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第3幕・Empowerment(エンパワーメント)の章〜④〜
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御子柴奈緒美のゆらめき
「御子柴さん、会場設営のスケジュール確認どうなってる?」
オフィスに出社した直後、奈緒美が社用PCにログインしようとすると、上司の石嶺課長から、声をかけられた。
課長から要望されている確認事項を済ませていなかった彼女は、ハッとした表情で、
「すいません! すぐに、確認を取ります」
と、返答する。
「そっか……なるはやでお願い」
四月に入社してきて二ヶ月の部下の答えに、課長は事務的に応答しつつ、今日のトピックを伝える。
「あと、朝のミーティングで、イベント運営の助っ人として本社から来てもらった松永くんを紹介するからヨロシク」
「はい! 承知しました」
奈緒美が即答すると、石嶺課長は、満足したように小さく首を縦に振る。
上司のそんな様子を確認し、彼女は、起動したPCのToDoリストの《ASAP》の項目に、「イベント会場設営会社へのスケジュール確認」の文字を追加した。
※
奈緒美が所属するイベント事業本部イベント運営課の朝のミーティングは、フリースペースに置かれたホワイトボードの前で立ち会議の形式で行われる。
「最初に、本社のイベントプランニング部から助っ人で来てくれた松永くんの紹介から……」
石嶺課長が言い終わるか終わらないかのうちに、課長の隣に立つ、精悍な顔つきで高身長の男性が口を開く。
「イベントプランニング課から来ました松永です。これまで、イベント営業や会場管理の部署も居たので、社内・社外を問わず、人脈の広さと判断の早さには自信があります! 今回のプロジェクトについては、わからないことも多く、どんどん質問させてもらいますが、逆に、ボクの知ってることは、なんでも答えますので、どんどん質問に来てください」
三十代前半の働き盛りに見える風貌に加えて、大柄の体型で堂々とした語り口は、入社して数ヶ月の奈緒美には、頼もしく感じられた。
奈緒美たち十五名のスタッフが拍手で歓迎の意を示すと、石嶺課長は、淡々とミーティングの進行に入り、部署の一同から確認事項のヒアリングが終わると、小さくうなずき、最後に
「御子柴さん、会場設営のスケジュール、先方の確認が取れたら、すぐに知らせて」
と、念を押すように付け加えた。
その一言に、すぐに反応した松永が、奈緒美と石嶺課長にたずねる。
「今回の設営も、村山レントオールですか?」
「はい! 村山レントオールさんの中村部長が窓口です」
奈緒美の返答に、松永は苦笑しながら、課長にたずねる。
「あそこの部長さんは、忙しいのか、なかなかつかまらないからなぁ……石嶺課長、この件、ボクの方で連絡を取ってみてもイイですか?」
「もちろん。先方との連絡の取り方にコツがあるなら、御子柴さんに教えてあげて」
課長は、あっさりと許可を出し、奈緒美への助言まで求めた。
上司から快諾を得た松永は、
「課長、ありがとうございます。それと、今回の運営マニュアルを作ってくれたのも、御子柴さんですよね? ちょっと、気になるところがあるので、あとで、ミニ・ミーティングをさせてもらって良いですか?」
と、再び業務内容についての相談を持ちかける。
「そうだな……まあ、松永くんの指摘なら、御子柴さんも得るところが多いだろう。じゃあ、よろしくお願い」
上司の許可を得たことで、奈緒美との打ち合わせ時間を確保した松永は、
「そういうことで、よろしくお願いしますね、御子柴さん」
と、彼女に微笑みかけた。
※
「ナカノっちの話しを聞けると思ったら、なんか別のメンズの話しになってるんですけど……」
変わり種の牛肉のサムギョプサルや肉寿司などが食べ放題で楽しめる韓国料理の居酒屋で、奈緒美の学生時代から友人である遠山京子が、愚痴を吐きさすように語る。
「なにこれ、私たち、マウント取られてるの?」
「お二人とも、ナオミ先輩の数少ないモテ期をお祝いしてあげましょうよ?」
同じく学生の時からの付き合いの葛西美紀と以前の職場から親しくしている吉野公香も口を挟む。
三人の発言には、少しトゲがあるようにも聞こえるが、それも、彼女たちの親密さを表している。
「もう、そう言うんじゃないって……まだ、慣れていない外部との連絡とか、わかりやすい資料の作り方とかをアドバイスしてもらって、頼りになるな、と思っただけで……」
困ったような表情で返答する奈緒美に、三人は、「はいはい……」と友人の言葉を受け流す。
そんな中、好奇心旺盛な公香が、胡麻ダレにひたした牛サムギョプサルを口に運びながら、左手で器用にスマホの検索を行い、奈緒美の所属する会社の外部PR用のウェブサイトから、話題の社員である松永博実の仕事ぶりを紹介したページを発見し、歳上の二人に自分の端末を回覧させる。
「なるほど……これは、なかなか……私たちに話したくなるのも、わからなくはないかな?」
京子が感想を述べると、美紀は、以前の女子会で、公香が発見した中野虎太郎のTwitterアカウントを閲覧したときの甲子園球場での彼の自撮り写真を思い出しながら別の意見を述べる。
「けど、私は、ナカノくんを推したいな~。やっぱり、可愛いタイプの男の子の方がイイじゃん?」
二人の意見を受け、年下の吉野公香は、フフフと不敵な笑みを浮かべながら、
「私は、ナオミさんの選択を尊重したいと思います」
と、自身の意見を述べるのだった。
「御子柴さん、会場設営のスケジュール確認どうなってる?」
オフィスに出社した直後、奈緒美が社用PCにログインしようとすると、上司の石嶺課長から、声をかけられた。
課長から要望されている確認事項を済ませていなかった彼女は、ハッとした表情で、
「すいません! すぐに、確認を取ります」
と、返答する。
「そっか……なるはやでお願い」
四月に入社してきて二ヶ月の部下の答えに、課長は事務的に応答しつつ、今日のトピックを伝える。
「あと、朝のミーティングで、イベント運営の助っ人として本社から来てもらった松永くんを紹介するからヨロシク」
「はい! 承知しました」
奈緒美が即答すると、石嶺課長は、満足したように小さく首を縦に振る。
上司のそんな様子を確認し、彼女は、起動したPCのToDoリストの《ASAP》の項目に、「イベント会場設営会社へのスケジュール確認」の文字を追加した。
※
奈緒美が所属するイベント事業本部イベント運営課の朝のミーティングは、フリースペースに置かれたホワイトボードの前で立ち会議の形式で行われる。
「最初に、本社のイベントプランニング部から助っ人で来てくれた松永くんの紹介から……」
石嶺課長が言い終わるか終わらないかのうちに、課長の隣に立つ、精悍な顔つきで高身長の男性が口を開く。
「イベントプランニング課から来ました松永です。これまで、イベント営業や会場管理の部署も居たので、社内・社外を問わず、人脈の広さと判断の早さには自信があります! 今回のプロジェクトについては、わからないことも多く、どんどん質問させてもらいますが、逆に、ボクの知ってることは、なんでも答えますので、どんどん質問に来てください」
三十代前半の働き盛りに見える風貌に加えて、大柄の体型で堂々とした語り口は、入社して数ヶ月の奈緒美には、頼もしく感じられた。
奈緒美たち十五名のスタッフが拍手で歓迎の意を示すと、石嶺課長は、淡々とミーティングの進行に入り、部署の一同から確認事項のヒアリングが終わると、小さくうなずき、最後に
「御子柴さん、会場設営のスケジュール、先方の確認が取れたら、すぐに知らせて」
と、念を押すように付け加えた。
その一言に、すぐに反応した松永が、奈緒美と石嶺課長にたずねる。
「今回の設営も、村山レントオールですか?」
「はい! 村山レントオールさんの中村部長が窓口です」
奈緒美の返答に、松永は苦笑しながら、課長にたずねる。
「あそこの部長さんは、忙しいのか、なかなかつかまらないからなぁ……石嶺課長、この件、ボクの方で連絡を取ってみてもイイですか?」
「もちろん。先方との連絡の取り方にコツがあるなら、御子柴さんに教えてあげて」
課長は、あっさりと許可を出し、奈緒美への助言まで求めた。
上司から快諾を得た松永は、
「課長、ありがとうございます。それと、今回の運営マニュアルを作ってくれたのも、御子柴さんですよね? ちょっと、気になるところがあるので、あとで、ミニ・ミーティングをさせてもらって良いですか?」
と、再び業務内容についての相談を持ちかける。
「そうだな……まあ、松永くんの指摘なら、御子柴さんも得るところが多いだろう。じゃあ、よろしくお願い」
上司の許可を得たことで、奈緒美との打ち合わせ時間を確保した松永は、
「そういうことで、よろしくお願いしますね、御子柴さん」
と、彼女に微笑みかけた。
※
「ナカノっちの話しを聞けると思ったら、なんか別のメンズの話しになってるんですけど……」
変わり種の牛肉のサムギョプサルや肉寿司などが食べ放題で楽しめる韓国料理の居酒屋で、奈緒美の学生時代から友人である遠山京子が、愚痴を吐きさすように語る。
「なにこれ、私たち、マウント取られてるの?」
「お二人とも、ナオミ先輩の数少ないモテ期をお祝いしてあげましょうよ?」
同じく学生の時からの付き合いの葛西美紀と以前の職場から親しくしている吉野公香も口を挟む。
三人の発言には、少しトゲがあるようにも聞こえるが、それも、彼女たちの親密さを表している。
「もう、そう言うんじゃないって……まだ、慣れていない外部との連絡とか、わかりやすい資料の作り方とかをアドバイスしてもらって、頼りになるな、と思っただけで……」
困ったような表情で返答する奈緒美に、三人は、「はいはい……」と友人の言葉を受け流す。
そんな中、好奇心旺盛な公香が、胡麻ダレにひたした牛サムギョプサルを口に運びながら、左手で器用にスマホの検索を行い、奈緒美の所属する会社の外部PR用のウェブサイトから、話題の社員である松永博実の仕事ぶりを紹介したページを発見し、歳上の二人に自分の端末を回覧させる。
「なるほど……これは、なかなか……私たちに話したくなるのも、わからなくはないかな?」
京子が感想を述べると、美紀は、以前の女子会で、公香が発見した中野虎太郎のTwitterアカウントを閲覧したときの甲子園球場での彼の自撮り写真を思い出しながら別の意見を述べる。
「けど、私は、ナカノくんを推したいな~。やっぱり、可愛いタイプの男の子の方がイイじゃん?」
二人の意見を受け、年下の吉野公香は、フフフと不敵な笑みを浮かべながら、
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と、自身の意見を述べるのだった。
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