモンの体にその……直接的な表現をすれば、男性器に限りなく近くなった化け物の頭部がジモンの尻穴に近づいて、そして、ぐぐぐ、と中に侵入はいりはじめた。

「うんんーーー!!」

その感触に気が付いたのか、これまで以上にジモンが暴れはじめるが、化け物が尻穴に侵入する速度は変わらなかった。ぐぐぐ、ぐずず、とゆっくりだが確実にジモンの中に潜り込み、やがては男性器の形をした部分は全てジモンのアナルに飲み込まれてしまった。そして、次の瞬間には化け物が侵入した所から半分ほど、細長い頭部が出てきて、勢いよく、またジモンの中に押し入った。ぱちゅん、ぱちゅん、と嫌な音がする。そしてはじめは嫌がって暴れていたジモンの体が、震え、そしてその化け物に犯されるタイミングで揺れだすのにさほど時間はかからなかった。そして、聞きたくはないが、喘ぎ声が聞こえる。何かを飲まされて、口を塞がれているのでくぐもっているが、確実にジモンは感じていたし、体に見合った奴の大きな逸物が化け物に飲み込まれたままだと言うのに、大きく、そして勃ちあがっていくのが解った。

「ん……っ、んっ……!んうううー、うう……!」

腰を揺らしながら身悶える奴の体を俺は無理やり見せつけられている。興奮などはしなかった。当然だ、俺は男に興味がない。ただ、不快だと思った。これは、一体何の為に行われているのか。まるで一種の性交だ。ただただ意味が解らなかった。そして、くねり、悶えるジモンが大きく跳ねた、と思った瞬間に、ガクリ……と体の力が抜け、奴は気を失った。

そして俺はジモンの尻穴から、ポタリ、と赤い色水が滴るのを、見た。

化け物たちは気絶したジモンを床に降ろすと、ジモンの口に入っていた化け物、性器を咥えていた化け物、がしゅるる、とジモンから離れてまた床へと帰っていった。ただ、両手に巻き付いていた化け物と、ジモンのアナルに顔を突っ込んでいる化け物はまだいたのだ。

そして右手に巻き付いて化け物が、ジモンのアナルの方まで行くと、胴体だけが見えている自分の仲間の胴体に噛みつき、食いちぎった。だが、血も、なにもなかった。食いちぎられた胴体は床に溶け、その化け物もすう……、と床に入っていった。残ったのは左手に巻き付いていた化け物だけだ。正確に言うと……、ジモンの尻穴にはみちり、と男性器の形をした化け物の頭部が残っていた。

「中に、戻した」

左手に巻き付いていた化け物が、歯を剥きだして、笑った。あきらかに俺に向けて話している。俺が曖昧に頷くと、化け物はジモンの体から離れ、俺の方へとスッ……とやってくる。やめろ、来るなと言う声が喉奥まで出かかっていたが、なんとか噛み殺した。その間にも化け物は俺のすぐ近くまでやってきていて、ぬ……、と俺の顔まで頭部を近づけると、かぱり、と口を開けた。

その、口の中は。

空洞だった。

真っ黒だった。

なにもなかった。

生き物、ではない。

俺の、およびもつかない、化け物だ。

その化け物が告げる。
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