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第三部
第4章〜三大配信者 芦宮高校最大の決戦〜⑫
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「結・果・発・表!」
お笑い芸人の大物司会者に、堂々とした口調で声を張る寿生徒会長。
騒然としていた観覧席が、一瞬にして静まり返る。
今回の投票結果が気になるのは、これまでの活動の是非に加えて、最下位のチームには罰ゲームが課されるボクたちだけでは無いようだ。
ボクは、吐くような緊張感をこらえながら固いツバを飲み込み、天竹さんをはじめ、文芸部のみんなは、一様に目をギュッと閉じて両手を胸の前で組み、祈るような仕草をしている。
そんなボクたちの緊迫した感情をよそに、生徒会長は、ラフな口調で、
「ポチっとな!」
と、つぶやいて、投票結果の数字を表示させた。
その結果は――――――。
・Cross Over
314票
・Vtuber芦宮サクラの突撃クラブ訪問
316票
・Bring back Youth~青春を取り戻そう~
315票
結果が表示されると、歓声と悲鳴が混じったような声が大講堂に響き渡る。
得票数トップは、竜司たち。ボクたちは次点だ。
そして、トップバッターにして、もっとも大講堂を盛り上げた白草さんたちは、僅差で最下位となっている。
「や、やった! やりました、くろセンパイ!」
声は絞っているものの感激のあまり竜司に抱きつこうとする佐倉さんに対して、
「そ、そんな……ウソでしょ……」
と、茫然自失の状態で、スクリーンを見つめているのは白草さんだ。
ある意味で、今回の企画の中心人物と言って良いふたりが対象的な表情を見せる一方で、ボクと活動をともにした文芸部のメンバーは、
「あぁ、二位だったか……」
「一票差だなんて……」
と、顔を見合わせながら、肩を落とすような姿を見せている。
ボクも、天竹さんと視線を交わし、お互いに、もう一度スクリーンに映し出された結果を確認してから、とりあえず、最下位の罰ゲームは免れた、安堵のため息をつこうととした、その瞬間だった――――――。
舞台上で結果の発表を行ったばかりの寿先輩が、イヤモニに手を当てながら語りだした。
「えっ!? ちょっと、待って! これが、すべての投票じゃない? あっ、事前投票の結果があるんだね! その票数を合算した最終投票結果があるの?」
彼女は、ひとり言のように語っているが、どうやら、イヤホン・モニターを通じて、生徒会の役員から連絡があったようだ。
その伝達事項を聞き終えたのだろうか、生徒会長は、観覧席を向き直って進行を続ける。
「え~、生徒会執行部から連絡が入りました! いま、見てもらっているのは、この場で投票をしてもらったものだけなんだけど……事前投票の8票を加えたモノが最終結果になります。その結果を、あらためて発表するよ!」
そう宣言したの寿先輩は、今度は、さっきよりも軽い口調で宣言した。
「ほい、それじゃ、結果発表。ポチッとな!」
正真正銘の最終結果の投票数は――――――。
・Cross Over
316票
・Vtuber芦宮サクラの突撃クラブ訪問
316票
・Bring back Youth~青春を取り戻そう~
321票
ふたたび、歓声と悲鳴、そして、大きな拍手が大講堂に響き渡った。
「きゃ~! やった~!!」
今度は、ボクのそばで嬌声が上がり、石沢さんや今村さんたち、文芸部のメンバーが、お互いに抱き合っている。
そのかたわらでは、白草さんが、さっきまでとは異なる形容するのが難しい、複雑な表情を浮かべ、宮野さんは、そんな彼女のようすをチラチラとうかがっているようだ。
そして、竜司に抱きつこうとしていた佐倉さんは、ハグする寸前の状態で固まったまま、スクリーンを凝視し、
「そ、そんな……どうして……? ワタシたちがトップだったのに……」
と、あっけに取られたような表情を見せていた。
どうして……と言っても、事前投票の8票は、文芸部のメンバーと白草さん、宮野さん、そして、寿生徒会長が投じた票のはずで、それぞれが、自分と関わりのあるグループに投票したと考えれば、この最終結果になるのも、当然のことだろう。
もちろん、広報部に所属するボクと竜司、そして、佐倉さんに投票権がなく、(クラブに所属している生徒会長は別にして)ボクらとまったく同じ活動をしてきた文芸部のみんなと白草さん、宮野さんに投票権があるのは不公平ではないか、と感じるのも当然のことだと思うけど……。
無意識のうちにガッツポーズを取ろうとしていた握りこぶしを開くと、ボクと同じように事前投票の内訳を予測したのか、天竹さんが声をかけてきた。
「手放しで喜んで良いのかはわからないですけど……」
彼女の言葉に、うなずきながら、
「それでも、やっぱり嬉しいよね……」
と、お互いに喜びを分かち合うように、握手する。
それと同時に、ステージで進行を務める寿生徒会長の声が聞こえた。
「それでは、『第1回PR動画コンテスト』で見事、得票数トップに輝いた『Bring back Youth~青春を取り戻そう~』を制作した、黄瀬壮馬くんと文芸部のみんなに、もう一度、ステージに上ってもらいましょう!」
彼女の声と大きな拍手にうながされ、ボクと文芸部のメンバーは、ふたたびステージに上った。
お笑い芸人の大物司会者に、堂々とした口調で声を張る寿生徒会長。
騒然としていた観覧席が、一瞬にして静まり返る。
今回の投票結果が気になるのは、これまでの活動の是非に加えて、最下位のチームには罰ゲームが課されるボクたちだけでは無いようだ。
ボクは、吐くような緊張感をこらえながら固いツバを飲み込み、天竹さんをはじめ、文芸部のみんなは、一様に目をギュッと閉じて両手を胸の前で組み、祈るような仕草をしている。
そんなボクたちの緊迫した感情をよそに、生徒会長は、ラフな口調で、
「ポチっとな!」
と、つぶやいて、投票結果の数字を表示させた。
その結果は――――――。
・Cross Over
314票
・Vtuber芦宮サクラの突撃クラブ訪問
316票
・Bring back Youth~青春を取り戻そう~
315票
結果が表示されると、歓声と悲鳴が混じったような声が大講堂に響き渡る。
得票数トップは、竜司たち。ボクたちは次点だ。
そして、トップバッターにして、もっとも大講堂を盛り上げた白草さんたちは、僅差で最下位となっている。
「や、やった! やりました、くろセンパイ!」
声は絞っているものの感激のあまり竜司に抱きつこうとする佐倉さんに対して、
「そ、そんな……ウソでしょ……」
と、茫然自失の状態で、スクリーンを見つめているのは白草さんだ。
ある意味で、今回の企画の中心人物と言って良いふたりが対象的な表情を見せる一方で、ボクと活動をともにした文芸部のメンバーは、
「あぁ、二位だったか……」
「一票差だなんて……」
と、顔を見合わせながら、肩を落とすような姿を見せている。
ボクも、天竹さんと視線を交わし、お互いに、もう一度スクリーンに映し出された結果を確認してから、とりあえず、最下位の罰ゲームは免れた、安堵のため息をつこうととした、その瞬間だった――――――。
舞台上で結果の発表を行ったばかりの寿先輩が、イヤモニに手を当てながら語りだした。
「えっ!? ちょっと、待って! これが、すべての投票じゃない? あっ、事前投票の結果があるんだね! その票数を合算した最終投票結果があるの?」
彼女は、ひとり言のように語っているが、どうやら、イヤホン・モニターを通じて、生徒会の役員から連絡があったようだ。
その伝達事項を聞き終えたのだろうか、生徒会長は、観覧席を向き直って進行を続ける。
「え~、生徒会執行部から連絡が入りました! いま、見てもらっているのは、この場で投票をしてもらったものだけなんだけど……事前投票の8票を加えたモノが最終結果になります。その結果を、あらためて発表するよ!」
そう宣言したの寿先輩は、今度は、さっきよりも軽い口調で宣言した。
「ほい、それじゃ、結果発表。ポチッとな!」
正真正銘の最終結果の投票数は――――――。
・Cross Over
316票
・Vtuber芦宮サクラの突撃クラブ訪問
316票
・Bring back Youth~青春を取り戻そう~
321票
ふたたび、歓声と悲鳴、そして、大きな拍手が大講堂に響き渡った。
「きゃ~! やった~!!」
今度は、ボクのそばで嬌声が上がり、石沢さんや今村さんたち、文芸部のメンバーが、お互いに抱き合っている。
そのかたわらでは、白草さんが、さっきまでとは異なる形容するのが難しい、複雑な表情を浮かべ、宮野さんは、そんな彼女のようすをチラチラとうかがっているようだ。
そして、竜司に抱きつこうとしていた佐倉さんは、ハグする寸前の状態で固まったまま、スクリーンを凝視し、
「そ、そんな……どうして……? ワタシたちがトップだったのに……」
と、あっけに取られたような表情を見せていた。
どうして……と言っても、事前投票の8票は、文芸部のメンバーと白草さん、宮野さん、そして、寿生徒会長が投じた票のはずで、それぞれが、自分と関わりのあるグループに投票したと考えれば、この最終結果になるのも、当然のことだろう。
もちろん、広報部に所属するボクと竜司、そして、佐倉さんに投票権がなく、(クラブに所属している生徒会長は別にして)ボクらとまったく同じ活動をしてきた文芸部のみんなと白草さん、宮野さんに投票権があるのは不公平ではないか、と感じるのも当然のことだと思うけど……。
無意識のうちにガッツポーズを取ろうとしていた握りこぶしを開くと、ボクと同じように事前投票の内訳を予測したのか、天竹さんが声をかけてきた。
「手放しで喜んで良いのかはわからないですけど……」
彼女の言葉に、うなずきながら、
「それでも、やっぱり嬉しいよね……」
と、お互いに喜びを分かち合うように、握手する。
それと同時に、ステージで進行を務める寿生徒会長の声が聞こえた。
「それでは、『第1回PR動画コンテスト』で見事、得票数トップに輝いた『Bring back Youth~青春を取り戻そう~』を制作した、黄瀬壮馬くんと文芸部のみんなに、もう一度、ステージに上ってもらいましょう!」
彼女の声と大きな拍手にうながされ、ボクと文芸部のメンバーは、ふたたびステージに上った。
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