花の嵐

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数年前に閉鎖された工場は特に寂れることもなく、何なら明日からでも稼働できそうな景観を保っていた。
だが鉄で作られた正面の門扉は錆びつき、勝手に開けられないように鎖が巻かれ南京錠で施錠されている。
関係者以外立ち入り禁止の看板があるものの、防犯カメラの類があるようには見えず、この国がいかに平和であるのかを象徴しているようだと”佐野”は思った。
なぜなら自分が居た国、巡ってきた国でこれだけの立派な家屋が何年も放置されていれば、浮浪者が占拠し住みついてしまうからだ。
”佐野”はそんなことを考えながら迷うことなく門扉に足を掛けると、慣れた様子でそこを飛び越えた。ガシャガシャと大きな音が鳴り響いたが、特に気にする素振りも見せなかった。
とりあえずという感じで、門扉の向こう側に降りたときだけ周りを見渡してみたが、工場地帯ということもあって辺りは静かなものだ。
門扉から数十メートル離れたところにある倉庫はシャッターが閉まっていたが、その隣の扉が僅かに開いていて真新しい靴跡が残っている。それをポケットから取り出したライトで確認し、一人だけかと呆れたように息を吐いた。
トンっとドアを押すと、少しだけ小さな音を出して易々と開く。物怖じせず中に入ると、外から見るよりも中は広く元が鐵工所か何かなのか使われなくなった天井クレーンだけが虚しく残っていた。
「我想见你。あなたに会いたい。よく俺の番号がわかったな」
工場の真ん中辺りに居る男を見て”佐野”が言うと、男、千虎はひらひらと手を振った。そして手にしたスイッチを押すと、工場内の水銀灯がゆっくりと灯りを灯し出した。
「今は一般人でも情報を買える時代なんですよね。ちょっと危ないよね、そういうの」
千虎はにっこりと笑うと、車のボンネットに腰を掛けた。ナンバーを見て、レンタカーだと分かる。
「で、俺に会いたいってどういうことだ?わざわざ、危険を冒してまで」
「危険なの?」
千虎はやべぇと笑った。一緒に居た時間はそんなに長いものではなかったが、少ない会話の中、馬鹿なタイプではないと思っていたのは見当違いか。
「俺の番号を調べたということは、何か…知っただろ」
「うーん、そうだなぁ。あ、佐野って偽名でしょ?名前なんていうの?実はさ、あんたがバックれてから俺のとこに鬼塚組の人が来て色々と聞かれてさ。で、色々と教えてくれたの。あんたが佐野じゃない他の誰かってことと、ここんとこ騒がしい仁流会の襲撃犯だってこと」
「…ふん、で、どうしようっていうんだ?」
リスキーなことに首を突っ込むタイプではないと思っていたが、こうなってしまったからには処分するしかない。しかし、始末するのは簡単でも慣れない国での処理には困るなと”佐野”は思った。
「鬼塚組の人たちに聞かれた時、俺、黙っててあげたんだよ。あんたが日本人じゃないことも、変な荷物を紛れ込ませたことも」
「知ってたって言うのか?」
「そうだよ?あ、日本人じゃないなっていうのは、アクセント。あんたもバレないようにあまり喋らなかったみたいだけど、日本語ってちょっと発音しにくいでしょ。お疲れ様でしたとかは、ちょっと苦手でしょ?少し慎重に喋るもんね、そこだけは」
「荷物は…?」
「あのね、自分が運ぶ荷物くらい全部覚えてるもんでしょ。紛れたら分かるよ。何かなーとは思ってたけど、まさか爆弾とはねぇ」
大袈裟なジャスチャーで両手を広げて肩を竦める。そして、千虎は徐に掌を開いて見せた。
「何だ」
「とりま、5本」
「とりま?」
「ああ、とりあえずってこと」
「金か…。愚蠢」
「え?なに?今の何語?日本語で言ってよ」
千虎が腰を上げて一歩前に出るのと同時に、ボンネットに何かが降ってきた。千虎が声にならぬ声を上げて飛び退くと、フードを被ったジーンズ姿の王暁がボンネットから千虎を見下ろしていた。
千虎が上を見上げると天井クレーンが丁度、真上にあった。あそこから降ってきたのかと思わず息を呑んだ。
「愚蠢、間抜けって意味だよ」
深く被ったフードから見えた口元がニヤリと笑った。千虎は思わず後退る。王暁はボンネットからふわりと音もなく降りると、背中に下げていた刀の柄を握り、ゆっくりと引き抜いた。
”佐野”は近くに残されていた錆び付いた鉄柱の汚れを手で払うと、そこに腰掛けた。
「細切れにするなよ」
かき集めるのが面倒だ。そんな言葉を王暁が聞いているのかは分からないが、千虎は血の気の引いた顔をして”細切れ?”と呟いていた。
「あの人、日本に来てから情緒不安定なんだよね。日本語ばっかり喋るし。帰りたくないのかも…俺も、日本は気に入ってるから別に居てもいいけど」
王暁は世間話でもするかのように軽く話しながら、綺麗な飾りのついた牛尾刀を片手で曲芸師のように回す。千虎はその切っ先がいつ自分の方へ飛んでくるのか気が気ではなく、王暁の言葉は耳に入ってこなかった。
「でも、まずは…君だな」
トンっと刃先を指に当てて牛尾刀の向きを変えると、一瞬で柄を握り千虎を目掛けて刃先を進めた。千虎は慌ててしゃがみ身体を転がす。
その動きに王暁が口笛を鳴らした。
「反射神経いいなぁ」
「待って、ちょっと、これは違う!!」
迫る王暁から逃げるが、身体が車に当たった。ハッとして辺りを見渡すが、出口は”佐野”が居る上に遠い。そもそも簡単にあそこまで行けるとも思えない。
逃げ場なしの状況の中、王暁が牛尾刀を振り上げると”佐野”の背後から爆音が聞こえた。唸るエンジン音に”佐野”が腰を上げると同時にシャッターが破られ、車が突っ込んできた。現れた車はポルシェ911 turbo Sだ。
「王暁!!!」
”佐野”が叫ぶのを合図のようにポルシェは後輪を滑らせながら回転した。自分の方へ向かってくる車を避けるようにして身体を捻らせ飛んだ王暁の視界に、ポルシェの助手席から銀の髪の男が飛び出すのが見えた。車の回転に合わせてドアを開き、飛び出てきたのだ。
王暁はニヤリと笑うと、着地と同時に自分へ振り下ろされた日本刀を牛尾刀で受けた。
死神スゥシェン…」
王暁が中国語で発音すると、鷹千穗の銀の瞳がスッと細くなった。そして王暁の腹を蹴飛ばすと、二人して弾かれるようにして離れた。
王暁は身体を滑らすようにして後ろへ下がり、その衝撃で被っていたパーカーが脱げ、その顔を見せた。
「遅い!!早く出てきてよ!マジでヤバイ!俺、死んでたかもじゃん!」
「喚くな、どあほう」
ポルシェから降りた心は王暁を見てニヤリと笑った。その心を見た王暁は対峙する鷹千穗に目をやりながら、笑みを溢した。
「は、ははは…!!生きてた…すごい、生きてた!」
王暁は牛尾刀を肩に当てると声を上げて笑った。千虎はそれを不気味そうに見ていたが、ようやく落ち着いたのか顔を上げて牛尾刀の切っ先を鷹千穗に向けた。
「獲物は多ければ多いほどいい。まずはお前」
「王暁!待て!」
”佐野”が叫んだが王暁は首を振った。切っ先を向けられた鷹千穗は手にしていた日本刀を一度、鞘に戻した。
そして静かに目を閉じると、ゆっくりと目蓋を開いた。その銀の目が異様な鋭さを見せ、千虎は息を呑んだ。これがあの、何の感情も見せずにぼんやりとしていた鷹千穗なのか…。
「いや、ないわ」
張り詰めた空気を破るように心が妙なことを言うので、千虎が何が?と心を見た。見るとその視線は鷹千穗に向けられていて、再度、ないわと呟いた。
心が視線を送る鷹千穗は、いつもの着物姿ではなく黒のカーゴパンツに黒のTシャツという出立だ。更に銀髪も後ろで縛られている。
見慣れないにしてもこれはない。組の連中、全会一致で言うだろう、”いや、これはない”と。
「え?なんで?かっけーじゃん。あれデッドストックで作ったフィールドカーゴパンツだよ?米軍もご愛用の動きやすさ、折り紙付き!鷹千穗くんって腰が細いからサイズ探すの苦労したんだから!それに、戦闘するなら髪の毛も縛った方が絶対にいい!あー、でも、靴だけはね…履いてくれなかった」
鷹千穗が動きやすいようにと上から下までコーディネートしたのは、もちろん千虎だ。機能性があり、動きやすく丈夫で戦闘向きなのものを鷹千穗にとは言ったものの…。
「アーミーブーツなんか履いたらもっとないわ。アホか」
心は呆れたように言うが、それを履いて完璧なのにと思う。今の鷹千穗の足下はコンバースのスニーカーだ。そのせいで足下だけ別人な感じがして千虎は肩を落とした。
「ま、おしゃべりはええわ。さて、見ものやな。死神と死の神、Thanatos。勝つのはどっちやろうな」
心が言うのが合図のように、鷹千穗が刀を抜き前に飛び出た。二人が動き出すと咄嗟に心は千虎の腕を引っ張り、車の後ろ側へと移動した。
「うっかり斬り殺されても文句言われへんぞ」
言う通り、鷹千穗は構わず刀を振るい、王暁は牛尾刀を振り上げた。二つの刃が何度も合わさり、弾かれるように離れる。
王暁は牛尾刀を振りかざし鷹千穗の気を引きながら、同時に足蹴りや拳を向けてくる。卓越した戦闘スタイルだと思うが、その動き一つ一つを防御する鷹千穗は遥かに凄いと生唾を吞み込んだ。
「何、あれ、本当にこれ現実!?」
「現実やな。あいつ、あれが殺し屋Thanatos」
「Thanatos!?殺し屋!?何それ!映画!?」
「あの喜怒哀楽が欠けた死神が、殺したくて仕方がないのがあのThanatos」
「殺したくてって…」
「死神の”全て”を奪おうとしたあいつが悪い」
心はそう言うと”佐野”を見た。”佐野”は二人の戦いの行方から目が離せないという感じだ。
昨今、心が言うのも何だが刀を振り回している人間は裏でも数が少ない。それは諸外国へ行けばなおのこと、銃器のような優れた武器があるのだからそうだろう。
そもそも、合法で誰でも手にすることも扱うことも出来るような国であれば、銃器を選ぶのは当然のこと。とはいえ極道者である心やコマとして使われる鷹千穗も、それを手に入れることは容易い。
だが心も鷹千穗も滅多にそれを使わないのは、命を賭す戦いは己の手で行えという時代錯誤の教えを受けて育ったからだ。彪鷹もまた然り。
「妖怪が死神を作ったんや」
「でも、Thanatosも死神じゃん」
「Thanatosは魂を冥界へ運ぶ役割やろうが。死神は死を司る神やぞ。ま、諸説あるけどな…。俺が見る限り、勝つのは死神」
心が断言した通り、王暁は違和感を感じ始めていた。牛尾刀と日本刀。同じ刀でも確実に斬ることを意識して作られ、尚且つ斬撃の威力があり強度も増している牛尾刀の方が有利だと思っていた。
だが鷹千穗に届いたと思った切っ先は、既のところで交わされ、それどころか思いも寄らないところから刀が振られ王暁を襲う。拳も蹴りも、まるで見透かされたように全て交わされ防御されるのだ。
鷹千穗は動きが読めない上に表情がない。それどころか疲れを微塵も見せず息も上がらず、悠々と戦っているようにさえ見える。そしてまるで造形物にも見える美しい銀の目は、王暁の攻撃に歪むこともなければ迷うこともない。
その全てが本当に鷹千穗が生きた人間ではないと誤解しそうなほどに、外見も動きも人間離れしているのだ。
「動きが…鷹千穗くんの方が優勢だ…」
「へぇ…わかるんか」
「あ、いや、俺…。あの、本業の鬼塚さんとかに言うのもあれだけどFPS系のゲーム好きで」
「………?」
「え、知らないの…。いや、鬼塚さんなら知らないのも納得かも。あれだよ、戦闘ゲーム。最近のって超リアルで武器とかも結構、忠実に出来てるしキャラの動きとかとにかくすごくて。メジャーじゃないんだけど、その忠実性を拘り過ぎてるようなゲームも結構多いんだよね。それをやってるから、何となくね…」
「へぇ…。お前、肝据わってるんか、変わりもんなんか」
「え?」
「普通、リアルに人間と人間が戦うのを冷静に見れるもんやない」
あ、そっかと思った瞬間、倉庫に悲鳴が響いた。
「王暁!!!」
”佐野”が王暁に駆け寄ろうと前に出ると、心がポルシェのボンネットに滑り出し懐から取り出した銃を”佐野”に向けた。
「悪いな。俺は全快してへんから、こっちを使わせてもらうわ」
銃口を向けられた”佐野”は足を止めたが、心に一瞬、目をやるだけで、その後ろにすぐに視線を移した。
ぼたぼたと薄汚れた倉庫の床を赤黒い雨が次々と濡らす。鷹千穗は王暁の右肩に突き刺した刀から流れる血を、やはり感情の窺い知れない目で見ていた。
床に膝をついた王暁は、右手に握った牛尾刀を素早く左手に持ち替え鷹千穗に切っ先を向けようとしたが、その手を踏みつけられ顔を顰めた。
「Thanatos…。普段の殺しは計画的に短時間でやってきたんか?」
「鬼塚…」
王暁の足を踏みつけた心は、その手から逃れた牛尾刀を拾うと小さく振ってみた。
「軽いな。振りやすい…なるほどな」
切っ先を王暁の顎に当てると、”佐野”が声を上げた。
「千虎、少しでも動いたら引き金を引け」
”佐野”が見ると、千虎が心の銃を握って銃口を向けてきている。足を開き、肩を絞め、腕を伸ばす様は素人とは思えない構えで、思わず動くのをやめた。
「今の素人は怖いよな。仮想空間だけじゃ飽き足らず、実践が出来るサバイバルゲームとかハマってるんやと」
心はふっと笑うと牛尾刀の切っ先で王暁の唇を突いた。ポトっと血が溢れたが、王暁はニヤリと笑うだけだった。
鷹千穗があと少し刀を進めれば動脈を切る。同じように刀を振り回す人間ならば、刺されている王暁もそれに気がついているはずだ。
だが王暁はどうにかして鷹千穗か心を殺そうと、窮地に陥った今でも目論んでいるようだった。
「住手!!」
「おい、中国語は分からん」
「やめて…やめてくれ。終わりだ。王暁を殺さないでくれ」
”佐野”が言うと王暁は苦虫を噛み潰したような顔をして、全身の力を抜いて殺気を消した。
「お前も鷹千穗も主の言いなりか…」
心は微苦笑を浮かべると牛尾刀を振りながら”佐野”の元へ向かった。それを見た王暁が暴れ出したが、肩に刺さった日本刀が深くなり呻き声を上げた。
「さて、佐野心…改め、まず名前は?」
心は牛尾刀の切っ先を”佐野”に向けた。男の目が迷うように揺れた。だが後ろで膝をつく王暁を見て、諦めたように軽く両手を上げ肩を竦めた。
「俺の名は梁…、梁 月笙リョウ ゲッショウ…」
「知らんな。あ?もしかしてThanatosは二人組ってことか?」
「Thanatosは…王暁のことだ。俺は仲介者で、依頼を受けてる」
「Thanatosの名前は?」
「李王暁」
「そっちやあらへん」
心が親指を王暁に向ける。”佐野”改め月笙は観念したかのように腹の底から息を吐いた。
王暁の顔を見た心からすれば聞くまでもないことだが、念のため確認することにした。
「雨宮 戒人…らしい」
「らしい?」
「俺が拾ったときは何も覚えてなくて、それこそ生死も危うかった。記憶もなく、名前も分からない状態で…李王暁というのは俺が名付けた」
「拾った?」
「海に浮いてた。死体だと思った。顔の傷も酷くて、ダメだろうなと。だけど引き揚げてみると息があったから」
「傷?じゃあ、あの顔のタトゥーは傷を隠すためか。うちの雨宮が言ってたことと、大体、合ってるか…」
「…お前は、Thanatosを知っているか?」
「あ?」
何を言ってるんだと心が眉を上げた。後ろで鷹千穗が今にも殺さんとしているのがThanatosだろうと視線を向けた。
「Thanatosは生きていれば…100歳を超える。Thanatosは代々、受け継がれてきた称号のようなものだ」
「じゃあ、あいつが受け継いだってことか?」
「王暁は記憶をなくしていた。何も覚えてなかった。瀕死の重症だったが治療して動けるようになってから、俺の居た組織で働いた。身体能力が高い上に頭の回転も早い。中国人ではないのは分かったが、中国語が話せた。そこに目をつけられた」
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どこも一緒だなと心は冷笑を浮かべた。大きくなりすぎた組織は、同じ方向を向くのが難しくなるのだ。それが元々、方向性の違う者同志が集まっていれば尚のこと。
「腕の刺青を消したのも、身元がバレへんようにするためか」
心が月笙の服の裾から見えるケロイドを見ると、月笙は自嘲めいた笑みを漏らした。
「組織の分裂騒動ときに、俺の居た組織の連中をThanatosが制裁した。組織の生き残りとバレると厄介だ」
「皆殺しか、さすがやな」
「国には居れなかった。組織は大きい。ファミリーが他にもいるから、見つかるとさすがに危うい。だから国を出た。Thanatosの力を欲する人間はどこの国にも居るから、特に困ることはなかった。そしてイタリアマフィアと関わった。そこで日本の極道組織を知り、王暁のことがわかった」
「雨宮戒人やっていうのがか?王暁の正体を探るついでに雨宮のこともバレて、あいつは店に来たんか?となると、来生と神童は昔から繋がり切らんままおったってことか」
「来生は中国、香港、韓国と勢力を伸ばしている。だけど日本では仁流会のせいで身動きが取れないと言っていた…。そこで俺にコンタクトを取ってきた。俺らが日本に行きたいと言っているという噂を聞いたそうだ…」
月笙は後ろの王暁を気にして何度も視線を送っていた。心がそれに肩を竦めて、鷹千穗を呼んだ。
「外せ」
言うと、鷹千穗は王暁をジッと見下ろしていたが、肩に足を載せて勢いよく刀を引き抜いた。
「うわぁ!!!」
王暁が声を上げ肩口を押さえて蹲った。それを見た月笙が心を一瞥したあと、王暁に走り寄った。
「傷を押さえろ、神経はやられてなさそうだ」
月笙は自分のシャツを脱いで王暁の傷口に当てた。すると千虎がさっと近づいてきてジーンズのベルトを外して、隣に膝を付いた。
「これで固定して」
「え?ああ、ありがとう…」
鷹千穗は何かを考えるかのように王暁をじっと見ていた。だが心が王暁から刀を抜かせた時点で終わりということだと理解したのか、白い布を取り出すと刀を拭って鞘に納めた。
「鷹千穗」
心が鷹千穗を呼んで牛尾刀を投げると、その柄を掴んで小さく振った。何度か振り上げ下ろすことをした後、車のボンネットに寝かせるようにして載せた。
「俺らには軽いよな」
それに頷くことはなかったが、視線だけ心に向けるとボンネットに腰掛けた。
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