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第四部
第4章〜愛は目で見るものではなく、心で見るもの〜①
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政宗・永井・二又が先導する先には、『EBIC DREAM COURT』と名付けられたバスケットボール広場があった。
この街には、国内トップクラスの成績を収めているEBICという3x3の強豪チームが活動の本拠地を置いているのだが、そのチームが、このバスケットコートのネーミングライツを有している。緑に囲まれたコートは、解放感抜群で、普段なら大自然の中でプレーするような爽快な気持ちになれそうなのだが――――――。
クラスメートが挑発的な一言を発したため、明らかに品行の良くなさそうな他校の生徒を相手に、ゲームをすることになってしまった。緑川武志が、どこまで考えて、彼らの怒りを招くような発言をしたのかはわからないが、普段から体育会系のクラブに所属する部員メンバーに取材やインタビューを行っているオレは、山吹あかりに絡んできた三人は、明らかにバスケの経験者だろうと推察していた。
三人とも、身長180センチ以上の長身であることに加えて、履き慣れている感じのバッシュ(三人それぞれが、ハイカット・ミドルカット・ローカットのシューズを履いていて、彼らのポジションが一目瞭然だ)、ハーフパンツから覗く鍛えられた両脚の太腿、自在にボールを扱えそうな大きな手のひら……。
どれをとっても、これぞ、男子のバスケ選手という身体つきをしている。
(本職の相手からの勝負を受けても、勝ち目はないだろう……)
そう考えたオレは、今からでも、コートに到着する前に、考えをめぐらせる。
(自分たちのチカラだけで勝とうとするのは、無理ゲーだよな)
当たり前の結論に達したオレは、前を歩く他のメンバーに気づかれないように、スマホを操作した。
運が良いのか悪いのか、快晴の休日であるにもかかわらず、昼食の時間帯と重なったためか、予約不要&無料で利用できるバスケットコートは、ちょうど、ハーフコート分が空いていた。なんとか、時間稼ぎを行おうと考えていた目論見は、ものの見事に外れたことになる。
「おう、都合がイイじゃねぇか! ハーフコートで、3x3の勝負と行こうぜ」
政宗が声を上げると、あとの二人も、ニヤニヤと笑いながら、それに同調している。
「さっきも言ったように、おまえたちが勝ったら、あかりの前に顔を出すのは辞めてやる。だが、オレたちが勝ったら、そこのヒョロガリ君に、さっきの言葉を詫びて、あかりには、このあとオレたちに付き合ってもらうぜ?」
「こっちは、未経験者が二人なんだから、ラフプレーをしないって約束するなら、その条件でイイよ」
身長190センチ近い政宗の言葉に、女子としては比較的高身長とは言え、身長170センチそこそこの山吹あかりは、動じることなく相手の言い分を受け取る。
そんな彼女に耳打ちするように、オレはたずねた。
「おい、あきらか経験者のアイツらを相手に、オレたち素人がチームに入ってて勝ち目なんてあるのか?」
「大丈夫! 黒田はパスを回すことくらいなら、出来るでしょ? アイツらは、インサイドプレーヤーばかりだから、アタシにボールを回してくれれば、十分に勝てる」
おいおい、経験者の男子三人に対して、自信過剰が過ぎないか――――――?
ニヤリと余裕の笑みを浮かべながら、勝算があると豪語する女子の言葉を信じたいという想いと、彼女の思惑が外れたときのための保険が、少しでも早く自分たちの苦境に気づいてくれることを願いながら、山吹に返答する。
「わかった。ゲームメイクは、山吹に任せる。細かな指示があるなら、ゲーム開始前にオレと緑川に伝えてくれ」
オレの言葉にうなずいた山吹を見下ろしながら、政宗が口を開く。
「タイマーと審判は居ないから、制限時間なしの21点先取ゲーム。ショットロックはナシってことでイイか?」
相手の言葉に、「それでイイよ」と、澄ました表情で返答する山吹の姿が癪に障ったのか、大柄の男子生徒は、
「その取り澄ました表情がいつまで続くかな?」
と言って、自分たちが用意したボールを強い勢いで女子の胸元を目掛け、パスの要領で送る。
そのボールを受けた山吹の表情が、かすかに曇るのをオレは見逃さなかった。
そして、それは相手の三人にしても同じだったようだ。
ここで、かつては、3on3と呼もばれていた、3x3のルールをあらためて確認しておこう。
通常のバスケットコートの半分より少し狭い広さのコートで行われるこのゲームは、基本的にフルコートのバスケットボールのルールを踏襲しているが、ゴールが一つしかないため、独自のルールも設けられている。
5人制バスケのスリーポイントラインを、3x3では「アーク」と呼び、このアークより内側でのシュートは1点、外側からのシュートは2点となっている。
また、攻守の切り替えは、次のようなタイミングで行われる。
・得点が入った時
・リバウンドやスティール、ブロックなどでボールを奪った(奪われた)時
こうした場合、オフェンス側は一度ボールをパスかドリブルでアークの外側に運んでからリングにアタックしなければならず、もしアークの外側にボールを運ばずにリングにアタックした場合は、相手ボールになってしまう。
さらに、ボールがコートの外に出た場合も攻守が切り替わり、ボールを出したチームがディフェンスとなって、試合はチェックボール(アークの外側の頂点付近で、デイフェンス側がオフェンス側にボールをパスもしくはトスで受け渡す行為)によって再開される。
フルコートの5人制バスケとの大まかな違いは、ここに挙げたとおりだ。
試合の開始にはコイントスが必要ということで、財布から500円を取り出したオレが、コインをトスする。
コインの裏側を選んで勝った政宗たちがボールを得てコートに散らばって、ゲームが始まった。
この街には、国内トップクラスの成績を収めているEBICという3x3の強豪チームが活動の本拠地を置いているのだが、そのチームが、このバスケットコートのネーミングライツを有している。緑に囲まれたコートは、解放感抜群で、普段なら大自然の中でプレーするような爽快な気持ちになれそうなのだが――――――。
クラスメートが挑発的な一言を発したため、明らかに品行の良くなさそうな他校の生徒を相手に、ゲームをすることになってしまった。緑川武志が、どこまで考えて、彼らの怒りを招くような発言をしたのかはわからないが、普段から体育会系のクラブに所属する部員メンバーに取材やインタビューを行っているオレは、山吹あかりに絡んできた三人は、明らかにバスケの経験者だろうと推察していた。
三人とも、身長180センチ以上の長身であることに加えて、履き慣れている感じのバッシュ(三人それぞれが、ハイカット・ミドルカット・ローカットのシューズを履いていて、彼らのポジションが一目瞭然だ)、ハーフパンツから覗く鍛えられた両脚の太腿、自在にボールを扱えそうな大きな手のひら……。
どれをとっても、これぞ、男子のバスケ選手という身体つきをしている。
(本職の相手からの勝負を受けても、勝ち目はないだろう……)
そう考えたオレは、今からでも、コートに到着する前に、考えをめぐらせる。
(自分たちのチカラだけで勝とうとするのは、無理ゲーだよな)
当たり前の結論に達したオレは、前を歩く他のメンバーに気づかれないように、スマホを操作した。
運が良いのか悪いのか、快晴の休日であるにもかかわらず、昼食の時間帯と重なったためか、予約不要&無料で利用できるバスケットコートは、ちょうど、ハーフコート分が空いていた。なんとか、時間稼ぎを行おうと考えていた目論見は、ものの見事に外れたことになる。
「おう、都合がイイじゃねぇか! ハーフコートで、3x3の勝負と行こうぜ」
政宗が声を上げると、あとの二人も、ニヤニヤと笑いながら、それに同調している。
「さっきも言ったように、おまえたちが勝ったら、あかりの前に顔を出すのは辞めてやる。だが、オレたちが勝ったら、そこのヒョロガリ君に、さっきの言葉を詫びて、あかりには、このあとオレたちに付き合ってもらうぜ?」
「こっちは、未経験者が二人なんだから、ラフプレーをしないって約束するなら、その条件でイイよ」
身長190センチ近い政宗の言葉に、女子としては比較的高身長とは言え、身長170センチそこそこの山吹あかりは、動じることなく相手の言い分を受け取る。
そんな彼女に耳打ちするように、オレはたずねた。
「おい、あきらか経験者のアイツらを相手に、オレたち素人がチームに入ってて勝ち目なんてあるのか?」
「大丈夫! 黒田はパスを回すことくらいなら、出来るでしょ? アイツらは、インサイドプレーヤーばかりだから、アタシにボールを回してくれれば、十分に勝てる」
おいおい、経験者の男子三人に対して、自信過剰が過ぎないか――――――?
ニヤリと余裕の笑みを浮かべながら、勝算があると豪語する女子の言葉を信じたいという想いと、彼女の思惑が外れたときのための保険が、少しでも早く自分たちの苦境に気づいてくれることを願いながら、山吹に返答する。
「わかった。ゲームメイクは、山吹に任せる。細かな指示があるなら、ゲーム開始前にオレと緑川に伝えてくれ」
オレの言葉にうなずいた山吹を見下ろしながら、政宗が口を開く。
「タイマーと審判は居ないから、制限時間なしの21点先取ゲーム。ショットロックはナシってことでイイか?」
相手の言葉に、「それでイイよ」と、澄ました表情で返答する山吹の姿が癪に障ったのか、大柄の男子生徒は、
「その取り澄ました表情がいつまで続くかな?」
と言って、自分たちが用意したボールを強い勢いで女子の胸元を目掛け、パスの要領で送る。
そのボールを受けた山吹の表情が、かすかに曇るのをオレは見逃さなかった。
そして、それは相手の三人にしても同じだったようだ。
ここで、かつては、3on3と呼もばれていた、3x3のルールをあらためて確認しておこう。
通常のバスケットコートの半分より少し狭い広さのコートで行われるこのゲームは、基本的にフルコートのバスケットボールのルールを踏襲しているが、ゴールが一つしかないため、独自のルールも設けられている。
5人制バスケのスリーポイントラインを、3x3では「アーク」と呼び、このアークより内側でのシュートは1点、外側からのシュートは2点となっている。
また、攻守の切り替えは、次のようなタイミングで行われる。
・得点が入った時
・リバウンドやスティール、ブロックなどでボールを奪った(奪われた)時
こうした場合、オフェンス側は一度ボールをパスかドリブルでアークの外側に運んでからリングにアタックしなければならず、もしアークの外側にボールを運ばずにリングにアタックした場合は、相手ボールになってしまう。
さらに、ボールがコートの外に出た場合も攻守が切り替わり、ボールを出したチームがディフェンスとなって、試合はチェックボール(アークの外側の頂点付近で、デイフェンス側がオフェンス側にボールをパスもしくはトスで受け渡す行為)によって再開される。
フルコートの5人制バスケとの大まかな違いは、ここに挙げたとおりだ。
試合の開始にはコイントスが必要ということで、財布から500円を取り出したオレが、コインをトスする。
コインの裏側を選んで勝った政宗たちがボールを得てコートに散らばって、ゲームが始まった。
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