初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第三部

第3章〜裏切りのサーカス〜②

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 その日の放課後、ボクと竜司、そして、宮野さんが集まった生徒会室は、当初、少し重い空気に包まれていた。

 授業中と休み時間、さらに、この生徒会室に来るまでの間、ほとんど、竜司と会話を交わす機会がなかったボクは、朝のホームルームのあとの短い時間の間に、天竹さんに、美術部の取材に関することで、その時点で判明していることを伝え、詳細は放課後の連絡会で確認することを約束していた。

 生徒会室では、これまでと同じように、生徒会副会長、書紀担当、会計担当の三人が、淡々と業務をこなしている。
 そんな中、いつもは、男同士の無駄話に興じていることの多いボクと竜司が互いに無言のままでいることに気づいた宮野さんが、

「あの……わたすが、こんなことを聞いていいのか、わかんねけども……お二人とも、なにかあったべか?」

と、たずねてきた。

「いや、それは……」

 彼女の隣りにいたボクが、返答をにごすと、ボクたちのようすをうかがっていた生徒会の副会長にして、ボクたち広報部の代表者でもある花金鳳花はながねほうか部長が、

「あら……上級生が、仮入部の一年生に気をつかわせるなんて、感心しないわね」

と、声をかけてきた。

「「あっ、すいません」」

 竜司と一緒に、身を縮めながら、声を揃えて部長に謝罪すると、

「謝るのは、私に対してじゃないでしょう?」

と、彼女は無表情のまま、再度ボクらに忠告する。

 再び、ハッとなったボクと竜司が、

「なんか、気を使わせて、済まないな宮野」

「ゴメンね、宮野さん」

それぞれ、下級生に向けて謝罪の言葉を口にすると、彼女は、

「そんな! なんもだすぅ……」

と、可愛らしい口調で、ボクらの言葉を受け止めてくれた。
 宮野さんの発した一言は、彼女の出身地のお国言葉なのか、意味がつかみづらいモノだったけれど、ボクと竜司の気持ちを受け入れてくれた、ということだけは伝わってきた。

 そうして、少し場が和んだところで、あらためて、鳳花ほうか部長が、ボクらふたりに問いかけてくる。

「それで……ふたりとも、なにがあったの?」

 部長の問いに、友人と目を合わせると、先に竜司の方が口を開いた。

「実は……さきに、壮馬たちのグループが取材の約束を取り付けていた美術部に、オレとモモカが、新しい提案を持ちかけて、こちらに協力してもらうことになったんです」

 親友の言葉に黙ってうなずくと、ボクに視線を向けた部長が、

「なるほど……それで、黄瀬くんたちは、少し思うところがある、といったところかしら?」

と、確認するようにたずねてきた。

「はい……そうですね。クラブ訪問に対しては、特に、ルールなどが設けられている訳ではないいにしても、一度、取材の約束をしてもらっていたクラブから、取材を反故にされると困ってしまうので」

 なるべく、主観を廃して、自分たちの窮状きゅうじょうを訴えると、鳳花ほうか部長は納得したように首をたてに振りつつ、

「そうね……黄瀬くんたちの立場や言いたいことは、良くわかる。ただ、美術部が自主的に黒田くんたちの申し入れを受け入れた以上、生徒会としても、その意志を曲げることはできないわ」

と、ボクの予想したとおりの言葉を返してきた。
 想定したとおりの返答に、

「ですよね……」

と、ボクは、自嘲めいた苦笑を浮かべながら、肩を落とすしかない。
 そして、どうしようもない現実をなんとか受け止めようとしているボクに語りかけるように、鳳花ほうか部長は口を開いた。
 
「それでも、こうしたことが続くと、広報部の中だけでなく、取材先にも混乱が生じるし、迷惑がかかってしまうことも想定できるわね。今後は、この連絡会を通じて、取材先と提携先するクラブは、情報を明らかにすることにしましょう。それで、問題はないかしら?」

 連絡会に参加する三人の意志を確かめるように、言葉を選びながらたずねる部長に、ボクたち三人は賛同する。
 ボクらの反応に満足したようすの鳳花ほうか部長は、軽い笑みを浮かべながら、続けて、こんな提案をした。

「ねぇ、黒田くん。差し支えなければ、どんな提案をして、美術部の協力を取り付けたのか聞かせてもらっても良い? あなたが、どんな手段を取ったのかわかった方が、黄瀬くんや文芸部のみんなも納得しやすいんじゃないかしら?」

 正直なところ、この時のボクにとって、美術部が竜司たちのグループに協力することになった理由なんて、どうでも良かったんだけれど……。
 部長にうながされた竜司は、「はい……それじゃ……」と返答したあと、その経緯を淡々と語りだした。

「体育会系のクラブには、訪問前から『動画コンテスト』のことを伝えてあったんですけど、文化系のクラブには、それを怠っていて訪問したときには、すでに、壮馬たちのグループと協力することを決めていたクラブがほとんどでした……そこで、オレは、自分たちのグループが、Vtuberのキャラを使うという特性を活かして、美術部の部員さんたちに、『芦宮あしのみやサクラのキャラクター・デザインをお願いできないか?』と提案したんです」

 親友が発した言葉に、ボクは、軽い衝撃を受けた。
 さっきも言ったように、美術部が自分たちとの約束を反故ほごにした理由に興味はなかったけれど、竜司の提案力とアイデアに、自分自身のチカラの及ばなさを痛感させられたのだ。

 取材の約束を取り付けることに精一杯だったボクにとって、相手のクラブの特性や、やり甲斐につながる提案をするなんて、思い浮かぶことすらなかった。

 芦宮あしのみや高校美術部の各部員が、どれだけクリエイティブな志向の持ち主なのかはわからないけれど、竜司の提案が、彼ら・彼女らにとって、魅力的に聞こえたであろうことは、絵心のないボクにだって十分に理解できる。

 その言葉に対して、打ちひしがれているボクに、竜司は、さらにショッキングな内容の言葉を続けた。

「実は……同じような提案をコンピュータークラブにもしていて……美術部のイラストが仕上がり次第、芦宮あしのみやサクラのキャラデザの出来映えによって、オレたちに協力してもらうことを約束してくれています」

「えっ!? コンピュータクラブまで!」

 それまで、親友の言葉を黙って聞いていたボクは、思わず驚きの声を上げ、精神的ショックを隠すことができなかった。
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