初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
上 下
241 / 295
第三部

第3章〜裏切りのサーカス〜④

しおりを挟む
 天竹あまたけさんたちの待つ図書室に移動するまでの間、ボクは、連絡会の中身を頭の中で確認しながら、竜司や鳳花ほうか部長が発した言葉について考えていた。
 竜司と佐倉さんは、ボクたちがクラブ訪問を終えたあと、すでに提携するグループを決めていただろうクラブの方針を覆すような提案を行って、複数の文化系クラブとも協力関係を築きつつある。

 まだ、決定事項ではないということだけど、コンピュータクラブも、竜司たちと組む可能性があることを念頭におきながら活動しないといけない。

 明確なルールが無かった以上、竜司たちの行為を責める訳にはいかないし、魅力的な提案に乗った美術部に非がある訳でもない。
 
 これは、竜司たちの行動に注意を払うことなく、訪問したクラブとの約束をキッチリと詰めなかったり、彼らが協力を確約してくれるような提案を行うように周知できなかったボクに責任がある。
 そのことを文芸部のメンバーに説明しなければならないことを考えると、図書室に到着する前から、とてつもなく気が重かった。

 さらに、生徒会室を退出される前に、鳳花ほうか部長から声をかけてもらえたものの、この時点では、

 重い足取りのまま、図書室に到着すると、文芸部のみんなからの視線がボクに集まった――――――。

「あの、黄瀬くん……連絡会でわかったことはありますか?」

 心配そうな表情で、たずねてくる天竹さんたちの不安をなるべく小さくしたいという想いはあるものの、連絡会で判明した事実は、包み隠さず話そうと、ボクは考えた。

「うん……朝、話しを聞かせてもらったように、美術部は、竜司たちと組むことにしたみたいだ。ボクらが訪問したあと、竜司たちは、美術部にVtuberのキャラクターデザインをしてくれないか、と提案したそうなんだ」

「そう……ですか。それで、美術部は……」

 彼らが、竜司たちに協力する理由を確認した天竹さんは、納得したようだが、下級生の高瀬たかせさんと井戸川いどがわさんは、なにか言いたげな表情だ。

 ただ、そんな彼女たちに、まだ伝えなければいけないことがある。

「実は、もうひとつ悪い知らせがあるんだ。コンピュータクラブも、竜司たちの提案に乗る可能性があるらしい……。美術部のキャラデザが気に入れば、PCに画像を取り込む協力をするみたいだ」

 ボクが、説明を続けると、一年生のふたりは、

「そんな……」

と、絶句し、悲壮な表情を浮かべた。

「私たちが、キチンと説明できなかったからでしょうか?」

 高瀬さんが、そう言うと、井戸川さんが憤慨したように、

「それでも、一度は約束したのに、美術部もコンピュータクラブもヒドくないですか?」

と、不服そうにつぶやいた。
 
 もちろん、不満の声をあげたくなる気持ちは、痛いほど良く分かるけれど――――――。
 
「それは、竜司たちの行動に注意を払っていなかったことに問題があるし、他のクラブが思わず協力したくなる魅力的な提案を出来なかったことに原因がある……どちらも、広報部としての力量が足りていなかったボクの責任だ」

 ボクは、図書室に戻ってくるまで考えていたことを語り、文芸部のみんなに頭を下げる。

 すると、重苦しい雰囲気になりつつある図書室の空気を一変させるように、ボクらと同じ学年の今村いまむらさんが口を開いた。

「もう、みんな、なに深刻な顔つきになってんの? 他のクラブが決めたことは、仕方ないじゃん! 私たちにも相手にも責任があるわけじゃないし、誰が悪いって訳でもないよ? それより、いま協力してくれそうなクラブとの関係を大事にしよう!」

 その言葉に反応するように、石沢いしざわさんも声をあげる。

「だよねぇ……私も今朝、美術部の加納先輩に言われたことはショックだったけど……まだ、協力を申し出てくれているクラブはあるし! 『来る者は拒まず、去る者は追わず』だよ!」

 二年生のふたりが発言すると、部長である天竹さんもうなずいて、部員たちを説得するように語りかける。

「うん……なつみとはるかの言うとおりだね。いま、協力的なクラブが他のグループに映らないように、対策を立てなくちゃ……」

 さすがは、文芸部の代表者というべきか、次の行動指針を示してくれた彼女に感心しつつ、ボクは、天竹さんの言葉を受けて、連絡会で決定した内容を報告させてもらうことにする。

「それについては、良い知らせ……という程ではないかも知れないけど、心配事がひとつ減ったんだ。連絡会では、今回の美術部やコンピュータクラブのような混乱を避けるために、各グループで、取材しているクラブ名と内容を共有することになったんだ。早ければ、もう、生徒会書紀の生野いくの先輩から、スプレッドシートのファイル共有の招待メールが来てるんじゃないかな?」

 ボクが、そう報告すると、すぐに天竹さんが彼女のタブレットPCを開き、メールをチェックする。

「あ、ありました! これですね! 生徒会のアカウントからメールが届いてます」

 彼女の声につられ、ボクと文芸部のみんなは、天竹さんが開いたPCの前に集まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...