初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
上 下
283 / 295
第四部

第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑧

しおりを挟む
 緑川家みどりかわけへの二度目の訪問を終え、シロと作戦会議を行ったあと、オレは野球部に所属する同級生に連絡を取った。二年生にして、チームの四番を任されている佐藤照明さとうてるあきは、オレの頼みを快く引き受けてくれた。

 オレのプランが計画どおり進むなら、引きこもってしまったクラスメートを自室から連れ出す「天岩戸あまのいわとプロジェクト」は、そろそろ、大きな転機を迎えるハズだ。

 翌日、オレは担任教師への経過報告と、この日の活動予定を伝え終えると、シロと佐藤とともに、緑川家に向かうことにした。ユリちゃん先生には、

「早ければ、今日中に進展があると思います」

と、伝えておいた。

「たまには息抜きで、放課後に学外に出るのも良いが……ホントに、オレは、必要なのか?」

 テルこと野球部の佐藤は、オレが指定した道具を前カゴに入れている自転車を漕ぎながら疑問を呈する。

「説得力を増すということと、オレたちの本気度を示すという意味で、おまえが適役なんだよ、テル。あとで、宮っ子ラーメン奢るから、しっかり、スラッガーとしての役割をはたしてくれよ」

 そう答えると、県内有数と言われる強打者は、笑顔で返答する。

「チャーシュー麺、大盛りな!」

 オレは、この経費をどこに請求しようかと考えつつ、「了解!」と応答した。
 ちなみに、宮っ子ラーメンとは、市内を中心に店舗展開をしているラーメンチェーンのことだ。国産豚と小豆島醤油の旨味が凝縮したスープに特注の中細ストレート麺、やわらかいチャーシューと店内切りの青ねぎがたっぷりのっているオーソドックスなスタイルの中華そばは、「毎日食べても飽きない」「がっつりだけどあっさり」「中毒性がある」と地域住民に人気を博している。

 もちろん、そのチャーシュー麺が、今回の同行者である野球部メンバーの大好物であることは、把握済みだ。

 そして、オレと同じくオープン・スクールでのシロへの告白が失敗した佐藤テルだが、そのシロ本人と行動をともにすることを、特に苦痛に感じている訳ではないようだ。

「ありがとう、佐藤くん! クロの無茶振りに付き合ってもらって、ゴメンね」

 柔らかな笑みで、語りかけるシロに対して、佐藤は、

「いや、白草といっしょに居られるなら……」

と、顔を紅潮させている。

(シロは、オレにあんな表情を見せないのに……やっぱり、ラーメンを奢るのは、やめておくか?)

 という考えが、一瞬、頭をよぎるが、目的の遂行のため、雑念を振り払うことにした。

 そんな中、三人でクラスメートの家に向かう途中、身長の高い三人組とすれ違う。

 他校の制服を着崩して、茶色に染まった髪は、地域の中では進学校と言える、ウチの高校の生徒とは異なった雰囲気を発している。
 オレたちの脇を通り過ぎた三人は、真ん中を歩くシロに目を止め、あからさまな態度で口笛を鳴らし、ニヤニヤと笑みを浮かべた。

 その態度に、彼らと比べても一回り身長の高いテルが、ギロリと視線を向けると、彼らは、露骨に肩をすくめる仕草をとったあと、コチラを一瞥して去っていった。
 
 こんな風に少し気分が悪くなる出来事はあったものの、三度目となる緑川家の訪問は、来訪者がこれまでのこともあり、スムーズに進んだ。

 オレは、緑川の母親に、早ければ、今日中に一人息子を部屋の外に出すことが出来るだろう、という公算とともに、彼女に協力を要請する。

 オレの申し出に対して、緑川母みどりかわははは、一瞬、渋い顔をしたものの、

「なにかあれば、責任は学校が取ってくれます」
 
という一言が効いたのか、最後は、了承してくれた。
 緑川家の承諾を得られたことで、オレはテルとともに、二階に向かい、シロにはリビングで待機してもらうことにした。一昨日や昨日までと違い、緑川武志みどりかわたけしの部屋の前から、即座に退却するつもりはない。
 交渉や話し合いが長引くことを考えて、大人のお相手が得意な幼なじみに、緑川の母親の話し相手になってもらう。緑川母みどりかわははには、前日に「早ければ、すぐに進展があると思います」と伝えているで、期待ともにあらわれる緊張をほぐしてもらう、という大切な役割がある。

 にテルを誘導してもらう手伝いをしてもらった緑川の母親にお礼の言葉を述べ、彼女がリビングに降りて行ったことを確認してから、オレは、通算で三度目となるノックを行う。

「緑川! 今日も来させてもらった! ちょっと、話しをさせてもらえないか?」

「いい加減しつこいぞ、黒田! 僕には、話すことなんて、ナニもない!」

「まあ、そう言うなよ、緑川。こうして、三日も家に来ているんだ。ちょっとくらい、話しを聞いてくれても良いじゃねぇか?」

「なんで、僕に構うんだよ! 推薦入試のための点数稼ぎか!? それとも、未練たらしくフラレた女子に良いカッコをしたいのか? そっか、そうなんだろう?」

 本人としては、図星を突いたつもりなのだろう。もりろん、ドア越しなので表情は読み取れないが、反論の煽り文句からは、「してやった!」という感情が読み取れる。その言動に、少しもイラつかなかったというとウソになるが、それでも、オレは、自分の狙いどおりに、コトが運んでいることを実感し、内心でニヤリとほくそ笑む。

 そうして、オレはを回収するべく、籠城する部屋の主に声をかける。
 
「QRコードの動画を見てくれたみたいだな。そこで、緑川、おまえの頼みがあるんだ。オレの身の上ばなしを聞いてくれないか? 色々と気を使う相手が多くて、なかなか話し相手に恵まれなくてな……」

「な、なんで、僕が黒田の話しを聞かなくちゃイケないんだよ!? そんな義理は無いぞ!」

「まあ、そうかも知れないが、オレも担任のユリちゃん先生や、おまえの母ちゃんに問題解決の約束をしているからな……これ以上、話し合いが長引くなら強硬手段を取ることも考えなくちゃならないんだ」

 そう言ったオレは、スマホでメッセージアプリのLANEを起動させて、テルに「そろそろ頼む!」というメッセージを送った。

 その直後、オレのいる廊下にも響くくらいのインパクトで、

 ブンッ――――――!

という強烈な音が耳に飛び込んできた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

処理中です...