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第三部
幕間③〜極醸!生徒会〜その3・前編
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竜司・壮馬・四葉たち各グループの動画制作活動が佳境を迎える中――――――。
生徒会では、月末の『PR動画コンテスト』に向けて、現状での投票予測が行われていた。
「みんな、動画制作がんばってるよね~。うちの部にも、今週の日曜日に黄瀬くんたちが、撮影に来てくれるんだ~。ところで、副会長は、どのグループが一番になると思う?」
生徒会長の美奈子が、鳳花に声をかけると、広報部の代表者にして生徒会副会長を務める彼女は、確認していた書類から視線を外して答える。
「それには、投票の動向分析が必要ね。茉純さん、最新の生徒数と部活加入者に関するデータを出してくれる?」
副会長に声をかけられた書紀担当の生野茉純は、すぐにPC端末を操作し、Windowsの表計算ソフトのデータを確認する。
「全校生徒数は、四月当初と変わらず960名。そのうち、約6割にあたる577名が、どこかのクラブに所属しています」
「ウチの学校は、クラブの掛け持ちが認められていないから、その人数が、ぴったり各クラブの組織票になる、と……」
茉純の回答に美奈子が応答すると、鳳花が指摘を加える。
「私たち広報部は、今回投票権がないから、私や黒田くんたち広報部の7人は省いておいてね。もっとも、今回の企画に協力してくれた白草さん、宮野さん、紅野さんと文芸部の部員さんたちには、投票をしてもらおうと思うけど……というわけで、クラブ所属生徒を除いた残りの400票弱が、実質的な浮動票になるわね」
副会長の言葉を受けて、書紀担当は、Googleドライブにアクセスし、竜司たち各グループと取材を受けたクラブと活動内容の一覧をまとめたスプレッドシートを参照する。
そして、3つのグループと協力関係にあるクラブを三色に色分けし、部員数のデータ抽出を行った。
「最新の動向によると、白草さん・宮野さんと協力関係にあるクラブは、ダンス部のみで合計30名。黒田くん・佐倉さんと協力関係にあるクラブは、野球部やサッカー部をはじめとする体育会系クラブと美術部・コンピュータークラブを含めた合計305名。黄瀬くんや天竹さんのグループと協力関係にあるクラブは、吹奏楽部などをはじめとした235名です。この中には、最近、黄瀬くんの取材を受けたバドミントン部が含まれています」
データを確認しながら、茉純が現状報告を行うと、鳳花が興味深そうな表情を見せる。
「あら……これは、面白いことになってるわね……もしも、バドミントン部が黒田くんたちとの協力関係を解消しなければ、投票前に結果は見えていたかも……」
ひとり、ほくそ笑むようにつぶやく副会長の言葉に、即座に反応した生徒会長が、
「なにそれ、どういうこと?」
と、興味津々のようすでたずねる。
「私たちの学校の全校生徒数は960人。今回は、3つのグループから投票先を選ぶから、全校生徒数の3分の1プラス1票の合計321票を得られれば、トップになれるわ。いまの時点で、黒田くんたちには、305票の組織票が計算できるけど、そこに、バドミントン部の投票数が加われば、勝利は安泰だったってこと。バドミントン部は、男女混合の大所帯だったと思うんだけど……茉純さん、バドミントン部の部員数は何名だったかしら?」
「現在のところ、一年生から三年生まで計45名とありますね」
自身の問いに即答した茉純に、「ありがとう」と丁寧な口調で、礼を述べてから、少しだけ間をおいた鳳花は、ゆっくりと、自説を展開する。
「さっきの305票に、バドミントン部の45票が加われば、合計350票となって、悠々と3分の1の投票数に達するわ。もちろん、取材に協力したクラブの全員が撮影を行ったグループに投票する保証はないけれど……黒田くんたちは、クラブへの帰属意識が強い体育会系の部活を抑えているし、他のグループに大量の得票が流れるとは考えにくいもの」
「は~、そっか~。なるほどね~。自主性を重んじる私たち吹奏楽部は、部員に投票先を強制する党議拘束をかけるつもりはないけど、みんな黄瀬くんのグループに投票するだろうし……黒田くんのところも、そんな感じか~。でも、こんな状況なら、ダンス部としかコラボしていない白草さんたちは、めちゃくちゃ不利じゃない?」
「それは、あなたの言うとおりね。もし、バドミントン部の鞍替えが無ければ、このまま、黒田くんと佐倉さんが勝利していた可能性が高いと思うし……でも、白草さんのことだから、無党派層……ううん、浮動票の取り込みに絶対的な自信があるんじゃないかしら」
副会長と会長のやり取りを受けて、書紀担当が、すかさず会話に加わる。
「白草さんたちが期待できる固定票は、ダンス部の30票のみです。321票以上の得票を目指すなら、約400票の浮動票のうち、75パーセントに当たる300票近くを得なければなりませんね」
茉純の言葉を耳にした美奈子は、
「うわ~! 高いハードルだな~。でも、白草さんなら、それくらいの得票を余裕で取っちゃうかも……と思わせる謎の恐ろしさがあるわ……」
と、口にした。
「あなたの言うとおりね、美奈子……スマホで確認してみたら、私のアカウントでも、白草さんたちのダンス動画に関する情報がたくさん流れてきたもの。ただ……いずれにしても、バドミントン部のおかげで、本番まで楽しめそうな状況になったと思うわ」
そんな風に満足げに微笑む鳳花たちの表情をながめていた会計担当の前田香緒里は、
(うわ~、みんな楽しそうだな~。あたしが、動画の制作する側だったら、罰ゲームのことを考えて、気が気じゃないよ……)
と、四葉や桃華に同情を寄せていた。
生徒会では、月末の『PR動画コンテスト』に向けて、現状での投票予測が行われていた。
「みんな、動画制作がんばってるよね~。うちの部にも、今週の日曜日に黄瀬くんたちが、撮影に来てくれるんだ~。ところで、副会長は、どのグループが一番になると思う?」
生徒会長の美奈子が、鳳花に声をかけると、広報部の代表者にして生徒会副会長を務める彼女は、確認していた書類から視線を外して答える。
「それには、投票の動向分析が必要ね。茉純さん、最新の生徒数と部活加入者に関するデータを出してくれる?」
副会長に声をかけられた書紀担当の生野茉純は、すぐにPC端末を操作し、Windowsの表計算ソフトのデータを確認する。
「全校生徒数は、四月当初と変わらず960名。そのうち、約6割にあたる577名が、どこかのクラブに所属しています」
「ウチの学校は、クラブの掛け持ちが認められていないから、その人数が、ぴったり各クラブの組織票になる、と……」
茉純の回答に美奈子が応答すると、鳳花が指摘を加える。
「私たち広報部は、今回投票権がないから、私や黒田くんたち広報部の7人は省いておいてね。もっとも、今回の企画に協力してくれた白草さん、宮野さん、紅野さんと文芸部の部員さんたちには、投票をしてもらおうと思うけど……というわけで、クラブ所属生徒を除いた残りの400票弱が、実質的な浮動票になるわね」
副会長の言葉を受けて、書紀担当は、Googleドライブにアクセスし、竜司たち各グループと取材を受けたクラブと活動内容の一覧をまとめたスプレッドシートを参照する。
そして、3つのグループと協力関係にあるクラブを三色に色分けし、部員数のデータ抽出を行った。
「最新の動向によると、白草さん・宮野さんと協力関係にあるクラブは、ダンス部のみで合計30名。黒田くん・佐倉さんと協力関係にあるクラブは、野球部やサッカー部をはじめとする体育会系クラブと美術部・コンピュータークラブを含めた合計305名。黄瀬くんや天竹さんのグループと協力関係にあるクラブは、吹奏楽部などをはじめとした235名です。この中には、最近、黄瀬くんの取材を受けたバドミントン部が含まれています」
データを確認しながら、茉純が現状報告を行うと、鳳花が興味深そうな表情を見せる。
「あら……これは、面白いことになってるわね……もしも、バドミントン部が黒田くんたちとの協力関係を解消しなければ、投票前に結果は見えていたかも……」
ひとり、ほくそ笑むようにつぶやく副会長の言葉に、即座に反応した生徒会長が、
「なにそれ、どういうこと?」
と、興味津々のようすでたずねる。
「私たちの学校の全校生徒数は960人。今回は、3つのグループから投票先を選ぶから、全校生徒数の3分の1プラス1票の合計321票を得られれば、トップになれるわ。いまの時点で、黒田くんたちには、305票の組織票が計算できるけど、そこに、バドミントン部の投票数が加われば、勝利は安泰だったってこと。バドミントン部は、男女混合の大所帯だったと思うんだけど……茉純さん、バドミントン部の部員数は何名だったかしら?」
「現在のところ、一年生から三年生まで計45名とありますね」
自身の問いに即答した茉純に、「ありがとう」と丁寧な口調で、礼を述べてから、少しだけ間をおいた鳳花は、ゆっくりと、自説を展開する。
「さっきの305票に、バドミントン部の45票が加われば、合計350票となって、悠々と3分の1の投票数に達するわ。もちろん、取材に協力したクラブの全員が撮影を行ったグループに投票する保証はないけれど……黒田くんたちは、クラブへの帰属意識が強い体育会系の部活を抑えているし、他のグループに大量の得票が流れるとは考えにくいもの」
「は~、そっか~。なるほどね~。自主性を重んじる私たち吹奏楽部は、部員に投票先を強制する党議拘束をかけるつもりはないけど、みんな黄瀬くんのグループに投票するだろうし……黒田くんのところも、そんな感じか~。でも、こんな状況なら、ダンス部としかコラボしていない白草さんたちは、めちゃくちゃ不利じゃない?」
「それは、あなたの言うとおりね。もし、バドミントン部の鞍替えが無ければ、このまま、黒田くんと佐倉さんが勝利していた可能性が高いと思うし……でも、白草さんのことだから、無党派層……ううん、浮動票の取り込みに絶対的な自信があるんじゃないかしら」
副会長と会長のやり取りを受けて、書紀担当が、すかさず会話に加わる。
「白草さんたちが期待できる固定票は、ダンス部の30票のみです。321票以上の得票を目指すなら、約400票の浮動票のうち、75パーセントに当たる300票近くを得なければなりませんね」
茉純の言葉を耳にした美奈子は、
「うわ~! 高いハードルだな~。でも、白草さんなら、それくらいの得票を余裕で取っちゃうかも……と思わせる謎の恐ろしさがあるわ……」
と、口にした。
「あなたの言うとおりね、美奈子……スマホで確認してみたら、私のアカウントでも、白草さんたちのダンス動画に関する情報がたくさん流れてきたもの。ただ……いずれにしても、バドミントン部のおかげで、本番まで楽しめそうな状況になったと思うわ」
そんな風に満足げに微笑む鳳花たちの表情をながめていた会計担当の前田香緒里は、
(うわ~、みんな楽しそうだな~。あたしが、動画の制作する側だったら、罰ゲームのことを考えて、気が気じゃないよ……)
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