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第1幕・Aim(エイム)の章〜④〜
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4月15日(土)
中学校の教職員一同の懇親会は、国道沿いの和食店で行われた。
すき焼きや、しゃぶしゃぶなども提供する、家族連れや宴会などを行う大人数に対応した個室を完備しているチェーン店である。
開始時刻の午後7時より少し前に到着し、二十席程の椅子が用意された宴会用の個室に入ると、
「おっ! 中野くん、こっちおいで!」
と、山脇先生が、僕を呼んでくれた。
情報担当の早田先生も一緒にいて、懇親会の開始前から野球談義をしていたようだ。
「今年は、阪神も、まずまず調子が良いみたいですね?」
「いや、そう言うけど、去年から横浜で勝ててないのが気になるねんな。それに、カープも、開幕で連敗したあとは、調子を上げて来てるやろ?」
「そうですね~! 今日も秋山のサヨナラ2ランで逆転勝ちしたみたいですし」
「やっぱり、メジャーからの帰国組選手は、怖いな~」
そんな会話を聞きながら、二人の先生のそばに座らせてもらうと、続いて、個室の扉が開き、
「失礼します! 先生方、お久しぶりです」
という、ハキハキとした声が聞こえた。
開かれた扉の方に目を向けると、カジュアルスーツを着こなした女性が立っている。
身長は、160cmほどで、理知的な声に反して、大きな瞳と、ゆるくまとめられたヘアスタイルが印象的だ。
僕にとっては初対面で、見慣れない女性であるということは……。
「御子柴さん、お久しぶりです! 今日は、来てくれてありがとうございます!」
「早田先生、ご無沙汰しています。お声がけいただいて、ありがとうございました。私が仕事を離れてから、学校でのICT活用がどうなっているか、気になっていたので……今日は、色々とお話しを聞かせてくださいね」
予想どおり、二人の会話から、やはり、彼女が、僕の前任のICTサポーター・御子柴さんであることがわかった。
「学校の現状なら、中野さんに聞いてもらった方が、わかりやすいと思いますよ。ねぇ、中野さん?」
早田先生が、笑みを浮かべながら、僕に話しを振ってくる。
「あっ! あなたが中野さんですね? じゃあ、あとで、私が現場を離れてから一年間の進展ぶりを聞かせてもらっていいですか?」
御子柴さんは、僕に対しても、丁寧な口調でたずねる。
「はい! 僕に説明できる範囲で良ければ!」
学校には、いつも一人で訪問している立場としては、共通の話題ができる人の存在はありがたく、僕も喜んで彼女の申し出に応じた。
※
懇親会は、和やかなムードで始まった宴は、新しく着任された先生たちとの会話も弾み、楽しく穏やかな雰囲気で終わりを迎えた。
少し酔いが回った身体に、春の夜風が心地よい。
お酒の席ということもあってか、職員室ではわからない、先生方の意外な一面を知ることができて、僕としては、今回の懇親会に参加できたことに、おおむね満足できたのだが……。
ただ、一点、比較的、近くの席に座っていたにもかかわらず、御子柴さんとは、あまり話しをすることができなかったことは、少しだけ心残りだ。
(せっかくだから、御子柴さんにタブレット導入初年度の話しを聞いて、引き継ぎ資料のお礼を言いたかったな)
そんなことを考えつつも、懇親会の会計終了を待ちながら、店舗の外で先生たちと談笑したあと、解散の流れになったので、帰宅しようとすると、トントン――――――と、軽く肩を叩かれた。
振り返ると、ビジネスカジュアル姿の女性が、立っていた。
ほろ酔い気分なのだろうか、彼女のほおには、やや赤みがさしている。
「中野さん、このあと、お時間ありますか?」
おっとりした口調でたずねてくる御子柴さんの声色に、ドキリとしながら、少し上ずった声で答える。
「は、はい! ひとり暮らしなんで、特に予定はないです!」
すると、彼女は、コクコクと、ゆったり首をタテに振りながら、ふんわりとした声音で、
「良かった~! 中野さんと色々お話ししたかったんですけど、さっきは、なかなか機会がなくて……」
と、両手を合わせ、ささやかながらも、感激している素振りを見せる。
「僕も、御子柴さんに色々と聞きたいことや、お礼を言いたかったので、ぜひ!」
僕が、そう応じると、彼女は不思議そうに、首をかしげながら、
「ん? 私にお礼ですか?」
と、つぶやいたあと、
「それでは、私の行きつけのお店に案内しますので、お付き合い、よろしくお願いします」
と言いながら、ペコリとお辞儀する。
ひとつひとつの仕草が面白いヒトだな、と感じつつ……。
僕は、前任のICTサポーターさんと二人で、彼女の行きつけのカラオケバーに向かうことになった。
【本日の試合結果】
横浜 対 阪神 5回戦 雨天中止
前年から続く、レギュラーシーズンの横浜スタジアムでの連敗記録は継続中。
◎4月15日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:7勝4敗 1引き分け 貯金3
順位:首位 (2位と0.5ゲーム差)
中学校の教職員一同の懇親会は、国道沿いの和食店で行われた。
すき焼きや、しゃぶしゃぶなども提供する、家族連れや宴会などを行う大人数に対応した個室を完備しているチェーン店である。
開始時刻の午後7時より少し前に到着し、二十席程の椅子が用意された宴会用の個室に入ると、
「おっ! 中野くん、こっちおいで!」
と、山脇先生が、僕を呼んでくれた。
情報担当の早田先生も一緒にいて、懇親会の開始前から野球談義をしていたようだ。
「今年は、阪神も、まずまず調子が良いみたいですね?」
「いや、そう言うけど、去年から横浜で勝ててないのが気になるねんな。それに、カープも、開幕で連敗したあとは、調子を上げて来てるやろ?」
「そうですね~! 今日も秋山のサヨナラ2ランで逆転勝ちしたみたいですし」
「やっぱり、メジャーからの帰国組選手は、怖いな~」
そんな会話を聞きながら、二人の先生のそばに座らせてもらうと、続いて、個室の扉が開き、
「失礼します! 先生方、お久しぶりです」
という、ハキハキとした声が聞こえた。
開かれた扉の方に目を向けると、カジュアルスーツを着こなした女性が立っている。
身長は、160cmほどで、理知的な声に反して、大きな瞳と、ゆるくまとめられたヘアスタイルが印象的だ。
僕にとっては初対面で、見慣れない女性であるということは……。
「御子柴さん、お久しぶりです! 今日は、来てくれてありがとうございます!」
「早田先生、ご無沙汰しています。お声がけいただいて、ありがとうございました。私が仕事を離れてから、学校でのICT活用がどうなっているか、気になっていたので……今日は、色々とお話しを聞かせてくださいね」
予想どおり、二人の会話から、やはり、彼女が、僕の前任のICTサポーター・御子柴さんであることがわかった。
「学校の現状なら、中野さんに聞いてもらった方が、わかりやすいと思いますよ。ねぇ、中野さん?」
早田先生が、笑みを浮かべながら、僕に話しを振ってくる。
「あっ! あなたが中野さんですね? じゃあ、あとで、私が現場を離れてから一年間の進展ぶりを聞かせてもらっていいですか?」
御子柴さんは、僕に対しても、丁寧な口調でたずねる。
「はい! 僕に説明できる範囲で良ければ!」
学校には、いつも一人で訪問している立場としては、共通の話題ができる人の存在はありがたく、僕も喜んで彼女の申し出に応じた。
※
懇親会は、和やかなムードで始まった宴は、新しく着任された先生たちとの会話も弾み、楽しく穏やかな雰囲気で終わりを迎えた。
少し酔いが回った身体に、春の夜風が心地よい。
お酒の席ということもあってか、職員室ではわからない、先生方の意外な一面を知ることができて、僕としては、今回の懇親会に参加できたことに、おおむね満足できたのだが……。
ただ、一点、比較的、近くの席に座っていたにもかかわらず、御子柴さんとは、あまり話しをすることができなかったことは、少しだけ心残りだ。
(せっかくだから、御子柴さんにタブレット導入初年度の話しを聞いて、引き継ぎ資料のお礼を言いたかったな)
そんなことを考えつつも、懇親会の会計終了を待ちながら、店舗の外で先生たちと談笑したあと、解散の流れになったので、帰宅しようとすると、トントン――――――と、軽く肩を叩かれた。
振り返ると、ビジネスカジュアル姿の女性が、立っていた。
ほろ酔い気分なのだろうか、彼女のほおには、やや赤みがさしている。
「中野さん、このあと、お時間ありますか?」
おっとりした口調でたずねてくる御子柴さんの声色に、ドキリとしながら、少し上ずった声で答える。
「は、はい! ひとり暮らしなんで、特に予定はないです!」
すると、彼女は、コクコクと、ゆったり首をタテに振りながら、ふんわりとした声音で、
「良かった~! 中野さんと色々お話ししたかったんですけど、さっきは、なかなか機会がなくて……」
と、両手を合わせ、ささやかながらも、感激している素振りを見せる。
「僕も、御子柴さんに色々と聞きたいことや、お礼を言いたかったので、ぜひ!」
僕が、そう応じると、彼女は不思議そうに、首をかしげながら、
「ん? 私にお礼ですか?」
と、つぶやいたあと、
「それでは、私の行きつけのお店に案内しますので、お付き合い、よろしくお願いします」
と言いながら、ペコリとお辞儀する。
ひとつひとつの仕草が面白いヒトだな、と感じつつ……。
僕は、前任のICTサポーターさんと二人で、彼女の行きつけのカラオケバーに向かうことになった。
【本日の試合結果】
横浜 対 阪神 5回戦 雨天中止
前年から続く、レギュラーシーズンの横浜スタジアムでの連敗記録は継続中。
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