初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
303 / 454
第四部

幕間〜女々しい野郎どもの唄〜②

しおりを挟む
「情けないし、誉められたことじゃないことはわかってるけど……僕は――――――僕のことを手ひどくフッた山吹やまぶきあかりを見返してやりたいと考えている。それには、自分のチカラだけじゃダメだろうけど……」

 カットスタジオで、髪を切ってもらったあとの週明けのこと。
 この日まで、何度も自宅を訪問してきた黒田竜司くろだりゅうじに対して、部屋の主の緑川武志みどりかわたけしが問いかけると、クラス委員を務める男子生徒は確認するようにたずねてきた。

白草四葉しろくさよつばの協力があれば、なんとかなる、って考えているのか?」

 武志が、ゆっくりと首をタテに振ると、訪問者は満足したようだ。
 そして、竜司は微笑を浮かべながら言葉を続ける。
 
「それなら、問題の解決は早くなるかもな。オレ自身は、千棘咲ちとげさくくんのような的確なアドバイスをできるわけじゃないが……がいれば、木南蒼きなみあおいに負けないくらいの講義をしてもらえるぞ。これは、オレの経験談だから信用してもらってイイ」

 彼が語った人物名を耳にした武志は、驚きの声を上げる。

「黒田、なんでその名前を知ってるんだよ?」

 それは、彼の自室の書棚に収まっている文庫本のタイトル『千棘ちとげくんはサイダー瓶の中』や『底辺キャラ 外崎とのざきくん』の登場人物の名前だったからだ。

「いや、なんでって、オレもラノベを読んでるからだが? まあ、ウチのクラスの壮馬……黄瀬壮馬きせそうまの影響だけどな。アイツの要望で、オレのアマゾンアカウントからラノベを注文してるからだと思うが、オススメ書籍には、ラノベばっかり表示されやがる。この前は、ページトップに、『学園一の美少女が休み時間のたびに、非モテのオレに話しかけて来る件』ってタイトルがオススメ表示されていたぞ? どうだ、怖いだろう!?」

 ニヤリと笑いながら答える竜司に対して、武志は「ハハッ……」と引き気味に苦笑したあと、醒めた口調で助言した。

「黒田、僕が言うのもなんだけど……友だちは選んだほうが良いと思う」

「それについては、白草をはじめ、各方面から指摘されているところだから、同意するよ」

 クラス委員は、肩をすくめながら語るが、その友人について、言葉のうえでは突き放したような物言いをしているものの、目の前の男子と黄瀬壮馬というクラスメートの間には、奥底にある信頼関係のようなものが透けて見えて、武志のような、古くからの友人が学園にいない生徒からすると、それが不思議に感じられた。

 そんな竜司のことをもう少し知ってみたいと思った彼は、話題を変える雰囲気を装いながら、たずねてみる。

「く、黒田……他に用事がなければ、聞いてみたいことがあるんだけど……」

「ん? なんだ? 今日は、緑川の意志確認をしたかっただけだから、もう、他に重大な要件があるわけじゃないが……」

「さっき、『撤退戦略』とかいうものについて語ってたとき、『オレも、この道に走ろうか迷っているところだから、推しキャラの語り合いくらいなら出来るぞ』って言ってなかったか?」

「あぁ、たしかに、そう言ったな。なんだ、オレの推しキャラを聞きたいのか? いまなら、『その磁器人形アンティークドールは恋をする』の北川真凛きたがわまりんちゃんだな。非モテに優しいギャルは、神に等しい存在なんだよ」

 竜司がそう答えると、部屋の主は、クラスメートの手を自らの両手でガッチリとつかんだ。

「同志よ! つ、ついでに聞くけど、『ウ◯娘』のゴールド◯チーは、どうだ?」

「あぁ、ストライクゾーンのド真ん中だ! あのしち面倒くさい性格が、オレの心をつかんで離さない。そう言う緑川は、トーセンジョー◯ンは、どうなんだ?」

「ぼ、僕にジ◯ーダンのシナリオについて語らせると、二晩ふたばんは掛かるぞ? 覚悟はいいか?」

 武志が返答すると、竜司は、「望むところだ!」と、即答して口角を崩す。

「壮馬は、こういう話しにまったく食いついて来なくてな~。好きな『ウ◯娘』のキャラクターをオールマイティーに使えるクリスマスオ◯リだの、中距離ならネ◯ユニヴァース、マイル短距離なら青◯ビーだの、キャラ性能の話ししか出てこなくて、お話しにならない。ソシャゲのキャラガチャは、ではなくで引くもんだろう?」

 クラス委員の熱弁に、部屋の主も、「あぁ、そのとおりだ!」と、力強くうなずく。
 そして、武志はこう続けた。

「黒田をオトコと見込んで、ボクのお宝本の価値をキミに問うてみたいんだ。いま、手元には、こんなコミックがあるんだけど……」

 そう言って、彼が鍵付きの棚から取り出したのは、 『オタクだってギャルを愛したい』というタイトルが書かれたコミックの単行本と『古泉ふるいずみん家はどうやらギャルの溜まり場になってるらしい』という単行本シリーズだった。
 
「僕の宝物と言って良いこの作品を読んで、どう感じるのか……ぜひ、黒田の意見を聞かせてほしいんだ」

 突然の申し出に、面食らった竜司だが、受け取ったコミックをペラペラとめくり、武志に返答する。

「それは、一向に構わないんだが……緑川、おまえ、自分の好みに素直すぎないか?」

「い、いいだろ別に……?」

 そう返答する武志に竜司は苦笑する。
 そして、

「なんだよ、黒田! ニヤニヤ笑って……」

と反発するクラスメートに、竜司は、少し真面目な表情で答えるのだった。 
 
「いや……恋愛離れって言われる中で、リアルに好意を抱ける女子がいるオレたちは、幸せなのかも、と思っただけだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

処理中です...