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第四部
第4章〜愛は目で見るものではなく、心で見るもの〜⑩
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「それで、緑川クンと山吹サンは、その後どうなったの?」
バーベキューの日から、2日が経過した火曜日の放課後……。
教室に残ったシロが、オレにたずねてきた。
「あぁ、昨日、放課後に二人で話し合ったらしくてな。お互いの誤解も、解けたみたいだ。日曜の帰り際に言ってたとおり、山吹は、緑川と一緒にどこかに遊びに行くみたいだ」
シロには伝聞のカタチで伝えるが、緑川に懇願されてオレも、その場に同席していた。
緑川が、正直に、春休み前に彼女に告白した際に「キモい」と言われて精神的ダメージを受けたこと、そのことが原因で、彼女を恨めしく想う気持ちがあったことを伝えると、山吹あかりは、ショックを受けていた。
彼女によれば、そのときの緑川の告白は、冗談めかした口調だと感じたので、相手が本気だとは思わず、軽い口調で「キモい……」と、言葉を返しただけだったらしい。
山吹が、そのことを謝罪すると、緑川は、恐縮したように、「いまは気にしていない」と伝えて、ここ数週間で彼女と話すようになってから、自分が感じていたことは間違っていたと考え直すようになった、と語った。
緑川の話しを聞き終えたときの山吹の表情は、とても穏やかで嬉しそうだったことを付け加えておく。
「そっか! それなら、わたしたちが任されていたミッションもコンプリートだね」
「いや……緑川は、あのあと、『初めてのデートって、どんなプランを立てればイイんだよ~』なんて、情けない表情をしてたからな……シロには、もう、ひと仕事がんばってもらわないと……かも知れないな」
オレが、ニヤリと表情を崩して応じると、シロは、澄ました顔のまま、
「まあ、そういう方面のことなら……相談してくれれば、いつでも、アドバイスは出来ると思うよ」
と、こともなげに返答したあと、こう付け加えた。
「わたしとしては、お返しをし損ねているから、そのことも忘れないようにしておかないと……」
なにやら、意味深長なことをつぶやいているが、例によって、シロの真意は良くわからない。
そんな彼女は話題を変えるように、続けて、こんなことをたずねてきた。
「ところで、この何日かの間、クロは、クラスメート男子の非モテ脱出計画に協力した訳だけど……クロ自身は、なにか得るものはあった?」
「まあ、非モテ脱出計画ってのは副産物で、本来の目的は、緑川を登校させることだけどな!」
そう返答しつつ、今回の経験で得たことについて考える。
緑川の付き添いのようなカタチでシロから受けた講義は、以前の『超恋愛学』の続きのようで、なかなかに興味深いモノだった。なにより、自分が当事者でないという気軽さが良い。
先月、オレの隣でシロの講義を聞いていた壮馬は、こんな気持ちだったのだろうか?
「ただ、今回の緑川の一件では、そばで観察していて、色々と面白いこともあったからな。振り返ってみれば、結構、楽しめたこともあったかもな」
「面白かったことって、例えば?」
「そうだなぁ……最初に思い浮かぶのは、やっぱり、あの『孔雀の理論』だな! あんな小道具ひとつで、女子との会話が盛り上がるとは思わなかったよ」
「ちゃんと、効果があったみたいで良かった! もしかして、クロのときよりも、今回の緑川クンの実践例のほうが、ずっと上手く行ってたりして……」
そう言って、シロは、クスクスと笑う。
悪かったな、結果を出せなくて……そう思いながら、オレは、ムッとした感情が表情に出ないように気をつけながら、返答する。
「効果がありすぎて、野球部ではどうしようかと思ったけどな……あの調子で、彼氏持ちの女子に声をかけて行ってたら、緑川だけじゃなく、オレも男子たちから殴り掛かられていたかも知れない。ただな……」
オレが、わざとらしく含みを持たせた言い方で応じると、シロは、敏感に反応を示した。
「ただ、なんなの?」
いぶかし気にたずねてきた彼女に即答する。
「あの小道具も万能ではなかったみたいだな……緑川が放送室に来たことがあったんだが、モモカは、あのルーティーンをまったく相手にしなかったからな」
そう言うと、シロは、肩透かしをくらったかのように少しあきれた表情で、返答してきた。
「そりゃ、そうでしょう? だって、あのルーティーンは……」
その言葉に、心のなかで、ニヤリとしながら、オレはドヤ顔で答える。
「『片想いをしている女子には、効果が無い』って、言いたいんだろう? 『そういう一途な女子には、他の男子が付け入る余地が無いから』だっけ? ところが、モモカ自身が、そのことを否定しているだな、これが」
「え? どうして、そんなことがわかるの? あっ! まさか……クロ、あの子に直接『いま、気になってる男子がいるか?』って聞いたの?」
困惑したような表情のあと、失敗をとがめるような口調でたずねてくるシロに対して、オレは平然と答える。
「あぁ、そのとおりだけど? 本人に直接たずねるのが一番確実だろう? モモカは、たとえば、『さっきのルーティーンとやらを鳳花センパイに仕掛けたとして、成功すると思いますか?』『ワタシに対してやったのと同じように失敗したとして、鳳花センパイに片想いの相手が居るって、くろセンパイは想像しますか?』って、言ってたぞ」
自分にとって、これ以上ない説得力を持つ後輩女子の言葉を借りて、反論すると、シロは、さっきよりもさらにあきれたような表情で、言葉を吐き出した。
「はぁ~、わたしの人生の中で、あの佐倉って子に同情することがあるなんて思わなかった……」
バーベキューの日から、2日が経過した火曜日の放課後……。
教室に残ったシロが、オレにたずねてきた。
「あぁ、昨日、放課後に二人で話し合ったらしくてな。お互いの誤解も、解けたみたいだ。日曜の帰り際に言ってたとおり、山吹は、緑川と一緒にどこかに遊びに行くみたいだ」
シロには伝聞のカタチで伝えるが、緑川に懇願されてオレも、その場に同席していた。
緑川が、正直に、春休み前に彼女に告白した際に「キモい」と言われて精神的ダメージを受けたこと、そのことが原因で、彼女を恨めしく想う気持ちがあったことを伝えると、山吹あかりは、ショックを受けていた。
彼女によれば、そのときの緑川の告白は、冗談めかした口調だと感じたので、相手が本気だとは思わず、軽い口調で「キモい……」と、言葉を返しただけだったらしい。
山吹が、そのことを謝罪すると、緑川は、恐縮したように、「いまは気にしていない」と伝えて、ここ数週間で彼女と話すようになってから、自分が感じていたことは間違っていたと考え直すようになった、と語った。
緑川の話しを聞き終えたときの山吹の表情は、とても穏やかで嬉しそうだったことを付け加えておく。
「そっか! それなら、わたしたちが任されていたミッションもコンプリートだね」
「いや……緑川は、あのあと、『初めてのデートって、どんなプランを立てればイイんだよ~』なんて、情けない表情をしてたからな……シロには、もう、ひと仕事がんばってもらわないと……かも知れないな」
オレが、ニヤリと表情を崩して応じると、シロは、澄ました顔のまま、
「まあ、そういう方面のことなら……相談してくれれば、いつでも、アドバイスは出来ると思うよ」
と、こともなげに返答したあと、こう付け加えた。
「わたしとしては、お返しをし損ねているから、そのことも忘れないようにしておかないと……」
なにやら、意味深長なことをつぶやいているが、例によって、シロの真意は良くわからない。
そんな彼女は話題を変えるように、続けて、こんなことをたずねてきた。
「ところで、この何日かの間、クロは、クラスメート男子の非モテ脱出計画に協力した訳だけど……クロ自身は、なにか得るものはあった?」
「まあ、非モテ脱出計画ってのは副産物で、本来の目的は、緑川を登校させることだけどな!」
そう返答しつつ、今回の経験で得たことについて考える。
緑川の付き添いのようなカタチでシロから受けた講義は、以前の『超恋愛学』の続きのようで、なかなかに興味深いモノだった。なにより、自分が当事者でないという気軽さが良い。
先月、オレの隣でシロの講義を聞いていた壮馬は、こんな気持ちだったのだろうか?
「ただ、今回の緑川の一件では、そばで観察していて、色々と面白いこともあったからな。振り返ってみれば、結構、楽しめたこともあったかもな」
「面白かったことって、例えば?」
「そうだなぁ……最初に思い浮かぶのは、やっぱり、あの『孔雀の理論』だな! あんな小道具ひとつで、女子との会話が盛り上がるとは思わなかったよ」
「ちゃんと、効果があったみたいで良かった! もしかして、クロのときよりも、今回の緑川クンの実践例のほうが、ずっと上手く行ってたりして……」
そう言って、シロは、クスクスと笑う。
悪かったな、結果を出せなくて……そう思いながら、オレは、ムッとした感情が表情に出ないように気をつけながら、返答する。
「効果がありすぎて、野球部ではどうしようかと思ったけどな……あの調子で、彼氏持ちの女子に声をかけて行ってたら、緑川だけじゃなく、オレも男子たちから殴り掛かられていたかも知れない。ただな……」
オレが、わざとらしく含みを持たせた言い方で応じると、シロは、敏感に反応を示した。
「ただ、なんなの?」
いぶかし気にたずねてきた彼女に即答する。
「あの小道具も万能ではなかったみたいだな……緑川が放送室に来たことがあったんだが、モモカは、あのルーティーンをまったく相手にしなかったからな」
そう言うと、シロは、肩透かしをくらったかのように少しあきれた表情で、返答してきた。
「そりゃ、そうでしょう? だって、あのルーティーンは……」
その言葉に、心のなかで、ニヤリとしながら、オレはドヤ顔で答える。
「『片想いをしている女子には、効果が無い』って、言いたいんだろう? 『そういう一途な女子には、他の男子が付け入る余地が無いから』だっけ? ところが、モモカ自身が、そのことを否定しているだな、これが」
「え? どうして、そんなことがわかるの? あっ! まさか……クロ、あの子に直接『いま、気になってる男子がいるか?』って聞いたの?」
困惑したような表情のあと、失敗をとがめるような口調でたずねてくるシロに対して、オレは平然と答える。
「あぁ、そのとおりだけど? 本人に直接たずねるのが一番確実だろう? モモカは、たとえば、『さっきのルーティーンとやらを鳳花センパイに仕掛けたとして、成功すると思いますか?』『ワタシに対してやったのと同じように失敗したとして、鳳花センパイに片想いの相手が居るって、くろセンパイは想像しますか?』って、言ってたぞ」
自分にとって、これ以上ない説得力を持つ後輩女子の言葉を借りて、反論すると、シロは、さっきよりもさらにあきれたような表情で、言葉を吐き出した。
「はぁ~、わたしの人生の中で、あの佐倉って子に同情することがあるなんて思わなかった……」
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