256 / 331
第三部
第4章〜三大配信者 芦宮高校最大の決戦〜③
しおりを挟む
~白草四葉の見解~
「うん! 順調な仕上がり! これなら、いつでも本番用の撮影に入れるわね」
月曜日の放課後、小会議室に移動したわたしは、タブレットに録画した動画で、雪乃と一緒に、ダンス部のメンバーと練習を重ねてきたプロペラ・ダンスの映像を確認している。
「ダンス部の三人のパフォーマンスも素晴らしいけんども、ヨツバちゃんも、さすがの動きだべ……」
自分を慕ってくれている下級生の素直な感想を耳にして、わたしの気持ちは大いに満たされる。
「そんなことないよ……雪乃のダンスだって素敵じゃない! こんな素質があるなら、今からダンス部に入部しても大丈夫なんじゃない?」
雪乃の言葉に、謙遜の意思を示しつつ、彼女のダンスの実力に触れておくのも忘れない。
「もったいないことでス……ヨツバちゃんに誉めてもらえるなんて、もう、この世に思い残すことはないべ……」
大げさなことを言う雪乃の言葉に微笑みながら、わたしは、ここ数週間の自分たちの活動を振り返る。
連絡会に出席してくれていた雪乃によれば、クロのグループも、黄瀬クンたちのグループも、今回の『PR動画コンテスト』の活動には、苦労が多いようだけど……。
スプレッドシートで、クロたちの活動内容を確認したり、雪乃から連絡会の報告を受けるたびに、数多くのクラブと交渉する手間を惜しんだわたしが、協力先をダンス部一本に絞った選択は、間違っていなかったという手応えを感じていた。
「シロと違って、こっちは、組織票を固めなきゃいけないからな」
と、クロは言っていたけど、時間に余裕を持ちながら宣伝活動を行って、映像のクオリティーを上げれば、協力したクラブの組織票に頼らなくても、多くの生徒に投票してもらえるはずで、
「宣伝活動と動画の完成度に力を注ぐことこそが、今回の活動で一番たいせつなこと」
だと考えているわたしにとって、クロや黄瀬クンのアプローチ方法には、どこか歯がゆさを感じていた。
「このコンテストが終わったら、動画をバズらせるコツをクロにも教えてあげる!」
なんて、言ってしまったのも、そうした理由からで、口に出したあとに、
(しまった……思わず余計なことを言っちゃったけど、上から目線に聞こえてなかったかな?)
と、不安になったけど、どうやら、クロ自身は、あまり気にしていないようすだった。
他の男子がどう感じるのかはわからないけど、こうした細かいことを気に留めないところが、クロの良さであり、わたしが彼の性格を気に入っている理由でもある。
ともあれ、今回の『PR動画コンテスト』でのわたしの目標は、トップの投票数を得て、動画制作においての実力をクロやク○生意気な下級生に見せつけたうえで、広報部の外部アドバイザーとしての存在感を示すことにある。
その初手として始めたショート動画にまとめて、
#プロペラダンス
をの一文を加え、練習風景を投稿した映像は、狙いどおりの再生回数を稼いでいる。
こうして、わたしのフォロワーさんたちが、元の楽曲を探し出し、同じようにプロペラ・ダンスのショート動画を投稿し始めたので、それらの動画に「いいね!」を押し、コメントを付けて交流を図る。
いつも以上に、ファンサービスを行う第二弾の攻勢を行ったことで、動画サイトでは、この一週間で、あっという間に、同じ楽曲が投稿されはじめた。
すでに、ネットメディアを中心に、わたしの投稿した動画が注目を集め始めているので、この企画が、6月ではなく、もう少し早い時期に開催されていれば、
「上半期に最もバズったダンス曲」
として、楽曲ごと注目されたかも知れないことを考えると、少し惜しい気もするけど、そこは、不満を述べても仕方ない。
あとは、フルバージョンのダンスの完成度と編集する動画のクオリティを上げることと、わたしの秘策といっても良い企画書を生徒会に提出することに専念するだけだ。
ここまで、わたしの活動に付き合ってくれた、ダンス部の摩耶と奈々子、伊原先輩、そして、雪乃には、感謝の気持ちしかない。
基本的に、これまでの活動では、ひとりで歌とダンスを披露することの多かったわたしにとって、ダンス部のメンバーや雪乃と一緒に身体を動かし、みんなで話し合いながらダンスの完成度を高めていく過程は、新鮮で、本当に楽しいものだった。
ギョーカイに憧れを持っているという伊原先輩には、わたしが、テレビに出演するときにお世話になった、健全な芸能事務所を紹介しようと考えている。
狙いどおりに、自分たちのPR動画がトップの得票を得たあかつきには、彼女たちや協力してくれたダンス部のみんなと喜びを分かち合いたい。
そして、クロと一緒に悔しがる下級生に対して、わたしの存在の大きさというものを、見せつけるのだ。
その瞬間のことを想像するだけで、口もとが緩み、表情が崩れてしまうことを止めることができず、思わず鼻と口を両手で覆ってしまう。
「雪乃、そろそろダンス部に移動しよっか? 今週中にフルバージョンの動画を撮影しちゃおう!」
可愛らしい下級生に、あらためてモチベーションをあげるように声をかけたわたしの耳には、
「はうあ~。ドス黒い感情に支配されてほくそ笑むヨツバちゃんの横顔は、焼石岳に咲くクロユリのように美しいべ……」
という雪乃のつぶやきが聞こえたような気もするけれど、きっと、それは聞き違いなのだろう。
「うん! 順調な仕上がり! これなら、いつでも本番用の撮影に入れるわね」
月曜日の放課後、小会議室に移動したわたしは、タブレットに録画した動画で、雪乃と一緒に、ダンス部のメンバーと練習を重ねてきたプロペラ・ダンスの映像を確認している。
「ダンス部の三人のパフォーマンスも素晴らしいけんども、ヨツバちゃんも、さすがの動きだべ……」
自分を慕ってくれている下級生の素直な感想を耳にして、わたしの気持ちは大いに満たされる。
「そんなことないよ……雪乃のダンスだって素敵じゃない! こんな素質があるなら、今からダンス部に入部しても大丈夫なんじゃない?」
雪乃の言葉に、謙遜の意思を示しつつ、彼女のダンスの実力に触れておくのも忘れない。
「もったいないことでス……ヨツバちゃんに誉めてもらえるなんて、もう、この世に思い残すことはないべ……」
大げさなことを言う雪乃の言葉に微笑みながら、わたしは、ここ数週間の自分たちの活動を振り返る。
連絡会に出席してくれていた雪乃によれば、クロのグループも、黄瀬クンたちのグループも、今回の『PR動画コンテスト』の活動には、苦労が多いようだけど……。
スプレッドシートで、クロたちの活動内容を確認したり、雪乃から連絡会の報告を受けるたびに、数多くのクラブと交渉する手間を惜しんだわたしが、協力先をダンス部一本に絞った選択は、間違っていなかったという手応えを感じていた。
「シロと違って、こっちは、組織票を固めなきゃいけないからな」
と、クロは言っていたけど、時間に余裕を持ちながら宣伝活動を行って、映像のクオリティーを上げれば、協力したクラブの組織票に頼らなくても、多くの生徒に投票してもらえるはずで、
「宣伝活動と動画の完成度に力を注ぐことこそが、今回の活動で一番たいせつなこと」
だと考えているわたしにとって、クロや黄瀬クンのアプローチ方法には、どこか歯がゆさを感じていた。
「このコンテストが終わったら、動画をバズらせるコツをクロにも教えてあげる!」
なんて、言ってしまったのも、そうした理由からで、口に出したあとに、
(しまった……思わず余計なことを言っちゃったけど、上から目線に聞こえてなかったかな?)
と、不安になったけど、どうやら、クロ自身は、あまり気にしていないようすだった。
他の男子がどう感じるのかはわからないけど、こうした細かいことを気に留めないところが、クロの良さであり、わたしが彼の性格を気に入っている理由でもある。
ともあれ、今回の『PR動画コンテスト』でのわたしの目標は、トップの投票数を得て、動画制作においての実力をクロやク○生意気な下級生に見せつけたうえで、広報部の外部アドバイザーとしての存在感を示すことにある。
その初手として始めたショート動画にまとめて、
#プロペラダンス
をの一文を加え、練習風景を投稿した映像は、狙いどおりの再生回数を稼いでいる。
こうして、わたしのフォロワーさんたちが、元の楽曲を探し出し、同じようにプロペラ・ダンスのショート動画を投稿し始めたので、それらの動画に「いいね!」を押し、コメントを付けて交流を図る。
いつも以上に、ファンサービスを行う第二弾の攻勢を行ったことで、動画サイトでは、この一週間で、あっという間に、同じ楽曲が投稿されはじめた。
すでに、ネットメディアを中心に、わたしの投稿した動画が注目を集め始めているので、この企画が、6月ではなく、もう少し早い時期に開催されていれば、
「上半期に最もバズったダンス曲」
として、楽曲ごと注目されたかも知れないことを考えると、少し惜しい気もするけど、そこは、不満を述べても仕方ない。
あとは、フルバージョンのダンスの完成度と編集する動画のクオリティを上げることと、わたしの秘策といっても良い企画書を生徒会に提出することに専念するだけだ。
ここまで、わたしの活動に付き合ってくれた、ダンス部の摩耶と奈々子、伊原先輩、そして、雪乃には、感謝の気持ちしかない。
基本的に、これまでの活動では、ひとりで歌とダンスを披露することの多かったわたしにとって、ダンス部のメンバーや雪乃と一緒に身体を動かし、みんなで話し合いながらダンスの完成度を高めていく過程は、新鮮で、本当に楽しいものだった。
ギョーカイに憧れを持っているという伊原先輩には、わたしが、テレビに出演するときにお世話になった、健全な芸能事務所を紹介しようと考えている。
狙いどおりに、自分たちのPR動画がトップの得票を得たあかつきには、彼女たちや協力してくれたダンス部のみんなと喜びを分かち合いたい。
そして、クロと一緒に悔しがる下級生に対して、わたしの存在の大きさというものを、見せつけるのだ。
その瞬間のことを想像するだけで、口もとが緩み、表情が崩れてしまうことを止めることができず、思わず鼻と口を両手で覆ってしまう。
「雪乃、そろそろダンス部に移動しよっか? 今週中にフルバージョンの動画を撮影しちゃおう!」
可愛らしい下級生に、あらためてモチベーションをあげるように声をかけたわたしの耳には、
「はうあ~。ドス黒い感情に支配されてほくそ笑むヨツバちゃんの横顔は、焼石岳に咲くクロユリのように美しいべ……」
という雪乃のつぶやきが聞こえたような気もするけれど、きっと、それは聞き違いなのだろう。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
【連載中】は、短時間で読めるように短い文節ごとでの公開になります。
(お気に入り登録いただけると通知が行き、便利かもです)
その後、誤字脱字修正や辻褄合わせが行われて、合成された1話分にタイトルをつけ再公開されます。
(その前に、仮まとめ版が出る場合もある、かも、しれない、可能性)
物語の細部は連載時と変わることが多いので、二度読むのが通です。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる